ダーク・ファンタジー小説
- Re: 錆びた刃と赤い蜘蛛【暴力表現有】 ( No.14 )
- 日時: 2016/01/05 22:07
- 名前: 吉田 網張(RINBYO) (ID: jV4BqHMK)
電気の1つもつけずに、真っ暗な室内で椅子に脚を組んで座っている……神越 悲恋【ミコシ ヒレン】は、無口な男だ。
この地域一帯の裏社会をしめている夜宮組の本拠地や、ホストクラブや風俗店が軒を連ねる華街が近いこともあり、治安があまりよろしくないこの繁華街。
夜になれば時々喧嘩もおこるし、ぼったくりをする店が客引きをしていることも多い。
そんな街で、悲恋は『掃除屋』を営業している。掃除といっても、ハウスクリーニング等ではない。
揉め事、喧嘩の後始末から、資産価値を下げないために自殺体を秘密裏に処理したり、相応の金を払って貰えば、証拠のみならず人間を『掃除』したりもする。
勿論看板をかかげたり、宣伝するような真似はしない。信頼できる知り合いや、それなりの地位を持つ人間のみを客にしている。
ここでこのような仕事をするなら、夜宮組に上納金を払うのが鉄則のようなもので、悲恋も例に漏れずそうしていた。そして時に、夜宮組から『掃除』を頼まれることもあった。
「……はぁ」
そんな悲恋は今、人生の岐路に立っていた。
彼は今、夜宮組から、幹部にならないかという誘いを受けていた。
夜宮組直々に、しかも下積みもなにもなしに、いきなり幹部。その上、世間には隠してあるが人形である彼の、あと2年足らずで探さなければならない『探し物』、これの入手を手伝おうという申し出なのである。
あの夜宮組がこんな人形1人を騙すなんてことはしないであろうが、疑いの念を晴らすことは、悲恋にはできなかった。
その1つの理由に、悲恋は中学生時分に、女性で苦い経験をしていることがあげられる。
真っ直ぐで美しい赤毛、整った目鼻立ち、多くの言葉を発しないミステリアスさ__という人間離れした……というか、実際人間ではない魅力から、とんでもない痴女(結構年上)からセクハラ紛いの扱いをされたことがあった。
だから、組に入った途端、極道の女と結婚させられる……なんてことはまっぴらゴメンだった。
いや、自分が痛い目をみるならまだましかもしれない……と悲恋は思う。
彼には、自分の命ぐらい大切に思っている……妹がいる。