ダーク・ファンタジー小説
- Re: 錆びた刃と赤い蜘蛛【暴力表現有】 ( No.15 )
- 日時: 2016/01/06 23:46
- 名前: 吉田 網張(RINBYO) (ID: jV4BqHMK)
妹は、人間ではない自分を家族だと認めてくれた。今日も、仕事柄いつ帰ることができるか分からない自分を待っているのだろう。
返事は今日までに聞かせてくれといわれていた。彼女のためにも、早く結論を出さなければならない。外で待っているなんてしなくて良いと言っても、彼女はこういうときは頑固で、聞かないのだ。
悲恋は、携帯を握りしめた。そして一息ついて……夜宮組組長の番号にかける。彼が極道では有名な組長であったとしても、悲恋は緊張も焦りもしない。彼は元来そういう性格だ。
ただ__
「……もしもし?」
電話にでたのが、女性の声であったのには、さすがの彼も言葉を失った。
「……あ? えぇと……?」
組長が女性なのか?いや、まさか。そんな自問自答を繰り返す。頭の中は混乱状態だ。
「用件なら早くしてくれると助かるんですけど」
「ぁ、はい……俺、神越、です。神越 悲恋……」
「神越……ごめんなさい、誰?」
それになかなか辛辣である。悲恋は普段、妹以外とは最低限のコミュニケーションしかとらない。それが災いして、言葉を詰まらせた。
ただ1つ、誰というなら、この人はやはり組長ではないのだろうと思った。
「……掃除屋をしてる者です。そちらの組長から……組に入らないかと……」
「あぁ……またアイツが勝手にやったアレね……で、良いの? 悪いの?」
なんとか分かって貰えたようで、悲恋は心底安堵した。……組長をアイツよばわりというのが、若干気になりはしたが。
「……俺なんかがなんでなのか分からないですが……入ります。……それで」
「あぁ、そう。じゃあ明日、11時。夜宮建設、来て。わかるでしょ?」
「え?」
そのあとは、光のような早さで、忙しいんだ、じゃあね。と通話を切られた。悲恋は、なんなんだ……とただ一人呆然とすることしかできなかった。 そして、こんな組織大丈夫なのか?……と、イエスの返事をしたことを少し後悔した。