ダーク・ファンタジー小説

Re: 錆びた刃と赤い蜘蛛【暴力表現有】 ( No.16 )
日時: 2016/01/08 20:15
名前: 吉田 網張(RINBYO) (ID: jV4BqHMK)

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「ぜーんぶ懺悔ゲロしちまえよ、なぁ……楽になるぜぇ……?」
 そこは、夜宮組の所有する倉庫。ただし、倉庫というのは名目上で、実際は血塗られた拷問によく使われていた。
「くぁ……」
 竜門は、その倉庫内の階段をのぼった先にある、一階を見渡せる通路に立っていた。手すりに体重をかけ、あくびをする。彼にとってこのような光景は見慣れたもので、中々終わらない拷問は、見ていても何も感じない。竜門はここで、金輪際薫に会いたくない……電話でしゃべりたくもない明里との仲介役を引き受けていた。
 よく音が反響する倉庫内で、つんざく悲鳴に、竜門は顔をしかめた。
「うるさ……」
 そんなに痛がるんなら、さっさと言えば良いのに、と思う一方、彼は拷問をかけられている売人の男に、同情もしていた。
「知ってるか? 爪と肉の間に針を刺すのは、一発で気を失う程の苦痛らしい。俺、聖職者だから、こんなことするの、心苦しいんだけどよ……やっぱ罪には罰をあたえなきゃ、な?」
 そう凍り付くような冷たい真顔で言って、肩にかけた紫のストラの裏から取り出したのは、金色の針。それを、男の右親指の爪の間に、押し当てた。刺さるか刺さらないかの力加減。言うか?と薫が声をかけるも、男は首を振りながら、ぅ……だの、ひィ……っだの、情けない呻き声をあげるしかない。
「……あーあ、今吐いてりゃあな」
 そういって高潔なる神父様は……容赦なく針をつき入れた。
 __エグい。薫の拷問は、ただただエグい。忘れられないような痛みを、じわじわと焦らしてから、相手の脳に、脊髄に、刻みつける。気を失っても、すぐさま舎弟たちに冷水をかけさせて、一瞬の休息も与えない。
 竜門も思わずゾッとした。やられていないのに、爪が痛いような、妙な感覚。
「……そんな顔しないでくれよ。俺もとても心が痛いんだ」
 十字架をかかげて男にそう言い聞かす薫を見て、絶対にそんなこと思ってないのによくこんなに自然に言えるな、と竜門は苦笑いを浮かべた。そろそろ、スプラッタムービーも見飽きた、と竜門は思う。実際彼は、映画を最後まで寝ずには見れないタイプだ。