ダーク・ファンタジー小説
- Re: 錆びた刃と赤い蜘蛛【参照100thanks!!】 ( No.19 )
- 日時: 2016/01/12 13:40
- 名前: 吉田 網張(RINBYO) (ID: jV4BqHMK)
「ほうか……車、用意せぇ」
竜門と電話で話す明里は、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。なんとなく頭の片隅にあって、その可能性は否定できなかった人物。それが不幸なことに当たってしまったのだ。
夜宮明里には、殺したい、いや、自分が殺さなければならないと思っている人物がいる。
それは、東馬会を束ねる、日本でトップクラスの規模と実力を持つ、青堂[セイドウ]組。その、幹部の男。名を青堂 一騎[セイドウ イッキ]……元の戸籍では、夜宮 一騎という。明里の、実兄である。
幹部でありながら青堂組の要の1つである一派を取り仕切り、次期若頭の座も堅いと言われている。
「あぁ……? せや、今からや。アホ、お前の運転に決まっとるやろ」
その会話を聞いて、同室にいた早綾は、ヤバいな、と思う。先程まで煙草を買いに出ていた明里の置いて行った携帯が鳴ったため、何気なしに出た(割りとよくあることで、明里も無頓着)のだが、かけてきた相手に、確かその頃には時間に余裕があったはずだ、と、適当に時間設定をしてしまっていた。
「……ちっ、面倒なことになってきよった」
「ねーミョーリ、誰が犯人だったか知らないけど、ガチで今から行くの?」
「ぁあ? あたり前や、アイツに繋がるんや、早う潰しておかな」
アイツに……一騎に繋がる。そう、夜宮組の配下の地域に薬を流したのは、一騎本人ではない。青堂組の傘下組であるが、その主権をほぼ青堂組に握られている……関西の秦野組だった。ただ、薫から拷問にかけられた男の話によると、裏に一騎の力があるのは、間違いないらしい。
「……じゃあ明日の3時にはここにこれるよう頑張って潰そう」
「はぁ? 3時? 無理に決まっとるやろ。移動時間もあるんやぞ」
「……明日3時にミョーリにお客様なんだけど」
「なんやそれ、知らんぞ」
3時?と首をかしげる明里に、早綾はバツの悪いような表情をした。いつもなにかしら明里に文句やらなにやらを言っている彼女だが、今回ばかりは自分が悪いと思っていた。