ダーク・ファンタジー小説

Re: 錆びた刃と赤い蜘蛛【参照100thanks!!】 ( No.22 )
日時: 2016/01/18 21:45
名前: 吉田 網張(RINBYO) (ID: jV4BqHMK)

2.西の狂犬

「きたまち〜暇やぁ〜何とかして〜」
「んー、授業出たらええんやない?」
「いややぁ〜」
 府立盾島高校の屋上、北町 真治[キタマチ シンジ]と南舘 宴[ミナミダテ ウタゲ]は、フェンスによっかかって、肌寒い秋風に、ボタン全開、着崩しに着崩した学ランを纏った身を晒し、堂々と授業をサボっていた。
「せや! 東道で遊ぼう!」
 ガシャン、と錆び付いたフェンスを揺らして、勢いよく立ち上がったのは南舘。色とりどり、可愛らしいピンどめで長い前髪を斜めにとめている。因みに一番上のピンは日替わりで、今日は最近南舘のお気に入り、「うさぎちゃん」である。スラッとしたモデル顔負けのスタイルを持つものの、『とある事情』から女子にモテるとどころか、校内では廊下を歩けば人が退けて道ができる始末だ。
「なんやその児童向けの教育絵本みたいなん。東道は真面目に授業でしょーに、それに……ほら、もう昼やで」
 チャイムが鳴ると同時に、ずっといじっていた携帯から目を離し、ポケットにしまったのは北町。金に染めたよく目立つ派手な髪。こうして南舘と一緒によくサボりをしてはいるが、テストは1桁が当たり前な南舘とは違って、なかなか成績優秀。ただ生活態度は最悪なため、内申はすこぶる悪い。幽霊部員ではあるが陸上部なため、なかなかの筋肉質である。
「マジや! おっひるー」
 らんらんとスキップせん勢いで出入り口まで歩く奔放な南舘を、北町は小走りで追いかける。はたから見れば不真面目はあるが子犬と飼い主のような微笑ましい2人。ただ、彼らはこの学校のみならず、この地域一帯で悪名を轟かし、恐れられてもいるし、方々から恨まれてもいる。
 南舘についた異名が『盾島の狂犬』。北町は『狂犬の鎖』と呼ばれている。
 南舘が狂犬と呼ばれるその理由の1つ。彼は、今や関西を越えて全国を統括するといっても過言ではない裏組織、青堂組の若頭の、正真正銘の倅なのである。

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