ダーク・ファンタジー小説
- Re: 錆びた刃と赤い蜘蛛【参照200thanks!!】 ( No.29 )
- 日時: 2016/02/15 18:13
- 名前: 吉田 網張(RINBYO) (ID: jV4BqHMK)
「やだもー親父はんも師匠も、そんなに見つめといてやー? 二人とも人よりキリッとしたおめめなんやからぁ、東道ちゃん怖がっとるやん?」
「キリッとしたというか目付き悪……」
「はいはい、北町はだーまーる。地雷踏み抜く天才なんやからー」
南舘!!……と、東道はこの状況も忘れて、自分よりも背の少し低い南舘に飛び付きそうになった。というか、感情にまかせて抱きついてしまうかもしれなかった。それほどまでに、ここで南舘のフォローが入ったのは、東道にとって神の手がさしのべられたかのような救いだった。
この、地獄のような沈黙が続くのも、震えるひ弱な声で自己紹介をするなんてことをしたら、支離滅裂になって、かえって場を更におかしな空気にしてしまうのは目に見えていた。
ありがとう南舘、そして俺をここから我が家へ帰してくれればもう何も言うことはない。
なんて言うことを強く思いながら、少し落ち着いて、このまま南舘にまかせるのはさすがに無責任か、一応着いてきたのは自分なんだし……と、東道は口を開いた。
「あ、あのー……なんか、すんまへん。俺、最近こいつら……いや、お二人と知り合って、南舘が一緒に来るかて誘うもんですから、着いてきてしまいました」
やはりまだ声の震えは完全にとれていなくて、焦っていることがバレバレではあったが、東道はきちんと自分の口で事情を説明した。
「ん、そうそう、俺が引っ張ってきたん。……まぁ、考えがあるんやけど、ね」
普段と変わらない調子で放った最後の一言。しかし東道は、威鮫と南舘の間で交わされた、含みのある視線を見逃さなかった。理由も分からず、ぞくりと悪寒が走る。
「……ほうか。ま、三人はとりあえず残りぃ。クソ息子はもう今回は俺が折れたる、好きにせい」
しっし、と、明里に向かって手を払った威鮫は、完全に東道たちに意識を切り替えた。
まだ俺の試練は終わらないのか……と、東道は一人、奥歯を噛み締めた。
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