ダーク・ファンタジー小説

Re: 錆びた刃と赤い蜘蛛【参照300thanks!!】 ( No.32 )
日時: 2016/03/03 20:04
名前: 吉田 網張(RINBYO) (ID: jV4BqHMK)

「東道……分かってくれたんやな。なら、お前は俺らの友達っちゅうだけやなくなる。仲間や。仲間なんやから、俺も北町も、お前に力かしたる。助けたる。やから、安心してええ」
 南舘は、東道は決心してくれたとはいえ、まだまだ不安で怖いだろうと、そう言葉をかけた。彼の優しさに、東道は少し強がって、笑顔で言う。
「南舘……俺は小さいガキじゃないんやぞ」
 いつも自分たちに怒鳴っていた東道が初めて見せた弱さに、無理矢理こちら側に来させて、酷なことをしたと心配していた南舘だったが、いつもの彼に戻った様子を見て、安心の微笑みを見せた。
「東道、さっきの話にもあったんやけど……俺ら4人が任されとる役割は、『番犬』や」
「番、犬……」
 南舘は、東道を座るように促し、、自分もそれの前に胡座をかいて座る。そして始めた説明に、東道が連想したのは、南舘につけられた二つ名。『盾島の狂犬』、だった。
「それって、お前の……」
「ん? あぁ、狂犬か。まぁ、あれはなぁ……初め北町と二人だけでこの仕事しとった時になぁ、北前が俺のことほんまに犬みたいや、犬に似とるーいうて、学校とか、喧嘩してるとことかでも、俺のこと犬、犬って呼んできよったん。俺がやめい言うて今は普通なんやけど、その時にはもう遅くて、そっちの名前で知られてもうたんよ」
 まったく、仕方ない奴やろ?と無邪気に笑う南舘に、東道もつられて笑う。気持ちを落ち着かせることができたようだ。
「……でな、番犬いう位やから。やっぱ、『守る』仕事なんや」
「誰をや……? 組長さんか?」
「ふふ、親父さんは自分の身くらい自分で守るで。俺らが守るんはもっと……特異な、というか異常な奴や。それこそ、東道よりな」
 すっと一瞬で真剣になった南舘の表情に、東道は場の空気が締まるのを感じた。
「東道は、人形がどこから産まれるのか……知っとるか?」
「いや……テレビとか本なんかで噂みたいなんは聞いたことあんけど……」
「そうやな。公にはなってへんからな、当たり前や」
「……それに、どんな関係があるんや?」
 南舘は、その質問に、少し悩むような仕草を見せた。しかし、すぐに東道の方を向き直り、少し身を乗り出して、視線をあわせる。

「俺らが守るは、その謎多き人形たちの、産みの親なんや。彼女は、所有者[ホルダー]て名乗っとる」

「…………は?」

 人形たちの産みの親。その思ってもいなかった突拍子もない話に、東道は思わず間の抜けた声を発した。
「うん……まぁその気持ちは分かるで。俺もあのけったいな人に初めて会うて話したとき、あ、北町を越える天然さん、もしくは電波さんやなぁ思うたわ……」
「え、いや、やて……」
 東道はまだ話を飲み込みきれない。
「うーん、まぁこれから会うんやけど……会っていきなりこの話しても、驚くというか、呆然とするだけやろ? やから、やっぱ話した方がええ思うて今話してるのもあるんやけど……」
 困ったように頭をかいて言う南舘に、東道は眉をよせて問う。
「ま、まぁ……それがホンマやとしても……そんなごっつ凄い存在なんやったら、守るまでもないんやないのか……?」
 当然のその疑問に、南舘は腕を組んで唸った。
「うーん。そうなんやけど……さっきの親父さん、見たやろ? 手に入れたいもんは、絶対に奪ってでも手に入れる主義なん。やから、どうしても彼女を自分の切り札としてひきいれておきたかったんや。やから、かわりに彼女の条件……俺ら、4人の『番犬』を自分にくれいうのと、青堂組……もとい東馬会が完全な力を取り戻す手助けするいうんを、のんだんや」
「そいつは……完全じゃない?」
「せや。とある奴と彼女は対立しとって、過去に彼女はそいつとの闘いに負けた。そいで、人形をつくる能力を含めた、力の一部を封じられた。やから、守ると同時に、その力を取り戻せたら、親父のもんになってやっても良いってことや」
「えらい上から目線やなぁ」
 そういう性格なんよ、と、南舘はあきれたように、やれやれと首を振った。
「……でも、そんな凄い奴が負けて、相手すんのにかなりの人数が必要て、そうのうな相手なんやな……?」
 深刻そうに言う東道の質問に、南舘はこたえた。

「そいつが、彼女以外に、もう一人だけいるっていう、『所有者』なんよ」

 東道は、その衝撃の事実に……覚悟していた以上に未知の敵に、目を見開かせて、口を半開きにして、固まるしかなかった。

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