ダーク・ファンタジー小説

Re: 錆びた刃と赤い蜘蛛【参照300thanks!!】 ( No.33 )
日時: 2016/03/12 14:46
名前: 吉田 網張(RINBYO) (ID: jV4BqHMK)

「奇襲ですかー?」
「正面突破でええやろ」
「でた、ガサツ人間。いくら自分より弱い相手だからって、下手したら死ぬよ?」
「こんなとこで死なへんわ」
 青堂組が経営するホテルにとった部屋で、明里、早綾、竜門の三人は、作戦会議とはとても呼べない、適当な話し合いを行っていた。秦野組を完全に格下だと見下している明里は、夜、その組長の元に乗り込む気でいた。それを、早綾にもう少し慎重なれ、と呆れられた。竜門はいつもの通り明里に従うつもりで、正面突破にも躊躇いはなかった。攻撃は最大の防御……二人とも、力で圧しきるタイプなのだ。
「ミョーリが死ななくても、他の幹部達がやられちゃったらどうするわけ。今戦力を失うわけには……」
「ここでやられたら、それまでの奴やったいうことやろ。そんなやわな奴にかける情は無い」
「はぁ……この冷血人間」
 何を言っても無駄だと、早綾は不機嫌な表情で口を閉ざした。
「てゆーか、秦野組にもう情報伝わってるんスよね? だったらあっちも備えないわけないし、正面から行くしかないんじゃ?」
「性悪ジジイのことやから伝えるやろな」
「あー、もう分かったって! 正々堂々乗り込むんでしょ! 好きにすれば?」
 苛立ちが限界に達し、早綾は頭をかいて立ち上がり、ドアを目指して歩き出す。幹部達に伝えてくるから、と理由をつけて、自分とはどうも噛み合わない二人から離れた。
 バタン、と乱暴にドアが閉まる音がすれば、オートロック式の鍵がかかった。
「なんや、短気な女やな」
「それ組長がいえないっスよね〜、短気は損気っスよ」
「お前が暢気すぎるねん、阿呆」
 会話はそう長くは続かず、直ぐに静寂が訪れる。広いベッドの縁に、一人分の間をあけて隣あわせに座る二人は、視線を部屋にさまよわせた。
 すると、唐突に明里の携帯が鳴った。初期設定のままの、シンプルな着信音だ。暫く膝のうえで手を組んで足を意味もなくパタパタ動かしていた竜門も、何となくそちらを向く。
「なんや……ジジイか」
 明里は相手を見て、面倒臭そうに顔をしかめた。育ての親である彼を苦手に思っている明里だが、出ないわけにもいかず、渋々携帯を耳にあてる。
「何や、さっき会うたばかりやないか」
 明里は挨拶もせず、はじめから不躾な言葉を相手に浴びせた。
 何か秦野組に乗り込むことを話しているようだったが、竜門には威鮫の声は聞こえず、まぁいいか、と、明里から視線を外した。そしてしばらく以前として不機嫌な明里の声を聞いていたが、いきなり大声を出した明里に驚いて、ビク、と肩を震わせた。
「あぁ?! 何でそうなんねん、おかしいやろ」
 さっきより更に苛々して、怒りが混ざったその表情に、竜門は何事かと、不安げに眉を寄せた。