ダーク・ファンタジー小説
- Re: 錆びた刃と赤い蜘蛛【参照300thanks!!】 ( No.35 )
- 日時: 2016/03/21 20:14
- 名前: 吉田 網張(RINBYO) (ID: jV4BqHMK)
「く、組長をわざと怒らすなんて俺がするわけないじゃないっスか……っ」
「いや、あきらかにさっきのは馬鹿にしとったやろ」
「してない! してないっス!」
首を振って全力で否定するも、明里の怒りが収まる気配はなく、竜門は、このままじゃ組長に殺される……! と、拘束から逃れようと、明里の竜門のシャツを掴んでいる方の腕を片手で控えめに押し返してみるも、効果は全くない。むしろ、明里は更に手に力を込めた。
「なーに抵抗しようとしてんねん、下僕が主人に逆らうんか?」
更に持ち上げられたことで、竜門の、締めるわけでもなくただ首にかけていただけの青いネクタイが床に落ちた。
「いや、くみちょ、そろそろ本格的に辛いッ! 離して下さいッ!」
竜門は、流石に逃げないと、今の殺意マックスの組長に八つ当たりされたら堪らない、と、自分の身に危機を感じ、今度は力を込めて、明里をはねのけた。
屈強な身体とはいえ、竜門よりは体格が劣る明里は2、3歩よろめく。そのわずかな隙に、やっとまともに息ができるようになった竜門は、殴りかかるか蹴りかかるかしてくるであろう明里から身を守ろうと、防御の体制をつくった。
「いや、あの、ほんっと悪かったです! サーセンっした!」
自分のどこがどう間違っていたのか理解できないままだったが、とりあえず謝っておいた方が良いかと思い、竜門は急いで頭を下げる。
「逆らうな、いうたやろ……っ!!」
そんな謝罪を気にもとめず、明里はふつふつと沸き上がる怒りにまかせて地面を蹴り、拳を降りかぶり、竜門の懐に飛び込む。
「ぅわっ!?」
「お前はっ、黙って俺に従っとればええねん……っ!!」
「それ、もうお弟子ちゃんうんぬんとは、まっったく別の問題じゃないっスか……ッ!? ぅわあぶなっ!?」
竜門も、いくら夜宮組トップ2の実力があるとしても、狭いホテルの部屋で満足に動けるわけがなく、容赦なく浴びせてくる猛攻をかわすことはできない。急所に入らないように受け止めるのがやっとだ。
「ぐぁ……っ!!?」
しかし、それができたのも最初の数発の攻撃のみ。何回目かの蹴りを、まともに腹に受け、そのまま背中を強かに壁に打ち付けた。
「げほっ、かは……っ!」
双方から挟まれたような衝撃に、竜門は盛大にむせかえ、咳き込む。血こそはきださないものの、うまく空気をとりこめない苦しさと痛みに、顔を苦痛に歪めた。
「……また、やられたいんやろ?」
「……っ、ぇ……?」
明里の言う意味がわからず、自然に沸きでた涙で濡れた目で、竜門は腹を曲げたまま明里をみやった。
竜門にゆっくりと近づいた明里は、竜門の首すれすれの壁に、その拳を打ち付けた。竜門の背に悪寒が走る。
「やから……これ、増やしたいんか?」
明里は、竜門の左頬に刻まれた、おぞましく赤い傷痕を、もう片方の手ですっとなぞった。それだけでは痛みはないものの、増やす、の意味を理解して、竜門は顔をひきつらせた。