ダーク・ファンタジー小説

Re: 錆びた刃と赤い蜘蛛【暴力表現有】 ( No.5 )
日時: 2016/01/03 21:41
名前: 吉田 網張 (ID: jV4BqHMK)

「……それぐらいなら俺が行く」
「アンタはすぐ怒って殺しちゃうじゃん。力加減もわからない馬鹿なんだから。血管ブチ切れて死ぬ前にカルシウム摂った方がいいよ」
「あぁ¨!?」
 ベッドから勢いよく立ち上がる明里。これが早綾ではなかったら、蹴りや拳が飛んでくること間違いなしなのだが、早綾相手ではそれもできない。怪我をなおすのも、明里の生命力が必要になるからだ。
「ぬぁ!? 何故俺っ!?」
 仕方ないので、こういう場合は竜門に怒りをぶつけている。ちなみに竜門がいないときは、壁や、数十万、下手したら数百万する家具が破壊されるので、彼も彼なりに役にたっているのかもしれない。夜宮組の財政的にも、わけもわからず修理させられる夜宮建設の社員のストレス的にも。
「……別にそんなおかしな奴じゃないじゃん。私にはミョーリのほうがよっぽど嫌な奴にみえる」
「は、お前はほんまのアイツをしらんからそがいなことが言えんのや」
 今だ蹴られた腹をおさえながら呻く竜門を尻目に睨み合う両者。実は二人は心底仲が悪い。基本信頼しあっての契約なのだが、彼らの場合、「仕方なく」なのだ。その「仕方なく」の理由がなければ、お互い殺しあっていてもおかしくないかもしれない。
「ぐぁ……っに、して、も……あの赤蜘蛛が……っ、毛嫌いするのが神父だなんて……おかしな話っスよねー」
 やっと喋れるようになった竜門が、声を絞りだして弱々しく言った。
 赤蜘蛛。それは明里につけられた異名だった。狙った獲物は殺すまで締め付け、逃さない……というのも二つ名の理由。しかし一番の理由は、また別にある……
「本気で死ねばええ思うわクソ神父……」
 刃を向けられれば神をも殺す。それはもう容赦なく殺す。地獄に落ちる?そんなことは知ったこっちゃない……明里はそんな人間なのだが、神に遣えるハズのとある聖職者を酷く嫌っていた。