ダーク・ファンタジー小説
- Re: 幼き心のひと雫 ( No.20 )
- 日時: 2017/02/04 15:21
- 名前: 月兎 (ID: y0zMT9VM)
第2章〜光と影〜
(………ここ…は………どこ…?私…は………一体……………そうだ……………私は…………怪華ちゃんにおされて…………谷底に落ちて…………気を失ったんだった…………)
「ーぶ?」「大丈夫?」
「る……瑠璃………香…さん……?」
「葉子、大丈夫?」
「う……うん……」
「……それなら良かった………葉子…心配してたんただよ?」
「……ありがとう……ございます…」
「……あんまり無理しないでね?」
「わ…わかりました……」
「………見返してやりなよ…あいつに……」
「………え?」
「だってお前…あいつに殺されかけたんだぞ?」
「……でも…」
「ハァ……情けないなぁ……」
「…………」
「どうする?」
「…じゃあ…やってみます………」
「がんばって!!」
「…はい!!」
ーその頃…
「…失敗したのね……」「…仕方がないでしょ……」「じゃあさ、何で失敗したのか分かる?」「………」「あんたに【迷い】があるからよ…」「…………ッ!!」「あーあ…もっと早いタイミングで殺せば良かったのかなぁ……」「そんなこと言わないで!!あの子は私のっ…私の大切な友達なの!!」「いいよもう……私が殺すから」「え……」「じゃあね〜」「………」
(…ごめん……葉子ちゃん……)
つづく…
- Re: 幼き心のひと雫 ( No.21 )
- 日時: 2017/02/13 13:41
- 名前: 月兎 (ID: y0zMT9VM)
私は軽い脳震盪を起こしていて、しばらくの間、明星市立病院に入院することになった。
その時に知り合って友達になった子がいる。
その子の名前は輝崎 光(かさき ひかり)。
この子は生まれつき病気を持っていて、両親がいつまでも明るい子であるようにと、名前に『光』とつけたそうだ。
けれど一つ問題があった。
それは………
「光ちゃん、おはよー」「おはよー…」「…今日は元気ないね……」「…うん……ちょっとね………」「?」「あはは…葉子ちゃんは知らない方がいいよ…」「そ…そう?」「うん……」 「それで、今日は何する?」「…お絵かき……かな…?」「お絵かき?うん!分かった!」「………太陽と月ね…」「?」「うん…月は太陽の光を浴びて、初めて輝けるでしょ?それと同じで、私は葉子ちゃんがいて初めて輝けると思うの…」「……そうなんだ…」「うん…」「ねぇ…光ちゃん……」「何?」「私といて、楽しい?」「どうしたの?急に……」「何か…光ちゃんに無理させてないかなぁって……」「…ううん……そんなことないよ……」「そう…なら良かった……」
—その頃…
(……あの時の追憶が今も忘れられない…母さん…あたし…どうすればいい?もうこの世界にはいられない……母さんが死んじまってから今日で20周忌……母さんを殺したのは…あの憎き政府軍だ……何が誤射だよ……いくら何でもあれは酷すぎるだろ……母さんに向かって何発も、何発も……あんなのアリかよ……すべての発端はちっぽけな争いさ……争いなんかしなけりゃ……争いなんかしなけりゃ母さんは死ななかったのに……許せない…父さんも……何で嘘なんかつくんだよ……母さんは病気で死んだんじゃないのに……何で…何で嘘なんかつくんだよ!!あんなことして誰も良い気持ちになんかならないのにっ!!どうしてっ!!…………)
「…瑠璃香……」「…………」
To be continue……
- Re: 幼き心のひと雫【一部変更あり】 ( No.22 )
- 日時: 2017/07/28 15:55
- 名前: 月兎 (ID: K867iFWu)
(………ここは……どこ……?)
『こんにちは』
「だっ…誰!?」
『こわがるひつようは ないわ』
「え……」
『いま あなたは ゆめの なかに いる』
「それって…どういう……」
『すぐに そのいみが わかるはずよ』
「………!」
(…詩が聞こえる……)
私の命は儚い蜻蛉のよう……
母から聞いた子守唄……
幼きあの日の子守唄……
ねむれ ねむれ 来る日を忘れ
ねむれ ねむれ 刹那に消えて
思い出すたび溢れてく
血と汗と涙が溢れてく
私はその日病に倒れ
どくどく血が流れてく
私は血が出て辛いのに
暑くて暑くて辛いのに
医者はなぜか許さなかった
冷房つけるの許さなかった
だから汗が流れでて
泣きそうになってしまった
ついに言われてしまったんだ
お前は入院しなさいと
私悲しくなっちゃって
とうとう泣いてしまったんだ
せっかくここまで生きたのに…
頑張ってここまで生きたのに…
お母さん何で裏切ったの?
私を捨てて嬉しいの?
どうして…どうして……
「い…今のは……」
『かさき ひかり の こころの さけび』
「………」
『かさき ひかり は もうすぐ いのちを たつ よ』
「……ッ!」
『これが わたしの おねがいごと… あのこを とめて』
「うん!わかった!!」
『あ り が と う』
「……………。」
(光ちゃん……)
~衝撃の事実を知った葉子。果たして光の自殺を止める事は出来るのだろうか…~
つづく………
-------------------------------
※今後の小説投稿ペースについて
①8月、12月は週1ペース
②それ以外は上記にある通り
- Re: 幼き心のひと雫【一部変更あり】 ( No.23 )
- 日時: 2017/07/31 16:37
- 名前: 月兎 (ID: K867iFWu)
私は夢から覚めると光ちゃんのいる病室へと向かった。
(光ちゃんっ!!待って!!死なないでっ!!)
−ガラッ
「光ちゃ…………ん……」
光のベッドは血にまみれていて、光の手にはたくさんの切り傷があった。
(嘘…でしょ……)
葉子はその光景に言葉を失った。
−コンコン
『輝崎 光さん、診断のお時間です。』
(そうだ!こんな時こそ私がしっかりしなきゃ!)
−ガラッ
「すいません!光ちゃんがっ……光ちゃんが怪我してるんですっ!!」
「そうなんですか!?今すぐ主治医を呼んできます!」
(光ちゃん…どうして…)
—その頃…
神崎神社境内
「あのですねぇ…」
「お願いします!何でもしますから!」
「そういうのは姉の方が詳しいんですよ…」
「じゃあ姉を呼んでください!」
「…姉ならここにはいませんが……」
「じ…じゃあどこに……」
「……星空小学校に……」
「…えっ……」
「あの学校、よく[でる]らしいから、姉が心霊検証をしている最中なんですよ…」
「やっぱり…[でる]んですか?」
「…ええ」
「…………」
「まさか、あの学校に行くおつもりで?」
「……ああ…」
「やめた方がよろしいかと…」
「いいや、行くね」
「…何があっても知りませんから……」
「そのつもりだ。安心しろ。」
「そういえば…あなたの名前は?」
「じゃあお前は?」
「…神崎 椛(かんざき もみじ)です……」
「そうか、あたしは下田 瑠璃香!よろしく!」
「…よろしくお願いします。」
「じゃあな!椛!」
「……………待って!!」
「…どうした?」
「あなた…月森 葉子を知ってる?」
「…葉子なら……あたしの友達だが?」
「これ以降彼女には一切関わらないで!悪いことが起こるから!!」
「……………。」
「彼女…憑かれているわ……」
「…………。」
「彼女の近くにいると、悪いことが起こるわ…」
「………っ…何なんだよお前!!今あいつは苦しんでるんだよ!!それなのに…それなのにお前はあいつの事を放っておけって言うのか!?おかしくねえか!?」
「………それはこっちも同じよ!!あなたはまるで何もわかっていないわ!!彼女の苦しんでる事は私だって分かっているわ!!それなのにあなたは余計に彼女を苦しめようとしているわ!!」
「……………………。」
「……………………。」
「ごめん…」
「こっちこそ…悪かったわね……」
「なぁ…一ついいか?」
「どうぞ…」
「影異 怪華、知ってるか?」
「……知らない………」
「そうか…まぁいい。ありがとな!!」
「…お気をつけて」
−その頃…
「そうですか…なら…よかったです。」
(……光ちゃん…心配したんだから………)
「…葉子…さん?」「…え?」
私が振り向くと、そこには巫女の格好をした女性が立っていた。
「そ…そうですが……」
「ふふ…ちょうどよかった…今あなたを探していたところなのよ。…ちょっと来てくれる?」
「は、はい…」
「…影異怪華って子…知ってる?」
「はい…」
「友達?」
「はい…」
「殺されかけた?」
「……はい…」
「憎んでる?」
「いえ……」
「…殺そうと思ったらいつでも殺せる?」
「……いえ…」
「……さっき彼女に会って話を聞いてきたんだけど、今回の件…反省しているみたいよ?」
「…そうですか……」
「彼女が言ってたわ。“影夜には気をつけて”って。この意味分かる?」
「……命には気をつけろ、って事ですか…?」
「そゆこと」
「……………。」
「じゃあね〜」
「………………」
(…あ……そういえばまだ名前聞いてなかった…思ったけどあの人何で私のこと知ってるんだろ……)
「ふふふ…ここが星空小学校ね……月森 葉子…今すぐ殺してあげるわ………!!」
〜葉子に忍び寄る影、それは謎の存在“影夜”だった…彼女は一体何者なのか…そして、彼女は一体何のために葉子を殺そうとするのか…果たして、葉子を待ち受ける運命とは何なのか〜
つづく………
- Re: 幼き心のひと雫【一部変更あり】 ( No.24 )
- 日時: 2017/08/05 11:43
- 名前: 月兎 (ID: NywdsHCz)
(とはいったものの……何の調べもせずに行くのもまずいからな……一旦図書館に行くか……)
−星空市立図書館
(うーん……場所がわからん……とりあえず…司書のやつに聞いてみるか……)
「すいません…あの、怪奇現象についての本はどこにありますか?」
「それならあちらです。ついてきてください。」
私は司書の後をついていった。だが、案内されたのは普通の本棚ではなく、関係者以外立ち入り禁止区域に案内された。
「一応聞きますけど、どういう怪異をお調べで?」
「………【きり子さん】」
「………そうですか…なら…こちらです。」
そういうと、とても分厚い本を渡された。
「ありがとう…」
「読む時はくれぐれも気をつけて……」
(よし…読んでみるか……)
怪異ファイル〜きり子さん編〜
まずはじめにこのきり子さん編は星空小学校許可の元により書かれています。よって項目はA〜Gとしています。
※下記の事は決して他人には漏らさないでください。
A.きり子さんについて
生前の名前は「細川 桐子」。星空小学校出身で12才で死亡。
B.死亡原因
遮断機不調による四股切断(実際は五股だが…)。当初会社側はこの事故について否定していたが、遺族が裁判を起こしたためこの事故を認め、賠償金を払った。
C. その後について
遺族は病院に臓器提供をして、それから一ヶ月もしないうちに全員死亡。
D.星空小学校について
この学校は【きり子さん】以前から多くの怪異が潜んでいる。例えば、【夜泣き娘】だ。これはいじめを受けていた児童がトイレにこもったまま自殺して、それが具現化されたものだ。人間に害をもたらす事はないが、トイレの鏡に自殺した児童の霊が現れると言われている。
E.きり子さんの特徴
顔には目がなく、人間を襲う際は聴覚を頼りにしている。活動時間は主に夜で活動範囲は不明だ。なお、きり子さんに目を付けられた人は死ぬまで追いかけられる。
F.正しい対処法
きり子さんに見つかった際は音をたてずにその場から立ち去る。むやみに近づこうとするときり子さんの思うつぼだ。それでも追いかけてくる際は……………
G.追記
この【きり子さん】と呼ばれる怪異は、かの有名な“コトリバコ”の影響を受けている。よって細川 桐子の魂が成仏される事は不可能になってしまった。
(……これで終わりか…しかし……かなりむごい内容だったな……成仏される事はない……。いや………このあたしが絶対にお前を成仏させてやるよ……母さんには何もしてやれなかったけど………ふっ………あたしって本当に馬鹿だな……こんなんだから……あの時も……ッ…あの時も……!母さんを助けてやれなかったんだよ!!)
…私がこの病院に来てから何日になるだろう……窓の外の風景なんて…もう見飽きてしまった……でも、それも今日でおしまい。だって退院できるんだもの。……パパ……元気かな……私…勘違いしてた…ずっと……ずっとパパがママを殺したんだって思ってた……馬鹿だよね…私って…なんでもっと早く気付かなかったんだろう……どうして……どうして……!!もっとはやくきづいていれば……パパはかなしいおもいをしなかったのに……パパは………パパはつらくなかったのに!!………うぅ……
私はこれまでの人生の中で一番涙を流した。
たくさんの哀しき想いを抱きながら……
母の死、友の死、友の裏切り、そして……
父を今まで憎んできた後悔……
たくさんの想いが交錯した涙を流した……
私は一生償う事のできない罪を犯してしまった……
昨日、看護師から報せがきた。
“お父さんが死んだ”
それと同時に私宛の手紙を手渡された。
私の愛する娘へ
突然だけど、あなたの命はもう長くはもたないと医師から宣告があった。
だから、最期にお前に伝えたい事がある。
『お前の母は病気で死んだ』
これは本当の事だよ。でも、信じてくれない事ぐらい分かってる。嘘だと思うなら確かめてみるといい。病院に行ってね。お願いだから、しんじ て お く
(お父さん……お父さん!?)
私は急いで父の元へと向かった。今なら間に合うかもしれない、今までの空白だった時間を取り戻せるかもしれないと思った。父に会って今までの事を謝ろう、そして感謝しようと思った。……………だけど…もう遅かった……手遅れだった……父の手はすでに硬直し始めていた……もう……失った時間は取り戻せない、父とは二度と話せなくなってしまった…………お父さん…ごめんなさい……勘違いして……私、ずっと思ってたの……お父さんがお母さんを殺したんだって……でも…真実は違ったんだね……ごめんなさい……馬鹿な娘でごめんなさい……本当に……本当にごめんなさい……お父さんと一緒にいられた時間はとても短かったけど……楽しかったよ……私の大好きなお父さん……これからは天国で……お母さんと仲良くしてね?……私もいつかはそっちに向かうから………さようなら…お父さん……
To be continue………
- Re: 幼き心のひと雫【一部変更あり】 ( No.25 )
- 日時: 2017/08/10 15:29
- 名前: 月兎 (ID: VpfXouOp)
「葉子……」「……………」「元気出しなって!」「でも……」「…でも、じゃない!!……前も言ったけど……最初は受け入れなくったっていい……だから……だから元気出せ!!それと、お前に聞きたい事がある…【きり子さん】の生前の名前は?」「……小野 桐子」
(やっぱりそうだったのか……)
「多分、そいつは【きり子さん】じゃない……」「え……」「本当の【きり子さん】は……」「?」「細川 桐子、だ……」「な……じゃあ…あの【きり子さん】は一体…」「影異怪華、だ……」「うそ……で…しょ……」「ただ、あいつは今回の怪異の黒幕ではない……」「……………」「今から話をする。しっかりと聞いておけ。」「………はい。」
「本物の【きり子さん】は細川桐子。だが、こいつは“コトリバコ”という怪異の影響を受けている。この怪異はとてつもなくグロテスクだ。見た目は何の変哲もない細工箱だが、問題なのは箱の中身だ。中身は子供の血で満たし、入れる[もの]は小指や内臓なんかだ。この呪いの強さは箱の中に何人の子供の体の一部を入れるかで変わる。それは一人から順にいくと、「イッポウ」「ニホウ」「サンポウ」「シホウ」「ゴホウ」「ロッポウ」「チッポウ」「ハッカイ」だ。この怪異の怖いところは、呪う対象だけではなく呪った本人にまで影響を受けるという事だ。まさに『人を呪わば穴二つ』だな。そして、細川桐子はこの“コトリバコ”、いや“子獲り箱”の影響を受けた。だが、細川桐子は呪われた側ではなく呪った側だ。………間接的にだがな。あの時、桐子の遺族は会社を恨み、そして気がついた。……桐子の遺体を利用して会社を呪おうと。そして会社は一ヶ月もしないうちにつぶれた……呪いは効いた。それと同時に遺族も亡くなった。呪いの影響でね……そのせいで桐子は箱の呪いに縛られてしまった。桐子は何もかも恨んだ。そして、自分と同じように誰かを呪ってやろうと思った。………【きり子さん】の最初の犠牲者が影異 怪華…いや、小野桐子だ。これはとてつもなくたちが悪い。最初の犠牲者の名前も桐子だ。だから細川桐子は自分の代わりにお前が殺せ、そう命じた。」
「……分かるか?葉子…」「……じゃあ…怪華ちゃんは………」「ああ…そういう事だ。」「そんな……ゆるせない!!」「……葉子、いよいよ怪異の終焉が見えてきたが……やれるか?」
「……はい!」「……ふふ」「瑠璃香さん、なんか言いました?」「何も言ってないよ?」「そうですか…」「でも、変わったよな…お前。」「え?」「最初会ったときは弱々しく見えたのに、今は何でもやれるってかんじだぞ?」「そう……ですか?」「ああ。」「……………」「どうかしたか?」「いえ、何も。」「そうか……」
私は、初めて感じた。瑠璃香さんが心の底から笑顔になったのを。
「思ったんですけど……」「ん?」「最初に瑠璃香さんに会った時のあのアナウンスは一体……」「ああ、あれか。あれは【鬼ゴッコ】だな…」「……え?」「不定期で不特定の場所で行われるやつだ。だから誰の身にも起こりうる。」「そうなんだ……」「……これでいいか?」「はい……ということは、【きり子さん】は関係ないんですか?」「………さあな…」「え……」「だって……お前に会う以前の事をあたしが知ってるわけないだろ?」「それもそうだけど……」「……………」「………あの…」「…………」「なんか…ごめんなさい……」「ふん…勝手にしろ……」「……………」
(どうしよう……気まずい空気になっちゃった……)
「………」「…なぁ、葉子……」「………」「……ふふ…………気まずいって…思ってるだろ?」「え……どうしてそんなこと……」「…顔に出てる。ただそれだけだ。それとお前…人に何かものを言うんならはっきり言え。そうしないと相手の失礼にあたる。」「わ……わかりました…」「…………。」「……?」「何でもないよ」「そうですか…」
ープルルル…
「もしもし…?」
「なっ…本当ですか!?すぐ行きます!!」
「葉子、どうかしたのか?」「理由は見れば分かると思います!今は急いでついてきてください!!」「ああ。分かった!!」
何故気付かなかったんだろう……こんなことに……命の危険が迫っている、もうすぐで儚き命が消えてしまうとあれだけ……あれだけ忠告があったのに……何故今まで気付かなかったんだろう……本当に私は馬鹿だ……今までに救えた命はいくらでもあったはずなのに……少しも救えていない……今回も……救えないの?また…見殺しにするの??ダメに決まってる…そんなこと……誰も許すはずないよ……ごめんね?救えなかったら……本当は救える命だったはずなのにね……馬鹿な私で……ごめんなさい………
光ちゃん…
つづく……
- Re: 幼き心のひと雫 ( No.26 )
- 日時: 2017/10/18 06:28
- 名前: 月兎 (ID: vstNT7v3)
………一つの物語が終わった。
小さな小さな物語が今日、幕を閉じた。
あの言葉が頭の中を駆けめぐる。
『かさき ひかり は もうすぐ いのちを たつ よ』
あの言葉は本当だった。
私はあの約束を破った。
ごめんね?光ちゃん……
私は瑠璃香さんと共に病院へと急いだ。でも…分かってる……助からないことぐらい……
「葉子……」「もういいんです……」「お前っ…友達を何とも思っていないのか!?友達をなくして何とも思わないのか!?」「瑠璃香さん……」「それに…!まだ死んだって決まったわけじゃないだろ!!」「いえ……死んじゃったんです……本当に…。……さっき電話で告げられたんです……『自殺した』って……でも前に夢を見たんです……光ちゃんがもうすぐで死んでしまう事を告げられる夢を……虫の知らせだったんですかね……あれは……。」「……………」「途中で花でも買いましょうか……」「……そうだね……」
光ちゃんが言っていた『太陽と月』というのは本当だったのかもしれない。でも、私にとっては光ちゃんが『太陽』のような存在だったと思う。私は光ちゃんがいてくれたから楽しい日々を過ごせた、そう思う。
あの夢で見た白い影は光ちゃんの『迷い』だったのかもしれない。
「…葉子……」「………」「…ッ……!!いい加減…ッ………いい加減元気出せよ!!……お前がそんなんだったら………あいつは天国で安心できねぇんだよ!!」「……そうですね……その通りです……私がいつまでも悲しんでいると光ちゃんだって……光ちゃんだって天国で幸せに暮らせないはず……」「……その通りだな…」「瑠璃香さん…」「……何だ?」「…いえ、何でも……」「……………」「あの…一つ話をしてもいいですか?」「……ん?」
「これは2年前に亡くした親友の話です…」
2年前、私の大親友が命を絶った。……自殺だった……それに、私はその光景を見ていた。そう、私は親友を見殺しにしてしまった。本当は救える命だったのに……なぜ救えなかったのだろう……
ーーーーー2年前…
「……無理かもしれない」
「…え?」
「……私は葉子を信じてる。だから私のお願い……聞いてくれる?」
「う…うん……」
「明日の夜、星空公園に来て。」
「……何で?」
「…いいから来て。それと、そこで見たことは誰にも言わないで。分かった?」
「…分かった……」
「じゃ、明日の11時に星空公園に来てね〜。バイバ〜イ。」
「………。」
~星空公園
「よし……葉子、準備はいい?」
「うん……」
「じゃ、始めるよ……」
その時は暗くて周りがよく見えなかったが、確かに聞こえた。肉をえぐるような音が……私は怖くなってその場から逃げ出した。親友を置いて……その次の朝、公園に行くと、[生きている]親友には出会えなかった。私は後悔した。あの時……あの時親友を止めていれば……こんなことにはならなかったのかもしれない……でも…もう遅い……
【私は葉子を信じてる】
この言葉が今でもはっきりと残っている。後日親友について分かったことがある。それは、親友には持病があり、あの時点で余命数週間であったという事だ。親友は生前にその事を一度も話してくれなかった。他人には話しているのに……私はその事を責めた。責めてしまった。死人を責めても何も変わらないはずなのに……親友は何も悪くないのに……悪いのは私なのに……
私は親友の葬式には行かなかった。行く勇気がなかった。親友を責めた私が行く価値はないと思った。
「それで、私は毎年親友の命日に合わせてお墓参りに行くようにしているんです……」 「……お前は光と親友の境遇が似ている、と言いたいのか……」「……その通りです…………」「……−−しれないな。」 「え?」「2人はお前に命を託したのかもしれないな。」「そう…ですね……」「ふふ……泣くんじゃねぇよ。」「はい…そうですね……」「さてと…ここが病院か……」
私と瑠璃香さんは光ちゃんの遺体のそばに献花をした。光ちゃんの死に顔は穏やかだった。死んでいるとは思えなかった。彼女は永い永い夢を見ているのだと思った。彼女が永い夢から覚めたら幸せな人生を送ってほしい。いや、誰もが幸せな人生を送ってほしい。そう思う。
~自ら命を絶った二人。どちらも、自分の境遇に苦しめられていた。命を絶つことで苦しみから解放される。しかし、それと同時に悲しむ人もいる。自分を信じている人だっていたはずだった。しかし、その想いを裏切ってしまった。その気持ちは命が消えたとしても、消えることはないだろう。~
To be continue……
- Re: 幼き心のひと雫【一部変更あり】 ( No.27 )
- 日時: 2017/11/11 07:00
- 名前: 月兎 (ID: mextbE/J)
同じ頃…
(…葉子ちゃん……)
私は、影夜の陰謀を止めるために、【コトリバコ】の埋められている場所を探している。……見つかりそうにもないけれど。でも、絶対に見つけてやりたかった。もう誰も怪異の犠牲にはなってほしくなかったから。……………ごめんね……葉子ちゃん……
当初、影夜は私に葉子ちゃんを殺せ、と命じた。私はその通りにした。けれど、殺すことができなかった。その理由は、影夜の言っていた通り私の心に[迷い]があったからだ。
…………違う。
そんなんじゃない。
本当は、最初から殺そうだなんて考えは持っていなかった。あの時だって葉子ちゃんを殺さないと心に誓っていた。しかし、突然魔が差した。葉子ちゃんを殺せば、呪いから解放されると思った。そして………。そして突き落としてしまった……私はずっとその事を後悔していた。そして、あるとき決断した。今度こそ、葉子ちゃんを守ってみせるって……この異変の元凶である影夜を絶対に倒すって……
別の場所では……
「ここが噂の学校ね……でも案外綺麗じゃない……」
私の名は神崎 桜(かんざき さくら)。とある神社で巫女をしている。これから、噂の学校で心霊検証をするところだ。そして、悪霊たちを退治する。それが私の任務だ。
「まずは……【赤い服の女】ね…」
見つけるのには、時間が必要だ。しかし、面倒くさい。それが私の本音だ。
でも、案外簡単に見つかった。………退治するのは面倒。それが私の本音だ。
いやいや、巫女たる者がそんなことを言っていいはずがない。
私は大きく息を吸った。なぜかって?それはもちろん、幽霊退治の呪文を言うためだから……
レナクナイヨイレ レナクナイヨウョリクア イナデハココハョシバキベルイノエマオ レサエキヨイレ
『悪霊退散!!』
「………ふぅ…」
私は悪霊を退治することに何の躊躇いも持っていない。悪さをする霊を退治して何が悪い。…………………そうだよね?椛……
つづく……
- Re: 幼き心のひと雫【一部変更あり】 ( No.28 )
- 日時: 2017/11/11 07:05
- 名前: 月兎 (ID: mextbE/J)
私は星空小学校へと向かっている。学校では怪華ちゃんが待っている。………胸騒ぎがした。
『…影異怪華って子…知ってる?』
『はい…』
『友達?』
『はい…』
『殺されかけた?』
『……はい…』
『憎んでる?』
『いえ……』
『…殺そうと思ったらいつでも殺せる?』
『……いえ…』
『……さっき彼女に会って話を聞いてきたんだけど、今回の件…反省しているみたいよ?』
『…そうですか……』
『彼女が言ってたわ。“影夜には気をつけて”って。この意味分かる?』
『……命には気をつけろ、って事ですか…?』
『そゆこと』
『……………。』
『じゃあね〜』
『………………』
怪華ちゃんは……もうすぐいなくなってしまうかもしれない……
そんな気がした。あの時、あの女性は私に質問をしていた。あの女性は私が怪華ちゃんに対して恨みを持っていない事を確認した。………消される……怪華ちゃんが退治されてしまう……そんな気がした。
〜数週間前……
「……なるほどな…」「はい…」「怪華っていうやつは、………お前を庇っていたのかもな……」「……え?」「よく考えてみろ……あいつは影夜っていうやつからお前を救い出したかったんだろ?」「…はい……」「お前を突き落として、“死んだ”と思わせたかったんだよ……あいつは……」「……なっ!?」「…友達のくせに……友達の気持ちも分からないのか……お前は…」「……すみません…」「謝るならあいつに謝れ。………知ってるか?葉子。」「…何がですか?」「幽霊っていうのはな、“思い”がなくなると成仏してしまうんだ……」「…え!?じゃあ怪華ちゃんは!?」「…あいつを呪いから解放できればの話だがな………。“思い”がなくなるとなぜ成仏するのか分かるか?」「…この世に思い残すものがなくなったからですか?」「ああ……生きている人間も同じ事だがな……」「………。そういう事言わないでくださいよ……」「………その巫女はお前とあいつの事を知っていたのか?」「……はい…」「……今のうちにあいつに会って伝えたい事を全て伝えろ。」「……どうしてですか?」「……あの巫女に消されるから………」「……え…」「……今の言葉は真実だ。……真っ直ぐに受け止めろ。」「……………………そん…………な…………」
あの時、瑠璃香さんに告げられた真実は、真っ直ぐに受け止める事ができなかった。受け止めたくなかった。けれど、受け止めることにした。これ以上逃げてはいけないと思った。
(行かないで……怪華ちゃん……置いて行かないで……怪華ちゃん……)
一方……
「どうして……こんな所に……」
私は勘違いをしていた。………いや、この学校のみんなが勘違いをしていた。何年か前にある生徒がこの地に“タイムカプセル”を埋めた。………何者かは分からないが、あの“呪われし箱”を勝手に持ち出したらしい。そうでなければ、この学校に埋められているはずがない。……こんなことばかり気にしていたら、きりがない。早くこの箱を取り出し……
「そこで何をしているの?」
「なっ!?」
そこには、確かに影夜……細川桐子がいた。
「ふふふ…………久しぶりね、小野桐子………」
つづく……
- Re: 幼き心のひと雫【一部変更あり】 ( No.29 )
- 日時: 2017/11/22 18:40
- 名前: 月兎 (ID: B4StDirx)
「……………」
「…瑠璃香?」
「………………」
「生きてる?」
「…………………」
「るーりーか!!」
「……千香…」
「なぁに?」
「真面目に聞いてくれる?」
「…………うん…」
「……私…………もうすぐで死ぬかも……」
「………………………………………………え?」
「“例の件”の事なんだけどさ………」
「……うん………」
「どうやら私だけでは手に負えないみたいなんだ……」
「……………うん…」
「だからね…………私、今回の異変の元凶に殺されるかもしれないんだ………」
「…………え?」
「………だから、千香に最後に伝えたいんだ……………。ありがとう。」
「……………………………」
「……千香?」
「……ッ!!………っざけんじゃないわよ!!私はね、瑠璃香のためだと思って今まで馬鹿明るく接してきたのに……母親を亡くして悲しむあんたを元気づけようとしてるのに………!!それじゃあ無意味じゃない!!何?あんたは今までの私の親切心を無駄にするの??あんたは………あんたは私を何だと思ってるの??」
「……千香………ごめん……」
私は、本気で怒った千香を初めて見た……
そうだ……千香は私を気遣ってくれていたんだ……
それに気づけていなかった私は本当に馬鹿だ……
ここまで生きてきて、何一つとして千香に感謝をしなかった……
今までの時間は何だったのだろう……
千香はその場に泣き崩れた。大粒の涙と千香の悲壮の叫びは、私の心に目には見えない何かを問いかけていた。けれど、私はその問いに気づけなかった。なぜかって?
………………。
……………。
だって分かるわけないよ……そんなもの…………。
そう、大切なモノを失って初めて分かるんだもの………。
ごめんね?千香…………
ふふ……本当に私って馬鹿だな…………。
……………
さようなら………千香………。
つづく……
- Re: 幼き心のひと ( No.30 )
- 日時: 2017/11/24 14:29
- 名前: 月兎 (ID: S0MI/6xp)
「どう………して…………」
「……なぜ驚くの?私たち“友達”じゃない。」
「…………………」
「ふふ……」
許せない……許せるはずがない……葉子ちゃんを……みんなを苦しめた影夜を…………。
「なぜ何も言わないの?」
「……ッ」
「?」
「……馬鹿言わないで!!あんたなんかっ……あんたなんか“友達”なんかじゃないわよ!!みんなを苦しめたあんたなんか味方なわけないでしょっ!!」
「……へぇ………この私に向かってそんなこと言うんだ……ふふ……私を消したいなら消せばいいじゃない……でも、そんなことをしたらあなただって消えるのよ?」
「別に…私なんかどうなったっていい……それでみんながあんたの魔の手から救われるのなら………」
「……………」
「もう、あんたなんかに振り回される私じゃない。そうよ……私はみんなを守るのよ……」
「……ふふっ…。……面白い事を言うのね……でもそうやって今まで何人も殺してきたじゃない……」
「…………………−ざけるな。」
「……え?」
「ふざけるな!!もう変わったのよ……今までの私から変わったのよ……それなのに………。それなのに!!あんたは何も変わらない……!!あんたは人が死んでどうも思わないの??」
「…思わないわ……私はただ仕返しをしているだけよ……」
「そんなこと言ったって……あんたのせいで死んだ人は関係ないでしょ……!!」
「……私は全てが憎いの………私を見捨てたこの世の全てが憎いの……あなたなんかに私の気持ちが分かるわけないでしょ……」
「………いいえ、そんなことないわ……私にだってあんたの気持ちが分かるわ……」
「……………なぜそこまで言うの?そこまでして私を悪夢から救い出したいの?」
「………本当はただみんなに愛してもらいたかっただけでしょう?本当は…こんな事をするつもりはなかったんでしょう?」
「…っ!?」
「……寂しかったんだね……もっと友達が欲しかったんだね……そうでしょう?」
「どうして……そんなこと分かるの?」
「……顔が泣いてる………」
「……え…」
「うん…」
私は怪華に言われた通り、頬に触れた。
すると、とても熱い感触に思わず手を引っ込めてしまった。
「……………っ!!」
………目の前にある怪華の顔を見ていると、なんだか懐かしい感じがした。………そうだ。忘れていただけなんだ……『人を愛する』という感情は私にもあったんだ………
「………ありがとう…」
「……………あなたがこの世に生きている全ての人間を愛せないのならば、私があなたを愛してあげるわ………」
「……………愛…………する?」
「………うん…」
「…ふふ………」
私の名前は細川桐子。早くにして電車にひかれて死んでしまった。私は早く天国に行くべきだと思ったのに、なぜか行けなかった。その原因が、あの呪いのせいだと知ったとき、私は悔しくなった。会社が悪い、家族が悪い、…………そして………私を最悪な運命に導いたこの世が悪い……そう思うようになってしまった………………けれど、だからと言って人の命を奪う必要性は全くなかった…………ふふ……私って……なんて醜いんだろう…………良かった……この世にバイバイする前に自分の罪に気づけて…………。教えてくれてありがとう……小野桐子……。
To be continue……
- Re: 幼き心のひと雫 ( No.31 )
- 日時: 2017/12/07 20:03
- 名前: 月兎 (ID: osQJhSZL)
「はぁっ…はぁっ………」
(ここに……。この星空小学校に怪華ちゃんはいる……!!急いで見つけなきゃ……!!)
………とてつもない霊気を感じる…。今この学校に入れば、私の身は危険にさらされるだろう。でも、そんな事どうだっていい。とにかく、一刻も早く怪華ちゃんを見つけ出したかった。
今、学校は臨時休校になっている。……なぜかって?……だって…学校の地中から人骨が見つかったんだもの……その骨はこの学校で起きた殺人事件の被害者の男の子のものらしい……しかも、その男の子は亡くなる前はちょうど私の席らしくて……。でも、それ以外にもいくつかの事件がこの学校では起こっているらしい。………だから、この学校にいる地縛霊を成仏させるために、今この学校には幽霊退治の巫女が来ているはず……。……本当ならば、私はあの巫女を味方すべきだ。……でも…そんなことできない…できるわけない……だって……そんなことしたら怪華ちゃんまで……退治されちゃう……
……もう何も思い残すことなどない…怪華ちゃんを救うためなら……!
つづく……
- Re: 幼き心のひと雫 ( No.32 )
- 日時: 2017/12/07 20:04
- 名前: 月兎 (ID: osQJhSZL)
私の親友、千香は病気で亡くなった。
何の予兆もなく……
私はその事を知った時、どんなに悲しかったか……
つい最近まで見ていた千香の笑顔を見ることは二度とない。
伝えたい事だってまだたくさんあったのに……
もう二度と伝えることはできない……
辛かった……
苦しかった……
二人で遊んだ事も、けんかした事も、泣いた事も、笑った事も………
そのような想い出は夢だったのだろうか……
ううん、そんなことない……
確かにあった…千香と共に紡いだ歴史は確かにそこにある……
……そうか…千香は死んでなんかいない……
…千香は“歴史”の中で生き続けているんだ……
………そうだよね?………千香……
…最後にもう一つ………
…ありがとう………そして…
“さようなら”
つづく……
- Re: 幼き心のひと雫【一部変更あり】 ( No.33 )
- 日時: 2017/12/14 19:22
- 名前: 月兎 (ID: atRzAmQi)
「……ありがとう…」
「……こちらこそ…」
私は、影異怪華……いや、小野桐子に大切な何かを思い出させてくれた。……私は未熟だった。この素晴らしき世界を憎んではいけない事を知らなかった。
「私の本来居るべき場所に行きたい……。でも……」
「箱の呪いがあるから行けない、でしょ?」
「…うん……」
「…………」
『その必要はないわ』
そのはっきりとした声に、私たちは思わず声の方向へ顔を向けた。……けれども、その声の正体はどうも私たちに敵意を向けているようだった…
「…ふふ……こんにちは…」
その姿は、巫女装束で、女性にしては背が高かった。存在的に言えば、どうやら私たちとは相性が合わないらしい。
「はじめまして……私の名は……」
私たちは声の正体に驚きを感じるばかりで、声を出すことができなかった。
「神崎 桜、巫女をやっているわ……」
………一つ忘れていた事がある…………
……葉子ちゃんに最期の別れをしなければ……
それまで成仏するわけにはいかない……
一方その頃……
(…霊気がすごい……)
私は、学校に入り、怪華ちゃんを探している。でも、なかなか見つからない。どうしよう……そういえば……怪華ちゃんは学校で何をしてるんだっけ…?…………。
『そこで何をしているの?』
……どこかで聞いたことのある声がした。
『……ふふ…大丈夫よ、私はあなたの味方だから……』
「……誰…ですか?」
『…みんなからは、こう言われているわ……。【赤い服の女】って……』
……確かにその声は、あの時【キリコさん】から助けてくれた女先生の声だった。
「先生……」
『もう一度聞くわ…。そこで何をしているの?』
「……怪華ちゃんを探しに来ました…。」
『へぇ……。あの子なら、学校の校庭で探し物をしているわ。何を探しているのかは分からないけれど……』
「…はい!分かりました……!!」
『…一つ忠告しておくわ……。この学校で巫女が幽霊退治をしているわ…。』
「え……じゃあ先生は……」
『私は平気よ。あの巫女、気合だけはあったのだけれど……。地縛霊はあのやり方だと効かないのよ……。』
「……え?」
『…………はやく行きなさい』
「………え?」
姿は見えないけれど、その凜とした声に私は圧倒されて、押されるように外へと出て行った。
「悪霊退散!!」
「くっ………!」
私と影夜は、巫女によって唱えられた言葉によって、体から力が抜けていくのを感じた。
でも、まだ……まだ終われない。葉子ちゃんに今までの事を謝罪するまでは……!!
「知ってる?あなた達……。そのままもがけば、もがくほど……苦しい思いをするだけなのよ?だから楽にしなさい?」
「くっ………まだ……まだ……!!まだ終われない!!終われるわけない!!」
「ふふ…そうなんだ……じゃあそうすればいいじゃない……そのままもがき苦しんで……あの世に行けばいいのよ……」
「……ッ!!私は……!!私たちは苦しみたくてこの世にいたんじゃない!!私はっ……!私は幸せを求めてこの世に生きてきただけなのっ!!」
「……でも、あなたは怪異の犠牲になったんでしょ?それでも幸せだったというの?」
「………その事を私の親友が教えてくれた……。私が忘れかけていた大切なものを思い出させてくれた……私は一つの家に生まれた。両親はとても可愛がってくれた。学校にも行った。……途中で死んじゃったけど……。でも、だからと言って、私の今までの想い出が消えてしまったわけではない……自分自身でそれを隠してしまっていただけ……その事を私の親友が教えてくれた……でも、今まで紡いできた“幸せ”は消えてしまった……そう、………。あんたのせいで……!!!」
「………なっ!?私があなたの幸せを踏みにじった!?ふざけるんじゃないわよ!!」
「……………。」
時間は稼いだつもり……でも、一向に来る気配がない……もう……体がもたない……
「ふふ……もう無理なようね……。じゃあ私はそろそろ帰るわね……」
そう言って、巫女は去って行った。
『怪……華……ちゃん…?…影夜……さん…?』
……やっと来てくれた…私の大親友の葉子ちゃんが……でも…ちょっと……遅かったかな…?
「大……丈夫…?」
「来て……くれたんだね…」
「当たり……前…でしょ…?」
目の前にある葉子ちゃんの顔は、涙で濡れていた。その表情は、嬉しがっているようで、哀しがっているようだった……。
「ごめん…ね……?葉……子…ちゃん……」
「ううん……そんなこと……どうだっていい……怪華…ちゃんに……会える……だけで…私…幸せ……だから……」
「あり……がとう……葉子…ちゃん……」
「ありが…とう……怪……華…ちゃん……」
「どう……いた…しま……し…て……」
「…どう……いた…しまして……」
二人は互いに泣きあった。目から血の涙が出るほどに……。隣にいた影夜は、幸せそうに、涙ぐんでいた。けれど一緒にいられる時間はほんの少し。もう、怪華と影夜は旅立ってしまわねばならない。これまで行ってきた事に対して、地獄で懺悔しなければならない。そして、来世で同じ過ちを決して繰り返さぬように、この惨劇を覚えておかねばならない。
「怪……華…ちゃん……?……体…が……」
「………大丈……夫…だよ……葉子……ちゃん……たとえ……私が……いなく……なっ…ても……この世……から……消え去ったと……して……も……来世で……会える……はず……だか……ら……」
「うん……そう…だね……」
「……泣かないで?……葉子ちゃんが……泣いたら……私……安心して……旅立てないから……」
「………分かってる……。わかってる……でも……わたし……わたし……!かいかちゃんが……いなくなったら……わたし………」
「………お願いだから……泣かないで……?」
「いやだ……いやだ…………」
「……葉子ちゃん………」
時間がたっていくうちに、二人の体は次第に薄くなっていき、ついには後ろが透けて見えるようになってしまった。
「いかないで……いかないで………かいかちゃん!!」
「……葉子ちゃん」
「うぅ……ひっく…!!がいがぢゃん!!いがないで!!」
「……サヨウナラ……ヨウコチャン……」
「がいがぢゃん!!」
葉子が叫ぶと同時に二人の姿は消えてしまった。
「葉子、一体何をして……」
「うわぁぁん!!るりがさん!!」
「どうしたの?大丈夫?」
葉子は悲しみのあまり、瑠璃香に抱きついた。瑠璃香は、困惑の表情を浮かべていた。けれど瑠璃香は、すぐに状況を察知し、葉子を慰めてやった。
「……葉子……。…辛かったね……。でも、よくここまで頑張ったと思う……。葉子、知ってる?人間はいつかは旅立たなければならない
、大切な人から去ってしまわねばならないんだ……今、葉子が体験したこともこの中の一つなんだ……だから……どんなに辛くて、悲しくても……受け入れなければならないんだ……。……葉子……お願いだから……泣かないで……。前にも言ったでしょ?……葉子がいつまでも悲しんでいると……あの二人は安心して旅立てない……だから……泣くんじゃない……。それに……まだ私がいる……。……分かったら、……もう泣くのはやめろ。」
「瑠璃香……さん……。」
「……………。」
~葉子を襲った突然の悲劇…。葉子は今まで何度も何度も挫折を味わった。けれども、今回の悲劇はこれまでとは比べものにならないほど、大きな挫折だった。しかし、そこで終わってはいけない。この挫折を乗り越えることが大切だ。この先、葉子はどのようにしてこの挫折を乗り越えていくのだろうか~
To be continue…
- Re: 幼き心のひと雫 ( No.34 )
- 日時: 2018/05/08 22:33
- 名前: 月兎 (ID: pFXOI/OC)
「……そんなことがあったのね……」
「はい……そうなんです……」
「……大丈夫?」
「…はい…まあ…そうですね……」
「……………彼女達の分まであなたが生きなさい。」
「……分かりました。」
「……………。」
「あなた……私がなぜ死んだか知ってる?」
「え……事故じゃないんですか?」
「……呪われてたんだと思うの」
「………え?」
「生前、私はこの星空小学校で起こる不可解な事件についていろいろと調べていたの。そしたら、不可解な事件についてまとめている資料を見つけたの。でも、その時、妙な視線を感じて……。けれど、これ以上うちの生徒が犠牲になるのもいけないと思って、資料を眺めたの。………その瞬間、私は後頭部を殴られて、意識を失ったの。……気づいたら私は保健室のベッドに横になっていたわ。……結局資料を読む事はできなかった……。……それ以降、私の身に妙な事ばかり起こるようになったの……私はその事をずっと黙っていたのだけれど、………気づいた時には死んでいたわ……」
「……じゃあ…先生を殺したはんに「そういう訳ではないの。絶対に……絶対に、犯“人”なんていないわ……」
「………じゃあ一体誰が先生を…」
「……あなたにお願いがあるの。……旧校舎の北側にある図書室の奥にある資料を調べてほしいの……きっと私の見た資料があるはずよ……」
「…分かりました……」
「……………」
続く……
- Re: 幼き心のひと雫 ( No.35 )
- 日時: 2018/05/08 22:37
- 名前: 月兎 (ID: pFXOI/OC)
私は、先生の言った場所までやって来た。しかし、例の資料はなかなか見つからず、途方に暮れていた。
(本当にここで合ってるのかな……)
『お姉ちゃん、何してるの?』
「えっ?」
私が振り向くと、小学校1年生くらいの男の子が立っていた。
「何してるって……ちょっと探し物を……」
「………遊ぼ」
「え?」
「遊ぼ」
「まぁ……いいけど……」
「それじゃあ1問目。ここ、ど〜こだ」
「…どこって……図書室?」
「正解。」
「次に2問目。ここは何小学校?」
「……星空小学校」
「当たり。」
「第3問目。ぼく、何歳に見える?」
「え……6、7歳?」
「大正解。」
「さて4問目。ぼくみたいな“人”に友達できると思う?」
「……うん…」
「フフ……セいかイ」
(………え……)
「ゴモンメ。じゃア、きミガトモダチになっテくれルの?」
(………嫌な予感がする……)
「さァ……はヤク……」
「……申し訳ないけど、断るから……」
「……………ククク……そうナンダ……。……ていうのは嘘だよ?お姉ちゃん、騙されたね!」
「……え?」
「じゃあね!バイバイ!!」
「……………」
そう言って男の子は去って行った。………あの男の子、どこかで見たような……ま……いっか。
私は謎の男の子の難題(?)を答えた。……しかし、本来の目的はそうではない。資料を探しにやって来たのだ。……………本当にあるの?
私は懸命に資料を探したが、見つからなかった。
(うーん……一体どうすれば……)
『こんにちは。』
背後から今度は女性の声が聞こえた。
『そのまま振り向かずに聞きなさい。』
「……はい…」
『貴方、この学校から逃げなさい。』
「……はい?」
『理由は後で話すから……今はとにかく逃げなさい。』
「…今すぐ……ですか?」
『ええ……』
「……振り向いていいですか?」
『……10秒後に』
「………はい」
私は、何が何だか分からなくなった。しかし、今の女性の声は明らかにあの巫女の声だ。……やっぱりあの人は私に味方してくれていたのか……
私は、巫女が言ったように10秒後に振り向いて急いで学校から出て行った。
第三章へつづく…