ダーク・ファンタジー小説
- Re: 危機を免れた一人の少年の物語 【参照200に感謝!】 ( No.21 )
- 日時: 2016/10/16 18:17
- 名前: ブルーオーガー (ID: o4cexdZf)
俺は目覚ましの音を聞き、目が覚めた。
ベットから起き上がり、俺の部屋の唯一のカーテンを開けた。
眩しい朝日を浴び、思わず目を細めた。
しばらく朝日を眺め、一階へと向かった。
階段を下り、リビングの扉を開ける。リビングには朝食が置いてあるだけで、誰もいなかった。そのリビングからは自分の足音しか聞こえなかった。
誰もいないリビングに激しい違和感を覚えた。いつもの楽しげな会話も無く、いつものドタバタと騒がしい音もなかった。
今日のリビングは静寂に包まれていた。
椅子に座り、テーブルに並んでいる料理を食べ始めた。
俺はこの時、何とも言えない謎の寂寥に襲われた。
「………………」
今までの楽しかった思い出が浮かんできた。
笑えて食べれなくなるぐらい面白かったお父さんのツッコミ、俺のつまらないギャグに笑ってくれた姉、俺が「美味しい」と言ったらどんどん料理を作ってくれたお母さん…………。
急に胸が苦しくなった。
涙を流しそうになったが、なんとか堪える。
—もしかしたら、もうみんなは洗脳されてしまったんだろうか??
俺はそう思った。
いつもならお母さんは家事をし、姉は大学の準備をし、お父さんは仕事の準備をしていた。
だが、今は俺一人しかいなかった。
今日は火曜日—しかも休日ではなかったはずだ。時間も七時十五分と遅いわけでも早いわけでもなかった。みんなが起きれなかった—というのも信じがたい。
かといって、見に行くのも抵抗があった。
今まで気がつかなかったが俺の周りを見ると、朝食は俺一人分しか置いてなかった。
俺だけが仲間外れのように思えた。
胸が鎖で締め付けられたようにさらに苦しくなった。
これ以上考えると、悲しさのあまり涙を流しそうだった。自分らしくない姿は、誰にも見られたくなかった。
急いで朝食を食べ終え、学校の準備をした。
今日必要な教科書を入れ、リュックのファスナーを閉じた。
飛び出すように家を出た。
この時、涙がこぼれ落ちた。歯を食いしばり必死に涙をこらえた。
泣いている姿を周りの人に見られないよう、下を向きながら走っていった。
家を出て数メートル走ると、スピードを緩めた。
頭を振って、今の気持ちを吐き捨てた。
—よしっ…………
そう心の中で唱えた。
涙を拭い、鼻水をすすった。
気持ちを改め、学校へと向かった。