ダーク・ファンタジー小説

Re: 危機を免れた一人の少年の物語 【参照200に感謝!】 ( No.22 )
日時: 2016/10/16 18:25
名前: ブルーオーガー (ID: o4cexdZf)

俺は学校に向かって、通学路を歩いてるところだった。
その途中で、

「ヒデキ君、おはよう」

そう声をかけて来たのはハルカだった。ハルカはクラスの中で、一、二番目を争うぐらい物静かな子だった。放課中も読書をしていて、話したことは少なかった。
俺は驚きを隠せなかった。
今までは、ハルカの方から話しかけてきたことはなかったはずだ。しかもいつもはボソボソと話していたが、今日の彼女ははっきりと話していた。

—怪しい…………

そう思いながらも、
「…おはよう……」
そう挨拶を返した。この時からなぜか緊張感を感じていた。この後の話を聞いたことに俺は後悔してしまった。
「ねえねえ…………」
「何?」
彼女の変わりように俺は戸惑っていた。立場が一瞬にして変わっていた。

「——NZUKSの基地ってどこか知ってる??」

体中が反応した。
俺は一瞬身震いをし、誰かに押さえられているように動けなくなってしまった。
「……何で…そんなこと聞くの!?」
ハルカを見つめながら、そう無理やり言葉を繋げた。
今の俺には、そうすることが精一杯だった。

—ドクンッ……ドクンッ……ドクンッ……

心臓の鼓動がはっきり聞こえた。
自分らしくないところを見られたくなく、必死に心を落ち着けた。
動揺していることは、誰が見ても分かりきったことだろう。だが、どうしても俺らしくないとこを見られたくなかった。
「えっ!?いや……知ってるのかなーと思ってね」
彼女の言葉は一つずつ心に突き刺さっていった。

—ヤバイ……………

俺は本気でそう思った。
このままだと、自分がおかしくなってしまいそうだった。
必死にゲームのことを考えた。だが、今の状況は変わることはなかった。
「NZUKSの基地はね…………」
俺は目を閉じ、気持ちを落ち着けようとした。
歯を食いしばり、全身に力が入った。

「——南島中学校の裏山を越えて、その先にある大きな薬局の地下が基地なんだって」

俺は話を聞き終えると、自分でもよくわからない悲鳴をあげて全速力で走っていった。

—ヤダ…………もう、思い出したくない………………

しばらく走っていくと、

「——この情報は覚えておいた方がいいと思うよ…………」

後ろから男の人の声が聞こえた。
ハルカはどうなった、と思い後ろを恐る恐る振り向くと、そこには誰の姿もなかった。
この道は一本道だ。途中で曲がるとこもなく、死角になるところも横に動けば見えるはずだが、誰一人見えなかった。なら、ハルカはどこにいったんだ??

全身が凍りつくような恐怖が体中を走った。

俺は恐怖と懸命に戦い、一本道を走っていった。