ダーク・ファンタジー小説

Re: 危機を免れた一人の少年の物語 【参照200に感謝!】 ( No.23 )
日時: 2016/10/16 18:34
名前: ブルーオーガー (ID: o4cexdZf)

俺は懸命に走り続け、足が疲れてきた頃に学校に着いた。
手を膝に当て、呼吸を落ち着けた。

—もうわけが分からない…………

俺は今日、数々の奇妙な出来事に直面していた。
今日の朝いつもと同じ時間に起き、リビングにいったら誰の姿もなかった。さらに登校中では、ハルカが話しかけてきたと思ったらNZUKSのことを教えてくれた。しかも、俺がその場から逃げ出して後ろを振り返ったら誰もいなかった。何があったんだ?俺は夢でも見ていたんだろうか?

汗が冷え、体中が寒くなっていた。
俺はあまりにも必死に走っていて気がつかなかったが、考えてみればそうとうな距離を走っていた。
ハルカと会ったのは、たしか横に俺がいつも買いに行っている自動販売機があったはずだ。ちなみに俺のお気に入りはブドウ味の炭酸水だ。自動販売機は家から百メートルぐらいにある。そして、家から学校までは一キロメートルぐらいはあったはずだ。そうなると九百メートルは走ったことになる。

自分の底力に驚いていた。これが自分が隠していた力なのか??

だが、学校に着くと疲れがどっとでてきた。
さすがにいざという時のための力だから、そうとう体力を使うんだろう。
しばらく立ち止まり、呼吸が落ち着いたところで下駄箱に向かった。
運動場では部活を頑張っているサッカー部員たちが見えた。必死にボールを追いかけて、時には転ぶ人も見えた。その中にユウジもいると思うが、遠くてどれがユウジかは分からなかった。
サッカー部から目線を逸らし、下駄箱へと向かった。

靴を上履きにかえ、階段へと進んでいった。
さきほどまでとは違い、俺は落ち着きを取り戻していた。
階段をいつものように上る。
階段を上り終え、教室へと向かった。
教室に入ると、驚きの光景が広がっていた。
その教室はいつもと違い、欠席の人が異常なほど多かったのだ。
クラスの三分の一ぐらいが休んでいるように見えた。その中にレイがいたことで、さらに不安が増した。俺は心当たりがあったが、何も言わないでおいた。

—きっと、言っても信じてくれないだろう…………

席に座り、教科書を机に入れた。リュックをロッカーにしまい、再度席に座った。

そして、ある生徒の席を眺めた。
それは、ハルカの席だ。通学路で会ったはずだが、今は席にいなかった。
そのことに、安堵した。
俺はあの時悟った。ハルカもきっと、洗脳された内の一人なんだろう。NZUKSの一人が操作して、俺に挑戦を求めてきたんだろう。そう考えていると、


「——その通りだ………………」


後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
とっさに振り向く。だが、当然誰の姿もなかった。
俺は後ろを見つめたまま、体が固まってしまった。
そう、この声はハルカのいた場所から逃げ、そのあとに聞こえてきた声をまったく同じだった。

—だが、何故俺の思ったことが分かったんだ??

俺は再び、全身が震えるほどの恐怖に襲われた。