ダーク・ファンタジー小説
- Re: 危機を免れた一人の少年の物語 ( No.57 )
- 日時: 2017/01/05 18:01
- 名前: ブルーオーガー (ID: o4cexdZf)
タカノリに引っ張られるままいつの間にか見覚えのある場所に着いた。
それは学校の裏山だ。中学校に入ったばかりでまだ幼かったときはよく虫取りをしに裏山に行ったものだ。この山は夏になるとセミがうるさく鳴き、上を見渡せば赫々たる太陽と濃緑にそまった葉っぱが生い茂っている。この山にいるだけでわくわくした覚えがある。
「ちょっと待ってろよ……よしっ」
裏山で何をするのかと思えば、タカノリは裏山の地面に大きい筒のようなものを刺し、それと同時に地下から大きな音が聞こえた。
「今日からここは僕たちの家だ。好きに使っていいからさあ中へ」
「これほんとに大丈夫か?」
「大丈夫だ。さあ早く中に。ほら、先行くぞ」
そう言ってタカノリは筒の中に入り、地面にぶち当たるかと思ったら無音のままタカノリの姿が消えた。
半信半疑で俺も筒の中に入る。
周りに何もない白い空間があると確認すると、俺の四方に灰色の壁が立ちふさがり目の前の壁が左右に開き始める。
目の前にはタカノリの姿があり、ソファーに寝転がりくつろいでいた。
「ようヒデキ、何も心配いらなかっただろ。さあ、ここならなんでもしていいぞ」
「………」
俺は何が起こったか理解できず、驚きをあらわにした。
「ヒデキ大丈夫か?」
「あ……まあ、大丈夫」
適当な言葉を飾った。
内心、大丈夫な状況ではなかった。
これが裏で研究されていたことの一部なのか?
これがもし兇悪なことに使われていたらと思うと今の警察や自衛隊で対抗できるのだろうか。この人たちがその技術を悪い方へ使わなくてよかったと安堵し、それと共に軽い恐怖を覚えた。
実際、タカノリ含むNZUKSは最先端の技術を悪用して人を洗脳させたのだが。しかし、当然ながらまだこの事実をヒデキは知らない。
「これもタカノリが作ったのか?」
頭が働かず、自分が混乱しているということを必死に誤魔化すことしかできなかった。
「ああ、そうだよ」
タカノリは笑顔で—拳を握りながらそう言った。
「でもあの筒を回収しないとほかの人も入ってきちゃうんじゃないの?ほんとに大丈夫なの?」
ほかの人という言葉に少し違和感を感じたが、訂正することでもないと思い風に流した。
「大丈夫さ。さっき地面の上にあった筒は地面の中に埋めたし、入口は閉じといたから」
「ならいいけど……」
少し不安を感じたが、タカノリの言葉を信じることにした。