ダーク・ファンタジー小説
- Re: 異常性癖者のキロク【リメイク版】 ( No.14 )
- 日時: 2016/04/02 20:07
- 名前: 紫音 (ID: HKLnqVHP)
EpisodeB 藍沢和音 Ⅰ
幼い頃から見続けてきたのは親に褒められる兄と姉の背中。
兄の梨音は小学生。成績は良い方らしい。
姉の奏音は私と同い年なのにまだ習っていない字を書くことが出来る。
双子なのに、兄妹なのに。私は自慢できることは足の速さしかない。
それでも、親は褒めてくれない。足の速さなんて親は求めてなかった。
「偉いわねー、奏音ちゃん。…それに比べて、和音は全然駄目ね」
いつも二人でいても奏音ばかり褒められる。
私にはいつも同じ言葉を言われる『全然駄目ね』って。
お母さんも、お父さんも。私の事を嫌っている。
本当は娘は1人居ればよかった。でも、まさか双子だとは思ってなかったらしい。
それに同じ顔、同じ身長。見た目は全部同じなのに中身は全然違う。
頭が良いけど足が遅い奏音。頭は悪いけど足が速い私。
足が遅くても頭が良いのを親は求めている。
私が馬鹿じゃ無かったら、皆私を愛してくれたのかな。
なんていつも考える。
・
「あぁ、もう!何が悪いのよ…!!!!」
お母さんがイライラしている。
この頃お父さんが全く帰ってこないことに関係あるのかな。
頭の悪い私には分からない。だからリー兄に聞いてみたの。
そしたら…
「…和音、お前にはまだ分からない方が良いよ。母さんにも聞いちゃダメだからね。絶対に」
いくら聞いてもそれ以上は教えてくれなかった。
お父さんが帰ってこないということは家にはお金が入らない。
センギョウシュフのお母さんは外で働いていないからお金は出る一方で入っては来ない。
それぐらいは私にもわかった。セツヤクしないといけない。ってことも。
食費を削るために、私の食事をいきなり出さなくなった。
「お母さん、なんで和音にご飯無いの?」
コテン、と首を傾げるノンちゃん。
ノンちゃんとリー兄の前にはいつもよりも量は少ないけどちゃんとご飯が置いてある。
「和音がね、要らないって言ったのよ。私の料理は食べてくないって」
言ってない…! そう、声を出そうと口を開いたらキッときつく睨まれ口を閉ざす。
「お母さん、出かけてくるからちゃんと食べてね。梨音は遅れないようにね。学校」
そう言い残し、家を出て行った母さん。
「和音、一緒にご飯食べよう?私の分けるよ」
ニコッと笑って分けてくれるノンちゃん。
「いいの?ノンちゃん」
「うん、良いよ!和音だけ食べれないなんてフコウヘイだもん」
本当に、いい姉を持ったな。私は。
・
「お腹すいたねー…和音」
「お母さん、はやく帰ってくるといいね、ノンちゃん」
保育園に通わせてもらっていない私達は平日の昼間も家にいる。
てっきりお昼までには帰ってくると思ったけどまだ帰っていない。
お母さんのセイカクテキに働ける場所を探してるとも思えない。
「お昼、どうする?」
「火使ったら危ないよね?」
私達の身長ではまだ届かないし火は危ないし。
「「お昼、我慢しよっか」」
二人の声がピッタリと重なり二人で笑いだす。
そのあとは水を飲んでお腹を満たした。
リー兄が帰ってきてご飯を作って貰おうと思ったけどリー兄は火を見ちゃうとコウフンしちゃうからご飯は作れない。
「母さんが帰ってくるまで我慢できるか?」
私達の頭を撫でながらそう聞いてくるリー兄。
「「我慢、出来る」」
またピッタリ重なる声。 それを聞き満足げに頷くリー兄。
別に食べなくたって大丈夫、多分だけど…。
- Re: 異常性癖者のキロク【リメイク版】 ( No.15 )
- 日時: 2016/04/03 06:22
- 名前: 紫音 (ID: HKLnqVHP)
EpisodeB 藍沢和音 Ⅱ
お母さんはその日の夜遅くに、お酒の匂いとヨウキな声と一緒に帰って来た。
「アハハハ…あー、飲んだ飲んだ」
子供部屋の戸をそっと開け、すぐ目の前にある廊下を見る。
そこには顔が赤くなっているお母さんの姿があった。
服は出かけたときよりもゴウカでアクセサリーまで付いていた。
「にしても激しかったなー、今日は。でも、気持ち良かったしいっかー」
私の存在に気づいていないのかヨウキにヘラヘラと笑いながらそう独り言を漏らしていた。
「いいよね、これぐらい。一人で【 変 な 子 供 た ち 】育ててるんだからね」
【 変 な 子 供 た ち 】
心に刺さる何かを感じた。辛い、でもナゼだおか涙は出ない。
「もう寝よう」
小さく呟いて戸を閉める。
そして川の字になるように敷かれた布団に入り、掛布団を頭まで被る。
【 変 な 子 供 た ち 】 【 変 な 子 供 た ち 】 【 変 な 子 供 た ち 】
お母さんの言った言葉が頭の中でリピートされる。
聞きたくない。そう思って耳を塞いでも、まだ頭の中でリピートされる。
耳を塞ぎ、布団の中で蹲る。
聞きたくなかった。あんな言葉。
・
「和音。起きろ、和音!」
あぁ、もう朝か。 昨日の夜見たお母さんの姿と、聞いたあの言葉のせいでよく眠れなかった。
「わーおーん!」
そう言いながら私の体を揺するのはリー兄だと思う。
「眠い……」
そう言いつつもこれ以上怒らせたくないからむくりと起き上がる。
「おはよぉ、リー兄ぃ…」
「はよ、和音」
眠さのあまり、語尾を伸ばしてしまう。
「あッ、和音起きたんだー!」
もうすでに着替えていたノンちゃんが私を見てニッコリ笑う。
「おはよ、和音」
その笑顔のまま、私にいう。
「おはよぉ、ノンちゃん…」
私も精一杯笑顔を作ってみる。
「お母さん帰ってきたよ! やっとご飯が食べれるね!」
「ぁ…帰ってきたんだ…お母さん…」
知らなかった。と呟くけど本当は知っている。
【 お母さん 】その単語を聞いた瞬間に昨日の言葉が再び思い出された。
【 変 な 子 供 た ち 】
それはきっと私達兄妹の事だろう。
リー兄は…ピロフィリア?っていう火を見てコウフンしちゃう人。
でも、ノンちゃんは別に変なところはない。私だってそう。
もしも、本当に、私達の事を言われてたら…
お母さんは私達のこと、嫌いなのかな。
私が嫌われているのは知っているけどリー兄やノンちゃんも嫌ってるのかな。
そんなことを考えながらリビングへ行く。
「おはよう、梨音。奏音」
いつものように薄汚れたキッチンに立っているお母さん。
ニコニコ笑いながら名前を呼んだのはノンちゃんとリー兄だけ。私の名前何て、呼んでない。
「おはよう。お母さん」
それにつられて笑うノンちゃん。 でも、いつもの笑いとちょっと違う。
言葉に上手く表せないけど、ナニかが違った。
「昨日は御免ねぇ。昼も夜もいなくって。今日も出掛けちゃうからお昼と夜分。ご飯作っとくね」
今日も出かけるんだ。
【 良 か っ た 】
普段だったら思わないことを、今では思ってしまっている、
昨日の夜聞いたお母さんの言葉。母さんの顔を見ると思い出して胸が苦しくなる。
一日中、そんな思いをするくらいならノンちゃんと留守番をしている方がまだいい。ずっと楽しいはず。
「じゃあ、お母さんはもう行くね。行ってきます」
ご飯を作り終えた母さんが大きなバックを持って家を出る。
今日もまた、夜に嫌な言葉を聞くことになるのかな。
- Re: 異常性癖者のキロク【リメイク版】 ( No.16 )
- 日時: 2016/04/03 07:44
- 名前: 紫音 (ID: HKLnqVHP)
EpisodeB 藍沢和音 Ⅲ
お母さんはまた、夜遅くに帰ってきた。
昨日と違うのはダレかと一緒にいるって言う事。
「だから!先にウワキしたのはあんたの方でしょ!?」
「違うと何度言ったらわかるんだッ、アレは仕事の関係で…」
「はぁ?カラダの関係の間違えじゃないの?」
久しぶりに聞く、お父さんの声。
リビングから少し離れた子供部屋まで聞こえる大きな声で怒鳴っている。
部屋をこっそりと出て、リビングを覗く。
お父さんはナニか紙を持っていた。
「もう本当にお前とはやっていけない。ココに、サインしろよ!」
「リコンしたら子供たちどうする気?私は嫌よ、あんな【 変な子達 】一人で育てるの!!」
また聞こえたあの言葉。 つぅーと、頬に涙が伝う。
カナシイ? 変な子って言われて。
私が泣いてるなんて事を知らないで怒鳴り合いは続く。
「彼奴らはお前が勝手に産んだ子供だろ!自分でどうにかしろ!!」
「産ませたのは誰よ、産ませたのは!」
耳を塞いでしゃがみ込む。
見たくない、聞きたくない。そう思って耳塞ぐ。
それでも声は聞こえてしまう。
少しすると、どん と大きな音がした。 人が倒れたときのような音が。
目を開いて、リビングの中を見る。
中には何か慌てているように見える父さんと…
頭からチを流しているお母さんが倒れていた。
「お、おい。生きてるよな、おい!」
お父さんが肩を掴んでガンガン揺らす。
いくら呼びかけても揺すっても、お母さんは目を開けない。
むしろいっぱい血が溢れ出している。
「おい、嘘だろ…」
お父さんの額からは汗が噴き出て、アセッテル様に見えた。
「クソッ…!」
急に立ち上がり、玄関の方へ走っていく父さんを見て、先回りをした。
正直、なんでこんなことをしたわからない。
玄関の方へ先回りをして、あとから来たお父さんの足に自分の足を引っ掛け、転ばせた。
本当に何がやりたかったのかわからない。
どん とさっきと同じ音を立ててお父さんが倒れる。
下駄箱の角に頭をぶつけてしまい、お母さんと同じように頭から血を流している。
死んじゃった? 起き上がらないのを見てそう思った。
「お父さん?」
いくら呼んでも目を覚まさない。
手を触るとどんどん冷たくなっていくのがわかる。
もう死んだんだ。馬鹿な頭で考え付いたのがそれだった。
死んだ、と思い込んだ後何でそう思ったのかわからないがナゼか美味しそうなニクに見えた。
何日もご飯を食べていないからそう見えたのかもしれない。
とっても美味しそうなご飯…。
気づいた時にはもう、キッチンから子供用の包丁を持って来て肉を切っていた。
切り込みを入れるたび、溢れ出す血を見て目眩が何度もした。
でも、それでも肉が食べたかった。
朝になるともう、お父さんもお母さんも骨だけになっっていた。
「おはよぉ、わお…」
目を擦りながらリビングにやってきたノンちゃん。
リビングにあるお母さん【 だ っ た も の 】を見て青ざめる。
「ねぇ、和音。その骨?って何…?」
青ざめた顔で小刻みに震えながら骨を指さす。
「こっちはおお母さんの骨。玄関の方にあるのが父さんの骨!」
ニコニコ笑いながらそう言うと、ノンちゃんは怯えたように私に聞いた。
「骨、ってことは、さ。肉の部分はどうなったの?」
「…肉の部分は…
【 私 が 食 べ ち ゃ っ た 】」
EpisodeB 藍沢和音_fin