ダーク・ファンタジー小説
- Re: 異常性癖者のキロク【リメイク版】 ( No.24 )
- 日時: 2016/04/24 07:46
- 名前: 紫音 (ID: HKLnqVHP)
EpisodeC 霙那 柚木 Ⅰ
いつものホームルームの時間。
「悲しいお知らせだが、みんな。落ち着いて聞いてくれ」
いつもふざけているようなあの、男性教師が珍しく真面目な顔で教卓に手を付き言ってくる。
いつも先生を茶化す男子たちも珍しく空気を読んでまっすぐ前を見て口を一文字に閉じている。
凄く重い空気が…重たい沈黙がこの教室にあった
その沈黙を破ったのも担任の真面目な声。
「昨日まで、この教室で一緒に勉強をしていたさ、榊が……」
榊が…と涙を流し、ハンカチで溢れだす涙を拭きとる担任の姿を見ながら私は続きの言葉を予想していた。
どうせ、悠樹がなんか変な事やらかして校長に呼び出されてそれをワザとらしく涙を流してるんだろうな。そんなことを思っていた。
前だって一回あった。 あれ?でもあの時は悠樹普通にホームルームに出てたな。
でも、今はいない。まぁ、どうせ遅刻なんだろうけど。
「榊、悠樹が……」
でも、そのわずか数秒後には私の【 予想 】と言う名の【 希望論 】は打ち砕かれた。
【 榊悠樹が自殺した 】
重たい沈黙が再び訪れる。
私の中では驚きと、悲しみと…色んな感情が混ざり合ってとっても複雑。
そもそもアノ悠樹が自殺なんかするわけないよ。彼奴にそんな勇気ない。
「この中に嘘だと思ってる奴もいるだろう。でも先に言っておく。本当だ、今日の朝保護者の方から連絡があったんだ
今朝、榊が起きてこないからって部屋を見たら首をつって死んでいたそうだ。それに、手首や首には切った痕もあったそうだ」
近くには血まみれのカッターナイフも…
そんな現場の詳しい情報を聞きたいんじゃない。
そもそもなに?馬鹿なの、悠樹は。
リスカやった上に首つりって馬鹿にもほどがあるでしょ!
リスカで死ねなかったから首でも吊ったの?彼奴は。
死んだ。という知らせを受けたその日はずっとそんな事ばっかり思っていてこんな事、考えて何ていなかった。
でも、ちょっと経った今ではもうそんな事は考えない。
考えてることって言えば…
【 死ぬ 】ってどんな感じなんだろうな。
それだけしか考えていない。
もう、あの出来事の痕から私の中で色々狂い始めていたのかもしれない。
- Re: 異常性癖者のキロク【 参照200突破感謝!! 】 ( No.25 )
- 日時: 2016/04/29 09:31
- 名前: 紫音 (ID: HKLnqVHP)
EpisodeC 霙那 柚葵 Ⅱ
悠樹が死んで、もう一週間が経とうとした頃。
「これ。悠樹から柚葵ちゃんへの最後の手紙」
遺品の整理をしていたら見つかったの。と渡されたのは赤黒いしみが点々としている白い封筒。
表には【 霙那柚葵以外見るべからず 】と書いてある悠樹が私に宛てた、最初で、最後の手紙。
【 柚葵へ。
トツゼン死んでおどろいた?おどろいた?そうか。おどろいたか。
そうだよなぁ。俺様が死んで幼なじみのお前がおどろかないわけないもんな。
あ、死んだことよりもむしろこの手紙に驚いちゃってるパターン?
まぁお前に出す初めての手紙だもんな。……最後でもあるけど。
で、本題に移ろうと思うが。心の準備は整ってるか?おどろきすぎて心臓止まらないようにな(笑)
俺がお前にこんなヘンな手紙を出したのは自殺……リスカの感想。
お前言ってたろ? リスカ一回でもいいからやってみたい。でも死んじゃったら嫌だって。
だから俺が試してやったよ。どうせ、今死んでも悔いはないからな。
結構痛いな。リスカって。いや、手首切る時点で痛いのはわかるけどな?
あれはおススメしないぜ?痛いのが嫌いなお前には耐えきれないと思う。
じ あ ろそ げ
ゃ なそ ろ んかい…だ
榊悠樹】
【 じゃあな そろそろ限界だ 】その文字は酷く乱れていて周りには赤黒いシミがやけに目立った。
きっとそれが悠樹が手首を切った後に書いた言葉なんだろう。…悠樹の、最期の言葉。
普通の人ならここで手紙を抱き締め故人の名を呼び、悲しみに浸るところだろう。
でも私は椅子に座り、足を組み、こう呟くだけ。
「へぇ、リスカって痛んだ。やっぱり」
- Re: 異常性癖者のキロク【 参照200突破感謝!! 】 ( No.26 )
- 日時: 2016/05/01 16:48
- 名前: 紫音 (ID: HKLnqVHP)
EpisodeC 霙那 柚葵 Ⅲ
悠樹からもらった手紙は布団に入って毎晩読み返している。
「俺様がって…死ぬ間際まで彼奴は俺様キャラを付き通したんだねぇ…」
あー、笑える笑える。そう言って一人静かに笑う。
暫く笑っていると笑い過ぎてなのか、悲しみなのか分からないけど薄っすらと涙か浮かんでくる。
「悠樹……何で死んだの?」
無意識のうちに私の唇から漏れだした弱々しい声。いくら聞いたって誰も答えてくれない質問。
いや、理由は試しただけって書いてあったけどね。でもなんとなく納得できない。
だれも答えてくれないから、自分で答える。我ながら寂しい人みたい。
…死んだら悠樹に会えるかな。って言う考えも浮かんできた。
もしも死ぬとしたらリスカとか、あと首つりとか…感電とかで死んでみたい!
でも死ねるのは【 1度だけ 】。
どんなに色々な死に方があったとしても人間が死ねるチャンスは【 1回 】その一回でどうやって死んでいくか考えるのが楽しい。
「絞首、斬首…電気、できるなら磔でも良いかもしれない」
キリストと同じ死に方で死んでいくのは良いかもしれない。
あとは釜茹でとか。火炙りとかも。
自分の死に方を考えていたらとってもわくわくしてきた。
コウフンしている。っていうのかな。
自分の死に方を考えて興奮する私って……
「【 異 常 】なのかなぁ?」
- Re: 異常性癖者のキロク【 参照200突破感謝!! 】 ( No.27 )
- 日時: 2016/05/03 20:36
- 名前: 紫音 (ID: HKLnqVHP)
EpisodeC 霙那 柚葵 Ⅳ
悠樹が死んでから、結構自分の【 死 】というものに関心を持ち出した私。
関心、というよりも…興味って言った方が良いかも。それと【 自分の死 】と言うよりも【 死 】事態に興味を持った。
_死ぬ間際ってどんな風なんだろ。
そもそもリスカって痛い。ってあったけど感電とかだったらどうだろ。
痛いのかな?一瞬で終わるのかな。 そんな事ばかりを何時間も、何日間も考え続けている。
でも未だに【 答え 】は出てこない。いくら考えてもわからない。
代わりに思いついたのは【 実際にやってみればわかるんじゃないか 】というコトだけ。
机に置いてある小さなカッターが目に入る。
ちょっとだけ、手首をほんのちょっと、切るだけ。ただそれだけ。
少し震えながらカッターへ手を伸ばして手に取る。
カチ…カチ…カチ…カチ
普段だったらすぐに刃が出せるけど手が震えて上手く刃を出すことができない。
適度な長さまで刃を出して、手首に当てる。
切ろう。そう決意した時に母さんに呼ばれてしまった。
「ちょっと出かけてくるからー、お留守番よろしくねー」
玄関から2階にある私の自室に向かってそう言っている声が耳に入る。
私もなるべく大きな声で、聞こえるように はーい、と適当に返事をする。
「もしも帰ってきて娘が死んでたらどんな反応するんだろう…部屋の中で手首を切って血で真っ赤になった娘の姿を」
そう呟いてから一つ、良い事を思いついた。
別に死の痛みを体験したいなら完全に【 死 】ななければいいんだ。
【 死ぬ手前__ギリギリを味わえばいいんだ 】
- Re: 異常性癖者のキロク【 参照200突破感謝!! 】 ( No.28 )
- 日時: 2016/05/03 20:32
- 名前: 紫音 (ID: HKLnqVHP)
EpisodeC 霙那柚葵 Ⅴ
首つり、リスカ、電気…自分で出来そうなものはある程度やってみた。
本当は飛び降りもやってみたいけど、それじゃあ本当に死んでしまうかもしれない。そんな思いがあって止めた。
自分の首にくっきりと付いた縄の痕。手首にはいくつものリスカの痕。
やっている時も興奮はしたがこういう【 痕 】を見るのもとっても興奮する。
【 自分の死 】というものに対してとても興奮している。
こんなのに興奮するのはおかしいのかな。ってそう思った時期もあった。
最初のうちは自分自身の事を【 異常 】だ。そう思っていた。
でも、今となってはこれが【 普通 】だと思っている。
私にとって【 自分の死 】はこの世の中のモノで最も興奮するモノ。
【 異常だと言われようが、誰にも理解されなくても、
私にとってこの世の中のモノで最も興奮するのは自分の死。それに代わりはない 】
だから、今日もまた。 【 死ぬギリギリ手前を味わうんだ 】
EpisodeC 霙那柚葵_fin