ダーク・ファンタジー小説
- Re: 青き蓮の提言:『或いは可能な七つの奇跡』 ( No.3 )
- 日時: 2016/08/27 10:11
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: 3YwmDpNV)
Note-1:『提言1,2——“離散結界”“空間転移”』
“凝集結界”はお前も知っているだろう。あの当時は私以外の誰も使えなかった技術だが、今これを見ているときなら、或いは数人の使い手がいるかもしれない。
だが、お前にそれをそのまま使わせることははっきり言って不可能だ。お前の魔法は離散の傾向があまりに強い。悪意ある力やそれによって生じた結果を退け、身を護る——その目的は同じなれど、達成への手段は私のやり方を模倣するわけにはいかない。
しかし、理論上確かなことが一つある。“離散結界”は害あるものを「吹き散らす」。風のような結界だ。私が使っていたそれのように、力を固めて強引に「弾き返す」、所謂一般的な結界のイメージとは違うことを覚えておくといい。物理的な干渉に無力であることも、肝に銘じておけ。
結界の座標指定の仕方は昔教えた通りだ。より洗練されたと言うならばそれを組み込むのも良かろう。
……
“空間転移”。
いきなり難易度が上がったと思うだろうが、お前ならば比較的容易にその原理を想像できるだろう。少なくとも、私よりも事を成すのは簡単な筈であろうし、やろうと思えばお前は何処にだって行ける。
存在を離散させ、力の残りで飛ばし、任意の地点で再構築する。主軸となるのはこの三つだ。肉体をそのままに飛ばすことも無論可能だが、魂は軽い方が制動しやすい。手加減の出来ないお前なら、尚更に身を軽くした方が安全だろう。
離散させるのは、お前ならば簡単だ。力だけを内に向け、後はいつもやっているようにやればいい。お前が気に掛けるべきは、着いた後に自身を取り戻せるかどうかだ。私の使っていた術式をお前に適用するのが一番容易かろうが、お前の場合もっと強化したものが必要になるかもしれない。
そして、忘れるな。空間転移の座標指定は難しい。お前を存在させる座標が他の固体存在の座標と重なってはいけない。無用な重複は双方の損壊を招く。慎重に見定めろ、それこそ刹那や須臾の単位で。どの瞬間に自身を再構築するか、タイミングをはかるための術式を昔教えたはずだ。
離散結界でも同じことが言えるが、座標指定は昔教えた通りで構わない。しかし、私の教えた座標指定の術式は精度が甘い。恐らく洗練されてもこの魔法のオーダーには適わないだろう。一直線に転移するのは避け、二段階転移を採用するのが賢明だと思う。
実験台に他人を巻き込むんじゃないぞ。
お前はひどく、冷淡なときがあるから。
++++++
【Author's Memo】
次から本編(tale)です。更新速度はまちまち。