ダーク・ファンタジー小説

Re: イル 序章「お前」3 ( No.3 )
日時: 2016/08/23 23:15
名前: 茶色のブロック (ID: Lr4vvNmv)

 料理というものにいまだ俺は慣れない。料理というか茶漬けを作るくらいは大して平気であるくらいで、もしも惜が野菜や肉や魚を切るものならリビングへ行っている。

 俺は料理というもので、例えるなら人肉をミキサーでぐちゃぐちゃにしているようにしか見えないのだ。肉団子はさっきの通り平気だが、過程を見れば食べられない。

「お兄ちゃんって、もう恋人とか作るような歳なのだから、好き嫌いはやめた方が良いと思うな」

 惜の顔が、どことなく悲しそうに見える。

「そう言われても、なんかトラウマみたいな感じがするんだよ。吐き気がしまくって喉に通らなくなるんだ」

「じゃあ、おにぎりは? 前に食べてなかったから」

「おにぎりも大丈夫だよ。けれど、具の入ったものは無理だね」

「もしかして……サンドイッチも無理なのかな」

「えっと、ハムマヨかチーズなら大丈夫だよ」

「卵は駄目かな……私の好きなサンドイッチなんだけれどね」

「ぐちゃぐちゃしたものは無理だよ」

「……」

「……」

「うん、わかった」

 そして、寂しそうに笑う。

「そうだよね、私の作ったものなんかいつも無視してたし、私が運んだものも無視してたし、私が全部嫌われてるせいで栄養失調になって、お母さんに言われたとおりとてもしつこくして虐めてたから、私は嫌われてて——ふわぁあぁ」

 俺には到底聞こえない小さな声で呟いていたと思ったら、いきなり大きな欠伸をした。両目の端から大きめの涙が流れ、惜はそれを両手で拭う。

「お兄ちゃん、眠い……」

「なら、早くに起こさずもう少し寝てたら良かったじゃないか」

「違いますぅ、お兄様が私の頭を撫でるからですよぅ!」

「いきなり喋り方変えられると、返事に困っちゃうな」

 お兄たんの次、お兄様にくらっと来たが耐える。お兄ちゃん、倒れてしまうじゃないか……。