ダーク・ファンタジー小説

Re: 殺人鬼さんと。【短編集】 ( No.2 )
日時: 2016/09/03 16:28
名前: 鏡杏 (ID: HKLnqVHP)

≪殺人鬼になった幼馴染≫

「わたしね、人殺しちゃったんだー」

子供のような口調、笑い方。 彼女は昔から何も変わっていない。
昔から、「人を殺したい」とかそういったことは言っていた。……でも、今のは普通に聞き捨てならない。
「人を殺した?」
僕がそう聞くと「うん!」と元気よく頷く僕の幼馴染の麻尋。
ふふふ、とどこか誇らしげに笑う。
「ニュースとかで騒いでるあの殺人事件!あれの犯人わたしだよー」
笑顔のままそういう麻尋。 昔から変わらない笑顔だけど、なんだか怖い。
「ま、麻尋がそんなことするわけないだろ、僕を騙そうとして…」
「死因は首を切られたことによる多量出血のショック死。他にも傷は全部で二十か所以上」
淡々と一定のトーンで遺体の様子を話していく麻尋。笑顔などもうなく、無表情で、一点を見ている。
「…ほ、ほんとに…麻尋、人、殺したのか…?」
「だーかーら!そう言ってるじゃん。信用してないの?酷いよ」
むぅ、と頬を膨らませて拗ねている姿を見るとなんだかほっとする。
「だとしても、なんで人なんて殺したの…」
僕の問いで、彼女は無表情に戻った。
「だって、殺したかったんだもん」
≪この世の男すべてを≫ そういたときに一気にトーンが下がった。
彼女と僕の間に、重たい空気が流れる。
「だからね、まず身近なとこから殺して行こう!って思って。だからまず父さんを殺しました」
さっきの無表情から一転してニコニコ笑顔の麻尋。
「でさ、わたしには男兄弟いないじゃん。それで一番身近な男って言ったらー」

死刑宣告を言い渡された気分だ。

気分、というか言い渡されたのか。死刑宣告を。

「水嶋 柚木くん。君だよ」

僕の最後に見たものは、にこにこと笑う幼馴染の麻尋とその手に持っているナイフだった。