ダーク・ファンタジー小説

Divine Force 第1章『始まりの鐘が鳴る時に』11 ( No.18 )
日時: 2017/03/12 13:14
名前: 葉桜 來夢 ◆hNFvVpTAsY (ID: q9MLk5x4)

「翔君っ!」
サリエルがあろうことか、翔君に攻撃を仕掛けた。
彼の身体はそのまま泉に吹き飛ばされ、激しい音を立てた。
水飛沫が私のところまで飛んでくる。
「哀れな子だね、そうだと思わない?君に関わる子は全員死ぬじゃあないか。
……もっとも、君はそれを気にしないタチだった筈だよね、フォーサイス」
「黙れ、次に口を開いたらお前の命は無いと思え」
「そんな旧式の武器で倒せると思って?」
サリエルがせせら笑う。
それが私の怒りを加速させた。
「君だけは許さない……絶対に!」
集中しろ、私。何に対して怒っているんだ。
フォーサイス家として、この組織を壊滅させるのが私の役目だ。
その為に利用できそうなものなら利用する。
死神と言われようと、裏切り者といわれようと、知った事ではない。
彼等が私に付いてこられなかっただけの話。
今回もそれと同じ、そうだろう?

私は迷いを断ち切る様に、銃を放った。

◆◆◆

不思議な感覚だった。
暖かい何かに包まれているような、そんな感覚だ。
確か俺、泉に沈んだんだっけか……。
それじゃあこれは、俺の夢なのか。
頬を思いっきり抓ってみることとしよう。
「いっ……てぇぇぇっ!」
痛かった。普通に痛かった。思いっきり抓ったのが仇となった。
だったらこれは夢じゃないのか。確かに妙に意識もはっきりしている。
ならば此処は一体どこなんだ……?

「我が精神空間へようこそ、人の子よ」
俺の頭に直接、誰かの声が響く。
気が付くと、謎の部屋に連れてこられていた。
さっきまで泉の底に沈んでいた筈だか、これは一体……?
俺が辺りをキョロキョロ見回していると、声が笑った。
「あーあー、そんなに怖がるな。取って喰ったりはしないぞ。
泉に沈んで我に会うとは、なんとも滅茶苦茶なやつじゃの……」
「俺をここに連れてきたのはアンタなのか?」
また声が響く。なんだか気持ち悪いな、これ。
自分の内部から声がするのはなんとも不気味だ。
「左用。我が助けなければ助からなかったであろうな」
「あ、ありがとうございます……?」
俺が訳の分からないまま感謝の言葉を述べると、声は嬉しそうに笑った。
「良いってことよ。お主とて、あの嬢の悲しむ顔は見たくないじゃろうが」
そうだ、ステラ。まだ森の中で戦っている筈だ。
早く行かなければ、こんな訳の分からない空間にいる暇はない。
「待て、人の子よ。お主に何が出来ると言うのだ」
「何が出来るか?そんなことをネチネチ考えてる場合かよ」
「ふん、この世界ではお主は無力に等しい……だがな」
声は間を置いて、こう言う。
「我と組めば、あの嬢の力になれるぞ」
「何だって?アンタ、何者なんだ……?」
俺のその問い掛けに、声は待ってましたと言わんばかりに答えた。
そして、信じられないようなことを口走った。
「よくぞ聞いてくれた、人の子よ。
我が名は不死鳥……お主に宿りし、『ディバインフォース』だ」

Divine Force 第1章『始まりの鐘が鳴る時に』12 ( No.19 )
日時: 2017/03/15 13:42
名前: 葉桜 來夢 ◆hNFvVpTAsY (ID: q9MLk5x4)

俺の、ディバインフォース……だと?
いや待て、一体この声は何を言っているんだ。
「ふはは、鳩が豆鉄砲喰らったような表情しとるのう。
……良かろ、少し具現化してやるから見ておくがよいぞ」
声がそう言うと、身体から何かがすうっ、と抜ける感触がした。
何だっていうんだ、こんなの……
「うおわっ!?」
どうやら俺は突然出現するものに過剰に反応してしまうらしい。
目の前に、俺の背丈の二分の一はある紅い鳥が出現していたのだ。
「中々いい反応だな、人の子。これが我の姿だ」
「アンタの……どっからどう見ても鳥じゃねぇか」
「なんじゃなんじゃ。擬人化とかそういうサービスは無いぞ。
さっきの嬢の獏を見ておったろうが」
なるほど、まあ俺もそれには薄々気付いてはいたが。
先程ステラが見せてくれたあれと同じ原理らしい。
いや擬人化なんてこれっぽっちも望んでないから誤解しないでいただきたい。
そんなの一昔前のコンテンツだろうが。
「そういう訳じゃ。我はお主の力。これで分かったろうが」
「いや待てよ、なんで俺がそんな力を授かったんだよ」
そうだ、それが謎だ。
俺の先祖にはスーパー超人なんてものはいない。
俺にそんな力が与えられるのがまず理解不能だ。
「お主は選ばれた」
「選……ばれただって?」
「その心の奥底で熱く燃える焔……我が選ぶにはそれで十分じゃ」
不死鳥は機嫌良さげに囀る。
「お主の身体から精神を抜き取った。いわば今のお主は仮死状態。
ここで我と手を組んで世界の救世主となるか、それとも泉で死ぬか。お主が選べ」
「おーおー。勝手に面倒臭いことやってくれてるじゃねぇか」
悪徳商法かよ。二択が酷すぎるぞ。
一つが死に直結なら一択じゃねぇか。
「我と契約を結ぶのなら、その前にある魔法陣に立て。お主の意識を肉体に戻す」
「それで、俺の命は助かるのか?」
「ふふふふっ、我は不死鳥じゃ。宇宙空間でもなんでもござれだ」
「そりゃあ有難いことだな」
「じゃあ、お主はどうするんじゃ?」

聞かなくても分かっているだろうが。
決まっているだろ、そんなことは最近から。
俺は魔法陣に足を進める。
不死鳥は俺の身体に引っ込んでしまった。
「世界も、悠那も、俺が救ってやるぜ。案外、楽しいかもしれないしな」

脳内で、笑い声が聞こえた。

「ふふっ、やはり面白い奴じゃな。ゆくぞ人の子!」

俺が魔法陣に立つと、室内が紅く輝き始める。
身体の奥底で、何か熱いものが疼くのを感じた。
俺に出来ることなら、何でもしてやろうじゃないか。
脳内に悠那とステラの顔が浮かんだ。

「……待ってろよ」

次の瞬間、俺の視界は真っ暗になった。

Divine Force 第1章『始まりの鐘が鳴る時に』13 ( No.20 )
日時: 2017/03/15 17:39
名前: 葉桜 來夢 ◆hNFvVpTAsY (ID: q9MLk5x4)

私は結構な窮地に立たされていた。
もうあと一時間で、入ってから一日が経とうとしている。
獏の力を使い過ぎた反動で、体はもうボロボロだった。
「腕が鈍ったかな、フォーサイス!昔の君はもっとキレキレだったよ!」
サリエルの放った銃弾が肩に当たる。
私は衝撃で地面に叩き付けられた。
「ふふ、世紀の時空犯罪一族もここで終わりかな?
妹もあんな状態だしねぇ……ずいぶん哀れなことだよ」
「ぐっ……」
なんて威力の銃を持っているんだ、コイツは……。
私のこれを旧式、と言っていたのはそういう事だったのか。
「お疲れ様、だね」

ここで、終わるのか。
親も居場所も何もかもをコイツらに奪われて。
何も取り返せないまま、終わるのか。
まだ、助けられていないものもあるというのに。
私がいなくなったら、リリーはどうなる。
ベッドの上で、石になるのを独りで待つのか。

それに。

私はすぐ側の泉を眺めた。
まだここには、翔君が沈んでいるというのに。

「さようなら、フォーサイス」

銃口がこちらに向けられた。
まだ、終われない。
死の宣告ならまだ時期尚早だ。
私には、成し遂げなくてはならない事がある。
最後の力を振り絞って、ゴーレムを動かす。
ここから動ければ十分だ。
距離を取れば、まだ銃弾は避けることができる。

「さっさと諦めればいいのに。往生際が悪いなぁ」
「まだ死ねない……守るべきものがあるんだ。私には」
「守るというのは強い者が言うものだよ、フォーサイス。
少なくとも今の君は弱くなってしまった。情に動かされる様な女ではなかったのに」
「翔君は……特別だ。私を信じようとしてくれた」
「それは罪人としての君を知らないから。そうでしょう?」
「違うな、私を君達から庇ってくれたような人は彼だけだったって事だ」

翔君は普通の人間だった。
魔法も謎の力も存在しない世界の住人だった。
それなのに彼は立ち向かったのだ。
自分を守る為ではなく、私を守る為に。
ならばそれには応えなければならない。

『ふふふっ、我が主も中々この嬢に好かれとるようじゃのう』

声がした。
それは紛れもなく、彼の声だった。
しかも脳内に直接流れ込んでくる。
まさか、翔君が……?
水飛沫を豪快に上げ、何かが泉から飛び出して来た。

「翔君……!?」
信じられない。
彼の背中からは羽が生え、両手には火を纏っている。
間違いない、彼に何者かが宿ったのだ。
紛れも無くディバインフォースを使役している状態だ。

『そこの銃娘。荒々しいかもしれんが、何せ時間が無い。殺らせてもらうぞ』
「ほほう、宣戦布告かい?さっき無様に泉に飛び込んだ人の台詞とは思えないねぇ」
『ぶはははは!焼き払ってくれるわ……!』

辺りに熱風が吹き荒れる。
余りの熱さに、私もサリエルでさえも近付けない。
彼女が放った銃弾も、一瞬にして溶けてしまった。
この強烈なパワー、そんなのを使っていたら翔君の身体が持たない。
しかも最悪なことに、彼の意識は感じられなかった。
「ま、待ってくれ!」
『ん……?』
私から止められるとは思っていなかったのか、翔君がこちらを見下ろした。
「君の力は強過ぎる。その体は耐えられないよ」
『ふん、我は不死鳥だ。この体が滅ぶ事はない』
不死鳥……?確かそれは……。
いや、今はこれを止めることに集中するんだ。
「コイツの命は私が貰う、だから止めてくれ」
『なぜ?身体は滅ばんのだぞ?』
「精神が滅ぶ事はある。主の意識が無くなったら、君も大変だろう」
『人の子の癖に、中々詳しいんじゃな……良かろ。コイツは元の場所に返すか』
熱風が更に激しくなる。
あまりの熱さと眩しさに、私は目を閉じた。
次に目を開けると、サリエルとヘリコプターが忽然と消えていた。
『ふん、我にかかればこんなもんかの……
もう長くここには居られないであろう。さっさと泉の水を汲め。
そしたら我が飛ぶ。ここからさっさと脱出するぞ』

何はともあれ、目的は達成されたのかな。
私はほっ、とため息を一つついた。

Divine Force 第1章『始まりの鐘が鳴る時に』14 ( No.21 )
日時: 2017/03/19 14:55
名前: 葉桜 來夢 ◆hNFvVpTAsY (ID: q9MLk5x4)

「……んっ?」
目を開けると、天井がこちらを見下ろしていた。
ここは、ステラの家、か……?
窓から風景を確認しようと、俺は身体を起こそうとした。
「痛ってぇっ!!」
なんだなんだこの激痛は。死ぬかと思ったぞ。
身体中が悲鳴を上げている。
体感で15度程しか起き上がれなかった。
「あっ……」
誰かの声がしたので俺が其方を向くと、少女がこちらを凝視していた。
本当に凝視という表現がしっくりくるのだ。
その、コアラが動いた!みたいな目で見られるのは恥ずかしいものがあるな。
「あっ、あの……お目覚めですかっ……」
見れば分かるだろうが、相手はいたいけな少女である。
ここは紳士澤村翔。丁寧な受け答えで男を見せろ!
「はっ、はひぃ」
なんでここで人見知りを発動してるんだよ!
妹以外の年下の子の相手が全般的に駄目なことを完全に忘れていた。
紳士の澤村翔君、惨敗である。
というか、この少女、今更気付いたが。
「あの君は、ステラの妹の……」
「そ、その節は大変お世話になりましたぁ!」
「はっ、はひぃ!……こちらこそぉ!」
我ながら酷い会話である。穴があったら埋まりたいレベルだ。
というか誰かさっさと俺を埋めてくれ。
何がこちらこそなのかは、自分でも正直良く分かっていない。
というか、リリーって敬語キャラだったっけか。
「あ、お姉ちゃん呼んできますねっ……!」
リリーはそう言って部屋から慌ただしく出て行ってしまった。
うん……。
改めて考えると、凄い萌えキャラみたいになっていたな。
もうちょっとマシな会話をしたかったが。
まあ、無事に帰ってこれたみたいだ、めでたしめでたし……か?

「翔君っ!」

ステラがドアを乱暴に開けて室内に入ってきた。
凄い形相である、どんなスピードで駆け付けてきたんだ。
「よ、良かった……目が覚めたんだね」
「見りゃ分かるだろうが。何があったんだよ」
「君が、ディバインフォースを使って、それで……」
心無しかとても動揺しているように見える。
目には涙まで浮かべている、やはり尋常では無い。
「大丈夫か?とりあえず落ち着け」
「本当に心配したんだよ、落ち着いてなんか……」
そういうといきなりステラは抱き着いてきた。
俺の身体に激痛と煩悩が突っ走る。
「いっ……ステラサン……?」
驚き過ぎて片言になってしまった。
「……君には、本当に申し訳ないことをしてしまった」
「どういう風の吹き回しなんだよ、って感じだが」
「分かっている。私は、私を信じてくれた君を信じられなかったんだ」
「あのさ」
「……何だい?翔君」
「俺はお前達の過去に何があったか知らない。だけどな」
知っている、俺はステラの心の中にある優しさを知っている。
それは俺に向けられたものではなかったが。
こいつの妹を思う力は、俺にひしひしと伝わった。

「俺に手伝えることがあったら、一緒にやらせてくれ」
そう言うと、ステラはくすっと笑った。
「……君って人は……本当にお人好しなんだね」
「そうか?自覚はないけどな」
「でも、ありがとう。今まで、タッグを組んだ人は沢山いたんだけれどね。
君のような人は初めてだよ、翔君。私達のことを考えてくれる人は、ね」
「……他人を思いやることができる人になりたいんだよ」
胸の中で、微かな古傷が疼いた。
あの日が俺をガラっと変えてしまった、そんな出来事だ。
……いや、これは話すと長くなってしまうな。
きっと俺がステラに話す日が来るだろう。またその時。
「それが君の目指す生き方なら、君は十分それを達成してるよ」
「そう言って貰えるなら、幸いだぜ」
「分かった。私達も、君の妹捜しには協力するつもりだ。
君の体力が回復したら、旅の準備をするよ」
「旅に出るのか?」
「この世界には、悠那さんの反応はなかった。
別の世界のものが紛れ込むと、その世界は微かに歪む」
「……その歪みが無かったわけだな?」
「本当に君の理解力には惚れ惚れするね。前世は学者かなんかかい?」
「これぐらい説明されれば理解できるだろ。
いや待て、この世界ってことは……まさか」
俺が知っているのは、俺の世界とステラの世界だけだ。
だがさっきから聞いていると、俺の世界にはもちろん、この世界にも悠那はいないようだ。
つまり、つまりだぞ。ここから導き出される結論は……。

「そうだよ。私達は今から、世界を巡る」

Divine Force 第1章『始まりの鐘が鳴る時に』15 ( No.22 )
日時: 2017/03/20 17:46
名前: 葉桜 來夢 ◆hNFvVpTAsY (ID: q9MLk5x4)

さて、翌日早朝。
時空警察のごたごたもあってか、俺達はかなり白い目で見られているらしい。
ステラの提案で、早朝に町を後にすることにした。
あんなに痛んでいた俺の身体も、リリーと精霊の看病のおかげで見事に回復した。
本当そのディバインフォース、有能だな……。
急ぐ必要がある俺としては有難い限りである。
俺とステラ、そしてリリーの俺達三人は、ゲートがあるという丘に向けて歩いていた。
「では、私はここで……」
「え?」
リリーが突然そう切り出した。
「あ、ごめん。翔君にはまだ言ってなかったね。
リリーは体が弱いから、私達の旅には同行しないことになったんだ」
「……ごめんなさい。私はこれから王都にある家に向かいますので」
「マジかよ。やっと仲良くなれそうだと思ったのにな」
「翔君を簡単にハーレムにはさせまいという私の魂胆が見え隠れしてるね」
「そんな魂胆いらねぇぞ……!」
両手に花で旅を進められると思ったのに、やれやれだぜ。
まあリリーは数年間寝たきりだった様だし、仕方の無いことか。
「……お世話になりました。お姉ちゃんのこと、よろしくお願いします」
リリーを見送り、草原には俺とステラが残された。
「姉思いのいい妹じゃねぇか」
「うん。自慢の妹だよ。さて、私達はゲートに急ごうか」
「なあ……本当に別の世界に飛ぶのか?」
「そうだよ。君の世界ともこの世界ともまったく異なる別の世界だ。
deleteが悠那さんを別の世界に移したのは事実だ。それは掴めているよ」
つくづく壮大な話になってきたな……。
異世界に飛ぶだけでも十分なぐらい冒険要素が満載だといるのに、
それをあろうことか連発することになるとは。
「……この世界は、他の世界との中継点みたいなものなんだよ。
この世界に限らず、どの世界においてもそうだけれど。
君達普通の人間はゲートも開けないし、普段その存在に気付くことはないけどね」
「昨日聞いたが……お前の家系は、ゲートを開けるんだよな?」
「リリーからかい?全く、重要なところを割愛して……
私の説明ターンが増えるじゃないか。説明下手なのに」
「それについては俺じゃなくてもっと別の奴に愚痴って欲しいがな」
「冗談だよ。そう、私達はそのゲートを開けるんだ。
どうして開けるの?とか、私達の一族とdeleteとの関係は追々話すよ。
一気に言われても分からないだろう?」
「あぁ、そうだな。処理できそうにないぜ」
というか既に頭がパンクしそうな状態に置かれてるんだがな。
……不死鳥の力、か。
今はこの身体の中で眠っているが、その炎は感じることが出来た。
決意を新たにして、自らの手をグッ、と握り締める。
まだ分かってないことも多い。これから色んなことを知る事になるだろう。
危険なことにも、沢山巻き込まれることになるだろう。
だが、悠那を見つけるその時まで、倒れるわけにはいかないからな。
「着いたよ、翔君」
先を歩いていたステラがピタリ、と止まった。
これがか……。
俺は目の前のゲートを見上げた。
大きさはおおよそ6mといったところだろう。
形は教科書で見た凱旋門によく似ている。ミニミニ凱旋門ってところか。
「さてと、心の準備はできたかい?」
ステラがこちらを振り向いて問う。
「あぁ、しっかりとな。覚悟はバッチリだ」
それを聞くとステラは満足げに頷き、ゲートに向かい右手を掲げた。

「フォーサイスの名に置いて命じる……ゲートよ開け、我等に進むべき道を与えよ!」

瞬間、ステラの右手から一筋の光が迸る。
それに呼応するようにゲートが眩く輝き始めた。
「さぁ行くよ。準備は良いかい?」
「さっきも言ったが、準備は万端だ!」
俺はステラの手を握った。
ぎゅっ、とその手をステラが握り返してくる。

「それじゃあ新たな世界へ!せーの!」

俺達はそのまま、眩い光の中へと飛び込んでいった。