ダーク・ファンタジー小説
- 第2章『ループ・アンド・グリモワール』01 ( No.32 )
- 日時: 2017/04/07 08:32
- 名前: 葉桜 來夢 ◆hNFvVpTAsY (ID: q9MLk5x4)
—目が覚めるとそこは、一面の花畑だった。
俺達はどうやら無事に、次の世界に着けたようだ。
「うえっ、気持ち悪……」
どうやら俺の三半規管というやつは相当弱いらしい。
これからワープの度に酔うと考えると気が滅入る。
「んん……」
隣で寝ていたステラも目を擦りながら体を起こした。
「お目覚めか?」
「どうやら着けたみたいだね。……おや?」
ステラが周りを見回している。
何か問題でもあったというのか。
「どうした、忘れもんでもしたか?」
「ごめん、翔君……移動中に妨害されたのは覚えているよね」
「あぁ、さっきの……」
「どうやらそのせいで、違う世界に巻き込まれてしまったみたいなんだ」
なんだよそれ!第2章早々ピンチじゃねぇか!
そうだ。俺達はゲートを渡っている最中、追ってきた連中と戦闘になってしまった。
取り敢えず俺の火球で追っ払った筈だったが。
「工作をされてしまったようだね……これは困った」
「これ、詰んでねえよな?」
俺が恐る恐る聞くと、ステラは胸を張って答えた。
「その点については大丈夫だよ。
私達が別の世界から来た以上、この世界にもゲートはある」
「じゃあさっさとこの世界から抜けるべきなんじゃねぇのか?」
「そうしたいのは山々だけど、ゲートの場所はわからないんだ」
一番厄介な奴じゃないかそれ!
一刻を争う事態だというのに、また面倒なことになったぜ。
「情報を集めないとね。町でもあれば良いんだけど」
「そこまで都合良くいかねーと思うぞ……ん?」
と、言ったその瞬間だった。
向こうの道から一人の少女がこちらに向かって歩いてきたのである。
思わず俺達は顔を見合わせた。
どうやらまだまだ神は俺を見放していなかったようだ。
これが某テレビ番組だったら下に第一町人発見、って表示されてるな。
「……都合がいいこともあるもんだね」
「お、おう。少し面食らったな」
俺達が少女をまじまじと見ていたせいか、少女の方も俺達に気付いたようだった。
「そこの君。少しいいかな」
ステラがすぐさま話しかけに行った、流石の行動力である。
ちなみに俺は前章前述の通り、年下が苦手なので震えているだけだった。
何度も我ながら情けないな……。
「な、なんでしょうか?」
「私達、遠くの村から旅をしている者なんだけど。
少し道に迷ってしまってね。この近くに町はあるかい?」
「あ、あります。小さな町ですけど」
「君の用事が終わったらで構わないから、案内してくれないかな?」
「私でよければ……」
流石のコミュニケーション能力だな。
そして毎度毎度流れる様に嘘をつきやがって……合わせる方の身にもなってくれよ。
例によって、俺は後ろで頷くだけの奴だった。普通逆だよな。
まあ何はともあれ、町が見つかったのならひとまず安心か。
こっそり、ほっと胸を撫で下ろした。
しかしだ。
俺達はまだ知る由も無かったのである。
この世界は、この少女の為の世界であり。
彼女がこの世界の、主人公だということを—。
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第2章『ループ・アンド・グリモワール』