ダーク・ファンタジー小説
- Re: 怖い恐い話 ( No.16 )
- 日時: 2017/06/16 17:47
- 名前: 兎妬 (ID: 2XDHCgd7)
『コインロッカーベイビー』
皆さんは、コインロッカーベイビーという言葉を知っていますか?知らない方の為に簡単にご説明いたしましょう。
コインロッカーベイビーとは、都会の町や駅の中にコインロッカーというものがあります。お金を入れて、荷物を中に入れておけるとても便利なものです。ですが、そのコインロッカーに荷物だけでなく別のものを預けてしまう人がいました。それがベイビー…赤ちゃんです。育てられない赤ちゃんを、狭いコインロッカーに置いて行ってしまう方が実際にいたのです。そして、おいて行ってしまったほとんどの方が、若い女性なのです。今回は、ある若い女性のお話をしましょう。
ごめんなさい、ごめんなさい。
私は、5年前の冬に許されないことをしました。当時の彼氏との間にできてしまった子供を、コインロッカーに置いてきてしまいました。数か月後に赤ちゃんの死体が見つかったようですが、私は逃げるように遠くへ引っ越していました。そして、社会人になった私は毎日忙しい仕事に追われていて、そのことをすっかり忘れていました。季節は夏になり、暑い日が続いている中仕事が多くなり始めていて、疲労もピークになっていました。
ある日、会社に一人残って仕事をしているとデスクに置いてあったペンが一つ、床に落ちました。落ちたペンを拾うと、また一本床に落ちました。この時点ではまだ気にもしていませんでした。また落ちたペンを拾うと、また一本落ちました。この時の私は、仕事の疲れから違和感を感じることなく、ただイライラしていました。再び落ちたペンを拾うと、今度は隣の机の椅子が動きました。私はイライラしながらも、動いた椅子を直しまた作業に集中しました。それから30分くらい経ったころに、今度は会社においてある電話がなりました。受話器を取り、もしもしと言うとなにも返事がありませんでした。もう一度もしもしと言うと、電話の向こうでこう聞こえました。
「まま、どこ?」
幼い子供の声で、拙い言葉ではっきり聞こえました。私はそれまで忘れていた5年前の、あの出来事が脳裏に浮かんできました。しかし、死んだ子供から連絡が来るなど、到底信じられない話です。きっとこの会社に勤めているほかの社員の子供が、間違えてここにかけてしまったのだろう。そうに違いない、そうに違いないと心の中で唱えながら、電話の向こうの子供に話しかけました。
「ごめんね、私はあなたのままじゃないよ。ままはきっと別の人じゃないかな?」
すると子供はこう答えた。
「まま、どこ?」
子供なので伝わるわけないか、と思いながらごめんねと言って電話を切りました。少し大人げないかもしれないけど、私にはどうすることもできないし、まだやらなければならない仕事があったので、やむを得なかったんです。机に戻り、また作業に向かい始めました。作業をしている間、私の頭の中にはあの5年前のことがずっと離れませんでした。そのせいで、さっきの電話の子供が自分の子供だったのではないか?と考えていました。きっと違う、と否定する自分といや、やっぱりあの子供は私の子供だったのではないか、と思ってしまう自分がいました。そんなことを考えていたら、いつの間にかあんなにあった仕事が片付いてしまっていました。壁の時計を見ると、夜中の2時。何かの不運だと思いながらも帰り支度を済ませ、会社を出ました。
自宅から会社までは徒歩なのですが、途中に駅があり昼間は沢山の人で溢れていました。さすがにこの時間帯だと、人もまばらでした。ぼぅっと駅を見ながら帰ろうとしたその時、私の眼に小さい子供が映りました。その子は小さい手で、おおきいスマホを持って、花壇の淵に座っていました。もしや、あの子が会社に電話を掛けた子供なのかもしれない。そう思って子供に声をかけました。
「ねぇ、君もしかして会社に電話をかけた子?」
そう聞くと、少しうつむきながらうなづきました。よかった、この子はちゃんと実在している子だ。と、ほっと胸をなでおろしました。そして、私は先ほど電話を切ってしまったことを謝りました。今考えてみれば、あそこでしっかりこの子に苗字や親の名前を聞いておけば、この子はこんな夜に駅で待つことはなかったのに。せめてものお詫びとして、私はこの子を親の元まで責任をもって連れて行こうとしました。
「さっきのお詫びに、一緒にまま探してあげる」
すると、子供は首を横に振り、私の目をみてこう言いました。
「もう見つかったよ、まま」
しまった、もうままを見つけてしまっていたみたいだ。ならばしょうがない、今日のところはかえってまた後日、親の方にお詫びをしておこうと思い親の苗字を聞いたら、驚いたことに私と苗字が一緒でした。まぁ、そんなに珍しくはないので、特にこの時は違和感を感じませんでした。その日はその子に別れを告げて、家に帰りました。
後日、同じ会社の自分と同じ苗字の社員を探し、子供がいるかを聞いて回りました。すると、不思議なことに私と同じ苗字の社員は、誰一人子供がいなかったんです。
では一体、あの子はなんだったのでしょう。誰の子でもないとしたら…私の中にある一つのことが浮かび上がりました。やっぱり、5年前私がコインロッカーに捨ててきた、あの赤ちゃんなのか。と、いやな考えが頭の中をぐるぐると回って、段々心臓の音が大きくなっていくのを感じました。自分の中で必死に否定をしても、あのことが離れませんでした。そんなことを考えていたら、同じ会社の同僚の人に私に電話が入ってると呼ばれました。
その相手は…。
つづく
この物語はフィクションです、また自作の作品です。
どうも、兎妬です。まずはここまで長いものを読んで下さり、ありがとうございます。これでも頑張って削った方なのですが、どうしても収まりきらなかったので続編にします(;'∀')
本当に今回はとても長くなってしまいました。いつも、私はなるべく1000〜2000文字くらいで収まるように心掛けていたのですが、今回だけはどうしても収まりきりませんでした。本当に申し訳ないです。ですが、こんなにも長くなってしまったのにもかかわらずここまで読んで下さって、本当にありがとうございます!次からはこのようなことがないように、なるべく読みやすい量にまとめられるように頑張ります。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。