ダーク・ファンタジー小説
- Re: 怖い恐い話 ( No.19 )
- 日時: 2017/08/21 18:36
- 名前: 兎妬 (ID: 2XDHCgd7)
『コインロッカーベイビー』後編
その電話の相手は、なんと警察からでした。恐る恐る話を聞いてみると、私が最も恐れているあの五年前の事件のこと。事情聴取をしたいということなので、着替えて警察が来るのを待ちました。しかし、いつまでたっても警察が来ました。おかしい、何かがおかしいと思った私は歩いて警察署まで行くことにしました。歩く途中、またあの駅を通りかかりました。すると、昨日より早い時間にも関わらずまたあの子供が座っていました。今日もきっとままを待っているのかな。まぁ、今日は見ている場合じゃないし素通りしようと思いました。すると、あの子供が私の姿を見るなり走ってきました。
「みつけた、まま」
そういって私に抱き着いてきました。私のことをまだままと勘違いしているみたいで、私は優しく子供を自分の体から離しました。そして、警察署に行かなければならないことを説明した。すると、無邪気に微笑みました。
「おまわりさんは、こないよ」
この子の言っていることがわからなくて、首をかしげていると急に腕を引っ張られました。こっちこっちと強く引っ張ってきたので、しょうがなく連れて行かれるがままについていきました。子供はそのまま駅の中に私を連れて行きました。駅の中を歩いていき、やがて、人があんまりいない場所にぽつんとコインロッカーがありました。その前であの子は止まり、私をじーっと見つめました。
「ねぇ、まま。ここ、どーこだ」
屈託のない笑顔で私に問う子供が、じっと見つめる。私はコインロッカーと答えました。すると、子供は悲しげな眼で言った。
「そうだよ、ままはここにきてから、もう迎えに来てくれなかった」
「なんで、迎えに来てくれなかったの」
私はずっと頭の中で、眼をそらしていたことに気づきました。最初から、あの子は私の子で私を見つけてきたんだと、本当は気づいていました。でもそれを認めたくなくて、逃げてしまっていました。あの子からきた電話を切ったとき、本当は怖くて切ってしまったんです。あの子のような気がして、つい逃げてしまったんです。あの子は、そんな私に逃げないでと何度も訴えてきたんだと思います。そんなことを考えていたら、私はあの子に膝をついて謝りました。ごめんなさい、ごめんなさい。すると、あの子は何か言いたげな目でこちらを見つめてきた。そして少し手を伸ばしているあの子を、私は抱きしめました。
「産んじゃってごめんね、置いていっちゃってごめんね、育ててあげられなくてごめんね、愛してあげられなくてごめんね」
「…まま、ありがとう。ままのことだいすき」
その瞬間、私の首に衝撃がきました。すると、首がどんどん熱くなって意識が遠くなりました。そして、私の耳にはあの子の声が聞こえました。
「ありがとう、まま。ままがごめんなさいしてくれたから、ままのこと痛くしないであげたよ。ぎゅーってしてくれて、ありがとう」
その言葉を最後に、私の意識はなくなりました。
まま、動かなくなっちゃった。もうままはぼくとお話してくれない、ぎゅーってしてくれない。そしたら、ままのほっぺに水が一粒ついた。
「あれ、雨ふってたっけ。あ、ちがう。これ…ぼく泣いてるんだ」
そしたら、なんか涙がいっぱい出てきた。涙が止まらなくて、いっぱいままって呼びながら泣いた。
「まま、あのねおまわりさんはぼくが消したの。ままが連れていかれちゃうと思ったから。ぼくねずっとままに会いたかったの。ぼくを置いていったままに会いたかったの。でも、ままにぎゅーってされてままとずっと一緒にいたいと思った。ずっとぎゅーってされてたかった、なんでこうなっちゃったのかな。まま、だいすき。もうしないから起きて、もう怒ってないから起きて。まま、もっかいぎゅーして。まま、まま…」
数日後、女性の遺体が発見されたそうです。コインロッカーに仰向けにたおれていました、その近くには綺麗な花が一つ置いてあったとのこと。
この物語はフィクションです、また自作の作品です。
こんばんは、どうも兎妬です。今回は二部に渡り、この物語を書きました。長くなってしまいましたが、無事終わらせることができてよかったです。本当はものすごく怖い終わり方も考えたのですが、怖いのが苦手なのに読んで下さる方もいらっしゃるので救済処置として少し軽めにしました。ですが、ご安心ください。次はとてつもなく怖い恐い話をご用意しますのでお楽しみ下さい。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。