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ダーク・ファンタジー小説
- Re: 死人が住む街 ( No.1 )
- 日時: 2017/01/22 19:59
- 名前: 縷々夢 (ID: 3i70snR8)
【第一幕 一章《夜の街、夢魅町》】№1
シャリンッ
腰に付いている赤い鈴が歩くたびに揺れる。
光という光が、すべて消え去った街『夢魅町(ゆめみちょう)』
住人はすべて影になって、溶けてしまった。
そんな中で彼女———夢魅 羅威(ゆめみ らい)は夢魅町の空を見上げる。
「金色の月が、照らすは死者の魂よ———」
歌にのせて彼女が言葉を紡いでいく。
それと同時に小さな光が彼女の歩いた道に出来ていく。
「——闇は生者を飲み込んで…」
羅威の目の前に、ぽっかりと黒い穴が開いた。
そしてそこから、唸り声のようなものが、響いてくる。
羅威はその穴に躊躇なく手を入れると、何かを引っ張りだす。
それは黒い塊のようなモノだ。
羅威はその黒い塊を、そのまま口の中へ放り込んだ。
そしてごくんっと飲み込んでしまう。
「後に残るは……なんだっけ?」
まるで陶器のような白い肌に、人差し指をあてながら、羅威は首をかしげる。
黒い髪も、それに合わせて軽く揺れた。
「…まあ、どうでもいっか」
いつの間にか彼女の前から、穴が消えていた。
彼女はまた再び歩き出す。
「金色の月が照らすは、死者の魂よ…」
夢魅町に響くのは、彼女の声だけだった。
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