ダーク・ファンタジー小説
- Re: 死人が住む街【オリキャラ募集中】 ( No.11 )
- 日時: 2017/02/08 16:16
- 名前: 縷々夢 (ID: 3i70snR8)
【第一幕 一章《夜の街、夢魅町》】No.3
少し駆け足になって街を進んでいると、後ろから誰かが羅威を呼んだ。
羅威が立ち止まって、後ろを振り返る。
「そんなに急いでどこにいくんですか、羅威さん」
その声の主を見て、羅威は少々和やかな表情になって、その人物に向き直った。
「星屑さん」
星屑と呼ばれた男はにっこりと微笑んだ。その後ろからひょこっと青髪の少女が顔をだす。
「私もいるの!」
「水鏡さん…」
「やあ、羅威さん。もしかして、『時計塔』に行くために急いでいるんですか?」
そう尋ねられ、羅威の身体が一瞬ビクっと震えた。
しかし、あえて平然を装い静かにうなずく。
「ちょっと、用事があって…。星屑さんは、今日の『課題』終わったんですか?」
「いやあ、それがまだ終わっていないんですよね。ちょっと今日は手こずっていまして…あぁ、そういえば、双子たちを見かけませんでした?」
「双子……紅架と蒼汰なら、さっき向こうで見かけましたよ」
「そうですか、ありがとうございます。いや、僕が用意した『課題』のための人間を、あの双子に殺されてしまいましてね。まったく、僕を敵にまわさない方がいいと、あれほど言ったんですけど…」
「あの双子ちゃんには何言っても無駄だと思うの。私も前に髪の毛にいたずらされたんだよ」
そういって可愛らしく頬を膨らます水鏡。
その様子を見て、羅威はくすっと笑う。
「まだその辺にいると思うので、早く行ったほうがいいですよ」
「そうですね。それでは、失礼します」
「またね!」
そう言って二人は、紅架と蒼汰がいた方向へと歩いて行った。
暗闇の中に彼らが溶け込むのを見て、羅威は再び前へと歩調を進める。
彼らの『課題』は二人でおこなう。その内容は、人間にお金を与えるというものだ。一見すれば、幸せを与えているようにも見えるがそれはちがう。大金与えられたほとんどの人間は、破滅への道へと進む。欲に溺れ、金に溺れ、無残な死に方をする。
お金が原因で死んでしまった彼らが、人間に金を与えるなんて…。
皮肉なモノね、と呟きながら羅威は少しばかり笑った。
しばらく行くと、目の前にいびつな形をした階段が現れた。
羅威はその階段をステップを踏むように登っていく。
そして最後までたどり着いたときには、目の前に大きな『時計塔』が見えていた。
そしてその入口にいる猫が「にゃあ」と鳴く。
「あら…」
羅威は近寄って、その猫を優しく抱き上げた。するとどこからパタパタと足音が聞こえてくる。
「あー、貴大くん!」
「?…あら、あの方は…」
すると猫はするっと羅威の手をぬけて、地面へとおりたつ。
「こんなとこにいたんだ。急に走ってどっか行っちゃうからびっくりしたよ」
走ってきた白髪の少女はちらっと羅威をみる。
「……な、なんですか?」
「いえ、なにも。初めてみる顔だったので、少しびっくりしたんです。最近ここにこられたんですか?」
「そ、そうですけど…」
「そうですか、私は羅威です。以後、よろしくお願いしますね」
「あ、その、わ、私は真理亜です。えっと……その、よろしく…です」
「真理亜さんですね。そちらの猫さんは?」
「え、っと、この猫は貴大くん」
「そうですか、貴大さんもよろしくお願いしますね」
「にゃあ」
「じ、じゃあ、私はもう、いきますね」
そういって真理亜は貴大を抱えて、走り去る。
羅威はその様子を見送って、はあとため息をついた。
「せっかく純粋で可愛らしい生き物が、この街にも来たと思ったのに…」
先ほどの猫を思い出しながら、羅威は呟いた。
「とんだ化け猫さんね」
そして時計塔の中へと足を進めた。