ダーク・ファンタジー小説
- Re: 白闇黒光ノ旋律二捧グ。 ( No.3 )
- 日時: 2017/02/02 13:30
- 名前: 華琉 (ID: S3B.uKn6)
【助手】
「おい君」
マルゴ教授からの厳しい声が背中に突き刺さる。いつもかけている赤ぶちの細長メガネの奥から鋭い視線。グサグサ、のビシッ! うわ、痛い。渋々歩斗は振り返る。内巻きボブの茶髪と童顔の組み合わせ。歩斗より少し低い背は学生からも人気だ。
「なんですか、デートのお誘い?」
「……」
容姿も良く、頭も良い教授。だれもが口をそろえて“もう少し明るい性格だったら最高なのに”と言う。
「あ、もしかしてカフェに行こうとか?」
「……」
教授は答えない。心の芯が折れそうだけど、熟練の笑顔をキープする。
「映画館ですか? 先生、他の生徒に見つかったらどうするんですかぁ〜」
「……いくら睨まれても軽口を言い続ける君の精神構造には興味がある。ただし、空気を読まない性格には感心しないな。話がある。来い」
え、告白ですか、キャアッ! とか言ってやろうかと思ったけどやめておいた。素直についていく、というか襟を掴まれてひきずられる。どうしてだろうか、このかわいい顔の教授。怪力、武道にたけていて軍から幹部候補生研修のお誘いがかったそうだ。
教授の講義室に連れられ、歩斗は一番前の真ん中に座らせた。自分で選ぶなら絶対に座らない席。だって寝れないし。
教授は向かい合うように教卓に肘をつき、手に顎を乗せた。位置の関係でいつもは低い教授の目線が上から。歩斗は上目使いだが、多分教授は胸キュンしていないだろう。
「さっそくだが」
教授がもったいぶって口を開く。デートのお誘いか聞こうかと思ったが、やめておく。教授から殺気立ったオーラが発せられている。危険。何か悪いことしましたっけ、心当たりが多すぎてわからないですごめんなさい。
「14歳にして特別試験でエリートの通う最難関校、国立エグレッタ学院に特待生で合格したその経歴を見込んで頼みごとがある」
ものすごく持ち上げられた歩斗。経験から悟った。これはめんどくさいことを押し付けられんな。
「……何でしょうか」
「助手をお願いしたい。付き人になれ。嫌か?」
———その言葉におされて思わずうなずく。提案を受け入れるつもりだったのだが教授は怪訝な顔をした。文脈からすると、歩斗の行動は否定にもとれた。あわてて言葉を返す。
「嫌じゃ、ないです。やります、助手」
でも、なんで。聞く前に答えが返ってくる。
「君は研究対象だ。7年前の魔女狩り。軍の要請でそれについて調べている。私の最終目標は」
……Condemnedを壊滅に追い込むこと。教授の言葉が遠のく。その言葉に自分はうなずいたのか、どんな表情をしたのか。意識を失うとはこういうことか。自分の名を叫ばれ、体をゆすられ、視界がぼやける。頭が痛い。胃を熱いものが駆けまわる。胸が、痛い。