ダーク・ファンタジー小説
- Re: その緋眼に映る景色はなんと呼ぼう 【和風ホラー】 ( No.11 )
- 日時: 2017/05/29 21:14
- 名前: ボーカルロイド (ID: X2arTSSH)
「ちぇ〜…、なんかこの点数はないよな〜」
俊は帰り道にブツブツとまだあの事について言っている。
あの事っていうのは、数学のテストで63点を取ったこと。別に、平均点は超えていたし、大丈夫かと思ったのに、俊にとってはかなりの大きなミスだと言う。
数学だけは、70点以下を取ったことがないって言ってたからかぁ…としみじみ思う。
「でも、まだマシやで〜。僕なんか、45点やで〜。こっちの方が大ミスやないの〜」
「うや、そっちの方がむしろ清々しいよ。なんか、惜しいって感じが嫌なんだよなぁ〜。下なら下で、もっと低い点数ならいいのにな…」
「そう言うもんかね〜?」
葛は疑問を持ちつつも、それで納得してしまったらしく、すぐに話題を変えた。
「ああ、そういえば…桐生ちゃんは何点だったん?」
桐生は、学校に行ってない代わりに、養護の先生がいつも桐生の病院に行って勉強を教えている。一応、ここの生徒って事になっているから、テストの日は養護の先生が見てる側で、解かなければならない。
そして、その返却する際は必ず僕らが行く事になっていた。
桐生は、普通ぐらいだからなぁ…
「確か、70点ぐらい取ってたよ。いつもと同じくらい」
「やっぱり、桐生ちゃんは絶好調やねぇ。僕も、その力欲しいわぁ〜」
冗談半分、本気半分できっと言ったのだろう。
おふざけにしては、何気に嫌味っぽいし、本気にしては、言葉は軽い。きっと、両方とも思っているのだろう。
例え、こんな状況だとしても、僕は目のことを忘れない。
赤の目には、必ず緑・橙・紫・黄が近くにいるということだ。
緑は俊。橙は葛。紫は紫貴だということは分かってる。でも、黄とは、いったい誰のことを指しているのだろう。
因みに、母と父は違う。父は赤で、母が橙だ。
だから、違う。いったい、黄とは誰のことだろう…
そう考えていると、葛の能天気な声が聞こえた。
「そういえば、桐生ちゃんの目って綺麗やないぁ〜」
別に、葛のことだからくだらないと思ったけど、「目」という単語が引っかかってとりあえず、耳だけは傾ける事にした。
能天気な声に続いて、うげ…という勘弁して欲しいような俊の声が聞こえた。
「お前、気持ち悪…」
「酷いなー!別に、綺麗なのは本当なんやから、ええの!」
「桐生って、何色だったけ?」
「うーん、確か…黄色…やったよな?」
「確かな…」
黄色…?
桐生の目が黄色?
もしかして…黄って…
僕の背中にひやっとした何かが掠った。
* * *