ダーク・ファンタジー小説

お菓子な森 ( No.3 )
日時: 2017/07/28 10:44
名前: 雪姫 (ID: uCPU0kM7)






「アハハハッ♪」




『あ…ああぎゃぁぁああ』




プレートアーマー達を虐殺する赤ずきん




「ウ、エッグ、オエエエエ」




物陰で吐くピノキオ




「……仕事をするか」




俺の仕事は地べたに転がっているプレートアーマー達の死骸から心臓





彼らが着る甲冑に与えられた罪人の魂を回収すること




『ウ……グ』




微かに息があった者




『………』




もうコト切れていた者




甲冑に魂を与えられただけの彼らに肉体などない




空っぽの甲冑 = プレートアーマー




なら何故 血しぶきがあがる?




なら何故 肉を斬る音がする?




なら何故 生きた人間のような断末魔をあげる?




「アーア、終わっちゃった……」




全てのプレートアーマー達を皆殺しにした赤ずきんは残念そうにつぶやく




遊び相手が全員 コト切れてしまってつまらないようだ




「赤ずきん。飯だ」




「ゴハン? わぁ〜い やったぁ〜♪」




「ウップ……うぅ…食べないといけないです…よね…?」



飯 ご飯 食事




赤ずきんが無我夢中で食すもの




「ハグッ グシュ ブシュッ モグモグ…」




ピノキオが吐きそうになりながら食すもの




「あむっ……オエ」




それは




俺が回収した罪人の魂




ここは罪人の魂が堕ちる 




死者の世界【ゲヘナ】




住人達の食料は罪人の魂




俺はここの住人ではない 魂は食べない




俺はここの住人じゃない 堕ちた罪人でもない




俺はツギハギ だらけの 肉




俺は人の形を模した ツギハギだらけの 肉塊




俺には記憶がない 全ての 記憶がない




俺は記憶の無い ツギハギの 肉だ









「美味しかった〜♪ お兄ちゃん、いつも美味しいゴハンをありがとう♪」




「……俺は仕事しているだけだ」




「アハハハッ、照れてるの♪」




「照れてはない。事実を言っただけだ」




「ふ〜ん♪」




楽しそうに笑う 赤ずきん




その頬には返り血で真っ赤だ




『ポッポッポ〜』




「な、何ですか!?」




誰かの 笑い声 歌声





『怖い〜怖い〜赤ずきんちゃん〜』




『でもぉーこの森にはもっと怖い子』




『…がいるもんね〜』




周りを見ると




お菓子な森の木々達が 歌い 踊る




綿あめで出来た 雲




キャンディーで出来た 花




クッキーで出来た 地面




ジュースで出来た 川




意思を持ち 擬人化されて動物たち



歌い 踊り 俺達を挑発する




「わぁ〜い♪」




新しい遊び相手が見つかったことがよほど嬉しかったのだろう




赤ずきんは金色の瞳を 




新しい 玩具を買って貰った 子供の様に輝かせ




『ここはお菓子な森〜』




『一度迷い込んだらもう〜 二度と出られない〜』




『魔女に食べられて〜』




『オマエ達はシ——』



「え〜〜い♪」



『イ——んギャアアアアア!!』



「……ぁ、赤ずきんさん。駄目ですよ! 

 お花さん歌っている途中でしたのに、摘み取っちゃ…」




「え〜なんでー」




せっかく見つけた新しい玩具




遊ばないなんて勿体無い





「サァ……お菓子さん達、アソビましょう♪」




『ヒッィイ!!』




『来るなー来るんじゃねェェェ!!』




お菓子達は蜘蛛の子を散らす様に逃げていく







『や…やめろ! 殺すな! せめて…せめて…』




「えい♪」




『美味しく食べ……うわぁぁぁぁぁぁぁ!!』




元は食べ物だった彼らが望む死は




美味しく食べられること





でも魂しか食さない 赤ずきんにとっては




食材ではなく ただの遊び相手 玩具だ








ここの住人は魂を与えられ 擬人化された





お菓子 と 動物





甘ったるく 吐き気を催す 臭いが充満した




???が治める お菓子で出来た国





"ホールケーキアイランド”












お菓子な森 ( No.4 )
日時: 2017/08/11 08:24
名前: 雪姫 (ID: syyiHjY.)




『ポッポッポ〜』





『ニゲロ〜ニゲロ〜』





「アハハハッ♪」




『怖い怖い〜赤ずきん〜』




『やってくるぞ〜』





「追いかけっこでアソブのね♪ アハハッ、マテ待て〜♪」





『ぐあああ!!』





「赤ずきんさん楽しそうですね」





「…だな」




楽しそうに森の住人を追いかけ殺していく赤ずきんの後をついて歩く。





『ポッポッポ〜』





『マヨエ』





『サソエ』





『ココはお菓子の森』






『迷いの森』







『あのお家へサソエ』






『サソエばもうオワリ』





『オワリ〜オワリ〜』





『死んでも出られない』






『『ここは〜お菓子な森〜〜〜』』






「……?」







「あれは……家でしょうか?」





住人を殺して回る赤ずきんについて行くと、お菓子で出来た家に辿り着いた





お菓子で出来た家







お菓子の家





………なにか引っかかるモノがある これはなんだ?




『ブツブツブツ…』





「あっ。あそこに誰かいますよ」





ピノキオが指さす方向には





『ブツブツブツ』





鳥籠を大事そうに抱えた少女がいた その目は虚ろでまるで生気を感じない。





「あの人もこのおかしな森の住人でしょうか?」






「だろうな。見ろ、奴らあの少女の後ろに隠れようとしている。

 あの少女が此処の主のようだな」






「ええ!? 主!? それは駄目です! 危険です!


 逃げましょう、ツギハギさん、赤ずきんさ……」




「ネェ? アナタ なにをしてるのですか?」



「ん!!? なぜ話しかけているんですか!!」





『ブツブツブツ』




少女は無反応





「ネェー、ネェー聞こえていますかー?」





『ブツブツブツ』





何度話しかけても少女は鳥籠になにかを語り掛けている。






「赤ずきんさん…放っておきましょうよ…その人 変ですよ…ヒッ!?」






ピノキオが小さく悲鳴を上げた 鳥籠の中身を見たからだ





中身? 鳥籠には黒い固まりが入っているのが見える





中身がなんなのかここからじゃ よく見えない





「……これは、頭部か?」





中身は頭だった 





人間の頭だった





『ふふふ…兄さま…』






少女は鳥籠に入った自分とそっくりな顔に語り掛ける





『ヘンゼル兄さま……今日も日差しが暖かく、ピクニック日和ですね。

 ふふふ…そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。全部食べたりしませんから』





俺達など 見えていない/見ていない





少女には鳥籠の中身しか 見えてない/見ていない






「ネェ? それはボール? ボールでしょ?」





「あ、赤ずきんさん!? それはボールじゃないです! ……人間の…うっぷ」




人間の頭と言おうとして、吐きそうになるピノキオ。





相手をしてくれない少女が持つ ボールという玩具をみつけた赤ずきんは





「え〜〜〜い♪ お空へ飛んでゆけ〜アハハハッ♪」






"ボール”を空高く蹴り上げた






『……あ』





大事に抱えていた物が突然なくなり 少女は動揺している





『兄さま? どこへ行ったの兄さま? ヘンゼル兄さま?

 兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま兄さま……ヘンゼル兄さまどこへ行かれたの?』





「あーあ…遠くへ飛んで行きすぎちゃった〜……まっいっか♪ アハハハッ♪」





『……お前が兄さまを……』





虚ろな瞳が赤ずきんをうつした





『お前がヘンゼル兄さまを……』





「ニイサマ…? それは誰ですか?


 あの "ボール”のことですか?」






赤ずきんは空を指さす。 ボールは空高く飛んでいき消えたから






『許さない……魔女!!』





少女は持っていたサバイバルナイフのような小型の刃物を赤ずきんめがけて振り下ろす






「アハハハッ♪ やっとアソブ気になってくれました?
 サァ思う存分、アソビましょう♪」







お菓子な森 ( No.5 )
日時: 2017/08/02 18:45
名前: 雪姫 (ID: WRKciX17)








『魔女! 魔女っ! 魔女!!』








少女は両手で持ったナイフを一心不乱に振り回す。









「アハハハッ♪ そんなのではボクはコロセませんよ?




 サァもっとアソビましょう♪」









楽しそうに








踊るように









赤ずきんはナイフを避ける











「あの人ナイフを持っていますよ!」









「そうだな」











「危ないですよ! 助けに行かないと」










「そうだな」











「ツギハギさん、なんでそんな落ち着いているんですか?





 赤ずきんが殺されるかもしれないんですよ」








ガクガクと震え、杖を握り締めるピノキオ








「助けたいのなら、お前がいけばいい」









「ええ!? 僕がですか!?」












「俺の仕事は魂を回収すること。







 闘うことでも赤ずきんの遊びを邪魔することでもない」













「それはそうかもしれませんが…









 赤ずきんが死んだら、使徒である僕も死んでしまうんですよ?







 そんなの困ります!」













別にお前が困ろうと 俺は困らない










「ドコを狙っているんです? ボクはココですよ」









赤ずきんは少女を挑発する










『許さない…よくも…兄さまを 





 ヘンゼル兄さまを殺したな…魔女!






 魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女』




あの虚ろな瞳の少女がうつす者は 赤ずきん? それとも憎き魔女?








いや——













そのどちらでもない あれがすつすモノは——












「ピノキオ」













「はい。なんですかツギハギさん」









ピノキオを 赤ずきんを助けた所で俺になんのメリットもない












ただー











『魔女!』











「アハハハッ♪」







少しだけ あの少女のことを哀れに思ったのかもしれない












「赤ずきんを助けたいのなら










 自分が助かりたいのなら











 "鳥籠”を探してこい」










「鳥籠……ですか?」










「赤ずきんの野郎が蹴り飛ばしたアノ鳥籠だ。 間違えるな」












「ええーーー」









露骨に嫌そうな顔をするピノキオ










鳥籠の中身の事を思い出しての顔だろう









でも今 必要なのはその中身の方だ













「赤ずきんが死んでも




 自分が死んでも






 いいのなら好きにしろ」











「死ぬのは嫌です!! 





 すぐに探して来ますから、どうか! 殺さないでください!!」












ピノキオはまるで猛獣から逃げるかのように、走り出した










「…俺は干渉しない」










必要以上にお前達に関わったりしない











俺は 俺の 仕事をするだけだ——







お菓子な森 ( No.6 )
日時: 2017/08/14 07:45
名前: 雪姫 (ID: UISKJ4Eq)






『許さない…よくも…兄さま……兄さま……』





「アハハハッ♪ もっと もっとアソビましょう♪」




「………」





無我夢中でナイフを振り回す少女





その刃を向ける先は 赤ずきんなのか 憎き魔女なのか





「ツギハギさん! 見つけて来ました!! ハァ…ハァ…」





息を切らせながら、ピノキオが走って戻って来た その腕の中には人間の頭が入れられた鳥籠が抱えられている





『兄さま……?』





想像していたよりも早い反応だ





「ヒッ こっちを見てますよ、あの人!」





「お前がその鳥籠を持っているからな」






「ど、どうすればいいのですか!?





 このままじゃ、僕があの人に殺されますよ!」





そんなの俺の知ったことではないが……






お菓子の家 迷いの森 双子






「お菓子の家の中にある パン焼きがまに投げ入れろ」






「パン焼きがまですね? わかりました!」






ピノキオはお菓子の家へ一直線に走る







「あ……待って…兄さま






 どこへ行かれるの兄さま…」





虚ろな瞳の少女はそれを追いかける






「ドコへ行くのですか? もっとボクとアソボウ?」





赤ずきんは少女の腕を掴み 明後日の方向へ曲げる






腕の骨がギシギシ軋む音がする ポキッと骨が折れた音がする






虚ろな瞳の少女にはそれは見えていない






見えていないから 痛みもない





「パン焼きがま…パン焼きがま……あ、これだ」





ピノキオがパン焼きがまに鳥籠を放り込む





『兄さま!』






引き寄せられるように、少女もパン焼きがまに頭を突っ込む





「赤ずきん、今だ」






「え? よくわかんないけど〜え〜〜〜い♪」





赤ずきんに少女の背を押させ パン焼きがまの扉を閉め 栓抜きをした






『嗚呼ァァァァァァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』




パン焼きがまの中からドンドンッという音





まるで魔女のような断末魔が響いた






「火を放つぞ」





「え、この家にもですか…?」






童話ではこれで魔女は死ぬ だがなにか悪い予感する






「…念のためだ」





ジュッ ボオオォォォ





赤ずきんの持っていたマッチで家に火を放つ






お菓子で出来た家は物凄い速さで燃えて行く 






辺りには






焼けるパンの香ばしい匂い





焼けたお菓子のいい匂い






焼け焦げた人間の臭い





…が充満させ 黒煙の火柱をあげ 天高くまで燃えている






「ゴウゴウゴー モエロ〜モエロ〜♪」





「うっぷ、生肉の焦げた臭い……うぅ」






あの黒煙






「髑髏マークだったらよかったのに…」






「へ? 髑髏の黒煙ですか?」






「いや。なんでもない」






「???」






何故 そんなことを言ったのか自分でもよくわからない







童話での死 とはなんだ—?






何故 俺は少女は童話の登場人物だと知っていた—?







何故—?







                          —To be continued−