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ダーク・ファンタジー小説
- お菓子な塔 ( No.7 )
- 日時: 2017/08/04 09:56
- 名前: 雪姫 (ID: emO5t6i/)
「……わぁ」
「アハッたっか〜い♪」
「首が痛いな」
俺達の前には 天高くそびえ立つ塔がひとつ
「港町なんかにある 灯台のようなもの か」
「…みなとですか?」
「なんでもない。気にするな」
「あ…はい」
また…知らないはずの言葉/知識
失った記憶の残り香か 何か か?
「この塔 入り口がありません…。
どうやって入ればいいんでしょう…か?」
「壊す! 破壊する!」
「極端すぎますよ! 赤ずきんさんっ」
「えぇ〜ダメェ? ピノキオのクセにうるさいなぁ」
五月蠅いといいつつも その表情は嬉しそうだ
「塔といえば長い髪がおろされて、それを登って中に入る童話があったな」
「どうわ…?」
「気にするな。独り言だ」
「はい…」
そうだ 気にするな。 俺も 気にするな。
塔には 入口も 出口も ない
上の方に 窓らしき穴がのような物が雲に隠れて薄っすらと見えるだけ
「さて、どうやって入ったものか…」
『よっせっ』
『ほいっせ』
「あ ん?」
『早く運べ 運べ』
『また あのお方様が食いわずらいを起こして 暴れたら大変だ』
『今度こそ オラ達が喰われちまう』
『おっせ』
『ほっせ』
「あれ…プレートアーマー達ですよね?
あ! 彼らを追って行けば塔に入れるんじゃっ」
普通に 常識的範囲内で考えればそうだろう でも此処には常識者なんていない
「オメガ ドーーーーン♪」
『ふぎゃああああ!!?』
『おいっどうした! なにがあ…ボエバアアアアア!!』
「な…なんで」
「アハハハッ♪ ボールがゴロゴロ=♪」
「なんで殺しちゃっているんですか、赤ずきんさん!?」
「アハハハッ♪」
赤ずきんは悪びれない 無邪気に笑う 善悪の分からない子供の様に
赤ずきん 今のマイブームは頭部を蹴り飛ばす事
森の中で出会った少女の "大事な物”を蹴り飛ばした時の快感にハマったのだろう
『ぐほおおおっ』
『……』
ブジャアアアアアア!!!
その場にいた プレートアーマー達の頭を 悲鳴 断末魔 をあげる暇も無しに蹴り飛ばす
蹴られた本人も気がつかぬ間に 血が噴き出る死体となるのだ
「あーあ…、結局全員殺しちゃいましたよ…どうしましょう」
「ぐちゃぐちゃ♪ アハハハッ♪」
赤ずきんは プレートアーマー達の死体で 人形(したい)遊びをしている
やっていることは 主に四肢を引きちぎっているだけだが
「………? この煉瓦」
オロオロと考え込むピノキオ 四肢をもいで楽しむ赤ずきんを無視して仕事をしていると一つだけ他と違う煉瓦をみつけた。
触ってみると、押し込める 押し込んだ
ギギギギィ
ゆっくりと 大きな機械音を だしながら 塔の一部が動き 入口が現れる
「なるほど」
「さっすがお兄ちゃん♪ テンサイだね」
「さすがです、ツギハギさんっ」
「たまたまだ。行くぞ」
「あ〜い♪ 塔のうっえにはどーんな娘がいっるのかな♪」
塔の中は空洞 螺旋階段が頂上まで続く
- お菓子な塔 ( No.8 )
- 日時: 2017/08/06 07:31
- 名前: 雪姫 (ID: q4IWVUNW)
長い 長い 螺旋階段上がって行く
『アギャー』
『イガァー』
『ウゲェー』
『クエェー』
『オゴァー』
道中にいた プレートアーマーとお菓子達を殺しながら 階段を上がる
「ここが頂上か」
目の前に現れた者 全てを殺し歩いていると 大きな扉が現れた
「次は誰がアソンデくれるのかな アハハッ♪」
誰で遊ぶ の間違いだろ
扉に少し触れると ギギギと塔の入口が開いた時と同じ 機械音が鳴り響いた
「この塔 からくり仕掛けなのか」
「からくりって…なんです?」
「知らないのならそれでいい」
「はぁ? そうですか…?」
ピノキオが知らないだけか この世界にはからくりが存在しないのか
『貴様っ何奴! ギャアアアアア!!』
扉が開くとすぐにプレートアーマーがいたので殺す 赤ずきん
もう目の前に生命があったら 反射的に殺している
『モグモグ…アナタ…モグッ、たち、ハグッモグ…ダレなの?』
部屋の上座 玉座に座るのは 齢十にも満たない少女
「肉…?」
「わぁ〜だるまさんだ♪」
「間を取って肉ダルマか」
の顔をした 肉ダルマが 玉座に横たわっていた
あれは玉座というより もはや寝具だ
『ハグハグハグッ モグモグッ』
俺達 侵入者がやって来たというのに 少女は食べるのをやめない
無我夢中 一心不乱 にお菓子を食べ続ける
「やっと会えたね♪ お姉さま」
『モグモグッお姉サマ? それはダレ? アナタはダレ? アタチは知らないの』
カップケーキを頬張りながら少女は答える
「水なしでよく食えるな」
「えっ、そこですかっ」
思っていたことが口から出てしまったようだ いけない いけない
『ダレかー ダレかー いないのー!?
お菓子がなくなったのー。 お腹がすいて死んでしまうのー』
大皿一杯にあったお菓子を全て平らげた少女は、人を呼ぶ
だが呼んだところで来るはずもない
この森にいるほぼ全ての生命は 赤ずきんが皆殺しにしたのだから
『ダレか…いないの? ううっ…お腹…すいたの』
「お腹、空いたんですか?」
『そうなの。今日はまだ、七回しかお菓子食べてないの』
「七回って……食べ過ぎですよね…?
僕たちはまだ一度しか食事してませんよ?」
ピノキオ 今はそんなことどうでもいい
「それは大変ですね。じゃあボクがその空腹を満たしてあげますよ♪」
『本当なの? アタチ今度はあま〜いキャラメルソースのかかった…』
シュッ
『…え なの?』
ガラガララッ と少女が寝転ぶ玉座が壊れる
青ざめた顔の少女 ニヒッと笑う赤ずきん
「ゴメンなさい。外してしまいました、でも次は当てるので安心してください♪」
『…どう…して…なの? なんで…アタチ……死んじゃうの…』
「だって、死ねばもうお腹は空きませんよ? アハハハッ♪
これでもう空腹で悩むことがなくなりますね♪」
『そんなこと頼んでないの! そんなのイラナイの!!』
「わっと♪」
少女は赤ずきんを突き飛ばし 駆け出す 玉座の後ろには隠し扉があり
そこから逃げた
「どーして逃げるのですか? 死ねばもうお腹空かないのに」
「そうゆう問題なんでしょうか…」
「知るか。俺に訊くな」
「そうだよね、お兄ちゃん♪ わからないなら本人に聞いてみよう♪
殺してあげよう♪ アハハハッ♪」
無邪気に笑う 赤ずきん 彼女の金色の瞳が紅く光り 少女の跡を追いかけて行く
「僕たちはどうしましょう」
「知るか。下りるぞ」
「赤ずきんを放っておくのですか?」
「そうゆうことだ。あいつなら一人でも大丈夫だ」
「えぇ〜そんなぁ……
何度も言いますが、赤ずきんさんが死んだら、僕も死んじゃうんですよ〜??」
「そんなこと俺の知ったことではない」
「えぇ……ぐすん」
そんなくだらない会話をピノキオとしながら また長い階段を下りて行く
- お菓子な塔 ( No.9 )
- 日時: 2017/08/06 07:58
- 名前: 雪姫 (ID: q4IWVUNW)
長い 長い 螺旋階段を下りて来ると同時に
ドサッァ
黒い塊が目の前に落ちて来た なにが落ちて来た?
「ツギハギさん! コレっさっきの人ですよ!!」
ピノキオが杖の先でつつくそれは上で会った少女だ
ドクドクと大量の血が流れ出ている 致死量を超えている量
『ウ……ァ……オ…』
「っこの人まだ息がありますよ! どうしま…キャア」
朦朧とした意識の中 少女がピノキオの足を掴んだ
「やめてっ、放してください!!」
グチャ グサッ グチョ
少女の顔面に 何度も 何度も 何度も 杖の柄の部分を殴り付ける
最初は頭蓋骨が砕ける音
「ボクもやるーーー♪」
空高く上空から赤ずきんの声がしたかと思えば
ヒューーーーーウ ヂュビチャァァァ
赤ずきんが血溜池の肉の上に落ちて来て 血が撒き散る
「このっこのっ」
「アハハハッ♪」
ピノキオは殴り続ける 赤ずきんは飛び上がり続ける
それはまるでワイン作りに葡萄を潰す 女達のよう
それはまるで水たまりを発見し喜ぶ 子供達のよう
グギッ ゴキッ バキッ
骨が砕ける音
パ……パァァァンッ
風船のような物が 弾け飛んだ音
「甘い」
噎せ返るような甘い香り 発生源は弾け飛んだ胃袋の中にある まだ消化しきれていない ケーキやお菓子
グチョ グチョリ グジュリ
肉が潰れる音 肉と肉が擦れ合う 生々しい音
「ううっ放してくださいってばーー!!」
「アハハハッ♪ 楽しいね、お兄ちゃん♪」
「そうか。それは良かったな」
俺は二人が満足するまで待つことにした
俺の仕事は魂を回収すること それさえ出来れば 過程はどうだっていい
俺の使命は——
- お菓子な塔 ( No.10 )
- 日時: 2017/08/08 09:11
- 名前: 雪姫 (ID: G8tpxkEf)
「満足したか?」
肉がミンチになるまで待った。
赤ずきんとピノキオが満足するまで待った。
「うん♪ ありがと、お兄ちゃん♪」
「なにがだ?」
「んー、待っててくれて? アハハハッ♪」
何故かいつになく赤ずきんのテンションが高いような気がする…。
「あの…この肉どうします?」
「どうもしない。放って置けば土にかえるなり、なんなりするだろ」
「そ…そうですね…。行きましょうか、赤ずきんさん」
「待って」
「え?」
赤ずきんが「待て」と言うとはな。珍しい。
ガッ ヌップ
「取れた〜アハハハッ♪」
肉に手を突っ込み赤ずきんが取り出した物、それは…
「心臓か?」
「うん♪ そーだよ、姉妹の心臓♪」
ドクンドクン。
これが姉妹の心臓…。凄いな、器である肉体はミンチと化しているのに、心臓はまだ機能している。
「心臓が動いているってことは……もしかしてまだ生きているってことですか!?」
「うん、そーだよ」
「ひょええええ」
驚くのも無理はないか。あんなに無茶苦茶にしたのにまだ生きているんだからな。
「ど、どうするんですか、それ!?」
「殺すんだよ」
"殺す”赤ずきんは確かにそう言った。
遊びの過程で殺してしまったのではなく、初めて明確に"相手を殺す”と言ったのだ。
「で、でも…どうやって? あんなに殴り、踏みつけたのにまだ生きていたんですよ?」
「それは心臓が無事だったから。でもこうやって…あーん」
赤ずきんは大口を開け、一口で心臓をたいらげた。
「モグ、ニュル……モグ、ゴックン。 美味しかった♪」
「こ、これでもう化けて出て来たりしませんよね……ね?」
「だいじょーぶ、あの子の甘〜い魂はボクのお腹の中。
ボクの力として吸収され栄養となったから」
「栄養…か」
死者が堕ちる世界で、そんな日常的なセリフが聞けるとは思わなかった。
「…これで一人目♪ あと四人…アハハハッ♪」
「あと四人? なんの話だ」
「ボクの目的が叶うまでの人数だよ、お兄ちゃん♪」
「お前の目的?」
「うん♪ ネェ…お兄ちゃん」
赤ずきんはにじり寄ってくる。
「なんだ」
「お兄ちゃんは自分がどこの誰なのか、知ってる?」
「……興味ない」
「ウッソだぁ♪ 答えるまでに数秒間があったよ♪」
「………それで?」
「お兄ちゃんもそうだけど、この世界にいるみーんな、"不完全品”なんだよ。
出来損ないのゴミクズなんだよ」
「この世界にいる全員って…僕もですか!?」
「あぁ〜ピノキオはいいのよ? だってピノキオは不完全なのか完全だから、アハハハッ♪」
「うぅー」
「だからね、お兄ちゃん。
ボクは完全な存在になりたいの。ゴミクズなんかじゃない…"お父様”に認められたいの」
赤ずきんの真剣な表情…初めて見たかもしれない。
"不完全な存在”か。確かに記憶のないただの肉である俺は不完全品だろう。
だが"完全な存在”とはなんだ—? "お父様”って誰だ—?
「……で、次はどこに行くんですか、赤ずきんさん」
「あっち!」
元気よく赤ずきんが指さすのは東の方向。ネオン色のライトが照らされている場所だ。
「あちらは確か…竹林地帯ですね。ここよりも怖い事がありませんように〜〜」
「それは死亡フラグか? ピノキオ」
「もぉー怖いこと言わないでくださいよー、ツギハギさん!」
「そうか」
「ルンル〜ン♪」
楽しそうにスキップする赤ずきんの後ろを歩きながら、次の敵が待つ領地へと向かう。
ピノキオではないが、確かに面倒事は嫌だな—
—To be continued−
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