ダーク・ファンタジー小説

(グリム童話版)赤ずきん(アレンジ少々アリ) ( No.12 )
日時: 2017/08/11 08:53
名前: 雪姫 (ID: syyiHjY.)

※知ってますか? 赤ずきんの「原作」ですが、実はいろいろあるんです。
グリム童話(1812年初版、ドイツ)の一つとして知っている人が多いと思いますが、それより100年以上前のペロー童話集(1697、フランス)にもあるんです。
ところが、そのもとになっているお話はもっともっと古く、どこで発生したのか問題は中国説さえあって、結局わかっていないという……orz
要するに自然発生的な民話(フォークロア)なんですね。
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むかし あるところに 小さなかわいい女の子がいました。



『—ちゃん、ちょっと来ておくれ』



「なぁに? おばあさん」


『はいこれ、誕生日プレゼントだよ。おめでとう』



「わぁとってもかわいいずきん♪ ありがとうおばあさん、ずーと着るわ、大事にするわ♪」


『そうかい? 嬉しいねぇ』


おばあさんがこしらえてくれた赤いずきんがよく似合い、いつも
かぶっていたので「赤ずきんちゃん」と呼ばれるようになりました。


ある日のこと、おかあさんが赤ずきんちゃんを呼び出しました。


『おばあさんが病気だそうだから、このお菓子とぶどう酒を、森の
中の家までもって行ってあげて。

 外では気をつけて、しらない横道へ入って行ったりなんかしないでね』



と赤ずきんちゃんにいいつけました。


「ちゃんとするわ」と指きりをして、赤ずきんちゃんは出発しました。






「えーと、この森の奥におばあさんのお家があるのよね」


赤ずきんちゃんが森に入りかけますと、狼(おおかみ)が現れました。


『こんにちは、赤いずきんをかぶった女の子』



「こんにちは、狼さん。私赤ずきんちゃんよ」



『そのままの名前なんだね?』



「ええそうよ。じゃあ私急ぐ用があるから行くわね」


寄り道してはいけないとおかあさんと指きりしたので、赤ずきんちゃんはおばあさんの家へ行こうとします。


『待って、どこへ行くの?』


「おばあさんのお家よ。病気で寝込んでいるからお見舞いに行くの」


『おばあさんのおうちはどこ?』


などと聞かれるがままに赤ずきんちゃんは狼の質問に答えました。


狼は心の中で考えます。

(この子はおいしそうだ。ばあさまと両方いっしょに、ぱっくりいただこう)


しばらく並んで歩きながら、狼は話します。


『そこらじゅうきれいに花が咲いて、小鳥があんなにいい声で歌を
うたっているのに、学校へ行くみたいに、せかせか歩くんだなあ』

そういわれて、赤ずきんちゃんは、どの木にもきれいな花がいっぱい
咲いているのに気づき、おばあさんに花たばをこしらえて行ってあげようと思いついて、いろいろな花をさがして森のおくへ入って行きました。



この間に狼はおばあさんの家へかけていき


『赤ずきんちゃんよ』


『赤ずきんちゃんかい? よく来たねぇ〜さぁお入り…って誰だいあんたは!?』


と言って家に入ると、あんぐりひと口におばあさんを飲み込んでしまいました。


『ぐふふ…まずは一人目。次は赤ずきんちゃんだ』


それから、おばあさんの着物やずきんを身につけて、ベッドに寝て、カーテンを引いておきました。








(グリム童話版)赤ずきん(アレンジ少々アリ) ( No.13 )
日時: 2017/08/17 08:13
名前: 雪姫 (ID: YOt4GnQH)







「このお花紫色できれいー! あっ、こっちのお花は小さな白色でかわいい〜♪

 あっちにあるお花は桃色だ! どうしよう…お花がいっぱいあって悩むわ…。


 そうだ! 全部摘んでいきましょう♪ 色とりどりのきれいな花束の方がきっとおばあさんもよろこぶわ」




赤ずきんちゃんは花を集めるだけ集めて、持ちきれないほどになって
から、おばあさんの家へ行きました。




「ここね、おばあさんのお家は…あら? 戸が開けっ放しになっているわ。


 不用心なおばあさんね」



戸が開いたままになっていたので、へんに思いながらも中へはいり、
ベッドのところへ行ってカーテンをあけてみました。




そこに横になっていたおばあさんは、ずきんをすっぽり目までさげていて、なんだかいつもとようすが違います。



不思議に思った赤ずきんちゃんはおばあさんに質問してみます。




「あら、おばあさん、なんて大きなお耳」




『お前の声がよくきこえるようにさ』




「あら、おばあさん、なんて大きなおめめ」




『お前がよく見えるるようにさ』




「あら、おばあさん、なんて大きなおてて」




『お前がよくつかめるようにさ』





「なんてきみの悪い大きなお口だこと」




『お前を食べるにいいようにさ』




狼はいきなり寝床からとびだして、赤ずきんちゃんをひと口に飲み込んでしまいました。




『ふー食った、食った。腹がいっぱいになったらなんだか眠くなってきたぞ?』




おなかをふくらませた狼はまた寝床にもぐり、やがて、ものすごいいびきをかきだしました。



『ぐがー!! ぐがぁぁぁ!!』



(グリム童話版)赤ずきん(アレンジ少々アリ ( No.14 )
日時: 2017/08/20 20:10
名前: 雪姫 (ID: LJWVvIF8)



***

おれの名は又吉(またきち)だ、猟師(りょうし)をやっている……いや、やっていたかもしれねぇな。


おれが猟師をやっていたのはもう十年も前の事だ、左目の光を失うまでの事だ。


あの日、いつものように狩りに出かけたおれは、一匹の狼に出会ったんだ。



『グルルルル…』


子供を抱えた母狼だ、奴はまだ小さい子狼を守るためおれに牙をむく。


おれは近隣の村からの依頼でその狼の親子を撃たなきゃいけね、したくはないけどな…。


『悪いな、狼よ。おれ達人間とあんたら狼は共存できねぇんだ』


『ガウゥゥゥウウ!』


バンッ!


同時だった。


母狼に向けて撃った銃弾が命中するのと奴の鋭い爪がおれのめんたまをえぐり取ったのは。


『………』


勝負はおれの勝ちだった。



おれの目の前で横に倒れる母狼、母を心配する子狼はクゥ〜ンクゥ〜ンと甘えた声を出して母狼の鼻を先をつつく、けれどもう、母狼が起きることはね。


—おれが殺したから


あの日以来、おれは猟師をやめた。左目を失ったってのもあるが、それよりも、もう命を奪いたくねぇのになぁ…おれはあの親子狼から逃げられない運命なのかもしれね


『なぁ…狼よ』


***




『ぐがー!! ぐがぁぁぁ!!』


と大きな 大きないびきをかいて狼が寝ていると猟師が通りかかり、狼を見つけました。


『狼よ、ここの家の主はどうした!? 答えろ!』



『ぐがー!! ぐがぁぁぁ!!』


爆睡している狼には聞こえていません。


猟師は狼に鉄砲を向けましが



『……ァ』



『?』


狼の腹の中から、なにか聞こえてきます。そっと耳を近づけてみると


『助けてくれー! その狼に食われちまったよー』


「おねがい! だれでもいいから、たすけて!」


なんということでしょうか、腹の中からおばあさんと女の子の声が聞こえてくるではありませんか!?



こりゃいけね、と猟師はなんとかおばあさんと女の子を助ける方法がないか探しました。


『これがいいかもしれね! ちょっと待ってろ』


猟師が見つけた物は、庭にあった枝切り鋏(ハサミ)


それを使って眠っている狼のお腹をじょきじょき切りはじめました。


すると、そこから女の子が、それからおばあさんが出てきました。


『あー助かった!』


「たすかったわ、ありがとう猟師のおじさん!」


『いえいえ、それでこの狼はどうするか?』


『危うく食べられそうになったんだ、なにかお仕置きをしないとね』


ぐーすかぴーと気持ちよさそうに眠る狼を囲んで、みんなで考えます。


「そうだわ。この大きな石をお腹に入れましょ?」


赤ずきんちゃんは、大きな石を運んできて狼のお腹の中にいっぱい、いっぱいつめました。


『じゃあ、わたしが縫ってあげましょう』

ちょいちょいと、おばあさんが慣れた手つきで狼のお腹を縫っていきます。

『……ん、ぐぐ』


『狼が起きるぞ』


『さあ、隠れましょう』


「みつからないように隠れましょう」


狼に見つからないように、家の隅へと隠れます。


『あー良く寝た! んっぷ? なんだか腹が重たいぞ? 食い過ぎたか?


 よっこらっせえええええのぉぉぉおお!!?』



やがて目がさめて、狼はとびだそうとしますが、石のおもみでへたばりました。


『ははっ、かかったな狼よ』


『お、おまえは!!』


猟師はうぬを言わさず狼の毛皮を剥ぎ取りました。


『(すまんの…狼よ)お嬢ちゃん、これで悪い狼は死んだよ』


「ありがとう猟師さん! あれ…? 泣いているの?」


『いやね、めんたまにゴミが入っただけさ』


『ささ、お祝いしましょう! 猟師さんも、赤ずきんちゃんも』


赤ずきんちゃんの持ってきたお菓子とぶどう酒でささやかな祝杯です。


—良かった、良かった


—食べられなくて良かったね


でも、赤ずきんちゃんは、もう二度と、森の中で横道に入ったりしない
ようにと心に決めました。



あの日 以来、森で猟師を見かけることはありませんでした。






***


猟師の回想シーンなどはアレンジです。
狼と猟師に因縁みたいなのをもたせてみたくて、付け足してみました。