ダーク・ファンタジー小説

竹林の獣 ( No.15 )
日時: 2017/08/21 08:16
名前: 雪姫 (ID: LJWVvIF8)




[西にある国




ホールケーキアイランド




 西の領地




お菓子な森にあるお菓子な塔




お菓子な国 ホールケーキアイランドの領主であり女王だった




ラプンツェル"殺した”ツギハギ少年御一行が次に向かうは



          東の領地にある娯楽の園]






「〜〜〜〜〜♪」




鼻歌まじりにスキップをする赤い頭巾を被った"赤ずきん”




「次は竹藪…ですか? うう、光が差し込まないから暗いです」




杖を握りしめブルブルオドオド震えている元は木の人形"ピノキオ”





「………」




人の形を模したツギハギだらけの肉の"俺”




高く 高く育ちすぎた竹は 太陽を隠し 日差しを遮断する。



少し寒いくらいの涼しさはいい でも薄暗く見えづらいのは駄目だ。



「ここにお前が"殺したい”相手がいるんだな」



「た〜ぶ〜ん〜ね〜、アハハハッ♪」




目的が一つ叶ってご機嫌な赤ずきん。




あいつは明確的な殺しはしない するのはいつも結果論。




一緒に遊んで 結果 相手が死んだ




奴が殺すのは 己の目的の為 "完全品”になる為




ピノキオは奴の目的を達成する為に創りだされた存在




—俺は なんだ?





『ヤ、ヤメテヨー!!』



「なんだ」




子供の"鳴き声”か?



『ブヒブヒブヒィー!』



『ブーブー』



『ブヒィ!』




「……行くぞ」




「ええっ助けてあげないんですか!?」



ピノキオに連れられて 仕方なくやって来れば 三匹の豚が一匹の山羊を虐めているところだ。



案の定 面倒事だった。



「知らん、面倒事はごめんだ」



あまりこの世界 ここの住人達とは関わり合いたくない。



—俺は 俺の 仕事をするだけだ




『タ、タスケテ!』



「……あの山羊、今…喋べった?」



いや 山羊が 動物が人間の言葉を話すわけがない



『ブヒブヒブヒィー』




現にあの豚共は喋っていない 鳴いているだけだ 



「気のせい……『…ァ、オニイサンたち?』」




じゃなかった。目が合った、山羊と。




助けを求める山羊は潤んだ瞳で俺達のことを見つめている。鬱陶しい。




「あの子ブタさん達はアソビ相手ですか?」




拳を握りしめ、赤ずきんは山羊に訊く。




『ブヒィ?』



『ブーブーブゥ』



『ブヒャー』



豚共が鳴いている 興奮気味だ 怒っているのか 泣いているのか 笑っているのか 全く分からん



『タ、タスケテくれる…?』



助けを求める方もさすがに不安になったらしい 



「ブーブーじゃ、なにが言いたいのかわかりませんよーアハハハッ♪」



『ブギュゥゥゥウウ!!』



『『ブヒィィィィ!!?』』



三匹の豚共のリーダー格 真ん中にいた豚を蹴り飛ばした



残された二匹の豚共は 一瞬の事すぎてなにが起きたのか状況を理解できてないようだ。



辺りをきょろきょろ見まわし、いなくなった一匹とまるで魔王のように微笑む赤ずきんを見て



『『ブゥヒィィィィ!!』』


逃げるように走り去って行った。




『イタタタ…』



「大丈夫ですか、立てますか?」



ピノキオが虐められていた山羊を助け起こした。



「お前、山羊なのに人間の言葉が話せるんだな」



『メェー、べんきょうシマシタからネ。タスケテくださってアリガトウございますメェー』


カタコトで聞き取りにくい。普通に話せ。



『それにしても、生きた人間のお客様とはめずらしいですメェ−』



「生憎だが俺達は死人だ。お客ってなんのだ」



『知らずに来たんですかメェー?


 ぼくはアソコにある竹美姫(チクビヒメ)さまが治める大賭博場【千年魔京】の従業員なんですメェー』



賭博場……ようはカジノか。 そしてこの山羊はカジノの従業員…ディーラーかなにかか。



「赤ずきん、その竹なんとかがお前の狙いか?」



「姫って呼ばれてるなら、そうなんじゃない? お兄ちゃん♪ アハッ」



「そうか」



『オニイサンたちも千年魔京になにか用ですメェー?』



「ああ、今さっき用が出来た」



『でもそれは無理ですメェー』



「なんでだ」



『千年魔京は選ばれしセレブしか入れない、超高級店なんだメェー。

 
 一見さんなら百億テラくらいはいるんだメェー』



この世界の金の単価は知らない、が相当な金額だということは分かった。



「ど、どうしましょう…僕たちお金持ってませんよ?


 一文無しですよ?」



言われなくても知っている。さて、どうしたものか



『そんな、オニイサンたちに耳より情報ですメェー。


 虐めっ子のブタ三兄弟からタスケテくれたお礼にメェー、特別サービス!

 十パーセントオフに「タダにしろよ」


 分かりましたメェー、じゃあ三十パーセントオフに「タダにしろよ」



 分かりましたメェー、ローションつけま「なんの役にたつんだよ、ソレ」

 ぐふっ』



話しの分からない山羊だ。あまり肉弾戦などは好きではないんだが、仕方なく 


仕方なく 殴ってしまった。いや本当に 仕方なく 殴ってしまったんだ。


竹林の獣 ( No.16 )
日時: 2017/08/22 10:26
名前: 雪姫 (ID: /OJeLYZk)




『うぅ……痛いメェー』


痛そうに殴られた箇所をさする山羊。


ピノキオが「駄目ですよツギハギさん。相手は子供なんですから、殴っちゃ」と言っていたが、これが子供? 子山羊なのか?


『メェー』


そうは見えない。二本足で立ち、人間の言葉を話す山羊にしか見えない。



「ネェーネエ、姫に会いに行かないの〜? 行かないなら、アナタを逝かせちゃいますよ? アハハハッ♪」



『メェェェェ!!?』



無邪気に笑う赤ずきん 青ざめ恐怖に震える山羊



『わ、分かりましたメェー。

 ど、どうぞ、こちらにお座りくださいだメェー』



と言いながら山羊が持ってきたのは人力車。



「お前が運ぶのか」



『心配しなくても大丈夫だメェー。仮免許中だけど「おい」』



全然大丈夫じゃなかった。



『悪いのはぼくじゃないんだメェー。イノシシさんの方なんだメェー。

 ぼくは竹林交通ルールを守っていたのにメェー、突然横からイノシシさんが現れてぶつかってきたんだメェー。

 裁判になってメェー、"猪は真っ直ぐに走る生き物だから無罪”って逆にぼくが悪いことにされたんだメェー』



「つくづく豚と相性が悪いんだな」



『メェー?』


猪突猛進。一般的には猪は真っ直ぐにしか走れないと言われているが、実は奴らは結構小回りが利く。角を曲がる事なんてお茶の子さいさいだそうだ。


仮免許中の山羊が運ぶ、人力車に乗り込み竹美姫とやらが治める千年魔京へと向かった。


日差しが差し込こまない、薄暗い竹藪の中を人力車は駆け走る。遠くに見えていた城が徐々に近づいてくる、ネオンでライトアップされた眩しい光が視界を奪う。


「まぶっ」


『着きましたメェー』


閉じた瞼を開けるとそこあるのは巨大な和風の城 軽く千本くらいはありそうな桜の木


『ベェーベェー』


その城に吸い込まれるように入って行く、黒い羊たち。



「あの羊共は?」



『あのお方たちはメェー、お客様だメェー』



羊が客の山羊が従業員か。



羊たちの跡を付いて行くように俺達も千年魔京の中へと入って行く。



「なんだ…これは」



入ってすぐに出迎えたのは、着物を着た女人の巨大な銅像。何故か上半身がなく下半身しかない。



『竹美姫さまの下半身像だメェー。中身もしっかり作ってるメェー』


「……興味ない」


行くぞと顔を真っ赤にしオロオロしているピノキオと、上京したばかりの田舎娘のように瞳を輝かせる赤ずきんを連れて奥へと歩き出す。




『そこのオニイサン〜』



『アタシ達とアソばないかい〜?』



『イイコトたっくさんしてあげるからさ〜♪』



奥へ向かう通路の両さいど、檻のような部屋に入れられ女達が妖艶に手招きする。


山羊が『彼女たちもここの従業員だメェー』と言っていたが、おそらくあの女達は遊女だろう。


この世の娯楽園 千年魔京とは良く言ったものだな。




『メェー!!!』


通路を歩いていると、俺達を案内していた山羊とそっくりな見た目の、六匹の山羊が、俺達を通さないぞと言いたげに道を塞ぐようにして現れた。



「なんだ。あの山羊は」


『兄さんたちだメェー。ぼくたち七匹兄弟なんだメェー』


三匹の子豚に七匹の子山羊…か。あとは狼が居れば完璧だったのにな。
俺達を案内していた山羊は七番目、虐められっ子の末っ子だ。



『メェー!!』



「なんて言ってる」



『ここは通さんメェー!!って言ってるメェー』



「それは見ればわかる」


『メェー!!』



『どこぞの馬の骨ともわからん奴がなにしに来たんだメェーって言ってるメェー』



「あなたたちの姫様を殺しにきました♪」



「あ、赤ずきんさんっ!!?」


正直すぎるだろ、赤ずきん。



『メェエエエエ!!!?』


ほら。山羊共が怒りだした。俺達を案内していた山羊も驚愕の表情といったところだ。


『ブヒブヒブヒィーブー!!』


「あ〜♪ 子ブタさん達だ〜アハハハッ♪」



竹林で赤ずきんが蹴り飛ばした豚共までやって来た。



「どうするつもりだ、赤ずきん」


「ネェ……みんな、ボクとアソビましょう?」



訊いても無駄だったな。赤ずきんにとっては遊び相手の方からやって来たようにしか見えていなんだからな。



『メエエエエェェ!!』『ブヒィィィィ!!』



「アハハハハハハハッハハハハハハハハハハッ♪」



狂気に笑う赤ずきんと怒り爆発の豚と山羊共で一触即発の状況だったが



『おやめになってくださいませ』



『メェ?』『ブィ?』



「ん?」



長い黒髪 着崩し胸元がはだけた着物の女。女の鶴の一声で、緊迫した空気が一瞬止まった。


『うふふふふふ…』


頬を赤く染めた女は熱を帯びた視線を俺に向ける。なんだあの女は。

竹林の獣 ( No.17 )
日時: 2017/08/23 09:16
名前: 雪姫 (ID: tA56XhER)







『ようこそいらっしゃいました。赤ずきんさま、ピノキオさま、そして……貴方さまがツギハギさまですわね』




着物の女は『うふふ』と笑いながら熱のおびた視線を俺へ向ける。




赤く染まる頬 桃色になり火照る胸元




『ハァハァア』と荒い息遣い 獲物を前にした飢えた獣




「ど、どうして僕たちのことを…?」




『知っていて同然ですわ。だって貴方がたは私(わたくし)の可愛い、可愛い、世界にたった一人しかいない妹を殺したのですから』




妹…あの塔にいた金髪の肉のことか。





「妹って…まさか、あの肉っうっぷ!」




あの肉の最期を思い出し、体内から出ようとするものを抑え込むピノキオ。




「あなたが竹美姫? アハハハッ、殺してあげる♪」





『ブヒィィィィ!!?』『メェェェェ!!?』




挨拶代わりにと、着物の女、竹美姫とか言ったか? 赤ずきんは竹美姫に襲い掛かった




—が






『うふふふふ』





—その拳はいとも簡単に受け止められた。





まさかあれを受け止めるとは驚いた。大概の奴は、避けるか、反撃するか、もないまま分裂するか、吹き飛ぶか、貫かれるか、して死ぬのにな。





「アハハハッ、あなたって強いですね♪」





『ええ。それなりには』





あの竹美姫とかいう女。相当できるようだ、なめてかかるとこっちが痛い目をみそうだ。




竹美姫は掴んだ赤ずきんの拳を放り投げるように離すと




『ですが、赤ずきんさま。ここでおいたはいけません。

 
 ここは女も男も酒も金も、この世のありとあらゆる娯楽が楽しめる、千年魔京。


 暴力だなんて、そんな乱暴な事許可できませんわ。……そうゆうプレイなら許可できますけどね…うふふ』



「…プレイですか?」




どうして全員、俺の方を見る。俺にそんな趣味はない。




「どうしてダメなんですか。ボクはあなたを殺したいのに、どうして?」




『うふふふ。やはりお子様には難しかったでしょうか? ツギハギさま、貴方さまならお分かりですわね?』




「暴力以外での殺し合いなら許容範囲ってことだろ」




「ええ。そうですわ、さすがツギハギさま。貴方さまならきっと理解していただけると思っておりましたわ!」




理解なんてしていない。あの女が言った事をそのまま言ってやったにすぎない。



『でしたらもう話は決まりですわね?』



竹美姫の紫色の瞳が紅く輝く。



『さぁどうぞ、千年魔京で一番の娯楽地、賭博場へ』



と言う竹美姫の言葉が合図だったのか、ギィィィと大きな音をたてながら女の後ろにあった巨大な扉が開いてゆく。




扉が開いていくと、風に乗って流れ出る臭い。もう飽きるほど嗅いだ臭い。



—血の臭いだ。



『うふふふふ』



「アハハハッ♪」



「ど、どうなるんでしょう…」



「さあな」



これから俺達は女、竹美姫とゲームをする。




自分たちの命をかけた文字通り、命懸けのゲーム




負ければ"死”




己の生死をかけたデスゲームの始まりだ—







                       —To be continued−