ダーク・ファンタジー小説

カラミティ・ハーツ 心の魔物 Ep24 赤と青の救い主 ( No.27 )
日時: 2017/08/13 01:11
名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)

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「誰か……助けて」
 ヴィーナにやられた傷を押さえ。リクシアは懸命に歩いていた。
 疲労と痛みにゆがむ視界。でも記憶に鮮やかな、仲間の姿。
(死なせない)
 その思いが。今のリクシアを動かす唯一の原動力。
「た……す……け……て……」
 しかし、耐えきれず、もつれた足。
 そのまま地面に倒れ込む。
「立たなきゃ……みんな、死んじゃうよぅ」
 言ってはみたが、無理だった。
 限界になった身体は。もう口ばかりしか動かない。
 そこへ。
 訪れる、足音が、あった。
 ゆっくりとした足取り。
「……やぁ、お嬢さん。こんなところで、どうしたんだい?」
 そこに、いたのは——

 背に群青の翼をもつ、蒼い髪に水色の瞳をした、

 天使だった。

  ◆

「私のことはいいから。仲間が……死にそうなの」
 リクシアは、言葉少なに状況を説明した。
「そっちに……いるから。お願い、助けて……!」
 必死で頼み込むと。その天使は、とても困ったような顔をした。
「でもねぇ……」
「お願い、死んじゃう!」

「ここまで歩いてきた時点で、へとへとだから」

「…………え?」
 この人が来たのは、そんなに遠いところからだったのだろうか。
 そう、思いを巡らせると。
「違う、違う。割と近くからだよ。でも、私にとってはすごく遠いんだ」
 大慌てで否定した。
「何を言って——」
 だから、と彼は言葉を遮った。

「私はね、生まれつき、そんなに長く歩けないのさ」

「!」
 そう、だったのか。
 だから、あんなに困った顔をしたんだ。
「ちなみに天使だけど飛べない。歩けないし飛べないんじゃぁ、移動には難儀してるよまったく」
 その天使は、そうつぶやいた。
「でも、どうしようねぇ。僕じゃぁ君の友達を——」
 と。

「アルフ! 一体どこ行ってたの! 探すの大変だったんだから!」

 その言葉を、女の子の声が遮った。
 そこには、赤い髪にピンクの瞳、紅蓮の翼の。
 天使が。もう一人、腰に手を当てて立っていた。

  ◆

「ふぅうーん。状況は理解したわ。で、あたしにそれを助けに行けって?」
 天使の女の子は、リクシアから話を聞いて、そう問うた。
「そうよ……。急がなきゃ……死んじゃう……!」
「りょーかい。じゃ、アルフはそこで待っててよ? あたしが直接現場に向かうわ」
 言って女の子は、その背の翼をはばたかせた。
「とりあえず、様子見てくる! 動くんじゃないわよ。探すの大変なんだから!」
 そうして、その女の子はいなくなった。
 リクシアは、残った天使に訊いた。
「聞いてなかったけど……あなたは?」
 おや失礼、と飛べない天使は笑った。
「私の名はアルフェリオ。で、あの子の名がリルフェリア。全然似てない双子なのさ」
「双子!?」
 言われれば、顔つきが似てなくもないか。
「ところで、君は? 君もまだ、名乗っていないよ」
 その問いに。
 リクシアは、微笑んで答えるのだった。
「リクシア……。リクシア・エルフェゴールよ……」
 そこまで言うと、落ちてきた瞼。
 疲労が身体を支配する。
 さっきまでは、眠ってはならない状況だったけれど。
 今は。助けてくれる、人がいるから。
(任せても……平気よね……?)
 誘う眠気に身を任せた。
「ありゃりゃ、寝ちゃったよ。ひどい怪我だったし、疲れたんだろうなぁ」
 青色の天使が、小さくつぶやいた。

  ◆

「……なによ、これ……」

 はばたいた先。赤い天使は愕然とした。

 悪魔みたいな少年と、天使みたいな少年。片手剣を握った、普通の少年。

 みんながみんな、ほとんど息をしていなかった。

 そして、みられる戦闘の傷跡。
 凄絶な戦いの跡。

「……面倒事に首突っ込んだ気分。あとであの子にみっちり訊いてやるんだから」

 赤い天使はため息をつき。
「あれは……毒……? とりあえず、手当てをしとこう」
 その右手を天に掲げ。小さく呪文を唱えた。
「天光!」
 暖かな光が天から降り注ぎ。皆をいやした。
 とりあえず、なんとかなったかな。

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 短いです。で、駄文です。
 どーも、前回の話を長く書きすぎて(軽く三話に分けられる)精気をなくした藍蓮です。
 今回は新しい章(別に章とか決めちゃいないけど)に突入です。
 くたびれきったリクシアのもと。出会った赤色と青色の天使。
 彼らは一体誰なのか? そもそもここはどこなのか?
 またまたやってきた動乱の予感!?
 次の話に、請うご期待!