ダーク・ファンタジー小説
- カラミティ・ハーツ 1 心の魔物 Ep43 それぞれの戦い ( No.47 )
- 日時: 2017/08/31 16:11
- 名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)
>>46
いえいえ。そういうの、楽しいので!
返信はリク・依頼掲示板の方に載せましたよー。
素晴らしい企画をありがとうございます!
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「こんなものね」
グラエキアの鎖は、魔物を見つけるたびに魔物をがんじがらめにとらえていく。それにリューノスがとどめを刺していく。とどめを刺された魔物は人間になるが……。今更そんなこと、気にしていられない。
そうやって、魔物を倒すうち。
リューノスを呼ぶ声があった。
「リュー!」
そこにいたのは赤い髪の——アルヴァト? いや、違う。
「……ダルク」
グラエキアはまだ知らないが、彼はアルヴァトの影武者、ダルキアスだった。
「この人だれ?」
「ダルキアス。アルヴァトの影武者……」
グラエキアの質問に、相変わらずなリューノスが答えた。
「へぇ、あんたがグラエキア!」
ダルキアスと紹介された、赤髪の少年は無邪気に笑った。
「よろしくッス!」
「ええ」
とは言ったものの。いつしかのヴィーカ戦ほどではないが、数が多い。軽く十は下らない量だ。本当なら、自分はこの魔物たちすべて倒し終わらなければ次へ行ってはならないのだろうが……。
先へ行っただろうエルヴァインや、勝手に飛び出したフェロンや、さらわれたリクシアのことが頭から離れない。
——あの人たちに出会う前なら、こんなことにはならなかったのに!
そんな動揺を知ってか知らずか。ダルキアスが陽気に笑った。
「気になるんなら、おれたち置いて先へ行けば?」
「でも……」
「おれはただの脳筋で馬鹿で役立たずだから、アルのところ行っても邪魔だから、アルを案じても行かないッスけど。あんたなら頭よさそうだし、鎖? それもめっちゃ便利じゃん? だからあんたが行けばいいッスよ。あんたが鎖で縛ってくれたおかげで、後は簡単ッス!」
行け行けゴーゴーと、その背中を押した。
駄目押しをするかのように、リューノスがつぶやいた。
「……仲間一人救えないで、救世主なんてあり得ない」
その言葉に、強く笑った。
「じゃあ、後は任せたわ。……行ってくる」
鎖の先端で、背後を狙った魔物の胸を、貫きながらも。
石の家に残したリュクシオン=モンスターを若干案じながらも。
エルヴァインを——大切な仲間を、ただ想って。
グラエキアは、駆け出した。
◆
——落ちた。
そう気づいた時には、もうすでに遅くて。
彼の身体は大きく放り出され、そのまま大地に叩きつけられた。
「うぐぅッ!」
思わずうめき、上を見た。
かなり大きな落とし穴だ。
「……嵌められた、か」
あらかじめ。自分がここに来ることが、予想されていたようだ。
しかも、それだけではなくて。
「何……だと……」
その周りには、何十体もの魔物がいて。
でも、ちっとも動かなくって。
上から慇懃な声が聞こえた。
「ごきげんよう、緑の戦士」
「誰だ貴様はッ!」
フェロンは、逆光で見えない穴の上を、睨んだ。
声は大げさに笑った。
「おやおや、いきなりそんなに敵愾心むき出しにしなくても。しっかり料理して差し上げますよ」
その声は、聞き覚えがあった。
あの日。あの逃亡者を救った日。赤髪の彼を追いかけていた男の声だ。
「……あの時の」
「覚えてらっしゃいましたか。それはそれは嬉しい限り」
「……リクシアを返せ」
「ああ、あの少女のことですか? 返しますよ、『アルヴァト』さえ来れば、ね」
「だからそいつは誰だッ!」
「わかる前に、あなたは死にます」
行って、男は。口笛を吹いた。
すると、動かなくなった魔物たちが、動き出す。
——フェロンを引き裂くために。
「貴様ァッ!」
叫び、腰から片手剣を引き抜いた。
男は笑った。
「さあ、我らが研究の集大成。魔物の軍隊、モンストル=アーミーの実力を、とくとその身で味わいなさい。うまくいけば、皇帝陛下にお知らせして、たっぷり報酬でもいただきましょうか、ね」
言って、彼は哄笑しながらも、その場を後にした。
魔物たちの真紅の瞳が、半貌のフェロンを睨みつける。
フェロンはかつての記憶を思い起こし、己の身体から内なる力を呼び寄せた。
「我こそは! 殺人剣のF!」
リクシアと再開する前。そう呼ばれ、狂ったように戦いを求めていた自分。
思い出したくもない、半貌になった理由。
しかし、あの日の自分は、強かったから。
生き残るために、生き延びるために!
絶望的な戦いの中に、自ら飛び込んだ。
◆
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どーも、藍蓮です。
最近は2000文字に届かない話が多くて、色々と悩んでおります。
今回も例にもよって短編となってしまいましたが、皆さん、どうでしたか?
次もしくは次の次くらいに、決戦になりそうな予感がします。
立ち上がったグラエキア、罠に嵌められたフェロン。
物語の行方は——?
次の話に、請うご期待!