ダーク・ファンタジー小説

カラミティ・ハーツ 心の魔物 Ep4 古城に立つ影 ( No.5 )
日時: 2017/08/05 12:59
名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)

 
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「リュクシオン=モンスター……」
 すべて滅びた国の廃墟に、立てる影が一つ。
 その冷たい瞳が見据えるは、異形となった、かつての大召喚師。
 見る影もなくなった国に、見る影もなくなった英雄の姿。
「諸行無常、か……」
 彼はしばらくそこに佇んでいたが、やがて。
「今の僕には狩れないな。駄目だ。力量の差が……」
 月夜に光るつるぎを抱いて、決意を秘めて、その地を去る。
 彼は、それを何としてでも狩らなければならなかった。
 彼は、何に代えても、その使命だけは守らなければならなかった。
「それを、復讐としたいんだ。だから」
 強く強く、剣を抱く。
「力が、欲しい。あの魔物を狩れるだけの力が。そうしてこそ初めて、僕は奴らを見返せる」
 かつて、闇の魔力を持っていたというだけで、自分を捨てた国に。
 弱かったという理由だけで、自分をあざけり、さげすんだ故郷に。
 復讐をしたいんだ。見返してやりたいんだ。
 今はもう、何もないけど。彼にはそうするだけの理由があった。
「けじめを、つけよう。弱かっただけの自分なんて、もうお別れだ」
 歩き去っていくその胸元には、王族の証たる紋章があった。

  ■

「次は、どうするの?」
 フィオルとアーヴェイとの出会いから一日。思ったよりもフィオルの回復が早かったので、一行は町を出ることにした。
 それにはフィオルが答える。
「……一回だけ、実例があるんだ。魔物を元に戻したという、正真正銘真実の、実例が。そこに行けば、何かわかるかもしれない。ほとんど知られてない話だから、詳細は現地に行かないとわからない」
 言葉をアーヴェイが引き継ぐ。
「でも、遠い。果てしなく遠い。だがな、あの人は恩人なんだ。オレたちは、ずっとそこを目指してる」
「実例……ある……」
 その方法について詳しく知れば、いつか兄は戻るのだろうか?
 それを世界に広めれば、悲しみは減るのだろうか?
 何もわからない。何一つわからない。でも、彼らのその堂々とした姿には、希望を抱かずにはいられない。
「私、頑張るから。どんなに厳しい道行きでも。私はこの理不尽が許せな。だから」
「その意気だ」
 宿から出て、前を見据えた。
 立ち上がるから。立ち向かうから。
 待っていてね、お兄ちゃん。

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 新しい話です。どうやら、謎の人物が現れたみたいですねぇ。彼は一体何者なのか、この物語にどうかかわっていくのか……。
 一時は大失敗したのでやめよう、なんて思っていた作品ですが、そこそこ書いたし諦めきれなかったので、再開しました。
 ちょっと短めなのは、キリが良かったからです。
 ではでは。次回作をお待ち下さい。