ダーク・ファンタジー小説
- Re: 暗黒伝記 ( No.1 )
- 日時: 2017/08/07 03:01
- 名前: 三世 (ID: yU3pc2AF)
- 参照: 序章
『キミは、一体何者?』
悪魔のような囁き。
銃を突き付けられ、平然としていられる人間はいないだろう。
もし万が一にも平然としていられるのなら。
———ソイツは、普通の人間ではない。
だから僕は相手にこう答えた。
「君こそ、何者?」
素朴な疑問だ。
寧ろ相手は僕の事を僕以上に知っているんじゃないかな。
何せ僕自身も僕の事を全然知らない。記憶喪失というわけでもない。
『質問を質問で返すのは、ただの馬鹿だよ』
僕は自分が馬鹿だとは思っていないけど、馬鹿なんだろう。
いいじゃないか。教えてくれたってさ。
「それ、撃ったとしても僕は死なないよ」
銃を撃たれた事なんてないから分からないけど、僕は死なないだろう。
『だろうね。キミも、十分わかっているじゃないか』
知らないよ。僕自身が頑丈なだけなんだ。
喧嘩を売られれば負けた事はないし、逆に相手を病院送りにするだけ。
「じゃあ銃を下したら? 疲れるでしょ」
『いやいや、撃たれたら死なないだろうけど痛みはあるよね?』
あぁ、相手は僕の全てを知っているわけではない様だ。
撃たれたら死なないんじゃなく、多分当たらない。
けど、相手は僕に銃弾を当てる気でいるようだ。
「所で君、透明人間なの?」
銃は見えるけど、相手の素性は未だに確認出来ない。
驚きはするけど別に騒ぐ程でもないから言わないけど、顔は見せてよ。
『まあ、結構脆いんだけどね』
成程。全く意味が解らない。誰か分かる人いたらいいんだけどな。
『衝撃に弱いんだ。これ』
不便な物ですね。透明人間って。銃も隠せてないし。
「ふーん。……ところで、何で僕に銃を向けてるの?」
今更感満載だけど、僕は狙われるような事したことないんだけどな。
売られた喧嘩は買うけど、喧嘩を売った事はないし犯罪もしてない。
僕を狙う要素なくない? 経験値でもあがるのかな?
『キミばっかり質問してズルい』
あ、ごめん。どうしても気になっちゃって。
『キミの能力は?』
銃口は一切下がらないまま、質問をされる。
相手も僕も、妙に落ち着いてるものだから早く帰りたいなあ。
「僕のなんて知らないよ。なんで君は自分の事が分かるんだよ」
ただ言えるのは攻撃が当たらないだけ。
本棟にこれ以上の事は自分でもよく分からない。
『撃ってみていい?』
———いいよ。と口を開こうとした瞬間。
バァン!
という銃声が響く。……僕まだ何も言ってないんだけど。
「普通言う前に撃つかな」
痛みはない。というか、当たってない。
相手の撃った銃弾は僕目掛けて一直線に放たれた筈だったが……。
『……へぇ、効かないんじゃなく当たらないんだ』
相手が下手だったわけでもないようだ。相当の手練れだね。
「原理はわからないけどね。物理攻撃も全て当たらない」
拳で殴られてもそれは僕に当たる事はなく、自分に跳ね返ってくる。
『恐らく、相手の攻撃を反射しているんじゃないかな』
だとしたらさっきの銃弾は相手に跳ね返ってることになるんだけど。
『私も避けなきゃ死んでたね』
銃弾を避けたのかよ化け物じゃないか。
普通の人間でなかったとしてもあんなのどうやって避けれるの?
「で、用事はもう終わり?」
取り敢えず帰りたい。
『……キミの家に行ってもいいかな。大事な話だ』
発砲したことにより野次馬が集まってくる。
相手も銃を隠したのか、これでは僕が一人で喋っているようなものだ。
このままでは埒が明かないし、いいか。僕の家で。
「じゃ、着いてきなよ」
不審に感じる事もなく、ただ僕は透明人間を家に呼ぶのであった。