ダーク・ファンタジー小説

Re: 暗黒伝記 ( No.2 )
日時: 2017/08/07 03:28
名前: 三世 (ID: yU3pc2AF)
参照: 一章

第一話『反射』

--------------------------------------------------

透明人間は衝撃に弱い。
皆も周りに透明人間がいたら取り敢えず本でも投げてみよう。

「ここが僕の家だよ。豪邸でごめんね」

一人暮らしには勿体ない物件。
僕がお金を出しているわけではないけど、親には感謝しないとね。

『どこが豪邸なのさ。アパートじゃない』

僕にとっての豪邸と、相手にとっての豪邸は些か違いがあるみたいだ。
家賃五万の豪邸なんだけどなあ。

「で、僕の家にあがるわけだけど、姿見せる気ないの?」

相手が今どこにいるのかもわからない。
声は聞こえるから近くに入るんだろうけど、僕は壁の方を見てるよ。

『あぁ、ごめん。じゃあ姿見せるね』

最初からそうしてくれるとありがたいんだけどな。

「わあ、絶世の美女じゃん」
「自棄に棒読みじゃない」

透明人間が姿を現したと思ったら女だった。
なに、こんな女が銃弾を避けたり銃を持ったりしてるの? 世も末だ。

「……一人暮らしなんだね」
「まあね。どうする? 先に風呂入ってくる?」

女の子が男の家に来たいと言い出したんだ、やる事は一つだよね?

「有難い誘いだけど遠慮しておくね。お話が先」

お話終わったらやるつもりなの? 冗談なんだけど。

「どこから話せばいいかな。キミの事?」
「ん? 僕って記憶喪失で実は君の仲間だったって事?」

記憶喪失になった記憶すらないけど。

「なかなかユニークなのね、キミ。でも違うわ」

もし当たってたら僕は名探偵だな。

「……そうね。まずは自己紹介から」

僕から先にやれと手を差し伸べる。えぇ? 普通相手からだよね?
なんで僕の家で見ず知らずの人に名乗らなきゃいけないの。

「うーん。二楷堂 悠(にかいどうゆう)だけど」

名乗らなきゃ終わりそうにないから名乗ります。

「悠君ね。私は篠崎 舞花(しのざきまいか)。よろしくね?」

よろしくするつもりないけど? これっきりの出会いなんだけど?
僕のワンルーム豪邸アパートにいきなり来てよろしくされてもね?

「わかった。よろしく、じゃあまた明日ね」
「いや帰らないからね」

知ってた。

「晩飯も食べてくの? 図々しい女だな」
「いやそのつもりできたわけじゃなくって」

面倒だ、早く話を進めてくれないかな。

「もう面倒だから単刀直入に言うよ? 私たちの仲間になって」

色々と端折りすぎでしょそれ。答えはノー以外ないじゃないか。
勧誘するにしてももっと上手い誘い方あるよ?
まずは出会い頭に銃を突き付けないとか、銃は発砲しないとか。

「いやです帰ってください警察呼びますね」

これ殺人未遂になるよね。

「もし断ったら奥の手使うしかないんだけどなあ……」

もう最初から奥の手以外にないじゃん。
なんで僕が何の疑問も持たずに答えがイエスになる前提なんだ。

「キミ、その力をどう使うつもり?」

力? あぁ、これね。使い道なんてないでしょ。

「いや実際これいらないから」
「凄い正直ねキミ…………その力を有効に使ってみないかな」

有効に……例えばなんだろう。

「犯罪組織を潰す為、とか」

日本は平和の国なので犯罪組織なんて存在しません。
いるのは単独犯です。昔はいっぱい日本にもいたけどね?

「その力を使った組織は複数存在するのよ」

近年また増えつつあるようだ。日本も終わったなあ。

Re: 暗黒伝記 ( No.3 )
日時: 2017/08/07 03:49
名前: 三世 (ID: yU3pc2AF)
参照: 一章

「そんなの警察に任せればよくない? 税金払ってるんだよ?」

日本の警察は優秀だからね。僕以上に頑張ってくれるよ。

「仮にキミ、警察と戦ったら負ける自信ある?」

戦う前提? 戦う事なんてないんだけど。

「僕がイエスと答えるまで粘るつもりなのか」
「そうだね。それが私の仕事だし」

昔営業職でもやってたんだろうか。
因みに僕は今働いているんだけど。その組織の給料体制を聞こうかな。

「そんなの応えられるわけないじゃない」

不安でしかない。

「はぁ、じゃあ寝る時僕と同じ布団って事になるよ?」
「断る気満々なのね……」

帰ってほしいんだけど。

「もし断ったらどうするつもりなのさ」
「……奥の手だけど、組織全員でキミを殺しに来るわね」

そういう事か。なに、重大な秘密でも掴んじゃった?

「キミの力」

僕の力? 確か、反射だっけか。

「それは、今迄に見た事のない強力な力なの」
「思春期の男の子にとっては君の透明人間の方が強力だよ」

色々できるじゃん。

「本当を言うとね。キミの力、何でもできるよ」
「……例えば?」
「君が使いこなせればだけどね。核兵器だって防げるんじゃないかな」

確かに色々と試す価値はあるだろうね。
僕自身も自分の力について色々知識を付けてきたつもりだ。

「まあ、確かに何でもできるね」
「でしょ? キミ、結構危険分子なのよ?」

自分のモノでないものは壊す、か。
相手に渡るよりはよっぽどいいってことだろうけど、気に食わないな。

「仲間になって僕にメリットはあるの?」

僕は意味のない事が嫌いなんだ。

「そうね……平和を守れる、かな」

なんだそれ。それこそ警察の仕事じゃないか。

「何か望みがあるの?」

女は僕に尋ねる。望みはないわけではないけど、叶えるものでもない。
日本人は欲しがりなんだ。なんでもほしいさ。

「お金が欲しいな」

お金があればなんでもできるからね。

「それくらい、お安い御用よ」

この程度なら当然、か。

「後は、そうだな。出来れば僕は死にたくないな」

不老はいいけど、不死は要らない。
これは誰もが考えた事じゃないかな。これが望みかな。

「不老不死は無理かな」

あぁ、押しに負けたな。

「いいよ。君の言う組織に連れてってよ」

将来が心配だなぁ。営業マンには勝てなかったよ……。