ダーク・ファンタジー小説
- Re: 血に染まる粉雪と涙に染まる桜 ( No.11 )
- 日時: 2012/08/20 15:49
- 名前: 秋桜 ◆SVvO/z.cC. (ID: uMmok.3B)
第四話〜新しい生活は地獄への案内?〜
「おい!早く起きろ!」
目覚ましではなく低い女の怒鳴り声で目が覚める。時計へ目をやると4時。そして、目の前の女。優香だ。
お父さんが死んで優香に引き取られた。あいつの人格が変わったのは家についてすぐだった。
『今日からあんたが家事全般やりなさい』
『え?』
『口答えするな!』
頬に走る鋭い痛み。殴られたのだと理解するのに時間がかかった。優香は意地悪下に私を見下ろして訪ねる。
『返事は?』
私は正直怖かった。何故だかはわからないが体にとてつもない寒気が走った。
『……はい』
この日から奴隷のように扱われるようになった。口答えすれば殴られ家事のことを忘れればけられる日々。
みるみる私の体はあざでいっぱいになった。
何度も逃げ出したくなった。
だけど逃げれない。
そんな日々が更に悪化する……
「美里〜紹介するわ」
うきうきした優香の声。
私はこのような声に聞き覚えがあった。
……そう。優香をお父さんが連れてきたときの声。
「須山憲次さんよ」
目の前には優しそうな男。見た目は約30後半に見えた。
「君が美里ちゃん?よろしくね」
優しい笑顔で手を伸ばしてくる。この笑顔にも私は見覚えがあった。
……優香がきたときの笑顔。
「よ……よろしくおねがいします……」
声が震えないように注意しながら精一杯答える。
優香は隣でニコニコしながら笑いかける。
男……憲次も楽しそうに笑っている。
外面だけの会話。そんな日だった。
……それから毎日憲次が来るようになった。
うれしそうに手料理を振舞う優香。
そんな優香を見ていてせせら笑いたくなった。
どれもこれも……冷凍やレトルト。
それを「おいしいよ」と食べる憲次。
見てるだけで飽きる。
しまいには見ていられなくて部屋へと逃げる。
そんな毎日。
でもよかった。
優香に殴られない。蹴られない。
とても安心した。
……でも、長くは続かなかった。