ダーク・ファンタジー小説

風色の諧謔 2-2 我らレヴィオンの生徒たち! ( No.46 )
日時: 2017/10/09 10:49
名前: 流沢藍蓮 ◆50xkBNHT6. (ID: GfAStKpr)

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 2 我らレヴィオンの生徒たち!


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「何かあったらしっかり頼れよ」

 そう言い残してヴィクトールはいなくなった。リクセスは笑顔で兄を見送り、改めてレヴィオンの前に立つ。
 全身から鋭い魔法の気配を放ち、威圧感を与える男。
 でもリクセスは恐れない。強気に笑って男を見た。

「いい目だ」

 満足げにレヴィオンはうなずいた。

「そうそう。私の弟子はミューシカだけではないのだ。そなたはこれからここで学ぶ。ならば共に学ぶ者くらいは知っていた方が良いと思ってな。紹介しよう。……ミューシカ、呼んできてくれるか?」
「了解!」

 レヴィオンが声をかければ。ミューシカは部屋の奥へすっ飛んで行った。
 しばらくして。
 奥から現れたのは、ミューシカ含めて三人の人影。
 見知らぬ二人。一人は水色の髪と青い瞳を持った、冷たい印象の少年。
 もう一人は、ショートボブの金髪に、明るい紫の瞳の少女。
 少し気弱そうな金髪の少女は、リクセスを見てミューシカに訊いた。

「えっと……この子が新しい仲間なの?」

 それに答えるはレヴィオン。

「そうだ。折角だから互いに自己紹介しようか。ミューシカ、リクセス、お前たちもだ。名前と何の魔導士か、くらいは言った方が良いだろう」

 レヴィオンの言葉にうなずき、ミューシカが一番手とばかりに前に進み出る。

「改めまして! 私は風魔導士のミューシカ。お料理が得意で運動もできます! 師匠の弟子の中では私、一番の古参なんだー」

 彼女がふわりと微笑めば。何もないのに軽く周囲で風が巻き起こった。
 全身で自由な風を表しているような少女だった。
 次に進み出たのは青い少年。彼は自分の胸に手を当てた。

「お初にお目にかかる。僕は氷魔導士のラルヴィ。ラヴィと呼んでくれて構わない。……以上だ」

 簡素で簡潔なあいさつだが、飾らぬところにまた好感が持てる。
 最後に進み出たのは金髪の少女。彼女は大きくお辞儀をした。

「初めまして、人形使のルフィアです。えっと、良かったら仲良くしてください!」

 気弱そうな瞳が泳ぐ。ミューシカが、「そんなにビビらなくても」と苦笑した。
 さて、最後はリクセスの番だ。リクセスは軽くお辞儀をして名乗る。

「特殊魔導士『組師』のリクセス。多分、やろうと思えば全属性使えるよ? これからよろしく」

 そう名乗れば。ミューシカが驚きをあらわにして叫んだ。

「ええっ、全属性使えるんだ!? すごいねー」

 その目に浮かぶのは、確かな歓迎の光。
 皆の自己紹介が終わったのを見計らって、レヴィオンが切り出した。

「さて。新しい弟子を迎えた時の定番なのだが……。歓迎会を兼ねて、皆で王都を回ろうと思うのだが、いいか?」
「賛成!」
「定番だからな」
「やった! またですねー!」

 レヴィオンの提案に、みな口々に賛同の意を示す。
 変えは確かに威圧感を与える人だが、中身まで怖いというわけではないらしい。
 話せばほら、こんなにも。明るく楽しい人間で。
 リクセスは大きく微笑んだ。

「王都は初めてなんだ! 折角だから案内してくれるかい?」

 レヴィオンとミューシカとラヴィとルフィアと。
 新しい仲間たち。新しい環境。
 リクセスは、自分の未来が大きく開けていくような錯覚を覚えた。
 そうさ、この人たちとなら。

 ——きっとうまく、やっていける。


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