ダーク・ファンタジー小説
- チェンジ・ザ・ワールド 設定 ( No.1 )
- 日時: 2018/01/15 20:39
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
ここでは設定を。
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世界
人とモンスターなどたくさんの種族の暮らす新世界。(しんせかい)
しかし、帝国の皇帝が急変してからは多くの国や村がなくなった。
孤児院にいた5人の少年少女はその被害者。
その他
各地には魔石という魔法の石がある。
それぞれ石の中には幻獣と呼ばれる神に近いモンスターの力が込められている。
モンスターとの戦闘中にこの石を使う事ができる。このことを召喚という。
召喚してでてきた獣を召喚獣と呼ぶ。
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こんな感じですかね〜 あとは物語中に語ります。
閲覧、ありがとうございます
- Re: チェンジ・ザ・ワールド 第1章 ( No.2 )
- 日時: 2017/08/27 09:18
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
1話 帰郷?
国を守るように植えられたジャングルの木。
虫や小動物の鳴き声が響く森の中を、二人は歩いていた。
「あと少しだよね?」
「そのはずだ」
二人の名前は、
レオン・ハイレゾとミント・グリーンティー。
どちらも17歳。
「あれじゃないのか?」
レオンは口数の少ないクールな男。
綺麗な黒髪で少女漫画に出てきそうな姿だ。
また、剣の扱いが達人の領域に達する。
「うん、緑の国の門だよ。絶対そう!」
もう一人の少女、ミントは明るい性格でみんなのお姉さん的存在だ。
薄緑色の長い髪をポニーテールでまとめているため、大人っぽく見える。
「7年ぶりだね」
「そうだな」
「あの日からみんな、ずーっと会ってないね」
「まあな」
7年前、俺達の孤児院は何者かに襲われた。いや、孤児院だけじゃない。今から向かっている緑の国もだ。
俺達5人はなんとか逃れた。だが、離ればなれになってしまった。
「お前達、緑の国に何のようだ!」
門番が俺達に問いかける。
「君達の王様に用が会ってきたの。そういえば大丈夫だから」
「わかりました」
5〜7分がたち、門番が帰ってきた。
「さっきの無礼は申し訳ありません…… 城向かうようにだそうです。では、どうぞ」
土煙の向こうには、大きな城と美しい街があった。
帰ってきたんだ。俺達の故郷に。
「石レンガの道をたどっていけば着きますからね」
「どうもありがとう〜」
一歩踏み出す。
さぁ、 アイツ のところへ行こう。
なんだって、お前の妹の居場所がわかったんだからな。 続く
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第1話、これにて終了です。
レオンの言うアイツとは誰なのか……ッ! (キャラ説明を読んだらわかりますが……)
第2話にどうぞご期待ください。
閲覧、ありがとうございました。
- Re: チェンジ・ザ・ワールド 第1章 ( No.3 )
- 日時: 2017/08/27 09:57
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
第2話 再会
門をくぐったあと、城へ向かった。
中にはレットカーペットが敷かれ、中央に大きな階段がある。
上にはシャンデリアも飾られ高級感がより一層目立つ。
他にも階段の横にたくさんの扉がある。
「今も記念日とかに、パーティーとかやってるのかな?」
「そうかもな、まぁアイツに会うんだから聞けばいいさ」
大きな階段を上り、扉が開かれる。
そこにアイツは立っていた。しかも後ろ立ちだ。
「よ、久しぶりだな。」
アイツ………フレイは何も変わっていなかった。
「いろいろお前らの事は聞いてるぜ。」
「じゃあ、知ってんだな」
「もちろんだ。お前、反乱軍に入ったてこともな」
反乱軍………あの帝国に反乱する人々でできた軍だ。
ミントも俺も入っている。
だからこそ、フレイの妹………フレイヤの場所がわかったんだ。
「復讐のつもりか?」
「違う」
「じゃあ、なぜ入った?」
「俺は………」
俺はなぜ入った? 誘われたからか? いや、違う。俺は………
「俺は本当の強さを手に入れるために入ったんだ。」
「フッ そう言うと思ったぜ」
「あ、あのさ〜 本題に移らない?」
ミントのおかげで話が戻る。
そして、すべて話した。
「そっか…… 生きててくれたんだな。でもよ〜 嬉しいんだけどさぁ」
どっちなんだお前は。
「まぁ、殴られる事をしなければいいんだ。よし、じゃあ…」
「陛下、緊急事態です!」
兵士が入ってきた。
「何事だ?」
「灯火の街が帝国に攻められました! 目的は魔石のようです」
「クソッ! 魔石か… オレが行く」
「わかりました」
兵士が去って行く。
「俺達も行くぞ」
「うん、フレイだけだと心配だもんね」
「一言多いぜ。 ま、行くぞ」
そして、船着場へ急ぐ。 続く
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2話、これにて終了です。
閲覧ありがとうございました。
- Re: チェンジ・ザ・ワールド ( No.4 )
- 日時: 2017/08/27 10:31
- 名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)
はじめまして、藍蓮と申します!
世界観に惹かれて読んでみたのですが、私好みの世界観だったので、コメントさせていただきます。
いかにもファンタジーな世界観、最初の所にあった「幻獣」という言葉、(召喚とか好きです)魅力的なキャラクター達……。先がとても楽しみになるような作品ですね。名前とかも、工夫してあっていいと思います。他のキャラたちの登場が楽しみです。
更新頑張ってください。
応援しています!
- Re: チェンジ・ザ・ワールド ( No.5 )
- 日時: 2017/08/29 10:33
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
流沢藍蓮さん、コメントありがとうございます!
この他にもまだまだキャラクターが出ますよ
まだまだ作り始めたばかりなのに、暖かいお言葉ありがとうございます。
やっぱり、召喚とかにはロマンがありますよね〜
流沢藍蓮さんも頑張ってくださいね
こちらも応援しています!
- Re: チェンジ・ザ・ワールド 第1章 ( No.6 )
- 日時: 2017/08/27 18:07
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
3話 魔石と皇帝と男と
船着場へ着くと、店主がいた。相変わらずの肥満中年だ。
「ん? 船は今の時間は…… って おい、レオンにミントじゃねえか」
「お、オレは…?」
「おぉ フレイもいたのか。 で、何のようだ?」
「船を貸してくれ。急ぎだ」
「お、おう。わかった。ホイよ」
鍵が渡された。
「うおうお一〇九で行け。高速だ」
「ありがとう〜」
一発でわかるほど、うおうおは目立っていた。
サカナのロゴに一〇九と書いてある。
「んじゃ、行くぞ」
エンジンのかかる音がなる。
水しぶきを上げ、うおうおは動き出した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
灯火の街近くの船着場で降りる。
人の気配が全くない。
「いかにもって感じだな」
灯火の街へ向かう。
門をくぐると景色は一変。
石レンガの建物達は崩れ壊れ、あたりに人が倒れている。
鍛冶屋で有名な街は、帝国により滅びたのだった。
「遅かったの…?」
「いや、ついさっきのようだぜ。」
「まだいる。神殿にきっといる。」
道無き道をひたすら進み、やっと神殿へ着いた。
中は紅い明かりがついている。
これは血なのか、それとももともとなのか。
入り組んだ道を進むと声がした。
声の主は2人いる。
1人は帝国の紋様をマントに取り入れており、いかにも偉い人だ。
そう、その者こそ 皇帝 なのだ。
もう1人は俺達と同じくらいの男だった。
普通な服装で皇帝と一緒にいる事事態が不思議だ。
「これでフェニックスは我々の物。扉の1つは解かれた。」
「陛下、これをあの者達に使ってみてはどうでしょう」
男がこちらを向く。
「いい加減出てきたらどうだい?」
ばれていた。
ならば、取り返すだけだ。
「フェニックスの魔石は返してもらう。」
「フッ、やれ。 パナソよ」
剣を構える。今まで感じた事のない殺気を感じる。
あの男は、俺達を完全に殺る気だ。
男は剣を斬りかかる。それを俺は愛剣 斬鉄剣 で防ぐ。
「なかなかやるようだね。」
「あんたもな」
そんななか、フレイとミントは皇帝を狙う。
「えいっ!」
だが、傷一つもつかない。
すると皇帝は2人に手を向ける。
「くたばるがいい!」
皇帝は紅いオーラをまとっている。
フェニックスの力を使う気だ!
「フレイ、ミント、逃げろ!」
「君は自分の事を考えたら?」
ザシュ
俺は斬られた。
右胸から左脇腹にむかって
「グハァ…ッ!」
立てない。足に力が入らない。
血は流れ続ける。
意識が朦朧とする。
「しまった……」
フレイ、ミントは皇帝の手から放たれた光を近くで受けてしまった。
「マジ… か、よ……」
ミント、フレイは傷だらけになっていた。
このままでは、殺られてしまう。
何か方法は無いのか……
意識が朦朧とする中、必死に考える。
すると、体が暖かい光に包まれた。
これは、回復魔法を使った時に現れる光。
いったい誰が……
「私に、任せて」
温もりのある声が聞こえた。
どこか懐かしいような、聞いた事あるような声が。
「できるかわからないケド、えいっ! 氷剣の舞!」
空気を斬る音が聞こえた。
「ここは一旦引くぞ。」
どうやら皇帝達は逃げたようだ。
「ねぇ大丈夫? レオン! 」
「も〜 お兄ちゃんたらっ オリガ、メェ〜村まで運ぶよ!」
………オリガ?
そこで俺は気を失った。
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これにて3話、終了です。
大怪我を負ったレオン達。はたして、大丈夫なのか?
4話にどうぞご期待ください!
(その間に回想が入るかも……)
お読みいただきありがとうございました。
- Re: チェンジ・ザ・ワールド 第1章 ( No.7 )
- 日時: 2017/08/27 17:04
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
3.5話 休息
暖かい日差しが窓から差し込む。
それで、俺は目が覚めた。
どうやら、ベッドの上にいるらしい。
俺達はあの後どうなったんだ……?
「ん? 目が覚めた?」
部屋の奥から声が聞こえた。
起き上が…………れない。
あの男…パナソに斬られた傷がまだ痛んでいた。
「まだ、起きちゃダメ。 かさぶたとれちゃうよ」
そう言って近寄ってくる。
「無理しすぎだよ。 レオン。」
立っていたのは 水色のショートヘアーでうさ耳バンダナをつけた少女だった。
「久しぶりだな、オリガ。」
「まさか再会がこんなんだったなんてね」
オリガは、俺達の1つしただ。だからこそみんなに可愛いがわれていた。
親の形見の槍を大切に使っていて、持っている魔力とともに合わせて攻撃するというやつ……… だったはずだ。
「ホントさ〜 私達が来たタイミングバッチリだよね〜
教えてくれたフレイヤもすごい!
とりあえず、無事でよかったよ………」
「ありがとな。 魔石はどうなったんだ?」
「じゃじゃーん ふぇにっくすのませきぃ〜 無事だよ。
私は狙った獲物はちゃんととるんだから。」
「そうか。」
「じゃ、私出かけるね。 少しココ見て行きたいから。」
「ちょっとま…
出かけてしまった。
ココがどこなのか知りたかったのに。
窓から見る限り、ここはメェ〜村だ。
羊肉の料理、ジンギスカンが有名で灯火の街にも近い。
さて、もう一度寝るか。
寝れば傷だって治る。 あんたの口癖だったよな。
今回は、そうしてみるよ。…………ジン。
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きりの悪い3.5話、終了です。
ここで最後に出てきた人物、ジンについてご説明。
名前はジン・レンロス。
灯火の街出身でよかった頃の皇帝が治める帝国にいた兵士です。
ですが、今の皇帝になっていろいろあって反乱軍に入りました。
そこで、レオンと出会いました。
レオンに剣術を教え一緒に活動していましたが、
亡くなってしまいます。
そんな感じです。
簡単に言うと、レオンの師匠でもと帝国所属の反乱軍の人です。
さぁ、今度こそ4話です。
どうぞご期待ください!
お読みいただきありがとうございました。
- Re: チェンジ・ザ・ワールド 第1章 ( No.8 )
- 日時: 2017/08/27 22:55
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
4話 約束
俺達の怪我も治り、オリガ、フレイヤとも再会できた。
これで、孤児院メンバーは揃った。
なんだか久しぶりで、それぞれの事を語り合っている。
フレイヤは、森に住む猟師に助けられてからはずっと森で生活していたらしい。
そんななか、ある声が聞こえてその場所へ行ったらフェンリルの魔石を手に入れた。
オリガは、メェ〜村の人に助けられたらしい。そこで旅人の話を聞き、トレジャーハンターという名の諜報部員になっていたらしい。つまり、反乱軍に入っていたのだった。
フレイは緑の国の人に助けられ、いろんな人々の手伝いをするうちに人々をまとめる者になっていたらしい。だからこそ王になれたのだという。
ミントは、反乱軍の人に助けられそのまま反乱軍に入ったらしい。目的は、俺達に会うためだったそうだ。
俺は、宿屋の店主に助けられ料理やモンスターの肉のさばき方を教わった。
とある日に来た、ジンに誘われて反乱軍に入った。目的はミントと同じだ。
「みんな意外にも近いところにいたんだね〜」
「すれ違ってもおかしくなかったね」
「私はさ、諜報部員だったからいろんなとこに行ってたよ。」
女子たちはそんな話で盛り上がっている。
「あのさ、ちょっといいか?」
そんななか、話を切り替えたのはフレイだった。
「今日はさ〜 建国記念日なんだ。パーティーやんだけど、くるか?」
「賛成!再会の記念にもなるね〜」
ということで、緑の国に戻った。
夕方、城でパーティーは行われた。
中央では男女二人組の者達がダンスをしている。
周りには長テーブルにたくさんの料理が置いてある。
どれも美味しそうだ。
「どれも美味しそうだね。」
話しかけてきたのは、オリガだった。
「ああ そうだな」
「あ、あのさ、食べ終わったらでいいからテラスに来てくれる?」
「わかった。後で行く。」
「ありがと」
オリガが去って行く。
「いい感じだよな〜 お前らって」
フレイが話しかけてきた。
「何がだ?」
「なんつうのかな、恋人同士みたいっていうのかな」
「はぁ? 完全に否定してやる。」
「まぁまぁ、落ち着いて落ち着いて!
オリガのこと気にしてやってくれよなってこと。
あいつ、なんでも隠して解決しようとすっからさ。
せっかく2人きりになるんだからいろんなこと聞いたらどうだ?」
「そうだな、じゃ行ってくる。」
俺はテラスに向かって歩き始めた。
テラスは、外に出たところにある。
満天の星空が見え素晴らしいところなのだが、人がいない場所だ。
なんつったって、崖の上だからだ。
完全に安全で物静かな場所であるが………
「来てくれたね」
「約束は守るからな」
「じゃあ、約束してくれる?」
「もちろんだ。内容は?」
「明日からさ、旅に出るじゃん。だからいろんなことがあると思うの。
でも、どんなことがあっても旅が終わったらここに来て。
絶対生きてだよ。」
「当たり前だろ。来てやるよ。内容は別でな」
「約束、だよ。」
「ああ」
旅が終わったらここに来る。絶対生きて来てやる。
俺は目的さえあれば大丈夫な人間だ。
だから、オリガ。お前も生きてくれ。
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4話終了です。
オリガの約束の意味は、最後にわかります。
だから、読者の皆様も記憶しておいてくださいね。
次は5話。ついに、帝国をとめるための旅が始まります。
どうぞご期待ください!
お読みいただきありがとうございました。
- Re: チェンジ・ザ・ワールド 第1章 ( No.9 )
- 日時: 2017/08/28 11:48
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
4.5話
「フェンリルもフェニックスもあの子達の手に渡ったわね」
「帝国に渡るよりはずっとマシだよ」
「もし渡ったとしても、俺様のヘルファイアで焼き滅ぼしてやるぞ。」
「無理。絶対に無理。」
「なぜそう言える、焼き鳥!」
「操られるんだよ。こうてーに使われみればわかる。
……ていうか、焼き鳥はない! この焼魔人!」
「な・ん・だ・とォォォォォォ!」
「ハイ、そこ。ただでさえ熱いやつなのに喧嘩で燃えない!
で、どうするの。 王様。」
「そうだな、我々は自由に出てこれない。だから、あの子達に賭けるしかない。
今こそ、あの時のように人と協力する時なのだ。」
「賭けるしかないんだね。」
「しょうがないけれど、頑張りましょ」
「そうだな、ガハハハハハハ」
王様と呼ばれた者以外は部屋から出ていく。
ここは別の世界。
人ではなく、幻獣の住む世界。
その名も、幻獣界。
前は人も住んでいたが、今は幻獣だけの世界。
その世界の王………オーディンは月明かりに照らされながら思う。
あの“扉”が開かれないことを。
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またきりの悪い4.5話終了です。
今回は幻獣達のみでした。
皇帝やオーディンの言う 扉 とはなんなのか……ッ!
どうぞ5話にご期待ください!
ちょっと質問。
このサイトを使うのが初めてで、目次の作り方がわかりません。
できたらコメントにて、詳しく教えてくれませんか?
お読みいただきありがとうございました!
- 〜お知らせ〜 ( No.10 )
- 日時: 2017/08/28 18:50
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
今回は、お知らせというか予告です。
次回で、チェンジ・ザ・ワールドも5話になります。
そこで、この本編に関わる設定集を別に作ろうと思います。
キャラクターはもちろん、国や土地、大陸の説明など
より物語を楽しめるような物にします。
物語に合わせて更新していくつもりです。
出来上がりしだい、親スレのURLから行けるようにしときます。
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.11 )
- 日時: 2017/08/28 19:51
- 名前: 四季 ◆7ago4vfbe2 (ID: 32zLlHLc)
初めまして、四季と申します。
お話読ませていただきました。こういう世界観、好きです!
これからも頑張って下さい、応援しています。
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.12 )
- 日時: 2017/08/28 20:18
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
四季さん、コメントありがとうございます!
「こういう世界観が好き」という人結構いますね〜
小説書く支えになってます。
四季さんも頑張ってくださいね。応援してます!
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.13 )
- 日時: 2017/08/28 20:33
- 名前: 流沢藍蓮 (ID: GfAStKpr)
>>9
自己流でよろしければ、教えますよー。
〜目次の作り方について〜
1 章のタイトルなどを入力する(前提ですね、言わずもがな)
2 そこに、自分の書いた話がどこまで入るか決める(上に同じ)
3 そうしたら、章のタイトルの隣に、>>数字(すべて半角)で、そこに入る話のレス番号を入力する。
4 話が何話か続く場合は、>>数字-数字 という風に入力すると、一気にその範囲の話が見られるようになるので便利。
例
第一章 ○○ >>1-10
一話 ○○ >>1-3
二話 ○○ >>4-6
三話 ○○ >>5-10
第二章 ○○ >>11-25
…………………………
みたいな感じでやると便利です。
例では全角にしていますが、実際に目次を作成する場合は、>>のところを半角で入力してください。
えーと、とりあえずはこんなところです。
質問等ございましたらまた訊いて下さい!
※「小説の書き方」というところに「目次テンプレ」というものがありますので、そちらも参考にするといいかもです。
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.14 )
- 日時: 2017/08/28 21:46
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
流沢藍蓮さん、いつもありがとうございます!
参考もよく読んでみますね。
では、さっそく作ってみます!
本当にありがとうございます。
- Re: チェンジ・ザ・ワールド 第1章 ( No.15 )
- 日時: 2017/08/29 00:47
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
5話 旅立ち
パーティーから一夜あけ、ついに旅立つ日が来た。
昨晩は城に泊まらせてもらった。ふかふかのベッドだったためよく眠れた。
そして、門の前についた。
「いよいよだね〜」
「目的、わすれないでよ」
「フレイ様!」
後ろを向くと兵士がよこ一列に並んでいた。
その後ろには、船着場の店主のボブ(通称ふっくらおじさん)、
八百屋のオバチャンに花屋の看板娘のヒメカもいる。
他にもたくさんの人々が来ていてくれた。
みんな、孤児院の頃に良くしてくれた人達だった。
「いよいよ旅立たれますね。国は私達 緑国兵士団 にお任せください」
唯一の女兵士で団長のルミネが言う。
「任せたぜ。まっ、ドジらないようにな!」
「も、もう! 大丈夫ですからさっさと行ってください!」
周りが笑いで包まれる。
やっぱり、別れるときは笑顔の方がいいのか。
「さて、行くぞ。」
こんなんじゃいつまでたっても行けない。
「そうだね。じゃあ、行ってきます!」
ミントがみんなに向かって笑顔で言う。
俺には絶対できっこない。
「生きて帰ってくんだぞ〜」
「皇帝なんかに負けんじゃないよ」
「各地で活動している反乱軍のメンバーにもよろしくね〜」
門が閉まるまで声は聞こえていた。
みんなが俺達に期待している。
だからやってやるさ。
みんなの気持ち、院長、前女王様の願いのためにも。
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5話、終了です。そして、第1章も終了です!
やっと旅に出たレオン達。
さて、その旅には何が待っているのか……ッ!
次回 第2章開始です!
どうぞご期待ください!
お読みいただきありがとうございました。
オマケ
八百屋のオバチャン。オバチャンってのが名前です。
昭和的なおばさんで天パに赤い口紅。57歳。
実はボブのお嫁さんです。
- Re:チェンジ・ザ・ワールド 第2章 ( No.16 )
- 日時: 2017/08/30 12:41
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
第2章 皇帝の野望を知れ
6話 反乱軍のお偉いさん
緑の国を出た俺達。
今回の旅の目的は、帝国を止めること。
少しでも情報を得るために反乱軍のアジトへ向かった。
「有効活用って感じだよね」
「私たちからすると嬉しいけど」
反乱軍のアジトの場所は、俺達のいた孤児院だ。
俺達も知らなかったが、孤児院はもともと反乱軍のアジトであり地下室で色々とやっていたらしい。
「ん? お帰り〜 みなさん」
入り口には少女が立っていた。
「ジェシィだ〜! 大きくなったね〜」
「フレイヤちゃん!久しぶり」
少女はジェシィ・ティークという。
15歳という年齢に合わないほどしっかり者だ。姉とは違って。
「そういえば、ジュリィは?」
「旅に出たよ。でもどーせギャンブルを楽しんでそうだけど」
「そうか、なら会えるかもな」
「そうだね。じゃ、お偉いさんにあいに行きますか」
7年たった今でも孤児院はあのままだった。
本棚の本はそこらじゅうに落ち、荒れていた。
地下室への扉は開かれていた。
ジェシィの案内を得て、ついにお偉いさんに会う。
「私、会ったことないんだよな〜」
「確かに、長年軍にいるのにな」
「ん?レオンもミントも?」
「フレイヤは?」
「私は軍に入ってないからわからないや…」
どうやらみんな知らないようだ。
「みんな知ってる人ですよ。では、どうぞ。」
ノックしたが声はしない。
ならば無理やり入って見る。
が、人はいなかった。
「いないのかな?」
「入るぜ ここに」
「いないねー トイレにでもいったんじゃない?」
「だから入るぜ。ここにな」
「ほんとだ〜 いなーい」
「だから入るっての。ここに! 反乱軍の長のオレがさ!」
「………」
あまりにも期待はずれで当たりが静まった。
誰だってフレイがお偉いさんだとは思ってなかったからだ。
「期待はずれ。」
「もっといい人だと思ったのに。」
「まさかお兄ちゃんだなんて。」
「お前だったのかよ……」
みんなに否定される。
「なんだよその目。情報あげないぜ」
「卑怯だ! もう、その紙奪うからね!」
「って、ばれてたのか。 奪えるもんなら奪ってみろ!」
こんなんでいいのか反乱軍。諜報部員と長がこれで。
「レオン、パスだッ」
「お、おい!」
投げられた紙を読む。
そこには思いもよらぬことが書いてあった。
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6話、終了です。
帝国の野望とはなんなのか!
どうぞ7話にご期待ください。
お読みいただきありがとうございました。
- Re:チェンジ・ザ・ワールド 第2章 ( No.17 )
- 日時: 2018/01/15 20:50
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
7話 皇帝の側近
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報告書
帝国(城下町)に潜入、及び観察の結果をここに記載する。
1,城下町
民衆は他国と同じ模様。だが、皇帝への支持率は低い。
兵士も普通に過ごしていた。民衆との仲もいい。
山の頂上だが、物資に不足はない。どれも豊富だ。
しかし、天候が変わりやすい。
2、酒場
たくさんの人の集まる酒場は、情報の宝箱だった。
夜には兵士も来て酒を飲む。誘われたが任務のため拒否。(正確には未成年なので)酔いつぶれた兵士から情報を聞き出すことに成功。また、マスター(諜報活動中のディエナ)からも情報を獲得。来てくれれば紙にまとめて渡すとこと。
得られた情報を下にまとめておく。
・兵士、民衆の4割は皇帝を支持していない。
・地下牢とは別に監獄がある。管理人は皇帝の側近。
・その監獄の名はミテス監獄。通称研究所。何らかの実験を行っている模様。
長年、兵士団長を務めている者によると皇帝…だけではなく帝国は皇帝の側近が入って来てから変わっていったとの事。その他の情報からも側近が怪しいという事が判明。引き続き調査を進める。
以上。 ハイウィンド
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フレイから投げ渡された報告書には、野望までは書いていなかった。
しかし、重要な事はわかった。それは、側近………パナソが怪しいという事。
もしかしたら、帝国を操っているのはパナソなのかもしれない。
「どうよ、私の報告書!」
「肝心な事は載ってなかったな」
「これでも命懸けだったんだよ。酒臭かったし。」
それとは別だろう。
「ま、いいんじゃねえか? パナソを問い詰めればいいんだし。」
「そうだね。じゃ……
「ちょっと聞いて!」
慌ててジェシィが入って来た。
「今ね、ディエナから聞いた情報なんだけどさ、明後日帝国が魔石を奪いに…
「どこ? わかんなかったら魔石の名前!」
「バイヴ・カハの魔石。だったはず。場所は古代遺跡。」
「ありがとう。」
「頼めるのよね? ハイウィンド」
オリガが俺達を見る。その目は昔とは違い、『必ずやる』というものだった。
俺達は頷いた。
「やるよ。絶対に。」
「そうこなくっちゃ!」
ジェシィは「頼んだよ〜」と言いながら出て行った。
「さて古代遺跡へ行くよ。たとえ間に合わなくても大丈夫だけど」
「なんで?」
「バイヴ・カハの魔石は3つの欠片に分かれていて、
それぞれに幻獣が入っているからだよ。合体しなければ大丈夫。」
「合体したとしても幻獣は使う者を選ぶからきっと大丈夫よ」
「さっさと行こうぜ!」
「そうだね」
今度は絶対に負けない。勝ってみせる。
こんなんじゃ守るどころか失うだけだ。
ならば、やって見せる。あの技を。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
7話終了です。
さて、バイヴ・カハの魔石は守れるのか……!
どうぞ8話にご期待ください。
お読みいただきありがとうございました!
- お知らせ ( No.18 )
- 日時: 2017/09/01 20:53
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
ここ一週間、小説が更新しにくいです。
なので、8話は9月9日以降に更新します。
- Re:チェンジ・ザ・ワールド 第2章 ( No.19 )
- 日時: 2017/09/10 20:21
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
7.5話 新たな出会い
バイヴ・カハの魔石を守る為に俺達は、古代遺跡へ向かっていた。
その途中に迷いの森というものがある。
陽の光があまり届かず暗く、道は入り組んでいて夜は危険な森だ。
「くら〜い」
「日が暮れてきたね」
「あそこの宿屋で休もうぜ」
奥の方に明かりが見えた。
看板にはベッドが描かれていた。
「こんなところにあったんだな」
「さっさと休もっか」
中に入ると応接間があった。
「フーがたくさんいる!」
階段や床、カウンターにダルメシアンのような姿で体長14㎝ほどの犬のような生き物がいた。
その名も、フー。名前の由来は可愛らしい姿のため、見ると「ふ〜」とため息が出るかららしい。
「あら、お客さん?」
2階から女性の声がした。
「あの、ここで休みたいんですけど…」
「そう、何部屋? 1つ3人までなら入れるけど」
「なら、2部屋で」
「かしこまり。ゆっくりどうぞ。あと、フーにもよろしくね」
その女性は1階から降りてきて俺達に鍵を渡してソファに座った。
すると、たくさんのフーが寄ってきて遊んでいる。
「なんで、こんなにもフーが?」
「ボランティアだからよ。この森でケガしていたフーとか、捨てフーとかを引き取っているの」
「捨てフーか……」
フーはよく人々に飼われている。だからこそ捨てる人もいる。
「引き取っていたらこんなにも増えちゃったの。だから引き取り手を探しているの。どう? そこのお兄さん。
足元にいるフー、飼ってみない? 旅のお供にもなるわよ」
言われて足元をみると、1匹のフーがいた。そのフーはこちらをじっと見ている。
「いいんじゃないか、お前、小動物によく好かれるし」
「フーは魔除けにもなるよ。だからいいんじゃない?」
みんな飼う気満々だ。
「そうだな、俺達が引き取る」
「ありがとう。その子の名前はそのままでフーっていうの。よろしくね」
フー、か。
こいつは他のやつと違うような気がした。
どこか、懐かしいような……
まぁ、それは置いといて
「フー、よろしくな」
「ワゥ〜」
そして、俺達は寝た。
「気をつけてね〜」
一夜明け、店主の女性に見送られながら俺達は古代遺跡へ再出発した。
もちろん、フーとともに。
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7.5話、終了です。
今度こそ古代遺跡へ向かいます。
8話をお楽しみに!
お読みいただきありがとうございました。
- Re:チェンジ・ザ・ワールド 第2章 ( No.20 )
- 日時: 2017/09/11 12:08
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
8話 不吉な予言
迷いの森を抜け、やっと古代遺跡についた。
さすが古代遺跡なだけあって、一部壊れていたり、苔が生えていたりする。
入り口は3つある。しかし1つは扉が開いていない。
「マッハとネヴァンの魔石を取ってからって感じだね〜」
「二手に分かれるか」
俺達は、二手に分かれた。
マッハの方は俺、オリガ、ミント。ネヴァンの方はフレイとフレイヤ。
「手に入れたら、ここに集合でな!」
「ああ。わかった。」
別れを告げ、中に入る。
松明の明かりだけが道を照らす。
迷うことはありえない1本道だが、罠が俺達を襲う。
「ワウ⁉」
オリガの肩に乗っていたフーが突然鳴く。
「矢が横を通り過ぎた…… って事は」
松明の明かりで奥にモンスターがいるのが見える。
あれは……スナイパーと呼ばれるモンスターだ。
小柄で闇に潜み、獲物を仕留めるまで矢を放ち続ける。
「見えた!」
オリガが魔法の詠唱を瞬時終え、スナイパー目掛けて氷球を放つ。
見事に命中し、スナイパーが光の粒となって消える。
「モンスターも人も、命ある者はこうやって元の場所へ帰るんだね」
「光の粒を見るとさ、なんかさ、ゴメンって思っちゃうんだ」
「そうか? だが………」
この刻を生き抜くためには犠牲も必要だ。
俺達が食べる食材も、住むための家具となる木材も、元となる者の命を刈り取っているだろう。
だからこそ、
「生き抜くためには必要な事だ。先を急ぐぞ」
「レオン、つめた〜い」
そんな茶番を繰り広げながら歩くこと10分。
魔石の間とも呼ばれる場所へやってきた。
「これがマッハの魔石だね。」
「さぁ、戻ろう!」
すると、俺のスマホに電話が掛かってきた。
耳に当てるとかなりデカイ音量で、
「魔石ゲットしたぜ! そっちはまだだろ?」
と、聞こえた。
「音デカすぎだ! ったく、鼓膜切れるだろ!」
「うわっ お前が怒ってる…… ゴメンゴメン。 今後気をつけっから後でな」
「わかった。」
電話をきる。
「ちょっとヤバくない?」
気がついたらスナイパーに囲まれていた。
きっとアイツのせいだろう。音に反応して出てきたのだろう。
「ここはひとまず、逃げた方がいい!」
来た道急いで戻る。
後ろから矢がたくさん飛んでくる。
「ん?扉が閉まり始めてる⁉」
全速力で走る。
地上へ全員出た時、扉が閉まった。
「よっ! お疲れさん」
「お前のせいだからな」
「す、すみません………」
フレイ達とも合流し、3つ目の扉へ向かう。
その扉に共鳴するように魔石が光り輝く。
すると扉は開いた。
道はなく、すぐ魔石の間だった。
手に持っていたマッハ、ネヴァンの魔石は浮き、空中で光を放ちながらモーリアンの魔石と合体し、バイヴ・カハの魔石へとなった。
召喚した時と同様に俺達の前に姿を現す。
「力を私達に示しなさい。」
バイヴ・カハが襲ってきた。
モーリアンは魔法で、マッハは剣で、ネヴァンは混乱や即死などの状態異常魔法で攻撃してくる。
「みんな寝てなさ〜い」
末っ子のネヴァンは笑顔で即死魔法を放ってくる。
「3ついただきぃ」
フレイ、フレイヤ、オリガが倒れていた。
「なんならフェニックス! お願い!」
ミントがフェニックスの魔石を空中へ投げる。紅く輝きフェニックスが現れた。
フェニックスが雄叫びをあげ、その場にいる者を炎で包む。
転生の炎。戦闘不能となった者を生き返らせ、敵を炎で攻撃する技だ。
3人は生き返り、再び攻撃しはじめる。
しかし……
「熱っ! もう終わり終わり! フェニックス従えてんなら大丈夫よね? 姉様?」
「そのようね。私達の力を良き道へ使うのならばいいでしょう。誓いますか?」
「もちろんだ。帝国に使われないようにするためにな」
「わかりましたそれでは……」
「よろしくお願いします」
マッハとモーリアンはがそういう中、ネヴァンだけは表情が暗かった。
「どうしたの? ネヴァン。戦いの時は楽しそうだったのに。」
「もしかして見てしまったのですか」
「うん」
そうしてネヴァンの口から語られた予言は、
「君たちの中の誰か、もう時期神のところへ帰るよ」
というものだった。
「つまり、誰か………死ぬの………?」
オリガが震える声で聞く。
ネヴァンは頷く。
「でも、未来は変えられるかもしれない。だから、頑張って」
「そうです。無限の可能性があります。貴方達には」
「生きるの。絶対にね!」
そう言ってバイヴ・カハは魔石になった。
「1度アジトへ戻ろうか。話はそこでしよう。」
暗い気持ちのまま、アジトへ戻ることにした。
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8話終了です。
なんと約1900文字! 長くなったのに終わり方がダークですみません。
9話にご期待ください………
お読みいただきありがとうございました……
- Re:チェンジ・ザ・ワールド 第2章 ( No.21 )
- 日時: 2017/09/11 21:03
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
9話 託された願いを胸に
俺達は反乱軍のアジトへ戻った。
「おかえり……ってなんかあったの?」
「実はね……」
ジェシィに全て話した。不吉な予言のことも。
「いつものみんなっぽくないね。それは予言でしょ?ぶち壊しちゃえばいいさ」
「でも……」
ジェシィは励ましてくれているようだが、俺達は気分が良くならなかった。
なぜなら、バイヴ・カハの予言は必ず的中してしまうからだ。
特に、死の予言は。
「いい加減にしな! そんなんじゃ、そんなんじゃ守るべきものさえ失うよ!
いつものみんなはどこに行ったのよ……
願いを託されたんでしょ? 院長や女王様、ジン君やルミネさんからも。
みんながこれでどうすんのよ……」
託された願いか……
俺達は確かに希望や願いを託されていた。
なのにどうだろうか。
俺達がへこんでいてはどうだろうか。
世界の何1つも変わらない。
それに今も帝国は活動している。
「これ、さっき届いた報告書。ディエナからだからね」
「読んでくれ」
「バイヴ・カハの魔石の次は、イフリートの魔石だって。ムスペルヘイムの」
「わかった。じゃあ行くね」
「せいぜい気をつけなさいよ。元気出して頑張って!」
「うん!」
毎回俺はジェシィには人を元気づける力があると思う。
それも俺達に託しているのだろう。
だからこそ、頑張らなくては。
都市ムスペルヘイムはボルケーノ火山の近くにある。
火山の熱を利用した温泉が人気の観光地だ。
そのため交通も発展しており、列車で数十分で行ける。
その列車に俺達は乗っている。
「わ〜 景色がすぐ変わる〜」
「オリガは初めてなの?」
「うん。いつも定期便で移動してたから」
オリガとミントとフレイヤは景色を眺める。まるで、遠足みたいに。
「お前はいいのか? Pマン弁当買わなくて」
「俺は…… いいさ………うぇ……」
「もしかして乗り物によわいのか?」
「ああ。そう……だ……」
はやくつかないか。もう限界だ…
『皆様、窓を絶対に開けないでください。ムスペルヘイムへ入りました』
車内アナウンスがなると辺りの景色が一変。
湯気がいろんなところで立ち、旗が立っていたりする。
「うお! 温泉卵だってさ。 食いに行くよな…… ってオイ!」
「もうダメだ……」
あまりにも気持ち悪すぎて気を失ってしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……」
「お目覚めかな?」
目がさめるとベンチに座っていた。
隣にはオリガが座っており、他に誰もいない。
「アイツらは?」
「先に行ったよ。」
「そうか。なら行くか。」
立ち上がり歩き出したら声をかけられた。
「あ、あの……お兄さんたちって強いですか?」
「え?」
声をかけてきたのは10さいぐらいの少年だった。
「何かあったの?」
「実は、陛下にイフリートの魔石が…… それで旅しているお兄さん達が先に行ってるんですけど」
「わかった。なんとなくだけど。」
「任せろ。」
「あ、ありがとうございます!」
ここは帝国の属国だ。
だからこそ急がなければ。
託された願いを胸に火山へ向かう。
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9話終了です。
時間がないのでここら辺で!
お読みいただきありがとうございました!
- Re:チェンジ・ザ・ワールド 第2章 ( No.22 )
- 日時: 2018/07/26 21:47
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
9.5話 隠し事
「じいちゃん達、大丈夫かなぁ」
俺とオリガと少年は火山に向かっていた。
少年によると、皇帝はもう行っているらしい。
「お前は待っていてもいいんだが、なぜついてくる?」
「それは……魔石を守る事が僕達、“炎の守一族” の役割だからです。」
「炎の守一族? あの召喚士の一族の中で属性を司る、別れた一族の?」
「はい。そうです。正確には、別れたのではなく、契約した相手が違うのですが…」
「そっかぁ、神と契約したんだよね〜 そっちは。」
「お姉さん、何か知っているんですか?」
「別に何も〜 まぁさっさと行こう!」
オリガは何か知っているのか?
一瞬、裏が見えた気がする。
今思うと、家柄や住んでいた所などが俺、ミント同様にオリガも不明だった。
院長は知っていたみたいだが、俺達には教えてくれなかった。
思い出そうと思っても思い出せない……まるで霧がかかったかのように。
「考えすぎ、注意ね」
「なんの…… イテ!」
頭上注意の看板に頭をぶつけた。
「もう火山の入り口ですよ、気をつけてくださいね」
「ああ…… そうだな。先に行っていてくれ」
「うん、わかった。」
オリガ達が先を行く。
(アイツは一体何を隠しているんだ?)
さっきから何かが違う。
声のトーンも調子も。
アイツは何か隠し事をするのがうまい。
だが、大抵はミントにばれてしまうのだが…
でも、あんな風に隠すのは初めてだ。
アイツの使う魔法のように冷たい声。
きっと何かあるに違いない。
「ワウ〜?」
気がつくと足元にフーがいた。
「なんでもないさ。」
「きゃぷ〜」
フーと共に後を追う。
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9.5話終わりです。
オリガはいったい何を隠しているのか……
記念すべき10話をお楽しみに!(明るい話になるとは限らない)
ここで、チェンジ・ザ・ワールドの略を思いつきました!
それぞれの頭文字をとって『CTW』 どうでしょうか。
読みは『チェンザワ』です。
ここで読者の皆様に質問!(作者はどんな人が読んでいるのか気になりますし…)
・ここまでのキャラクターで推しは誰?
・自分がもしフーを飼うなら名前は?
などなどコメントにて1つでもいいので書いてみてください!
逆に、作者への質問もOKです。
期限はありませんのでいつでもどうぞ。
お読みいただきありがとうございました。
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.23 )
- 日時: 2017/09/17 19:24
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
今回から題名に第何章かを書かなくなりました。
10話 帝国の野望
「おじいちゃん、ただいま。」
「お、おう、アイヤか…」
無事に先に行っているお兄さん達……フレイ達と合流した。
「どうして物陰に隠れているの?」
「盗み聞きってやつだよ。ほれ、静かにせい。」
さすが火山の中。
マグマが噴き出ており、暑苦しい。
汗が無限に噴き出る。
そんなことに耐えながら耳をすますと声が聞こえてきた。
「残る鍵はあと5つ。そうだよな?」
「うん、残っているのはコールドとリヴァイアサン、ウェンディーネとオーディンとバハムート!」
今回は皇帝とパナソではないらしい。
俺達ぐらいの男女がいた。
「そういや、これ集めてどーすんだっけ?」
「封印を解くんでしょ! 陛下が力を手に入れるために。 そして神に近くなるために!」
ボケとツッコミという感じか。
女の方がツッコンでくれるおかげでいろいろ知れそうだ。
「さてと、さっきから人の気配がするのよね〜」
「そうだな、フーの匂いもする。」
さっきから肩に乗っていたフーがブルブルと震えだす。
喰われる……と思ったんだろう。
「見えた!」
「さっすが〜 千里眼のリガン!」
「出てこいよ、剣舞のレオンに氷槍のオリガ、そして炎の守一族!」
まさか、ここで二つ名で呼ばれるとは思いもしなかった。
それに、あいつらをどこかで見たことがある。
確かその名は……
「おひさおひさ〜 帝国のデコボココンビのリガンとイサチ!」
「やっぱりお前だ! もう騙されねえぞ!」
オリガとリガンには何かあったらしい。
だがそれは置いといて、俺達も姿を現す。
「やっと皆さん出てきたって感じ? ならばこれでオサラバよ。 行っけ〜 イフリート♡」
召喚されてイフリートがでてきた。
「ウオォォォォォォォォォォ」
咆哮を上げ、こちらを睨む。
炎の守一族がいるのに。
「ど、どういうこと? おじいちゃん……」
「彼奴はお前の知るイフリートではない。彼奴にはこちらを焼き尽くすことしか残っていない」
「ってことは目を覚まさせればいいよね?」
すると、イフリートの足元から岩が突き出てきた。
高くなり、イフリートをどんどん上にあげる。
そして途中で岩は砕け、イフリートがデコボコの岩肌の地面へ直撃した。
「土属性魔法か…… しかし効かぬぞ。 イフリートは。」
「水属性魔法なら効くんだぜ。」
「そんなんわかってるよお兄ちゃん!」
「こっちのことも忘れんなよ!」
気がつくと、両手に炎を宿したリガンが俺に向かって飛んできていた。
瞬時に剣でリガンの拳を止める。
「誰が忘れたといった?」
「うわぁ、相変わらず怒ると怖いねー」
「怒っていないけどな」
振り払う。
剣を構え魔力を剣に込める。
成功したことはあまりない。だが、やるしかない。
一か八かの勝負で決まる、あの技を。
「剣舞技 龍水!」
剣に水が宿り、リガンに向かって剣を振るう。
すると水が龍の姿のようになりリガンを襲った。
剣舞技。それは剣に魔力を込め剣を振ると同時に魔法を発動させる技だ。
俺の魔法の属性は無のため、他の属性はなかなかできなかった。
だが、ジンは『想いが強ければできる』と言った。
当時はわからなかったが、今ならわかる。
この技は、『守るべきものへの想い』が強ければできるということが。
「ぐはぁ… お前もできるようになったんだな」
「謎が解けたからな」
「じゃあ、イフリートに任せて撤退するか。おい、イサチ。撤退……ってあれ?」
「イサチならもう逃げたわよ」
「何だって⁉」
「でも、あなたは逃さないわ」
ミントが笑顔でリガンへ寄る。鞭をビシッと引っ張って。
「うわぁ…… ヤベェのでてきた…… 俺の今は亡きオカンに似てる……」
嫌なことを思い出したかのような顔をしてリガンは瞬間移動魔法を瞬時に唱えて撤退した。
「なーんだ、つまんないのー」
「まだ強敵が残っているけどな」
再びイフリートへ振り向く。
そして武器を構えたのだが……
「お主達、これは炎の守一族の使命だ。 下がっておれ。」
おじいちゃん……フアンがイフリートへ近づく。
イフリートは咆哮を上げた。
より力を高めたのだろう。
「イフリートよ、落ち着け。お主はそのようなものではないだろう?」
「ウオォォォォォ」
イフリートは勢いをつけたままだ。
それでもフアンは語る。
「思い出せ、召喚士との約束を。 守るべきもののために力を使うという約束を」
一瞬だが、イフリートの勢いが弱まる。だが、再びつく。
そして、フアンに向けて、必殺技のヘルファイアをはなつ。
「おじいちゃん‼」
「ダメだ、アイヤ! 来るんではない! そのほかの者だ」
ヘルファイアがおさまると、フアンの服はほとんどが焼け、体は火傷していた。
それでもフアンはイフリートへ近ずく。
傷む体を引きずるように歩きながら。
そんなフアンを容赦なく攻撃するイフリート。
まさにその姿は、地獄の炎を操る魔獣だった。
弾き飛ばされたり、燃やされたりしながらもフアンは立ち上がり、イフリートへ歩いて行く。
「この命、燃え尽きても、お主をもとに、戻す!」
立ち上がるもすぐに膝をついたフアンにアイヤは泣きながら近づく。
「もう嫌だよ…… おじいちゃん…… せめてこれ使って……」
アイヤの手には回復薬が握られていた。
「いらん! アイヤがピンチの時に、使いなさい。さあ、もど、れ」
アイヤが戻ってくる。
「なんでお兄さん達はおじいちゃんを助けないの‼ なんで‼」
「……」
俺達は黙り込んでしまう。
アイヤの気持ちもわかるが、この戦いには俺達は加わってはいけない。
なぜなら、
「この戦いはね、フアンさんの一族の長としての誇りがかかっているの。」
「だとしても! おじいちゃんが… 死んじゃうよ…」
「アイヤ、おじいちゃんの眼をよく見てごらん」
ミントが優しい声でアイヤを納得させる。
「あの眼には覚悟が現れているでしょ? それだけおじいちゃんには大切な戦いなの。もし私達が助けたらあの眼の輝きはなくなっちゃうし、おじいちゃんの誇りを一生傷つけちゃうの。だから、ね」
やっとのやっとでフアンはイフリートの元へたどり着く。
イフリート胸に手を当てて語る。
「イフリートよ…… おも、い、だせ…… お主の誓いを……」
フアンの手が煌る。
すると、イフリートの勢いがおさまった。
「よか、た…… 思い出した、の…… だな」
イフリートが頷く。
「フアン様…… 申し訳ありません…」
「いいのじゃ…… ぐはぁ」
フアンが倒れる。そして、アイヤと共に駆け寄る。
「おじいちゃん‼」
「フアン様‼」
「もう、わしはやりきった。悔やむことなどないぞ。だから、イフリート。誓いを忘れるな。そして、アイヤ。お主を、お主を1人にしてすまん。本当にすまん」
その声はフアンの命の灯火のようだった。
「もう泣くな。笑え。」
アイヤががむしゃらで笑う。
「さようならだ。アイヤ。元気でな」
「おじいちゃん‼ おじいちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん」
アイヤの悲鳴混じりの声が火山に響いた。
続きます
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.24 )
- 日時: 2017/09/17 20:13
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
お知らせ
第10話なんですが、文字化けしてしまいすみません。
正しくは「!」が入ります。
ん?なぜ直さないかって?
実は、いつも使っているパスワードを入れたはずなんですが、
どこかで間違えてしまい、編集できないのです。
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.25 )
- 日時: 2018/01/23 18:55
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
10話(2)
光の粒となって神のところへ帰って行くおじいちゃんの亡骸を前に、アイヤは泣き叫ぶ。
それと同時にイフリートは消えた。
「こそこそ(レオン、慰めてやれよ)」
フレイが寄ってきて、俺に言う。
「こそこそ(はぁ? 俺にできるわけないだろ)」
「こそこそ(そこをなんとか…ね? 自分の経験とか入れてさ〜)」
自分でやれよ。
「こそこそ(ま、頑張れ!)」
「うわ、ちょ、おい!」
背中を押された。ここまできたら、やるしかない。
アイヤの隣へ歩いて行く。
目線をだいたい同じぐらいにして話しかける。
院長がよくやっていたこの方法で。
「認めたくないよな。大切な人がいなくなるのは」
アイヤは頷く。
「俺にもあったんだ。だから、お前の気持ちもわかる。」
「お兄さんも?」
「そうだ。忘れたことなんてない。だって、俺をかばって死んじまったんだから。」
このことはまだ誰にも話していない。
「ま、とりあえず、ここを出よう。暑いもんな」
そして火山を後にした。
向かったのはアイヤの家。
普通の家だが、かなり綺麗だった。
「さっきの話の続き、聞いていい?」
「もちろんだ。」
別にいいよな? 言ったって。
「4年前のことだ。今もなんだが俺は反乱軍に所属しているんだ。そこで、ジン・レンロスってやつに出会ったんだ。ちなみに剣舞技は全部、そいつに教わったんだ。」
「ジン先輩はね〜 帝国の兵だったんだけど色々あってこっち側になったんだよ」
「それでジンといろんなところをまわったんだ。色々したんだ。あの時は楽しかった。でも、ジンは俺をかばって死んじまったんだ。まぁ、そんなところだ。」
「お兄さんもですか…」
「ここにいるやつはだいたいそんな過去を持ってる。だから、そんな思いをするのはお前だけじゃない。覚えとけ」
「ありがとうございます。こんな、僕のために」
「じゃ、そろそろ行くか。」
「本当にありがとうございました! 魔石、取り戻してくださいね」
「お、おう! じゃあな〜」
いえをでた。
「ジンくん、そうだったんだ…」
「これ以上深く入らないでくれ。」
「もちろんだよ。で、話変わるけど、帝国の…いや、皇帝の野望がわかったね。」
「そうだな。」
あのコンビが話してくれたおかげで、だいたいのことがわかった。
「皇帝は魔石を集めてとある扉を開き、力を手に入れ、神に近くなる」
それが野望のようだが、謎が深まる。
扉はなんなのか、神に近くなり何をするのか。
とりあえず情報を共有するためにアジトへ戻ることにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
長すぎる10話、終了です。
そして、第2章も終了です。
まだまだ旅は続きます。お楽しみに!
お読みいただきありがとうございました。
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.26 )
- 日時: 2017/09/23 20:51
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
第3章 真実
11話 自分たちの過去
「なーるほどね。そんな事があったんだ」
「観光とかそっちのけだったんだよ〜」
「それは置いといて、オレ達は次はどこへ行けばいいんだ?」
情報共有という形で俺達はアジトへ戻っていた。
ジェシィはお土産に期待していたようだが、俺達が持ってきたのは土産話。
気分が浮かないジェシィは会話を続けた。
「極寒の地の雪の国。スノーランドだよ。そこでコールドを手に入れてね〜 あと、アジトへ戻らなくても大丈夫だから。そのまま次に行っちゃって。」
「うん。わかった。今度はお土産持ってくるね。」
「よろしくだよ」
ジェシィはどこかへ行ってしまった。
ドアが閉まると同時に院長室の本棚を見ていたオリガが声を上げる。
「どうしたんだ?」
「探し物を見つけたんだ」
取り出されたのは古いノート。
院長直筆のようだった。
開くと手紙が挟まっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この手紙を読んでいるということは、私はもういないのですね。
このノートは今まで内緒だった(個人情報だからそうですが…)あなた達の過去が載っていますよ。
いいことばかりではありません。ですが、あなた達は知っておくべきです。
自分たちの過去を。
あと、一人一人手紙がかいてあります。
そこには
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
手紙が古いせいか文字が消えかかっている。
「院長、こんなやつ残していたのか」
「うん。前に私は見つけて読んだよ。自分のこと、全部じゃないけど知れたんだ」
「じゃあ、読もっか」
そうして最初に出てきたのは、フレイとフレイヤのことだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
11話終了です。
ここから先は1話ずつ、みんなの過去についてのお話を書こうと思います。
忙しいので、更新が遅れると思います。
すみません。
お読みいただきありがとうございました
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.27 )
- 日時: 2017/09/24 19:13
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
12話 フレイとフレイヤの過去
自身達の過去が書かれているというノートを見つけた俺達は、雪の国へ行くための地下鉄に乗りながらそのノートを読んでいた。
「ふ〜ん、な・る・ほ・ど」
「私が知らない情報まで載ってる…」
2人はじっくり読む。
「まとめると?」
フレイは自慢げに「説明しよう」というと、自らの過去を語り出した。
「俺達は小さな国、スモールランドを治めていたウォーリア王家の生き残りってわけだ。で、スモールランドは帝国により滅びたんだってさ。あの世界をまとめる国レヴェリーの要請で派遣された反乱軍の人……院長は、重症を負った俺達を見つけて引き取ったんだってさ。」
「私とお兄ちゃんはお父さんとお母さんがかばってくれたおかげで生き残れたんだって。記憶にないけど…」
俺は、フレイ達が孤児院にやってきた日のことを思い出した。
当時孤児院にいたのは、俺だけだった。だが、ある日院長に呼ばれて院長室に行ったら頭に包帯を巻きつけたやつと、泣き虫のやつ……フレイとフレイヤがいたんだった。
「ま、そんくらいにしといて次に行こうぜ。」
その次に載っていたのはミントのページだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こんな感じで進めていきます!
では、次回!
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.28 )
- 日時: 2017/09/28 20:55
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
13話 ミントとオリガの過去
「ふむふむ。そうだったのね〜」
ミントもじっくりとノートを読む。
「簡潔に言いますと、私には召喚士の血が流れているっぽい。まぁ、出身が召喚士の里だからね。で、帝国により滅びてかろうじて生きてたから孤児院に来たんだって。」
「ってことはほんと小さい頃に会っていたかもね」
「え?」
「だって私の本当の故郷は召喚士の里だもん。ほら、次のページ」
オリガの言う通り次のページへ進む。
「私はさ、お母さんが里の人でお父さんが雪の国の人なんだ。めっちゃ小さい時は里にいたけど5歳くらいになってから雪の国の領地だけどかなりはずれのトコに住んでたんだ。その頃に里が帝国に目つけられて襲われたの。その時に私ら家族もいて逃げたけど跡を追われて両親は殺られちゃったんだって。」
「確かにそう書いてはあるわね。でもなんで……」
「『召喚士はいずれ脅威になる』からだって。」
「……」
「私も詳しいことは知らないんだ。何か忘れているような気がするけど。まっ、次に行こ〜」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ほとんどセリフの13話終了です。
次はレオンの過去。どんなものなのかッ
お読みいただきありがとうございました。
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.29 )
- 日時: 2017/10/02 18:50
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
14話 レオンの過去
「過去を知る時がくるとはな。」
渡されたノートを読む。
そこにはわかりやすく丁寧にまとめてあった。
「俺が……幻獣の民?」
「えぇ? マジの話?」
「こらこら! いくら個室と言ってもここは電車の中ってこと忘れないの! はい、続けて」
俺が幻獣の民だというのは本当なのだろうか。
だとしてもなぜここにいる? 別の次元のはずなのに。
「正直、俺にはよくわからない。過去の記憶がないんだ。だから、ここに書いてある事を頼りに探してみようと思う。」
「どうやってだ?」
「幻獣王オーディンに聞く。どの道会う運命だからな」
「単純だね〜」
『間も無く雪の国〜 雪の国〜 お忘れ物のないように御気を付け下さい』
「さぁ ついたね!」
オリガにとってこの国は、久しぶりに来た故郷だ。
ちょっとテンションが上がっている。
その時だった。
バタンッ!
「フレイヤ、大丈夫?」
「たぶん、大丈夫…」
ミントが駆け寄りフレイヤの首元に手をあてる。
「すごい熱みたい。医者のところへ行った方がいいかも。」
上がっていたのはテンションだけではなかった。
フレイヤはずっと我慢していたらしい。
「休んでいたらよかったのによ。」
「だって、そしたら…」
フレイヤは涙目になっていた。
「よし、わかった。フレイヤ、歩けるか?」
「うん、なんとか」
フレイヤは立ち上がった。
「医者って言ったな。とっておきの奴がこの国にいるんだ。そこでいいか?」
「うん… 私、頑張る!」
俺達は極寒の候の中をフレイヤを気遣いながら医者の元へ急いだ。
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.30 )
- 日時: 2017/10/09 22:32
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
また、更新が遅れます。
(作者が今週テストがあるため)
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.31 )
- 日時: 2017/10/12 18:10
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
15話 医者の元へ
あれは2年前だっただろうか。
ジンと任務を遂行している途中に俺が負傷したのは。
あの時助けてくれたあの人は、今もいるだろうか。
コンコンとドアを叩く。中からは「はーい、いいよ」という声がした。
通常よりも分厚いドアを開けると暖かい空気が溢れた。
中に入り、フレイヤをベッドに寝かせると声がした。
「お、久しぶりだね。」
奥から出てきたのは白衣の男。
間違いない、あの人……シドさんだ。
「その子が患者さんかな? どれどれ…」
シドさんはフレイヤの様子を見る。
「わかったよ。これは温度差が原因の高熱症。レオン、どこからここに来た?」
「緑の国、反乱軍アジトだ」
「なるほど、なら寝ていれば大丈夫。そっちはあったかいけれどこっちはけっこう寒いでしょ。だから体を暖めるために体温が自然と少し上がるけど、この高熱症はかなり上がるんだ。」
「ふぅ、一安心だな。……で、気になったんだけどよ、レオンと知り合い?」
「そういえば、色々と僕の事を言ってなかったね」
シドさんは一息ついて話を続けた。
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15話終了でーす。
明日テストがあるんでここらへんで。
次回もよろしくお願いします。
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.32 )
- 日時: 2017/12/14 18:36
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
16話 より詳しく。
「僕は、シド・メロ。君達の2つ上の19歳さ。今はこうして医者をやっているけど、2年前は帝国の飛空艇部門で設計・製作をしていたんだ。レオンとは旧知の仲的な感じさ」
「なんでここに?」
「追放された…と言うのかな。僕と皇帝が求めていた飛空艇の在り方が違かったんだ。僕は各地を繋ぐ飛空艇を求めていたからさ、皇帝が求めていた戦闘に優れた飛空艇を作れって言われた時にね…… まぁ、死は免れたからいいけど。」
ところどころ笑みを浮かべながらシドさんは自分の事を話してくれた。
「そういえばレオン。君の言っていた仲間達って」
「ここにいる奴らだ」
「奴って、ヒドイぜ」
それから、俺以外の奴はシドさんに自己紹介をした。
シドさんは全部聞いてくれていた。
「みんな、色々とあるんだね。ところで旅しているみたいだけど、目的は?」
「打倒皇帝ってところかな。正確には止めるって訳だけど。」
「皇帝だけじゃ何も変わらないよ。」
「え?」
「君達は知らないようだね。帝国の本当の中を」
シドさんは周りを確認して話してくれた。
帝国の本当の中をより詳しく、見ていた者として。
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.33 )
- 日時: 2017/10/27 20:33
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
17話 帝国の中では
「だいたいの事は先輩から聞いたんだ。そのあと僕が独自に調べてわかった事が2つある。」
薬品棚の隣にある本棚からシドさんはとある本を取り出した。
本というよりは、ノートに近く、使い込まれているようだった。
「1つは皇帝について。僕達が入ったときには皇帝が豹変していたっていうけど、実際はわからないんだ。」
「なんで?」
「どこにもいなかったんだ。玉座にも、国にも。だからここ数年は何も起きなかったんだ。」
「へ〜 それで帝国が緩かったんだ。で、行方誰もしらないの?」
「1人だけ知っていると思われる人がいる。皇帝の側近、パナソなんだ。」
確かにあの男は何か知っているようだった。
戦っていてそう伝わってきた。
「色々とあの人、怪しいんだ。急に地位が高くなったり、神話とかに詳しいし。それに……」
『帝国を操っているのは、パナソなんだ。』
シドさん曰く、皇帝が全ての元凶ではないというのだ。
「証拠はあるのか?」
「あるよ。帝国が軍を動かすときは皇帝のOKを貰わないといけないんだけど、貰っていないで動かした事。」
「例えば?」
「召喚士の里を滅ぼしたときとか。全部、パナソの意図なんだ。何を企んでいるかは知らないけど…
ま、1つ目はこんな感じ。」
「じゃあ、2つ目は?」
「2つ目は… また今度。」
「なぜだ?」
「帝国の飛空艇が見えたんだ。だから…」
「そうか、なら行ってくる。女王様のところへ。」
「行ってらっしゃい。気をつけるんだよ。」
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皆さんお久しぶりです。
あまり時間がないのでクオリティが低くて申し訳ございません。
なんとか書きますのでお待ちください。
お読みいただきありがとうございました。
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.34 )
- 日時: 2017/11/01 21:26
- 名前: YCの人 (ID: TdwH/e73)
設定見て思った事・・・
光属性と闇属性はどこに吸収された?
あ、投稿してきました
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.35 )
- 日時: 2017/11/01 21:54
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
YCの人さんへ
募集スレにて返信しときました。
光と闇については、忘れていました。
なので光→聖にして追加しときますね。
- Re: Chage the world ( No.36 )
- 日時: 2017/11/05 20:32
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
18話 陛下の様子
「ダメなの?」
俺達はコールドの魔石を得る為に、城へ来た。
しかし、門番が入れてくれないのだ。
「陛下にお許しを貰わなければ行けません。」
「じゃあ、貰ってきて。これ見せれば大丈夫だと思うから」
オリガが取り出したのは形見の槍。群青色に輝くその槍を門番は受け取り、中へ入って行った。
それから約5分。
門番が俺達の前に戻って来た。
「お許しは貰いました。ですが、玉座の間へ行くのはこの槍の持ち主だけにしろとの事です。他の皆様は、応接間にてお待ちください。」
案内され、暖かい応接間へ着いた。
暖炉があり、シャンデリアもある。豪華な部屋だ。
「じゃあ私、行ってくるね」
オリガは玉座の間へ向かった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
玉座の間までの道のりはかなり近かった。
赤い絨毯はふかふかで、廊下に飾ってある絵画はどれも美しかった。
「ここだよね?」
扉の前にたつ。
呼吸を整えて大きな扉を開いた。
「よく来たな、我が友の娘よ」
「お会いできて光栄です。陛下」
「さて、何しにここへ来おった?」
「魔石を帝国から守るために来ました」
「お主は、その力を正しき道で使えるか?」
そんなの実際になってみないとわかんないじゃん。
そう思いつつ私は会話を続ける。
「必ずとは言えません。ですが、できる限りは尽くします。」
私、変なこと言ったかな?
気まずい沈黙が訪れる。
「私、変なこと言いましたか?」
すると陛下は首を横に振った。そして、ニコッと笑い
「どんな反応をするか楽しみだっただけじゃ。ほい、コールド。そろそろ姿を現したらどうじゃ?」
と言った。
すると白い霧が辺りをおおい、人影が現れた。
指を鳴らす音が聞こえたのと同時に、陛下の隣に水色っぽい肌の女性が現れた。
「あら、大きくなったのね。久しぶり」
コールドだった。
「私、あったことありますっけ?」
「ふふ、小さい頃にね。そして敬語なーし!」
調子のいいお姉さん的な感じだった。
「ヨロシク、コールド。」
「さーて、思いっきり行くわよ! 覚悟しなさい! 王様!」
「え?」
王様と戦う? どうして?
すると、王様の姿が変化した。
「あーあ、つまんないの。もっと狂わせたかったんダケド」
そこに姿を現したのは、赤い瞳に白い髪をはやした女…シトリーだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
オリガが出て行ってから数分後。
俺達は暇でしょうがなかった。
「暇だよな〜」
「なんか起きないかなぁ〜」
するとドアをノックする音が聞こえた。
「ん? 入っていいよ〜」
ドアを開け、中に入ってきたのは白いドレスを着た少女…次期女王のヴァティだった。
「どうしました?」
「あ、敬語はいいです。旅の方にお願いがあって…」
ヴァティはしっかりと扉を閉めて、話してくれた。
「実は、お父様が最近おかしいのです。」
「どんな感じに?」
「まるで違う人のように… 毎朝やっていたフー太郎とラジオ体操をする事もやってなくて…」
「確かにおかしいな。ここの王様、よくレヴェリーで世界会議した後とかにラジオ体操を死ぬまでやってやるって言ってたのにな」
そんな時だった。
玉座の間の方で金属がぶつかり合う音が聞こえた。
「どうやら、行くしかないようだな。フレイ、ミント、行くぞ」
「もちろんだ!」
「そうだね」
俺達は、ヴァティ姫を守りながら玉座の間へと向かった。
- Re: Chage the world ( No.37 )
- 日時: 2017/11/12 18:57
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
19話 イラつくやつ
「狂わしてどうしたかったの?」
オリガは槍を構えてシトリーに聞く。
「ふふ、ヒ・ミ・ツ」
イラつく。
今までにいろんな人を見てきたが、こんなにもイラついたのは初めてだった。
なんだろう…… あの微笑み方、喋り方と上から目線。
記憶に少しある。
先に攻撃したのはコールドだった。
氷塊をシトリー目掛けて放つ。
それと合わせて私も追撃する。
コールドのおかげで辺りは凍り始めている。
氷属性使いにとっては戦いやすく有利な環境だ。
途中、滑ったりするけど。
「なかなか強いわネ」
「その語尾カタカナにすんのホント、イラつくんだけど」
イラつきで攻撃力が上がっているような気がする。
だが、シトリーには当たるどころかかすりもしない。
シトリーはさっきから避けてばっかりだ。
まるで何かを仕掛けているように。
「きゃぷ〜」
肩に乗っていたフーが酔っているようだった。
さっきからずっと玉座の間をぐるぐるまわっているからだろう。
「フー、柱の影に隠れてたら?」
「ワゥ〜」
ピョンっと肩から飛び降り去っていった。
「そろそろかな」
シトリーは手に魔力をため、コールドに解き放った。
「コールド!!」
「どうやらあたしはここまでのようね… うぅ」
コールドが魔石に戻ってしまった。
その魔石をフーが素早くキャッチして柱の影に隠れた。
「よし、ここで邪魔者はいなくなったわネ〜」
「魔石が目当てじゃないの?」
シトリーは空中に浮き、再び手に魔力をためた。
「そうよ。今回はね」
「じゃあ何しに」
「あなたを攫いにネ」
「え?」
シトリーは魔力を床へ解き放った。
すると、なかったはずの魔法陣が紫色に光だした。
だんだん力がなくなっていく。
ついには、槍を支えにして膝をついてしまうところまでなくなってしまった。
もう立てない。意識だって正常に保てない。
このままシトリーの思惑通りになってしまうの?
イヤだ。絶対、イヤ。悔しいもん。
でも、もうダメかも。やっぱ1対1になるといいことなんて無い。
だから、助けて…… レオン……
そこで意識は消えてしまった。
「やっと落ちたのネ〜 さっさと落ちてしまえばラクなのに」
倒れたオリガを見てシトリーは思う。
『コイツは使う価値がある』と。
扉が開く。
そこにはヴァティ姫とイケメン君。
「ふふ、待っていたわヨ〜 でも、もう時間切れ」
戦いは今度にしましょ。
- Re: Chage the world ( No.38 )
- 日時: 2017/11/12 21:08
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
20話 先へ
「でも、もう時間切れ」
扉を開くと王様の姿はなく、白い髪の女しかいなかった。
「オリガ!? あなた、何したの!」
ミントは鞭を構える。
それと同時にフレイも拳を構える。
「お、お父様は?」
ヴァティ姫が震える声で問う。
「お父様はもういないわヨ。とっくの前からネ」
「え…」
9歳のヴァティ姫には辛かったのだろう。
その場で泣き崩れた。
ミントはヴァティ姫を慰めるように近寄りしゃがんだ。
「さてと、この子は頂いていくわ。次会うときは、どうだろうネ〜」
シトリーが指を鳴らすと倒れていたオリガと共に消えた。
「何事だッ!」
後ろを振り向くと、兵士たちが俺達を囲んでいた。
すると、兵士長らしきものが現れた。
「玉座の間での戦闘行為は禁じられている。よって雪の国憲法64法9条において、貴様達を牢に入れる。」
「ま、まって! この者、た、達は…」
「姫様、ご安心ください」
「ち、違うの…」
ヴァティ姫の言葉を聞かなかったかのように俺達は牢に入れられた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ったく、暇だな」
石造りの牢は暗く、ろうそくの火がついているだけで何も無い。
雪解け水がポタリと天井から漏れる音しかしないので、とてつもなく暇だ。
「なんか起きねぇかな?」
「もうとっくに起きているでしょ、いろんな事が」
そう、決して暇ではない。
オリガは攫われ、牢には入れられ…… などとたくさん起きている。
「なぁ、これからどうすんだ? レオン」
「…」
これからどうするだって?
まずここからでて、オリガを助けて…
ん? その前にここからどうやって出るんだ?
ヴァティ姫はあの調子じゃ言えないし…
「オイ、聞いてんのか?」
「あ、すまない。いろいろ考えてたんだ」
「珍しいね〜 そんなに考えるなんて」
珍しい?
俺はいつもいろんなことを考えているのだが。
ただ、最悪な状況などを考えてしまうのだが……
「でもさ、珍しくもないかも。最近そんなことがなかっただけで」
確かにそうかもな。
最近はそんなことがなかった。いつもアイツ…… オリガが話しかけてくれたから。
アイツは俺を見るとニコッと笑って話しかけてくれた。
時には、それが俺の心の支えになっていた。
「アイツがいないだけで俺は変わるんだな…」
「ん? 急にどうした」
「あ、独り言だ。独り言」
いなくなってから初めて気づく。
それはこんな事なのだろう。
じゃあなんだろうか。
言葉にできなくて、今までに感じた事のないこの気持ちは。
「お兄ちゃん達、元気?」
檻の向こうを見るとフレイヤとシドさんが立っていた。
おまけにフーも。
「ど、どうしたんだ?」
「姫様から聞いたんだ。いろいろあったんだね。」
シドさんは鍵を開けてくれた。
「いいの?もう出て」
「いいってさ。コールドのおかげだからね〜 兵士を説得してくれたんだから」
外にでる。
「全部聞いているのか」
「うん。助けに行くんでしょ」
「あぁ。もちろんだ」
「そうかい、なら行こう。心当たりがあるんだ。だから、ついてっていいかい?」
「シドさんが!? 歓迎しますよ」
「さんはいらないよ。呼びつけでいいから。さぁ、行こう!」
シドが仲間に加わり、オリガを助けに帝国にある研究所へ向かう事にした。
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ミントは、前方を歩くレオン達を見てフレイヤと話していた。
「なんかさ〜 レオンが変わったよね」
「確かに。明るくなったっていうのかなぁ? 」
「そうかもね。オリガのおかげかもね」
「うんうん! 両思いになれるといいね〜 」
「きっとなれると思う!」
「楽しみだなぁ〜 私、こういうの好きだから」
「フレイヤ、遅れてるぞ」
「はーい」
2人は楽しみにしながら前に追いついた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
第3章終了です。
期間が空いてしまってすみません!
(テストやら大会やらいろいろあったので)
第4章では、いろんな事が起きます。
え、何がだって?
1つ言うなら、オリガの恋の発展です。
恋になんの興味の無い作者ですが、頑張ってみます。
暖かい目で見てください。
お読みいただきありがとうございました。
- Re: Chage the world ( No.39 )
- 日時: 2017/11/13 20:59
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
20.5話 いつから
ここはどこ?
目を覚ますと、どこを見ても真っ白い部屋にいた。
窓や扉は無く、完全な密室だった。
「脱出不可って感じ? なら壊せばいいかな。 ん?」
動けない。それに魔法も使えない。
気づけば手を特殊な縄で縛られ、上から吊るされていた。
足の指先が少し床につくが、動く事はやはり出来なかった。
「なんなのよ、コレ…」
捕まるってこんな感じなんだ。
自由が無くて、この先どうなるのか不安になってくる。
覚悟を決めて諜報部員になったはずなのに、実際なってみるとかなり不安だ。
心が落ち着かない。こんな時こそ冷静にならなきゃいけないのに。
1人でも大丈夫って思ってたのに、いつから私はこうなったのだろう。
やっぱりみんなに再会してから? 違うような気もする。
じゃあやっぱり…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
研究所…… 正式名称はミテス監獄。
本来なら重罪の者が入れられる場所なのに、最近は皇帝に逆らった者が入れられているらしい。
中では何が起きているのだろうか。あまり想像したくはないな…
「おーい、聞いてるか?」
「ん?なんだ?」
雪の国の宿屋の100号室。
明日に備えて俺達は宿屋に泊まっていた。
「最近しゃべんない事多いな、悩みあんのか?」
「必要な時以外は喋ってないつもりなんだが」
「そうかな? 僕はなんか別の理由がある気がするよ」
別の理由?
それは、この気持ちの事か?
「お前さ、オリガがいなくなってから何かヘンだぜ」
「そ、そうか?」
「なんつーのかな、暗〜い人みたいに見えんだ。ん?もしかして、お前、オリガの事……」
「そういうのも少しあんのかな、でも、なんか違う気がする」
「お、認めた。じゃあ何が違うんだ? 」
「わからない。だから、考えてたんだ」
「ふ〜ん、きっとそれ、オリガにあったらわかるんじゃないか?」
「さぁな… やっぱりわからない。」
俺はいつからこうなったんだ?
最初はいつも明るく、おせっかいなやつだと思ってたのに。
アイツは、俺にとってなんなんだ?
- お知らせ ( No.40 )
- 日時: 2017/11/24 20:23
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
お知らせです。
次回21話は、
作者がリアルの方で忙しいので(部活、実テ… など)
12月7日以降に更新予定です。
楽しみにされていた方、その他の皆さま方
申し訳ございません。
- Re: Chage the world ( No.41 )
- 日時: 2017/12/06 21:05
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
21話 シルフ村にて
雪の国から帝国まではかなりの距離がある。
人間の徒歩で行けば、数日はかかるだろう。
そのため俺達は、飛空艇の定期便があるシルフ村へ行くことにした。
「この山登るんだよね…」
シルフ村は雪の国から約5キロのところにある。
山の山頂にあり、行くには山を登るか…
「ん? エレベーター運行時刻予定表だって」
エレベーターがあるらしい。
「お前、エレベーターは大丈夫なのか?」
「たぶん大丈夫だ。」
「ふ〜ん、飛空艇は?」
「駄目だ。絶対。」
「お、きた〜 乗ろうよ」
山の中を垂直に上がるエレベーターに俺達は乗った。
中は普通のエレベーター。快適なものだった。
「ここがシルフ村なんだね。帝国と位置関係は一緒だけど、ここもいいね」
「空気が美味し〜 」
村というよりは、街のようだった。
石レンガの家が建ち並ぶ様子は、活気のあった頃の灯の街に似ている。
風が強いのを利用しているのか、風車が多く見られる。
人々はみな、いきいきとしていた。
「定期便の時間までまだまだあるから、村でもまわろ〜」
「じゃあ、私達まわってくるね」
フレイヤとミントはどこかへ出かけて行った。
「オレ達はどーすんの」
「僕は飛空艇のパーツでも見ようと思うんだ」
「俺はここの食材でも見に行こうと思う」
「ならオレは、ついてくぜ」
…ということで村をまわることにした。
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皆様、とてつもなくお久しぶりです。
明日、実力テストが待っているという作者、和花。です。
まぁここ数週間いろいろありましてここに至ります。
どうやら、大会が始まったようですね(笑)
皆様、ぜひ投票してくださいね。
私、今、剣と魔法のログレス(アプリ版)をやっています。
w9 職;デスペ 名前;和花。 です。
この小説をお読みになっている方で、ログレスをやっていたらぜひdmをくださいね。お返ししますから。
今度、2次スレにて小説を出そうかな…
長くなってしまいましたが、お読みいただきありがとうございます。
次回もヨロシク!
- Re: Chage the world ( No.42 )
- 日時: 2017/12/07 21:16
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
22話 待ち時間
「高地トマトにシルフペッパー、スノラ米か」
「食材に詳しいね、料理できるの?」
「食材と調理器具さえあればだいたいな」
待ち時間があるため、俺達はシルフ村をまわっていた。
まず八百屋に行って新鮮な野菜を見て、次に魚屋へ行った。
平地では育ちにくい野菜などが見れて満足だ。
「なぁレオン。これはなんだ?」
「ん、これか」
見た目は丸い瓜のようだが、冷たい。おまけに硬い。
「あんちゃん達、いいやつに目をつけたね〜」
「これは雪の国の領地にできるブリザードメロンだな」
「正確には、スワルフ湖の土地だよ〜 今の時期が旬さ。どうだ、食べてみるか?」
「いいんですか? ならば」
「はいよ、お金はきっちり貰った。切ってくるから待ってな」
店のおばさんがブリザードメロンを店の奥に持って行き、切ってきてくれた。
普通の土地ではウォーターメロンと呼ばれているこの植物だが、
このような寒い土地では中が凍り、ブリザードメロンとなる。
「みずみずしいんじゃなくて、アイス感覚だな」
「水分が凍っているんだが、中にある成分がこの土地に合わせて進化して、アイスのようになっているんだ。」
「へ〜 皮も美味しいな」
あっという間に時間が過ぎていた。
さてと、戻るか。
- Re: Chage the world ( No.43 )
- 日時: 2017/12/08 22:59
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
23話 より強い力
レオン達が待ち時間を潰している頃…
「やっぱり、どう脱獄すべきかな…」
オリガは、どうやって脱獄するかを考えていた。
扉も窓がなく、時間がわからない密室。
縛られた手。
おまけに武器もない。
脱獄不可とも絶体絶命ともいう状況だった。
「お目覚めかな?」
「!?」
目線を前へ向けると、パナソがたっていた。
「この体勢疲れたんだけど… っていうかなんなのよ!」
「君にはいろいろ聞きたい事があるんだ。」
「なによ」
「単刀直入に言う。君は『世界を変える』気があるかい?」
「意味不なんだけど」
「ならば『神を眠りにつかせる』ってのはどうだい?」
「より難しいんだけど」
『世界を変える』『神を眠りにつかせる』?
さっきからよくわからないことばっかり。
「もっと簡単に言うと?」
「これが最後だ。『より強い力』は欲しいかい?幻獣や神をも超える力を」
『より強い力』か。
それさえあれば、何にでも守れるだろうか。
それさえあれば、みんなに追いつけるだろうか。
それさえあれば、私も強くなれるだろうか。
この提案を受け入れてしまえば、強くなれるだろう。
しかし、それは帝国側… 帝国を、皇帝を動かしているやつの思い通りになってしまう。もしかしたら、利用されるかもしれない。
でも、その『より強い力」を私が利用すれば一石二鳥だ。
例えば帝国に利用されたフリをして力を使えば、帝国を中から変えられるかもしれない。また、ここから出られるかもしれない。
損することよりも得することの方が大きい。
だから、私の出した答えは…
「その『より強い力』もらうことにするよ。」
「覚悟はしているかい。なにが起きても知らないよ」
その言葉、そっくりそのまま返せるような結末にしてやる。
私が頷くと、手を縛っていた縄が消え、足が床に着いた。
しばらく吊るされていたため、歩くということができるだろうか。
「こっちだ。」
ワープしてたどり着いたのは、大ホールだった。
下には大ホール全体に魔法陣が描かれている。
私は魔法陣の中心に行った。
「もう戻れはしないよ。」
「大丈夫」
「フッ。なら始めようか」
魔法陣が紅く光上がる。
「戻れたら奇跡だよ」
パナソのその言葉が聞こえた瞬間、視界が暗くなっていき、後ろに倒れた。
床に背中がつかない。
後ろに倒れ続けているのだ。
まるで深海へと沈むように。
手を伸ばせば差し込んでいるわずかな光に届きそうだけど、
それはできないものになっていた。
自分が自分で無くなるのがわかってくる。
意識が保てなくなってきたから。
次に目がさめる時はいつだろう。
その時は、君と一緒のときがいいな……
- Re: Chage the world ( No.44 )
- 日時: 2017/12/18 21:04
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
24話 (1) 他の方法
待ち時間を有効に使い、ミント達とも合流した俺達。
あとは飛空艇に乗るだけだったのだが…
「えぇ!? 帝国行き定期便はただいま運行していないの!?」
「申し訳ございません。お客様の安全を第一にしておりますので…」
なんと、定期便は運行していなかった。
確かに今の帝国は危険がいっぱいだ。
たとえ俺たちが乗れたとしても、反乱軍という事がばれてしまったら他の客にも危害が加わってしまう。そのことも考えた最善の事なのだろう。
「他に方法はないのですか?」
「他、ですか…」
受付嬢が腕を組み考える。
「飛空艇の工場へ行ってみてはどうでしょうか。レンタルなども行っていますし…」
「ありがとな。あとはオレ達でがんばるよ」
「今回は申し訳ございませんでした。では、良い旅を」
飛空艇の発着場をあとにした。
工場は地下にあった。そのためか少しくらい。
山に埋め込んであり、シャッターを開ければいつでも出発できるようになっている。
「兄ちゃん達、お客さんか?」
下で作業中の誰かが問いかけてきた。
「飛空艇のレンタルをしに来たんです。空いてるのありませんか」
「ちっと待ってろ」
しばらくすると、大きなゴーグルを首にかけた男がハシゴを登ってやってきた。
「レンタルつったな。残念だが今はねぇんだ」
「全部なのか?」
「いいや、全部じゃねぇ。問題があるが一応使えるやつはいる。そーだ、こん中に飛空艇技師はいるか?」
「僕が飛空艇技師資格を持ってます」
「ならちょっとこっち来い」
シドとゴーグルの男が奥の収納庫へ行ってしまった。
「あの… よかったら… あちらで」
「ん? 待合室?」
「お茶とか… どうぞ…」
少し気弱そうな少女が待合室まで案内してくれた。
そこで俺達は待つことにした。
- Re: Chage the world ( No.45 )
- 日時: 2017/12/19 21:10
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
24話(2)
待合室には、中央に低いテーブルと黒いソファなどが置いてあった。
作業場よりは明るく、世界地図やモニターが壁にあり事務室のようだった。
「これ… どうぞ」
「ありがとう。君、ここで働いてるの?」
「手伝い… してるだけ。お兄ちゃんがここで… 働いてるの」
気弱い… というか人見知りの少女はお茶を置いていくとどこかへ行ってしまった。
「ん、このお茶おいし〜」
とくに何かをするわけでもなく、時間が過ぎていった。
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一方その頃。
シドはゴーグルの男と収納庫の奥へ歩いて行っていた。
「こいつが例のやつだ」
「HKT−64型、ですね」
「正確には HKT−64型 改 ユピテル号だ」
見た目は白い龍のようで鋭い。
後ろに尖っている翼の下にはエンジンがある。
外見だけでは異常はないようだった。
乗降口から中に入った。
通路も金属製でシステムが起動してないせいか暗い。
階段があり、登るとコックピットだった。
メーターや非常ボタン… たくさんある。
「それで、問題とは?」
「システムは起動すんだが操作不能なんだ。それにエンジンが起動しねぇ」
「いろいろ試してもいいですか?」
「かまわねぇよ ま、頼んだぞ」
考えられる原因は2個。
1つはプログラムミス。
データに一つでも間違いがあると正常に機能しない。
「起動するには… これかな」
目の前に薄緑色の透けるモニターとキーボードが浮かび上がった。
そのモニターをタッチすることで操作ができるらしい。
『地図表示』『運転』『データ入力』『設定』と、現れた。
ここまでは正常のようだった。
「『設定』っと」
秘密裏に教えてもらったパスワードをキーボードで打ち込む。
すると英語やら数字の文字式などが現れた。
これを1から確認していく。
「久しぶりだな〜 この作業。みんなげんきかな」
帝国に所属していた頃、プログラムやパーツの組み立てをして仲間と共に『便利さ』を求めて開発していたのを思い出す。
シルフ村と同じく、帝国も山にある。帝国領の町や村は帝都を除くと地上にあったため飛空艇が欠かせなかったのだ。
そのためにできていたのが『飛空艇部門』。
より安全で快適になるように技術を高め競っていた。
あの頃が一番自由で、一番楽しかった。
「異常なし。…となるとどこかの破損かな」
2つ目は、破損。
操作不能でエンジンが起動しないとなると、どこかの線が切れているなどの破損が考えられる。
1階へ戻り、通路の床にある扉を開いた。
床下は配線やモーターなどがある飛空艇の心臓ともいう場所だった。
明かりをつけ、すみずみまで見る。
「ここが原因かな」
配線が一部ショートして切れていた。
モーターが近いことから熱を持ってしまったのだろう。
「これでどうだろう」
おまけでオイルを注し、コックピットに戻った。
下にいるゴーグルの男に合図し、システムを起動しエンジンを起動させた。
「このユピテル号、水で動くんだ…」
ゴーグルの男が両手を使って丸っと合図した。
これできっと大丈夫だろう。
「おめぇすげぇな。こいつはおめぇにやる。そうすれば目的果たせんだろ?」
「いいんですか?」
「オレがやるって言ったんだ。大切に使ってやれよ。」
「ありがとうございます」
「こいつを動かしといてやるからおめぇは仲間んとこ行ってろ」
「はい!」
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「お待たせ」
「お、シド。あの飛空艇って…」
「貰ったんだ。さて出発するよ。みんな乗って」
シドが戻ってきたのと同時にシャッターが開いた。
ユピテル号はいったいどんな飛び方をするのだろう。
酔うことを覚悟して俺達はユピテル号へ乗った。
目指すは敵の本拠地。
どんな危険があるかはわからない。
それでも俺達は行く。
- Re: Chage the world ( No.46 )
- 日時: 2017/12/25 10:36
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
25話 艇内にて
星空の綺麗なメンダ地方の夜。
艇内は薄暗く、静かだった。
ユピテル号にはたくさんの設備があった。
生活に必要なキッチンや5畳ほどの部屋が7つ。
洗面所やエンジンルーム… 困る事はないだろう。
その7つの部屋は、各自1つ使って自分の部屋にした。
コックピットへ行くとシドがいた。
操縦席に座って本を読んでいる。
「ん? どうした?」
「暇… なんだ」
「そろそろ着くけど、準備とかしたらどうだい? 備えあればなんちゃらって言うし」
なんちゃらが気になる。
「そうするか。着いたら言ってくれ」
「わかったよー」
月光が入り少し明るくなっている自分の部屋に戻った。
置いてあるのは備え付けのベッド、壁に寄り添うようにあるテーブルのみ。
剣を魔法で取り出す。
何もなかった目の前に出てきた剣を手で掴み、ベッドに座りながら手入れをする。
銀色に光り輝き、約75センチで市販で売っている物よりも大きい。しかも、俺の魔力の込め方で攻撃力が変わってくる。だから峰打ちなどが簡単にできる。
この剣のおかげでどれほど助けられたのだろう。
剣舞技もこの剣のおかげだ。なかったら生きていなかったかもしれない。
…と思いつつ剣を磨く。
刃毀れやサビは無い。しかし、大きな傷がかなり目立つ。
これは、あの時… 7年前の帝国に襲われた時についた傷だった。
この時、勝てなかったせいで傷がつき、重症を負って、みな別れてしまった。
だから、決めたんだ。
『何かを守れるような力』を手に入れて、強くなって、みんなと再会するって。
反乱軍に入って、そんな力を手に入れられたと思った。
でも、何も守れていない。
魔石や街、仲間さえも。
悔しかった。
俺は何も変われてない。
あの時から何も。
「……」
自然と視界が滲む。
『目標があるんでしょ? ならまだ頑張れる。仲間や、大切な人がいるならもっと頑張れる。人間ってのは、そんな生き物なんだから』
ふと思い出す。
院長に何回も言われた言葉。
気づけば横にフーがいた。
「ワゥー」
短い前足で俺を突いてくる。
俺には仲間がいる。
この旅を通して得た絆だってある。
『そろそろ着くよ〜』
アナウンスが流れた。
剣を魔法でしまう。
「さて、頑張るか。」
今度こそ守ってやる。
魔石も街も、仲間も約束も。
- Re: Chage the world ( No.47 )
- 日時: 2017/12/26 18:14
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
26話 ミテス監獄へ
「そういえば、普通に発着場に来て大丈夫だったの?」
「大丈夫。ここは後輩が運営してるから」
帝国の城下町の発着場。
夜のため、人気(ひとけ)がなく薄暗い。
「先輩、久しぶりっス」
ランタンを持って歩いてきた男が来た。
「お、久しぶりだねヨツバ。監視カメラとか大丈夫かい?」
「大丈夫っス。親父がわざと飛空艇調整中にハンマー投げ飛ばして壊して、今はメンテしてるんで」
すごいな… この人の父親。
「ささっと中に入ってください。渡したいものがあるんで」
「丁寧にありがとう。」
「へへっ、褒められるのも久しぶりだな〜」
事務室であろう部屋へ来た。
「これっス。酒場のマスターから貰ったっス」
酒場のマスター… 諜報活動中のディエナだろう。
渡された丸まった紙を広げる。
それはどこかの地図だった。
「ミテス監獄の地図っス。データ化します?」
「よろしく頼むよ」
後ろにあったスキャナーに紙を挟め、データ化した。
それが俺達のスマホに送られてきた。
「紙の方は証拠隠滅のためにシュレッダーにかけとくっス。そこの荷物用のエレベーターから下に降りられるっス。」
「ありがとう。」
ヨツバは手を後ろで組み、胸を張って
「ご健闘を祈るっス。先輩達、どうかご無事で!」
小声で言った。
「行ってくるね、後輩のみんなによろしく頼むよ」
俺達は、エレベーターで山を降り、すぐ近くにあるミテス監獄へ向かった。
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「あれ、行っちゃった?」
「ディエナ姉さん、来てたんっスか!?」
レオン達が監獄へ向かってすぐに、ヨツバの元へディエナが来た。
「今来たの。そういえば、水色の、髪の女の子、いた?」
走ってきたせいか息が少し切れている。
「いなかったっスよ。その子がどうしたっスか?」
「帝国兵から、聞いたんだけど、その子…」
ディエナは呼吸を整えて
「『操られてる』かもしれないの。それで、バハムートの魔石を回収したって。
さっき報告書書き手伝っててチラ見したら、その子の名前が載っててさ」
「連絡した方がいいっスか?」
ディエナは首を横に振る。
この判断が正しいのかわからない。
なぜなら…
ディエナの知っているレオンは、悩むと行動を起こす事が出来ないから。
きっと今のレオンは『助ける』という事で頭がいっぱいだろう。
だから伝えない方がいいだろう。
陰ながらに今まで見てきて、レオンにとってのオリガは大きな存在みたいだったから。オリガにとってもレオンは大きな存在だったから。
だから、みんなに任せておこうとディエナは自分に言い聞かせる。
『みんななら大丈夫』と。
やはり、小さい頃から見てきた者として少し心配だった。
大きくなったからって変わるという事は当たり前じゃない。
「ディエナ、行くなら言ってくれよ」
後ろから少し癖のある声が聞こえた。
振り向くと、毛先の鋭いみんなの姉貴的な存在だった女が階段を降りていた。
「だって急だったんだもん。しょうがないでしょー」
「だからって洗い物全部アタシに押し付けんなッ!置き手紙書くならちゃんと言ってくれ!」
気を取り直して女を真剣な表情で見つめる。
「なんだ?」
「任務を与えるね。レオン達の様子、バレないように見に行って。危なかったら助けてあげて」
「なんでそれをアタシが!?」
「ジュリィ・ティーク。これ、反乱軍としての仕事。頼むよ。じゃあ」
その場を離れる。
「アタシ、反乱軍に所属してないんだけど…」ってジュリィの声が聞こえたけど、やっぱり任せられるのはあなたしかいない。
これは反乱軍…… いや、共に見守ってきて親友だったから頼める仕事だから。
- Re: Chage the world ( No.48 )
- 日時: 2017/12/28 18:28
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
27話 贈り物
メンダ山脈のふもとにある『ミテス監獄』
石レンガの高い壁に囲まれて、中の様子は分からない。
俺達は、近くのラノリ村に隠れていた。
村長に話をし、最終準備をしていたのだ。
「この村も帝国領だって事を忘れないでね」
村長のおばさんに言われた。
「わかってますよ、こんなに帝都に近いんですから。」
「帝国人って訳ではなさそうだね、あんたら、どこ出身だい?」
「育ったのは緑の国だぜ。出身は違うけど」
「緑の国!? 私の妹を知ってるかもね」
このおばさんの妹が緑の国に?
雰囲気的に当てはまる人がいる。
赤い口紅で、昭和風のあの人。
「もしかして、オバチャンの?」
「そうだよ。そうそう、これ持ってきな」
オバチャンの姉は部屋の奥へ歩いて行くと、開けていない段ボールを取り出して持ってきた。
「あんたら、もしかして反乱軍の子たちかい? オバチャンがこれを今日送ってきたんだ。『来たら渡して』って」
ガムテープを豪快に開ける。
中に入っていたのは、どこかの鍵。
手紙も2つほど入っている。
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よぉ、久しぶりだな。
元気にしてるか? 負けてなんかいねぇか?
ボブやオバチャンからは全部聞いたぞ。
また旅にでたんだな。
再会したかった仲間には出会えたようだな。
たまには来いよ。その仲間と共にな。サービスしてやる。
フー吉も待ってるぞ
んで、本題だ。
おめぇがそこにいるって事は、監獄に用があんだな。
なぜわかるか? さぁな。俺にもわかんねぇ。カンってもんだ。
鍵があったろ?
それ、監獄の使用されてない部屋の鍵だ。
潜入すんなら使え。潜入しねぇなら隠しとけ。
持ってると少し厄介だからな。
感謝すんなら妖精にしろ。
その鍵はいつの間にか店にあったんだ。
前にはなかったのにな。
だから感謝すんなら妖精にしろよ。俺じゃなくて
頑張れよ。フー吉亭 店主リベロ
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1つ目の鍵は、リベロからのものだった。
あいかわらずなんでも妖精のせいにしているようだった。
「リベロさん、元気そうだね」
「元気なかったらこっちが調子狂うけどな」
「2つ目の手紙もあるよ」
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みなさん、お元気ですか?
緑の国兵士団団長のルミネです。
最近はドジってないですよ!!
プレゼントの鍵はリベロさんの手紙で説明されてたと思うので、
私は情報をみなさんにプレゼントします。
昨日までの情報です。
ジェシィさんが持ってきてくれました。
ほとんど監獄についてです。
・監獄には、脱走者用のモンスターがいる。かなり強め。
・パスワードは『ラーメンの具』
・白い部屋は入ったら最後。
・監視カメラの数は5個。指令室で電源OFFにできる。
こんな感じです。
みなさん、絶対に生きて帰ってきてくださいね。
陛下、たまには連絡してあげてください。
ルニルさんが怒ってますよ(笑)
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「あ… やべ…」
フレイは何かを思い出したようだった。
「ルニルさんって?」
「フレイといい感じの人。レヴェリーで働いてるよ」
「そうなんだ〜」
フレイヤはフレイに近ずいていき笑顔で
「女は、怖いよ」
と言った。
潜入という大きなことをやる前に、こんな雰囲気にして良かったのだろうか。
まぁ、フレイは落ち込ませといていいのだが。
「そろそろ深夜の2時だよ。潜入するにはちょうどいいけど、いくのかい?」
「行きます。色々とありがとうございました」
「じゃあいってらっしゃい。気をつけるんだよ。」
オバチャンの姉に見送られて静かに村を去った。
月光のおかげで平原は明るい。モンスターはいるが。
正方形となっている監獄の壁の一つに扉らしき物があった。
そこで鍵を使い、中に入った。
- Re: Chage the world ( No.49 )
- 日時: 2018/02/16 09:02
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
28話(1) 潜入
リベロから貰った鍵を使い、ミテス監獄の中へ入った。
扉を開いた先は暗い部屋。少し広く奥にある扉からわずかに光が中へ入っている。
「暗くちゃ何もできねぇだろ」
フレイが魔法を瞬時に詠唱した。
出てきたのは手乗りサイズの火でできている猪。
…ちなみに子供連れだ。
「1人1匹使えばろうそく代わりになる。そんでこの部屋を探索しようぜ」
「そうだね。というかお兄ちゃん、こんなカワイイの作れるんだ…」
火猪(ひのしし)を使い辺りを探索する。
ところどころ蜘蛛の巣やホコリがあったりとこの部屋が使われてないことがよくわかる。
「ワゥ」
「どうした? フー」
「きゃぷ〜」
フーの向く方向に大きな段ボールがあった。
中は… ここの軍服だ。ヘルメットもあるおかげで変装できる。
「これ、使えるな」
「ワゥ」
「どうしたんだ? レオン」
「これ、使えそうだろ?」
「そうだな。さてと」
フレイの持っていた親の火猪の元に子供の火猪が集まる。
それと同時に皆集まる。
「使えそうだね」
「何着あるの?」
「……5着。全員着れるよ。」
「さてと、着替えるか!」
サイズはちょうどいい。
しかし微妙に汗臭かったりホコリ臭かったりした。
「火猪、ありがとな」
火猪が消えた。そしてわずかに光が入ってきている扉により、耳をすませる。
足音はしない。人の気配もしない。
「班に分かれようぜ。指令室に行くのは…」
「僕でいいかな。あと… レオン」
「それで決定だな。んじゃ、いろいろまわるのはオレ達でいいよな」
「え… お兄ちゃんと一緒…」
「ワガママ言わないの。」
「はーい」
扉を開くと誰もいなかった。
ラッキーな事に監視カメラもない。
「オレ達はコッチから行く。じゃあな」
フレイ達は俺達と反対方向にばらけて行った。
「さて、僕たちはあっちだね。指令室は…あそこかな?」
昼か夜かもわからなくなるただ真っ白い廊下。
ヨツバから貰った地図によると、この廊下の突き当たりの部屋が指令室らしい。
「どうやらこのエリアは、ここで働く人の生活のためのエリアのようだね」
「なぜわかるんだ?」
「シャワールームに食堂。生活に必要な施設ばっかりだからさ」
監視兵とすれ違うこともあったが、特に何もなく指令室へついた。
中には誰もいない。これでいいのだろうか。
「これをこうして… よし、電源OFFっと」
モニターに映っていた画面が消える。
「そういえばなんで俺を指名したんだ?」
「単純に言うよ。オリガを助けられそうだから。」
「あいつなら1人でも大丈夫じゃ…」
「違うんだ。今日の…」
シドの言葉が突如鳴った警報で遮られた。
『侵入者発見。侵入者発見。直ちに西入口付近へ移動せよ』
「俺達の事がばれたのか?」
「さっきのモニターを見たとき、僕達とは別に1人いたんだ。きっとその人。」
「君たちも西入口に行って!」
「は、はい」
見回りに来た兵士がこちらにもやってきたようだ。
「レオン、行くんだ。」
「シドは?」
「僕は西入口に行く。怪しまれないようにするためにね。」
「そうか、じゃあ」
「そうそう、望んでいない出会い方をしても決して諦めないでね」
「何のことだ?」
「まぁ、あとで」
シドは出て行った。
さて、俺も行くか。
とりあえず、右に。
- 年末の挨拶 ( No.50 )
- 日時: 2017/12/30 21:54
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
今回で今年の更新も終わりです。
ですのでここでは年末の挨拶をさせていただきます。
皆様、おはこんばんは(おはようとこんにちはとこんばんはを合体させました)
CTWの作者の和花。です。
なぜ急に挨拶を?
それは29話(1400字ほど)を書いていたのですが、消えたからです。
新しく新年に書き直します。
(ジュリィを登場させようとすると毎回何かあって消えて没になってしまうんですよね…)
気を取り直して。
いつもこの物語を読んでいただきありがとうございます。
なんと、8月26日に始まってから約4カ月で閲覧数が700を突破!
うん、めでたい。
小説書き初心者なのにこんなにも見てくださるなんてありがたいです。
(閲覧数なので読んでるとは限らないので見ているという表現にしました)
ぜひ投票もよろしくお願いします。
次に、物語について。
だいぶ前に4章に突入したCTWですが、まだまだ4章続きます。
章名が【それぞれの思い】なだけあって、いろいろ入れたいんです。
たぶん、1000字以上が多くなります。
先に言っときます。
10章もいかないかもしれません(汗)
今のところ物語は中ですが、もうそろそろ後半になる予定です。
頭の中でいろいろ考えてますけど、やっぱり10章までいかないかもしれません。
他の作者様に比べて設定がややこしいのに、物語が短くてスミマセン。
必ず完結はさせます。
オリガファンの方!(推しキャラいるのかな…)
いつまでも仲間に合流しなくてすみません。
次回、ファンならきっと望んでない出し方をしますが、悲しまないでください。
よく読んでいれば、今のオリガの状況がわかりますけど…(26話参照)
人気キャラ投票を【CTWいろいろ募集】(リク依頼・相談掲示板)にてやります。(12月31日〜1月31日まで)
投票のしかたは簡単。
【CTWいろいろ募集】のスレッドにて、コメント欄に名前とキャラの名前を書くだけ。(1人2票まで)
よろしくお願いします。
後に【CTWいろいろ募集】のスレッドで詳しく書きます。
ーお知らせー
まだまだ先ですが、この物語が完結したら続編出します。
お楽しみに〜
さて、挨拶はここまでにします。
みなさん、次の年に会いましょう!
良いお年を。
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.51 )
- 日時: 2018/02/16 09:00
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
28話(2) 望まぬ出会い方
警報が鳴り続き兵士達が西入口へ走っていく中、俺は兵士達と反対の方向へ走っていた。スマホの画面に表示されている電子化された地図を見ながら。
「西入口はあっちだぞ」
前方から走ってきた兵士が話しかけてきた。
ここは、上手く誤魔化さなければ。
「先ほど西入口に行ったのですが、『先輩に東入口へ行き、挟み討ちしろ。まぁそんな事が起こりはしないがもしもの保険だ』と言われたのです。だから東入口へ向かっています」
「お前1人で大丈夫なのか?」
「はい。こう見えても剣術1級持ちですから」
「… 任せたぞ」
兵士は走って行った。
その後も何度も兵士とすれ違ったが、何も言われなかった。
右へ行ったり左へ行ったりと、兵士達は見た感じだと迷っているようだった。
そんな兵士達を潜り抜け、長い廊下の突き当たりに大きな部屋があるのが見えてきた。地図で確認すると、そこの部屋は『大ホール』らしい。
俺は、迷わず扉を開いた。
床に描かれた大きな魔法陣が紅く光っている。
その魔法陣の真ん中に人が立っている。
あの後ろ姿は… 間違いなく…
「オリガ… ?」
水色の髪に、白色のバンダナ。その特徴は間違いなくオリガだった。
しかし、呼びかけに反応がない。それに、雰囲気が全く違う。
大ホールの床がピキピキと音をたてながら凍り始めた。
この戦法はオリガの得意とするものだった。
「マジか…」
剣を取り出し構える。
その瞬間、氷塊が襲いかかってきた。
飛んできた氷塊を避け、壊しつつオリガに近づく。
オリガは槍を構えて魔法をずっと詠唱し続けている。
無限に氷塊は現れ、襲いかかってきていた。
アイツは、自分の意思でやっているのか?
「剣舞技、火炎!」
剣に魔力を込め、火を宿す。
そして、オリガの背後に一気に近づいて剣を振るった。
金属のぶつかる音が大ホールに響いた。
槍を使って弾かれてしまった。
オリガの瞳は紅くなっていた。
確認できた。
昔に一度だけ、アイツと戦った事があった。なぜだかわからないが、その時も同じように瞳の色が紅くなり襲ってきた。
あの時は院長が不在だったから、俺1人で戦った。どうすればいいかよくわからなかったので自分を守るためにアイツに剣を振るい、正気に戻らせると同時に一生残る傷をつけてしまったのだった。
剣と槍がぶつかる衝撃で、風が一瞬だけ起こる。
風でオリガの服が一瞬めくられお腹が見えた。
そこにあったのは俺のつけた傷と、魔法陣と同じく紅く光るまがまがしい刻印。
見つけた、という気の緩みが出てしまったせいか、弾き飛ばされてしまった。
壁に打ち付けられたがすぐに立ち上がり、さっきのように近づく。
今度こそ、傷付けずに助けてやる。
「魔封剣、峰打ち!」
オリガに剣から放たれた波動が当たる。
この合わせ技なら気を失ってしまうが、刻印は封じ込めるはず。
傷がつかないようにできただろうか。
そんな心配を胸にオリガの元へ走る。
倒れる寸前に間に合い、抱きしめ支える。
床に横にしてやり、回復薬を飲ませた。
腹の刻印は消えていなかった。
ただ、光は失っている。魔封剣の効果だろう。
心配なのは、峰打ちができたかということのみ。
「…あれ? ってレオン!?」
「あれ? ってなんだよ。」
オリガは正気を取り戻し、立ち上がった。
心配して損をした気分だ。
前よりも元気になっている。
「レオン、ありがと」
「……」
「もしかして、照れてる?」
「照れてない!ったく、大変だったんだからな」
オリガと会話したら、なんだか、心の中にあった霧が晴れたような気がした。
…きっと安心しているんだろう。
前は心配なんかしないで、『アイツなら大丈夫』と思えてた。だけど今回は『助けなきゃ』って自然に思えた。
相手が帝国だからか? 仲間だからか?
いや、もっと別の事のような気がする。
わかりそうでやっぱりわからない。
「素直になりなよ〜」
「照れてないからな。さてと、フレイ達と合流するぞ」
「みんなで来てくれたんだ」
「仲間だからな。あとで話、聞かせろよ」
「はーい」
遠くから重い音がするのに気付かないまま、俺とオリガは大ホールを後にした。
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.52 )
- 日時: 2018/01/08 13:40
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
お知らせ
次回の更新は、1月13日以降になります。
理由は、1年間で一番大切なテストがあるからです。
キャラ投票待ってまーす
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.53 )
- 日時: 2018/01/13 22:33
- 名前: 通称:中二病 (ID: qgJatE7N)
アドバイスなどをもらったので、文法などの勉強になると思い、3話ぐらいまで拝読させていただきました。僕も異世界ファンタジー系が好きなので、これからも拝読させていただきます。あと、戦闘シーンの表現などのポイント的なものを教えて頂ければ幸いです。
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.54 )
- 日時: 2018/01/14 19:40
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
通称:中二病 様
了解です。
通称:中二病 様のスレッドにて返信しておきます。
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.55 )
- 日時: 2018/01/14 21:15
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
29話 脱出
「ん? なんだろ」
先ほどから、遠くからこちらへ走ってくる音が聞こえていた。
それにオリガも気がついたのだろう。
「もしかして…」
「何かわかんの?」
情報の中に『脱獄者用のモンスター』的なものがあったような気がする。
その事を伝えた。
「そうなんだ… アレが…」
オリガが指をさした方向に、鋭く尖った角の生えた大きな牛のようなモンスターがこちらへ向かってきていた。
「お〜い、無事か〜」
そのモンスターの前には、フレイとフレイヤ、シドとミントと人の女性が必死に走ってきていた。
「無事だよ… って、ちょっと何連れてきてんのよ!」
「ちっと厄介な事があってよ〜」
すると女性は走ったまま後ろを向き、カードを手に挟み、モンスターへ向かって叫んだ。
「死神のカード、停止しろッ」
少し癖のある声。それは、聞いた事あった。
モンスターは停止した。命が尽きてはいないようだ。
「レオン、東入口から脱出だ!」
「わかった」
角を曲がり、すぐのところにある東入口。
俺達もそこへ向かって走り出した。
東入口に着きフレイ達とも合流すると、モンスターが立ち上がる音がした。
「さ〜て、瞬間移動するよ」
女性が取り出したのは、テレポート石…略して『テレポ石』と呼ばれるものだった。
それを地面に投げつけ1秒ほどたったら、風景は変わり、発着場となっていた。
「飛ばされたのがココで良かった…」
ミントが胸をなでおろす。
テレポ石は、行きたい場所のどこに瞬間移動するか不明という欠点があるからだろう。
「おぉ、皆さんおかえりっス」
ヨツバがこちらへ気づき、歩み寄ってきた。ディエナも一緒だ。
「おかえり、ジュリィ」
「別にレオン達、大丈夫だったぞ」
ディエナに呼ばれた女性… ジュリィ・ティーク。
俺の1つ上で、少し男勝りで賭け事が好きだったやつのはずだ。
ジェシィと共に昔、よく遊んでいた。
ジュリィはこちらを向き、ニコッと笑った。
「これからもお前らに、ついていくからな」
「え、なんで」
「心配なんだとよ、ディエナが」
ディエナがそっぽを向く。だが、すぐ戻った。
その時、フレイのスマホの着信音が鳴った。
「ん? もしもし。…なんだって!?」
すぐに電話をきり、内容を言ってくれた。
「ルミネからだったんだけどよ、今すぐに緑の国へ来いだってよ」
「な、なんで?」
「帝国に襲撃された。あん時みたいにだってよ。しかも… バハムートを使ってだ」
バハムート。それは、幻獣の中で1、2位を争うぐらいの強さを持つ竜王の名だった。
その名だけで、どれほど大変なのか想像はつく。
「行ってきな。各地にいる軍のメンバーには私から言っておくから」
「先輩、頑張ってください」
「了解だよ。そっちも頑張ってね」
急いでユピテル号に乗り、エンジンをかける。
最大速度で緑の国へ俺達は向かった。
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.56 )
- 日時: 2018/01/22 18:28
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
29.5話 あの日の続き
「今回は何が目的なんだ…?」
コックピットから遠くの方で夜空が紅く光り、煙がたっているのが見えた。
緑の国が襲撃されている。聞いていたことが景色で目に入り、どんどん現実味を帯びてきた。
俺達が経験した7年前のあの日… 緑の国襲撃事件の続きが始まってしまった。
事件の時の帝国の目的は『反乱軍の壊滅』だったため、関わりの深かった孤児院が集中的に襲われた。
だが今回はバハムートを使い、国事態を襲っている。
再びルミネからの電話がかかってきた。
「メェ〜村など近辺の村などにも避難を要請しときました」
「都市のやつ達は?」
「城の地下にて避難しています。」
「戦状は?」
「レヴェリーからの派遣要員、反乱軍の皆様などで応戦していますが、バハムートの攻撃による被害が… ちょっと電話きります」
剣を取り出す音と共に電話が切れた。
「心あたりとか、あんの? ほら、国宝とか」
「国宝… あるって言われてっけど、実物は確認されてない」
「ふーん、お兄ちゃん、ホント〜?」
「そんな目で見んな! あるかもしれねぇって思っちまうだろ…」
フレイの口調からないのだろうと予測できる。
「まぁ、と・も・か・く、オレ達の故郷がピンチなんだ。準備はいいな。」
みな頷く。思いは同じだった。
「よし、行くぜ」
ユピテル号をジャングルの中で停め、俺達は緑の国へ走り出した。
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.57 )
- 日時: 2018/01/31 08:07
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
お知らせ
作者のリアルでの都合により、連載が遅れます。
これに伴い、キャラ投票も延長させていただきます。
申し訳ございません
- Re: Chage the world ( No.58 )
- 日時: 2018/02/02 11:58
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
30話 戦いへ
壁に囲まれた国内では、帝国兵達と戦っている者がたくさんいた。
建物は燃え盛り黒煙を上げている。また石レンガの塀は崩れ、ところどころの道をふさいでいる。
上空には漆黒の翼を広げた竜……バハムートが飛んでいた。
「いったん隠れよう」
手の甲に火の粉が当たる。だが、そのような事を気にしてられなどいない。
帝国兵や辺りに散らばる亡骸をよけ、少し大きな建物の裏に隠れた。
「シド、ちょっと手伝ってくれないか?」
小声でフレイが問う。
「いいけど、何を?」
「城の地下図書館へ来て欲しいんだ、話はそこ…」
フレイの声を遮るかのように、近くで連続音が聞こえた。
銃を持った誰かがいる。ここで見つかったら命はないだろう。
「だいたいわかったよ。手伝えばいいんだね」
フレイが頷くと「時間を稼いでくれ」と俺達に言い残しシドと共に城へ走って行った。
時間を稼ぐ… この状況だと戦えという事だった。
とりあえずここは、
「分散して帝国兵と戦う。それでいいか?」
「OKだ、じゃあ、行ってくるから」
ジュリィはタロットカードの札を何枚か浮かせ、歩いて行った。
その余裕が少し心配だ。
「レオン、私とフレイヤって一緒に行動していいかな」
提案してきたのはミントだった。
ミントの鞭は、攻撃範囲は広いが威力が弱い。フレイヤの銃は弾1発分の威力は強いが、リロードに時間がかかる。弱点を互いに補うための判断だろう。
「かまわない。行けるか?」
「準備は大丈夫だよ〜」
「こっちもOK」
フレイヤとミントもジュリィとは反対の方向に走って行った。
残るは俺とオリガだけ。
「それじゃあ私も行ってくるとしよっかな」
オリガは形見の槍を取り出し、上空を見た。
いや、屋根までの距離を確認しているようだ。
「屋根の方で戦うのか?」
「まわりが見やすいし、状況も把握できる。私の得意な場所だからね」
「だが裏を返せば見つかりやすいという事になる。おまけに腹の刻印は消えてない。…無理をするなよ」
オリガが一瞬戸惑う。俺は何か変なことでも言っただろうか。
「どうした」
「いや、ちょっとね… レオンが私のこと心配してくれた事にビックリしてね…」
「そうか?」
「ま、まぁ気を取り直して! まわりをよく見るし、無理もしないでがんばるから! ただ… 生きて戻ってこよう」
「もちろんだ。約束、覚えているからな」
オリガは屋根までジャンプし、走って行った。
さて、俺も行くとするか。
- 閲覧数1000突破! ( No.59 )
- 日時: 2018/02/05 20:39
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
今回は、コメントです。
気がついたら、閲覧数が1000超えていました!
皆様、ありがとうございます。
リアルの方で学級員長を務めたり… などと忙しく小説カキコに行けなかったにも関わらず、更新できなかったにもかかわらず、見にきてくれたり、開いてくれたり… などとしていただいた方、しつこいようですが本当にありがとうございます。
これからも頑張っていきますので、CTWをよろしくお願いします。
- 2017年冬の小説大会にて銅賞を受賞しました ( No.60 )
- 日時: 2018/02/06 21:07
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
またまたコメントとなってしまいます。
物語を書こうと思っているのですが、いつも愛用しているキーボードが不調でして…
タブレットとかで画面に表示されるキーボードでしか文章を打てません。
明日ぐらいには大丈夫になるはずですので、お待ちください。
さて、本題へ。
2017年冬の小説大会にて銅賞を受賞しました!
投票していただいた皆様、本当にありがとうございました。
銅賞を受賞できた… という事は、読んでくださっている方がいるという事でいいですよね。
趣味で書いているものなのに読んでくださって嬉しいです。
今年中にたぶん続編(CTW2)を書けると思います。
だいぶ先になります。お待ちください。
連載約半年で、このような賞を貰えるとは思っていませんでした。
これからも頑張っていきますので、CTWシリーズをよろしくお願いします。
- Re: Chage the world ( No.63 )
- 日時: 2018/02/08 19:23
- 名前: 流聖 (ID: tOdZcpTQ)
同級生だよ!和花ちゃん!コメントが投稿できたよ!これで今までの思いを伝えられるんだね❗すごいよ!面白い!同級生にこんなすごい子がいるなんて嬉しい!これからも頑張ってね❗アイアムアPマン❕
- Re: Chage the world ( No.64 )
- 日時: 2018/02/09 20:46
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
コメントの返信
流聖さん(一応さんにしといた(笑)) うん、同級生だね!
これからも頑張るよ〜
コメントで文字化けしてるところがあるね〜(同じコメントが2つもある!?)
そこはコメントの右下の【修正 削除】って所からとんだページで自分の入れたパスワードを入れると、修正・削除ができます。面倒だけど、頑張って!
あと、改行するといいよ〜
リアルでもこっちでも、改めてよろしくね
- Re: Chage the world ( No.65 )
- 日時: 2018/02/13 17:46
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
長らくお待たせしました。31話です。
31話 緑の国の伝説
緑の国の城の図書館。
一部の者しか入れないその図書館には、緑の国の歴史、国宝、伝説… について詳しく書いてある本が眠っている。
地下へと続く螺旋階段を降り、オレとシドは図書館へ入った。
木製の古いドアを開けた先は真っ暗だった。
火猪を出し、辺りを見渡す。
ところどころ石レンガの壁にはヒビが入り、隅には蜘蛛の巣がかかっている。
本棚も埃をかぶり、長年使われていなかった事がよくわかる。
「スイッチはっと。コレか?」
壁にあったスイッチを押すと、辺りは明るくなった。
中央には使い込まれた茶色の木製の机と椅子が4つ。それを囲むように本棚が並んでいた。
「ここで何を探すのかい?」
「【緑国伝説書】っていうこの国の伝説が書かれている本。オレの記憶が正しけりゃここにあるはずなんだ。」
孤児院にいた頃、フレイヤとオレと女王様と院長で特別にここにきた事がある。
なんの用があってここに来たかは覚えていないが、
『緑の国が危機に陥った時、ここの【緑国伝説書】を探しなさい。きっと’’ある幻獣’’の元へ導いてくれるわ』
と女王様に言われたのだけは覚えている。
’’ある幻獣’’とは何なのかわからない。だが、今、この状況を覆すにはその力が必要だと自然と思えた。
「ら、り…… うげ、り から始まる本はこんなにあんのかよ」
「りょ だから り の最後の方だと思うよ。普通の順番だったら」
りょ から始まる本は見た感じだと約100冊。
この量を2人なら、短時間で見つかるだろう。
「これかな?」
見つけたのはシドだった。
他の本とは違う材質の表紙で、【緑国伝説書】と書いてある。間違いなく、この本だろう。
中央にある机に持って行き本を開くと、目次が目に入った。
関係ありそうなのは、256ページ。
256ページを開く。すると、伝承のようなものが載っていた。
『多次元宇宙より来し機竜 この地に降りし 石となりて眠りこの地を守らん 悪と対峙せし刻 善となりて 悪を伐つ その名は アポロン』
「アポロン…? 聞いたことないな」
「続きを読んでみようぜ」
更にページをめくる。
『機竜は待つ 共に戦いし者の血を引く者を この地に伝わりし秘宝を 目覚めの刻を』
’’ある幻獣’’とは、多次元宇宙より来た機竜… アポロンという事はわかった。
この伝承が正しいのならば、この地…緑の国のどこかに石となって守っているということになる。
また、眠りから目覚めさせるためには『共に戦いし者の血を引く者』が『この地に伝わりし秘宝』を使わなければならない事にもなる。
「フレイ… 確かここの王様だったよね。何かわかるかい?」
「『この地に伝わりし秘宝』ってのはわかるんだけどよ、それ以外がわからない」
『この地に伝わりし秘宝』というのには、心当たりがあった。
それは、この地の王… 緑の国の王となりし者しか知らない国宝のことだろう。
「そういえば石となって守ってるってあったよね。これはあくまで推測だけど、石って石像の事を指してるんだと思うんだ。守るという事は、見ているという事にもなる。」
機竜、石像、秘宝… ん?
「わかったッ!」
シドの話を途中で遮ってしまったが、わかった。
とある場所に心当たりがある。
「昔よく遊んでいた場所に、機械みたいな竜の石像があってその石像の台の丸いとこに欠けている部分があったんだ。んで、その欠けている部分の形が国宝とピッタリなんだ」
「はめるってことかな」
「きっとそうだ。よし、広場へ行くぞ!」
「国宝、忘れないように」
「おっと危ねぇ」
なんだか頭の中がスッキリした。
これでやっとバハムートに対抗できる。それにこの国を守るという事で、恩返しがやっとできるのだから。
- Re: Chage the world ( No.66 )
- 日時: 2018/02/13 18:42
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
32話(1)生きた証
フレイヤと共に行動するのは何度目だろう?
孤児院の時も、この旅でもだいたい一緒にいる。まぁ、オリガもだけど。
ただ、フレイヤといる時だけは少し違う。
なんだか気持ちが緩んで、同い年だから言える話だってしちゃう。しかも共感できちゃう。
足りない部分も補えて、戦いでも楽しかったりする。
だから、今回も私はフレイヤを選んだんだろうなぁ。
「見えてる?」
「ん?」
「ぼーっとしてたからさ〜」
帝国兵を’’戦えない状態’’にし、いろんな所から音がする中休憩していた私達。
フレイヤは弾の補充、私は鞭の確認をしていた。
「’’戦えない状態’’にするのはもう慣れてきたな〜」
「人の命を奪わないのが反乱軍だからね」
人の命を奪わない… それが反乱軍の掟。
命を奪うということは、その者の’’生きた証’’を残さずこの世から消すということになる。
また、新たな憎しみや恨みを作ってしまうことに繋がる。
だから、前の反乱軍の長… 女王様がそのような掟を作ったのだろう。
「’’生きた証’’ね…」
「どーしたの?」
「私がもしこの世から消えてしまうってなった時、私の’’生きた証’’は残せるかな…って思ってさ」
「死亡フラグ? こんな時にそんなの考えるって」
「まさか〜 私はバリバリ元気だよ! ケガだってしてないし! ただ、帝国兵と戦ってて思っただけ。」
「なら良かった〜 私、そんな事になったら泣いちゃうもん」
ここが戦場だからこそ笑いあえるのだろう。
「さて、次行こうか」
「この兵士達、目が覚めたらキリがないんじゃない?」
「大丈夫。 目が覚めたら状態異常魔法のどれかがかかるようにしてあるから」
これでよしっと。
毒や呪い… いろんな状態異常魔法のどれがかかるか少し楽しみだ。
かかったらきっと一度は軍の拠点の救護室へ向かうだろう。
『用心深い兵以外は、状態異常を治す薬類を持たない』という事を事前にオリガに聞いておいて良かった。
念のために、薬類を持っていないか探して没収もしたので大丈夫だろう。
「次ってどこ行くの〜?」
「バハムートの所とか。まぁ、みんなと合流しながら行こっかな〜」
「バハムート!? 竜王様だし、幻獣でもトップクラスだし、暴走中なのに!?」
「大丈夫だよ、きっと。私達には仲間だって幻獣だっている。だから… ね?」
遠い昔、世界が1つだった頃に人間と幻獣が協力して、いろんなのに立ち向かったって話がいくつもある。
それで起こってしまった戦争で幻獣と人は別れてしまったけれど、再び協力できると私は信じてる。
それが召喚士や守り人、神の力を受け継ぐ人達… 様々な種族の人達が目指してる事なのだから。
そうだよね。お守りの中の人…
- Re: Chage the world ( No.67 )
- 日時: 2018/02/14 11:28
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
32話(2) 合流
「ん? 月のカード。幻想でも見てな」
向かった先にいたのは、ジュリィだった。
周りを囲んでいた兵士が次々と倒れていく。幻想に囚われたのだろう。
「ジュリィだ〜」
「お、フレイヤにミント。そっちは終わったのか?」
「うん。終わったよ」
バハムートや飛空挺がいる方を南とし、城の方を北とすると、私達がいるのは西側。
私とフレイヤは南西を、ジュリィは北西を担当し両方とも鎮圧したので西側の心配はもうない。
「気づいたんだけど、帝国兵達が援軍を呼ばない理由」
「なになに〜?」
「バハムートの時間稼ぎらしい。反乱軍の掟を利用したね。他にも…」
そこからジュリィはたくさんの事を話してくれた。
時間稼ぎ以外の理由。次にどこが狙われるか…
どれも全て、帝国兵が耳につけている通信機から入手したものらしい。
「つまり、次はレオンのいる北東に行けばいいってこと?」
「そうなる。さーて、行こうか」
城門前を通り、北東… 商店街の方へ行く。
私達のいた住宅街とは違い、メイン通りの幅は広く、直線に長い。無駄に周りを警戒しなくて済む。
「レオン、大丈夫か?」
「そっちこそな」
レオンは剣舞技の中で少し威力の強い、龍の名を冠する技で戦っていた。
まとまっている帝国兵に向けて、レオンの放った水龍が飛んでいく。
「思ったんだけどさ、その技って全部龍に任せてない?」
「攻撃するのは龍だが、操ったり生成したりするのは俺だ。大変なんだぞ」
「ふ〜ん、そうなんだ」
結局、自分は直接攻撃してないじゃない。
まぁ、それは置いといて。
「ここらへんは片付いた。そっちは大丈夫なんだよな」
「もちろんさ」
「じゃあ、次は南東…オリガの所だね」
「南東は飛空挺から降りてくる帝国兵が多い。オリガと同じく屋根で戦う事になるぞ」
あたりを見回す。屋根へ登れそうなのは… 花屋横にある宿屋の階段。
「あれしかなさそうだね」
「行こ〜」
オレンジ色の屋根へ登ると、国のほとんどが見えた。
そんなか、飛空挺から降りてくる帝国兵と戦っていたのはオリガとメイスを振り回す少年。
あの少年はきっと…
「赤髪にメイス… ノアかな!?」
何事にも積極的で明るく、いつもヘラヘラしていた赤髪の少年… ノア・マルティネス。
オリガと仲が良く、少しの間、孤児院で共に生活した仲間。
里親が見つかって別れて何年ぶりだろう。
「おぉ、レオンとか久しぶりだなぁ! こんな時に会えるだなんて、ついてないな」
「再会を喜んでる暇があったら、あの集団を止めたらどうだ?」
オリガとノアの目の前には、帝国兵の集団が迫ってきていた。
最後の時間稼ぎ… というよりは、こちらを潰そうとしているようだった。
「メンバーが増えたことだし、もうひと頑張り!」
オリガは槍を1回転して持ち直し、帝国兵の集団へ襲いかかった。
それに続くように私達も戦う。
フレイ達は今、何をしているだろうか。
「時間稼ぎをしろ」と言われてから何分経ったのだろう。
…また考え事をしてしまった。戦闘中に。
「これで… 最後ッ!」
息切れがする。私達は何十人の帝国兵と戦ったのだろう。
最後の1人を’’戦えない状態’’にした途端、今までの疲れが出てきた。
体への影響は疲れだけではなく、傷が痛み出すというものもあった。また服も汚れたり切れていたり、自分の武器も傷ついたり痛んだりしていた。
「疲れた〜」
「まだ、大物が、いるけどね…」
「いったん拠点へ戻ろう。疲れただろ?」
ノアの提案を受け入れることにした。
国から少し離れていた拠点は、反乱軍のアジト… 孤児院だった。
そこでは避難者、怪我人、反乱軍の者… いろんな人が協力し助け合っていた。
「なぁ、疑問に思ってたんだけどさ。なんで拠点を攻撃しちゃダメなんだ?」
ノアが聞いてくる。その様な事もわからずに戦っていたのか…
「世界が4つに別れた時、結ばれた協定があるでしょ」
「確か、’’4大陸協定’’だったよね?」
会話にオリガも入ってきた。
「アタリだよ、オリガ」
「世界のジョウシキってやつでしょ、わかんないだなんてねぇ」
ノアがボソッと「マジか…」と呟いたのは、確かに聞こえた。
さて、話を戻そう。
「その’’4大陸協定’’では、戦いの事についてもあるの。それで、『相手の拠点への攻撃及び侵入を禁ずる』というのがあるから… わかったよね?」
確認も含めてノアに言う。
しかし、ノアは壁に寄りかかって寝ていた。
「あはは、寝てるね」
「相変わらずみたいだね」
笑うしかない。
「ノアー! 仕事!」
「は、はい!?」
ジェシィに呼ばれると、ノアはビクッとして起き走って行った。
過去に何かあったのだろうか。こんなに年下に弱いノアは初めてだった。
向こうでは、ジェシィが何かを訴えている。ここでノアとはお別れだろう。
まるでノアと入れ替わるかの様にジュリィがやってきた。
「妹さんに合わなくていいの?」
「大丈夫さ。アイツは私がいなくとも」
そんな時、レオンとフレイヤもやってきた。
「どうした?」
「お兄ちゃん達の準備が終わったって。機械みたいな竜の石像まで来てだって」
「了解だよ」
何をする気だかはわからない。
でも、バハムートをどうにかできる様な気がした。
拠点を後にする。
目指すは、小さい頃よく遊んだ場所の1つ。中央広場へ。
- Re: Chage the world ( No.68 )
- 日時: 2018/02/15 12:17
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
32話(3)幻獣と共に
「総員撤退せよ!」
帝国軍がバハムートだけを置いて撤退していく。
日の昇る方がだんだんと明るくなっていく。
もう少しで夜が明ける。きっとこの戦いも終わるだろう。
「お〜い、早く来いよ〜」
道の先にある少し広い所… 中央広場でフレイとシドは待っていた。
2人の後ろにあるのは機械みたいな竜の石像。
何か、関係あるのだろうか。
「何をする気だ?」
「『この地に伝わりし秘宝』… 国宝を使って、幻獣アポロンを召喚する。たぶん、バハムートに対抗できる」
聞いたことの無い幻獣だった。
とりあえず、ここはフレイに任せてみよう。
「国宝っと。これをこう… なんだ!?」
真横にバハムートの衝撃波が降ってきた。
上空を飛びながら衝撃波を次々と放ってくる。石像を狙っているみたいだ。
「シド、防壁魔法を頼む。レオンとかはバハムートの狙いをこちらから離してくれ!」
「わかった」
シドが防壁魔法を詠唱したのを確認し、バハムートへの攻撃を開始した。
自分の武器や魔法で攻撃する。しかし、バハムートの見えないバリアによってダメージが与えられない。
他に方法が無いのか… そう思った時だった。
「我らを使うのだ…」
どこからか声が聞こえた。
「誰…?」
ポケットの中が光る。いや、ポケットの中に入っていたお守りの中の石が光る。
小さい頃、ひいおじいちゃんから貰ったお守り。『時が来れば、効果が現われる』と言われたようなきがする。
ポケットから取り出し、石に魔力を込める。まるで魔石を使う時のように。
「誰だかわからないけど、お願い!」
石を空へ投げる。目がやられるほどの輝きを一瞬放つと、無属性特有の薄い灰色に輝く魔石となった。
そして現れたのは…
「幻獣王… オーディン!?」
「使ってくれてありがとう。お主達と共に我らも戦おうではないか」
オーディンが言い放つと、皆の持っていた魔石が輝き、召喚獣として姿が現れる。
イフリートにフェニックス、コールドとフェンリル、バイウ・カハの三姉妹。
今、私達が仲間にしている幻獣がここに集った。
「王様!? まだ仲間にされてなかったんじゃないの!?」
「う〜ん… コールド、私じゃ答えられない」
「おう、久しぶりだな焼き鳥!」
「その呼び方やめてって言ったよね?」
「姉さん、フェンリルだよ!」
「グルぅぅぅ」
皆、再会を喜んでいる。何のために呼ばれたかを知らないで。
「大丈夫なんですか? 皆、こんな感じで」
「皆、共に揃い人間と戦うのが久しぶりなものでな… ちょっと待っておれ」
甲冑に包まれ、八本足の馬スレイプニルに乗った王は槍を掲げると
「皆の者、我が仲間バハムートを止めよ!」
と叫びバハムートへ攻撃し始めた。
戦い方は様々。だがそれぞれの思い、考え… は皆同じように感じた。
「万物を貫け、グングニル!」
オーディンの放った槍がバハムートのバリアを破壊する。
やっと、ダメージが与えられるようになったのだ。
「皆の者、今こそ攻めるのだ!」
自身の中で最大のパワーを使い、技を放つ。
バハムートには聞いているようだが、まだ倒れない。それに対して召喚獣達はパワーを使い果たし、魔石へと戻っていく。
最後に残ったのはオーディンだった。
「我が最後の力を使って、あの者を呼び出す手助けをしよう…」
手を石像へ向けるとオーディンは何かを放ち、魔石へ戻ってしまった。
だが、石像に変化が起きた。
他の幻獣と比べ物にならないくらいの大きな光る魔法陣が石像の上空にできる。
現れたのは…
- Re: Chage the world ( No.69 )
- 日時: 2018/02/15 23:02
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
32話、長いですね(自分で言うんかい)
書いてる途中にエラーが起きたり、重くなったり、時間がかかったり(32話(2)は1時間掛かってます)… などと様々な事が起きる可能性があるため、このように分割して連載させていただきます。
前置きが長くなってしまいましたね。それでは32話(4)どうぞ。
32話(4)死闘
「わたしを呼んだのはあなた達ですか?」
巨大な魔法陣から現れたのは、機械仕掛けの10メートルほどの竜…アポロン。
他の幻獣と雰囲気が全く違う。
「そうだぜ、アポロン。すべて見ていたんじゃないのか?」
女性のような優しい声でアポロンは続ける。
「主の持つわたしの魔石からその場の音、雰囲気は感じ取れていました。また、景色も僅かですが見えました。ですが、わたしが存在するのは多次元宇宙。王様に呼ばれるまでは意識を集中してこちらの世界を見ていなかったため、わからない事もあります」
「そ、そうか…」
フレイは頭の後ろをぽりぽりと書く。困っているようだ。
「貴様は機竜か… 何百年ぶりだ…」
「竜王バハムート…」
バハムートがアポロンに話しかける。帝国に操られているせいか、気が荒いように感じる。
「竜王… なぜあなたは’’扉’’を開けようとする者の側につき、この地を滅ぼそうとするのですか」
「貴様は忘れたのか。この地に住まう者はかつて世界が1つだった頃、我ら竜族を滅ぼそうとした事を」
「忘れてはいません。いや、忘れてはいけません。ですがそれは過去の話。囚われていては、前には進めません。」
「それだけか」
「否、他にもあります。わたしは昔、与えられた使命を果たそうとしているのです」
「ほう… そうか。ならば我も与えられた使命を果たそうではないかッ!」
バハムートがアポロンに襲いかかる。
「主、わたしはこの土地と生ある者達を守ります。ですが相手は竜王。わたしの援護をお願いできますか」
「了解だぜ! おっし、ひと暴れするぞ」
私達は再び屋根に上り攻撃し始める。
バハムートの攻撃対象がアポロンとなっているせいか、先程のように受けるダメージは少ない。
体の傷が痛むが、攻撃はやめない。だって、未来がかかっているのだから。
「消えろ」
アポロンが鋼鉄の爪をバハムートに振り下ろす。
「グハッ…」
バハムートにとって大きなダメージとなっただろう。
しかし、衝撃波、ブレスの威力が弱まることはなかった。
「ヤバい… 魔力もカラッポになってきた…」
「大丈夫? ミント。 コレ使って」
フレイヤから渡されたのは使って失われた魔力を回復する薬… 魔力回復薬だった。
この戦いで魔力がそこをつくたびに使っていたせいか、わたしの分はもう無くなっていた。
フレイヤのメインの攻撃は銃撃だが、時に魔弾と呼ばれる少し強い魔力を込めた攻撃もある。
仲間の中で唯一の遠距離攻撃ができ、動き回るバハムートに確実にダメージが与えられるのにいいのだろうか。
「いいの?」
「魔弾がもう無くなっちゃってさ〜 回復魔法ぐらいでしか魔力使わないし、ミントの方が魔力強いし… まぁ、私は通常弾、散弾、火炎弾とかいろいろあるから大丈夫。使って」
「ありがとう」
「えへへ、頑張ろうね」
フレイヤは銃のリロードを済ませると、すぐに私を離れた。
私は渡された魔力回復薬を使い、自分の傷を癒し再び鞭を振るった。
「まだ、負けるわけにはいかねぇ…」
「ジュリィ… 大丈夫かい…?」
「シド… あんたもな」
皆、体力・魔力・精神力が限界に達していた。
長きにわたる帝国軍との戦い。残るはバハムートだけだが、相手は竜王。だいぶ動きは鈍くなってきたが、まだ魔石には戻らない。
アポロンも鋼鉄の翼には傷が付いていた。胸のあたりにあるコアらしき者にもヒビが入り始めていた。
このままでは負けてしまう。何か方法は無いものか…
そんな中、幼い頃に聞いたおとぎ話を思い出した。
世界が1つだった頃に起きた’’終末戦争’’を終わらせた少女の話。
確か、その少女が使ったのは…
「アポロンよ、その程度の力では、我を倒すことはできん!」
アポロンの悲痛な叫びが響き渡る。コアが破壊されてしまったのだ。
「主… 申し訳ありません。わたしは… どうやらここまでのようです… この世界に、召喚していただいたのにも、かかわらず… 敵を… バハムートを、倒せなくて…」
「アポロン… ありがとな。あとは… オレ達にまか、せろ…」
「少し… 休ませて… いただきます」
アポロンは光となって消え、魔石に戻った。
やはり、あの禁術と呼ばれる魔法を使うしか無い。この戦い、未来、思い出のためにも。
命が消えても、体が滅びたっていい。それでも、みんなの中にある記憶には私は生き続けるから。
「ジュリィ… バハムートの動き、封じられる…?」
「今残ってる、魔力、全部使えばギリギリ、いけそうだ…」
「ありがと… お願いね… レオン、オリガ、ジュリィの魔法… 効果が出るまで、バハムートを、固定できる?」
「任せろ…」
「りょーかいだよ…」
「シド、フレイ、フレイヤは… 一瞬、でもいいから… バハムートの動きを、止められる…?」
「OKだよ…」
「任せろって…
「ミント… わかった…」
「みんな、ありがと… 動きを、止めて… 固定して、封じる。そしたら… 私が、デカイのやる、から」
皆、動くだけでも一苦労なのにありがとう。責任重大だな… 私。
頷いてくれたと同時に作戦が開始する。それに合わせて私も詠唱し始める。
おとぎ話では世界を滅ぼしたけれど、あれは唱えた少女の魔力が莫大な物だったから。今ここで私がやったら、この国ぐらいの範囲で滅びるまでには至らないだろう。
「神の見張る…試練与えし… この世界に… 刻は来たれり…」
その言葉にオリガが振り向く。
さすが重宝部員… いや、昔話好き。この魔法がどんなものか知っているのだろう。
いつものオリガだったらきっと私の事を止めるだろう。でも、今回は止めてくれない。
私の覚悟が伝わったのだろう。振り向いた時、涙目だったもの。
フレイヤの撃った弾のおかげで一瞬、バハムートの動きが止まった。
その瞬間を逃さず、オリガとレオンが自身の得意とする技でその場に固定する。
「多次元より… 飛来せし… 流星… 」
「ジュリィ、今だ!」
「わかってる」
ジュリィの魔法が効く。幻獣には効かないと言われていた拘束魔法が。
「今こそ… 降り注げ! 流星雨(メテオレイン)!」
上空に掲げていた手を勢いよくバハムートへ振り下ろす。
それに対応するかのように、空から隕石が雨のように降ってくる。
隕石が無差別にあたりを破壊する。
ごめん… フレイ。国の修復費、増やしちゃった…
でも、これで未来が助かるんだからいいでしょ?
1つ大きな隕石がバハムートに当たる。
魔法が解けた瞬間に隕石が当たったため、地面へと押しつぶされた。
アポロンと同じように光となって魔石に戻り、その場に落ちた。
「ミントーーーーッ!」
一番にそばにやってきたのはフレイヤだった。
その場にしゃがんでしまった私を、支えながら少し立たせてくれた。
あぁ、もう立つ力も残ってないんだ。
ゆっくりだけど、皆そばに来てくれた。
オリガは槍を支えに、シドは双剣を背当てにしてその場に居座る。
そんな時だった。私から出た光が空へ昇って行くのが見えたのは。
もう、時間も無いんだ… 最期くらい、わががま聞いてくれたっていいじゃない。
「ミント… お前…」
「レオン、気づいちゃった? 私、もう空に消えちゃうみたい。」
「嫌だよぉ… ミント…」
フレイヤの事を泣かせちゃった。相変わらず、泣き虫だね。
「みんな泣かないでよ… こっちまで… こっちまで悲しくなっちゃうじゃん」
フレイ、後ろ向きで立って泣いてるの隠してるんだろうけど、バレバレだよ。ほら、男でしょ?
「別れは新たな出会いの始まり… そう言ってくれたのは、ミントだったよね…」
オリガ、覚えててくれたんだ。ノアが孤児院を離れる時に言った言葉。これから言うことも、覚えててほしいな。
「そうだよ。出会いがある分、別れがあるのと一緒。別れがある分、出会いだってあるんだよ。その度に、出会った人との記憶ができる。私は記憶の中で生き続けるから、これは永遠の別れじゃない。その記憶こそが、
私の’’生きた証’’。」
女王様が残したように、私も’’生きた証’’が残せたよ。もう少しでそっちに行くね。
「ミント… 僕、医者なのに… 助けられなくてごめん…」
「いいの。これは私の選んだ事だから…ね。シドは何にも悪くない」
これは自分の選んだ事。そう言い聞かせて涙をこらえる。
実際、記憶の中で生き続けるって言ったけど、実際に見て、触れて、話して、感じられるのはコレが最期。
別れの時は笑顔の方がいい。ジン君、そう言ってくれたよね。
だから、言い聞かせてこらえるよ。
「まだ、勝負は終わってないからな…」
「ジュリィったら、もう。小さい頃の話でしょ。…私も言わせてもらうよ。まだ、負けてないから」
いつまで続けるのかな、この勝負。
諦めたら負けって勝負。結局、最期までわからなかったよ…
「今まで… ありがとな」
「…レオンっぽくない。いつものクールさはどこ行ったの? まぁ、いいや。言うなら、自分の気持ちに嘘はつかないでねって事かな」
手や足の感覚が消えてきた。それに、体も透けてきちゃった。
本当の、本当に終わりなんだ… ここ数年、楽しかったな…
もう、お別れしなきゃ。約束しなきゃ。
「…もう、お別れみたい。1つだけ約束。…またどこかで会おうよ。記憶じゃないどこかで。だから忘れないで。閉ざさないで。私と共に過ごした日々を。そして…」
『ありがとう。またね』
- Re: Chage the world ( No.70 )
- 日時: 2018/07/15 12:05
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
どの道、私は消える運命。
パナソの目的を知ってしまった私には、任せられた『使命』があった。
それは、生ある者ではできないこと。生を失ってこそできること。
タイミングは任されていた。だから今私はこうしている。
でも、何かを拒んでいるような気がする。
みんなが離れていく…
いや、私がみんなから離れていってるんだ。
最期の、最期まで、涙はこらえたけど…
前向きにみんなを励まそうとしたけど…
やっぱり、別れは辛いなぁ。
あぁ、もう泣かないでよ… フレイヤ…
そんなに泣いたら、みんなを困らせちゃうよ。
…少なくとも私は困る。私だって、泣きたいよ。思いっきり泣きたいよ。
でも、私が泣いたら… 雨になっちゃうよね。
せっかく、朝焼けが綺麗なんだもん。私は我慢する。
この世界ともお別れ。
目を閉じて、寝ちゃえ。
次、目がさめるのは──
- Re: Chage the world ( No.71 )
- 日時: 2018/02/16 10:14
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
33話 勝利
目の前で、ミントは消えた。
バイウ・カハの死の予言は、今、戦いの終わりを告げると同時に的中した。
自分の気持ちに嘘はつくな… なんの事を言っていたんだ?
俺の胸には、仲間を失った事による喪失感と疑問が入り混じったような気持ちだけが残っていた。
この気持ち… 前にも感じた事がある。あぁ、あの時か。
「フレイヤ… もう泣かないの!」
「う… うん。 私、泣かない!」
切り替えは早いな。まぁ、それがいいところなのだが。
「さて、宣言しなきゃな」
フレイはポケットの中に入っていたスマホを取り出し通話状態にした。
相手は、拠点にいるジェシィ。
「もしもし、みんなそっちにいるか?」
「集めたほうがいい?」
「お願い。みんなが聞きたい事、話すからな」
スマホからガサゴソと音が聞こえる。
「集まったか? んじゃ、宣言するぜ」
フレイは周りを確認すると、深呼吸をして言った。
「帝国軍撤退及びバハムートの撃退に成功。よって、我が緑の国、反乱軍の勝利だッ!」
スマホから歓声が聞こえる。
あの帝国に勝ったのだ。7年前とは違う結末を迎えられたのだ。
「やべ、足攣った…」
「お兄ちゃんったら、かっこつけるから…」
「いったん、ユピテル号に戻ろう。そして拠点に戻ろう。話はそこから」
ジュリィはポケットからテレポ石を取り出す。
監獄からの脱出やその他諸々、この人は何個その石を持ち、使ったのだろうか。
「どこに飛ばされるかわかんないけど、戻るよ!」
見えてきた景色はユピテル号のコックピットだった。
「さて、飛ばすよ」
拠点の近くに飛空艇を着陸させる。
俺達を待っていたのは、ジェシィとヒメカだった。
「姉さん達、お帰り!」
「みなさん、お疲れ様です」
それから、今まであった事全てを話した。
ミントの事も、国の様子の事も。
「いろいろ… あったんだね」
「まぁな」
「とりあえず、どちらの国もいろんな意味での致命傷を負ったでしょ。だから、少し休んだら?」
「そう… だな。休ませてもらう」
「…でも、手伝いとかあるからね」
ジェシィの最後の言葉だけは聞かなかったふりをしよう。
皆それぞれ、自分の仕事を、手伝いをしていた。
フレイはレヴェリーへの報告書作り。シドとフレイヤは怪我人の治療。
ジュリィとオリガは修復作業の手伝いや、物資の確認。なぜその2人に任せたのだろうか…
フーは、避難してきた他のフーと戯れている。ん? あれは… フー吉!?
フー吉がいるという事は、リベロもいるという事か。
昼飯作りを手伝わせられそうな予感がする。
時計が昼になった事を伝える。
「レオン、いるなら手伝え」
「了解… だ」
予想どおりリベロに呼ばれた。今日の昼飯は… カレーか。
ご飯は炊けている。あとはルーだけという事か。
食材を切り刻み、焼き、煮る。久しぶりの作業だが、体は覚えていた。
ご飯にルーをかけ、カウンターに置く。そして、戻ってきた皿を洗う。
そんな事をして過ごし、あっという間に1週間が過ぎた。
1週間の内には、追悼式、復興作業などいろんな事があった。
他国の支援などもあり、国や周りの村や町ではだいたい住めるようになった。
だんだんと拠点に住む人は少なくなり、前と同じようになった。
「ふぅ、やっと完成した! ありがとな、ヒメカ」
「いえいえ。こういう文章は得意ですので」
フレイの報告書も完成したため、今日中にはレヴェリーへ旅立てそうだ。
「さて、レヴェリーへ行こうぜ!」
「ちょっと待って〜 オリガがまだ帰ってきてないよ」
小さい子達と遊ぶフレイヤが言った。
数十分前、オリガは森の中の昔よく遊んだ場所に作ったミントの墓標へ向かった。
だが、帰ってきていない。
あまり遠くなく、出てくるモンスターも攻撃しなければ襲ってこない。
なのになぜ帰ってきていないのだろうか…
もしかして、刻印の効果が出てきたのか…?
腹に刻まれたまがまがしい紅い刻印。魔封剣で封じ込めたが、消えてはいなかったはずだ。
その刻印を知っているのは俺だけ。確認するしかないな…
「俺が行ってくる。ちょっと用もあるからな」
「早めに帰ってこいよ〜」
拠点… アジトを後にする。
お願いだ。無事でいてくれ…
- Re: Chage the world ( No.72 )
- 日時: 2018/02/25 20:55
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
お知らせ
テスト勉強があるため、少し更新が遅れます。
短い話なら書けるかな…?
最近更新してない番外編については、本編の方が落ち着き次第再開します。
リク依頼スレの『CTWいろいろ募集』でいろいろなものを募集していますので、そちらでキャラクターを作って頂けますと番外編の話が出来上がるかもしれません。
- Re: Chage the world ( No.73 )
- 日時: 2018/03/02 21:45
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
また、おしらせです
私の愛用しているキーボードが再び不調です。
直るかどうかわかりませんが、今までよりも打つのが遅くなります。
…まぁ、電源を切り忘れたのが原因なのですが
テストが終わり次第、連載スピードを上げていきます
- Re: Chage the world ( No.74 )
- 日時: 2018/03/04 19:01
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
33.5話 情けない
「そろそろレヴェリーに行くね。ミントの分も頑張る」
昔、よく遊んでいたジャングルの中の海の見える崖にオリガはいた。
思い出の場所… 今はミントの墓標があるこの場所をあとにしようとしたその時だった。
「…誰」
誰かの気配がする。
しかし、周りを見ても誰もいない。ジャングルの木にでも隠れているのだろうか。
念のため槍を取り出し構える。
すると何かの音が後ろから聞こえた。
…後ろだ!
氷球を音のした方へ放つ。
誰もいないはずなのに、氷球がバリアにぶつかり消えた。
そのバリアが消えると同時に現れたのは…
「パナソ… 」
「久しぶりだね」
皇帝の側近にして、帝国を影から操る者パナソだった。
「自我を取り戻してしまうとは… 残念だよ」
「あんたの思い通りには、私はならないよ」
最後にあった頃のパナソとは雰囲気が違かった。
皇帝がいないから? それとも1対1だから?
なんだか、嫌な予感がする。
「私に何の用?」
「君に刻まれた刻印を完全なものにする。それが用だ」
パナソの周りに10本ほどのナイフが現れる。
私の刻印に用があるならさすがに殺されはしないだろう。
刻印のおかげで力は強くなり、辺りのモンスターは楽に倒せるようになった。
でも、また捕まってしまったら刻印にきっと私は蝕まれ、みんなに迷惑をかけてしまう。
どうにかここをやり通さなければ。
飛んでくるナイフを弾き飛ばしなら攻撃する。
「あんたは結局何がしたいの」
「一族の使命を果たしたいだけさ。だから、帝国を利用しているんだ」
「使命って何なの」
「『神を超える者を作る』そう聞けば大体わかるだろう?」
昔話のような何かに、そのような使命を背負った一族がいたような気がする。
確かその一族の名は『ホウフハの一族』。実在しているのか不明だったはずだ。
よくは思い出せないが、世界に関わることであるには変わらない。
もっと、情報を集めなければ…
「キャッ!」
幅の広いジャングルの木に打ち付けられる。衝撃のせいで足が動かない。
…また私はダメだった。1人ではダメだった。
迷惑をかけたくない。その一心でここまで生きていたが、私はいつも助けられてばっかりだ。
情けない。こんなの… 情けなさすぎる。
刻印が紅みを増す。前回よりも効果があるらしい。
まわりがだんだん暗くなっていき、見えていた景色に向かって手を伸ばす。
しかし後ろから伸びてきた赤黒い帯のような物が私に巻きつき、暗い空間へと更に引きずりこむ。
目に溜まっていた涙が流れると同時に、私の意識がとぶ。
- Re: Chage the world ( No.75 )
- 日時: 2018/03/06 21:33
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
34話 俺の思い
「オリガ!」
ミントの墓標がある崖に俺は来た。
そこにいたのは、木に寄りかかるように寝たオリガだった。
「何があったんだ…?」
近寄ってみる。
脈はあるが、反応がない。体も冷え切っている。ただ、生きているだけ。
… やはり、そうだったか。
少しだけ見える腹にある刻印が赤黒く気付かないほどにひかる。
原因は予想通りだった。
…あの時、刻印を完全に封じ込め消し去っていたら。
オリガはきっとこんな風に苦しまなかっただろう。
また、できなかった。
後悔しか胸には残っていなかった。
そんな時、足元を突く何かに気がつく。
「クゥ〜」
「フー…」
「ワゥ、ワン、ワン! ワゥ」
まだ、全てが終わったわけではない。
勝手に諦めていた俺に、鳴き声と動きでフーが伝えてくれているような気がする。
小動物に励まされるなんて、なんてダサいのだろう。こんなものだから、守りたいものも守れないのだろう。
「フー、ありがとな」
「ワゥ」
気が晴れないままオリガを背負い、アジトへと向かう。
背中から、かすかなあたたかみが伝わってくる。向かう途中に目を覚まして、ごめんとか言ってきそうだと考えさせられる。そしたら俺はどう言い返そう。なんでもいいか。
なんでもいい… そう思えるのも笑って包んでくれるオリガのおかげなのだろう。
だからもう一度話す事ができるなら、隠したりとか誤魔化したりとかしないで話そう。素直に話そう。たくさんあるんだ、伝えたい事。
フレイとかミントに俺は変わったとよく言われた意味が、よくわかったような気がする。
今まで他人の心配なんか、どうでも良いと思っていた。なぜなら大丈夫だと思え、信じられたから。でもそれは自分に言い聞かせていたものだった。一度考えると止まらなくなる… それが俺だから、自分の心、気持ちに嘘をついてそう考えていた。
だけど大切な人を失いかける事で気づけた。それだと失い続けるだけだって事を。
オリガを救いたい。たくさんの『ありがとう』を伝えたいから。あの笑顔を取り戻したいから。
俺にとって大切な人だから。
アジトが前方に見えてきた。飛空挺のエンジンが音を立て起動しているのがわかる。
世界の中心とも言われるレヴェリーに行けば、この刻印だってきっとどうにかなる。
わずかな望みをかけ、みんなの待つ飛空挺へ向かった。
- Re: Chage the world ( No.76 )
- 日時: 2018/03/11 22:36
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
34.5話 焦らずに
「やっぱりそうだったんだね」
ユピテル号のコックピット。
操縦席に座りコーヒーを飲んでいるシドに、オリガの刻印について話していた。
シドはあの監獄から脱出した時には、刻印の存在には気づいていたらしい。
さすが医者。体調だけではなく変化にも気づけてしまうとは。
「あの刻印は、いくつかの他の種類の刻印が合わさってできてるっぽい。専門じゃないから対処法はわからないけど、どんな効果があるのかぐらいはわかったよ。」
シドはコーヒーの入っていたマグカップを横にある備え付けのミニテーブルに置くと、刻印について話してくれた。
「一つ目は能力向上。これは特に害はないから問題ないはず。二つ目は自我を封じ込める効果があるやつ。これのせいでオリガは眠ってしまっているんだと思う。三つ目は魔封剣のおかげで消えてきていたみたいだけど、回復し始めてる、刻印をつけた者… パナソに操つられる効果があるやつだね。前、監獄で戦ったって言ってたよね。その原因はきっとこれ。まぁ他にもあるみたいだけど、今一番効いているのは二つ目に言った自我を封じ込めるやつだか…」
「オリガを助けるには、俺はどうしたらいいんだ?」
ついつい話をそらしてしまった。
だがそれは、今一番俺が聞きたいことだった。
刻印の責任などは俺にある。その他にもいろいろある。
でも、今の自分の心にあるのはオリガを助けたいという気持ち。
シドはスマホを取り出すと、誰かの連絡先を探しているようだった。
「レヴェリーに刻印について詳しい知り合いがいたはずなんだ。その人ならきっと知ってるはず。だから、そんなに焦らなくても大丈夫」
「そ、そうか… すまなかった」
とりあえず待つ。レヴェリーに着くまで待つ。それが今の俺にできること。
何もできていないように感じてしまって、少し悔しいような気がする。
そんな思いをしていたのは、焦っていたからだろう。
少し落ち着こう。焦っていたら、気づけたはずのことにも気づけないのだから。
- Re: Chage the world ( No.77 )
- 日時: 2018/03/14 22:21
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
35話 魔法的状態異常専門
前方に、今まで見てきた中で一番大きな城が見えてきた。
城の周りには様々な大きさの家や店が立ち並び、飛空艇発着場や駅のホームまである。
その地に住む者ではないからわからないが、地方に住む者から見た感じだと不便なことが一つもないように感じる。
発着場にユピテル号を停め降りた時、どこからか声がした。
「シドさ〜ん、やっほ〜」
声のする方へ視線を移すとコッチコッチと手招きをしている女性が、飛空艇発着場の地上入り口の奥に立っている民家の前に立っていた。
「ん…? あれって…」
「どうした?」
フレイが目を見開いて女性の方を見る。
そんなに見ても距離があるため近くに行かないと無意味だとジュリィが話そうとした時。
フレイが小声で
「やべ… 何言われても覚悟しとかなきゃ」
と言ったのが聞こえた。
フレイがこんな風に言う時は、何かを忘れてしまったり怒られることをしてしまったりした時だけだ。
…ということはあの女性と知り合いということになる。
「シドさん、お久しぶりです。あと、フレイ! たまには連絡ぐらいちょうだいって言ったよね?」
「ご、ごめんな。最近忙しかったからよ…」
「ま、それは置いといて。初めまして、刻印などの魔法的状態異常専門のルミルです。みなさんと私、同い年なんですってね。フレイやシドさんからいろいろ聞いていますので、とりあえず、中にどうぞ」
栗色の長い髪に黒のスーツ。そして、魔法的状態異常を専門とする珍しい医者。俺達と同い年には思えないぐらいしっかりしていて大人びいている。
背負っていたオリガをベッドに寝かせ、こうなってしまった経緯をルミルに話す。
ルミルは1冊のノートを取り出し、刻印を見ながら話したこと、状態などを書き込んでいく。
「なるほどね。」
「どういう状態なの?」
「刻印は外からじゃ消せないみたい。そして、刻印の力にこの子が負けちゃうともう前のようには戻れない。
結構、危ない状態だね。これ作り出したやつ、かなり凄腕だよ…」
外からは消せない。ならばどうすればいいのだろうか。
「どうやったら消せるんだ?」
「刻印に宿ってる主を中で倒す。それしかないかな」
「中って… どこ?」
「この子の精神世界… っていうのかな。急に言うのもあれなんだけど、今から1人、この子の精神世界へ行ってくれないかな? 意識だけ精神世界に飛ばすんだけど」
「そんなら、こいつがやってくれるぜ」
「ちょ、おい!」
フレイが俺の背中を押す。
それは、俺に任せるということに等しかった。
周りを見ると、皆任せたという顔をしていた。
「君が行くの?」
いったん深呼吸をし、ルミルの質問に俺は答えた。
「ああ。俺が行く」
と。
- Re: Chage the world ( No.78 )
- 日時: 2018/03/18 02:37
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
36話 精神世界での救出
「わかったわ。じゃあ、これから言うことをよ〜く聞いてね」
そして言われたのは2つ。
1つ目は精神世界にいられる時間は限られていること。他者の精神世界に意識を飛ばすという事は、様々なリスクを負うということになる。またルミルの魔力を使うためでもある。ルミルによると、「魔力が無くなっちゃったらどうなるかわからない」という。強制的にこちらの世界へ戻るか、精神世界に閉じ込められるかのどちらかであるらしいが、もし閉じ込められた場合は、こちらの世界との繋がりが消えてしまうため一生戻れないらしい。
2つ目は、刻印に宿っている主を倒す事。これをしなければ助けても刻印が消えないため意味がないらしい。ある意味一番重要だ。
「…というところかしらね。私もあんまりやった事ないから必ず成功するとは言えないけれど、準備はいいかな?」
「とっくにできている。よろしく頼む」
「フレイとは違って頼もしいね。じゃあ、始めるわ」
「違ってってなんだよ…」と隣でフレイがつぶやく。ガンガン突っ走って行く、あまり考えないタイプなのだからそう言われてもしょうがないと思う。
さて、行くか。
目を開くと、先程の場所とは違う場所にいた。
あたりは真夜中の外のように暗く、見る限り何もない。
…ここがオリガの精神世界。
元からこのようなのか、刻印によってこうなってしまっているのかはわからない。
俺の精神世界もこのようなものなのだろうか。
「聞こえる?」
「聞こえてるぞ」
ルミルの声がどこからか聞こえた。
「よかった〜 そっちに声聞こえるみたいね。何かこっちから連絡があるときは、今みたいに話しかけるから驚かないでね」
「了解」
遠くの方で、何かの重い音が鳴ったのが聞こえた。
それが刻印に宿っている主なのだろう。とりあえず、音のなった方向へ行く事にした。
真っ暗な空間の向こうに、重い音の正体… 刻印に宿っている主らしきモンスターが見えてきた。
そのモンスターの全長が見えるあたりまで来た。距離は数十メートルあるだろう。
そこで俺は剣を構えさらに近寄る。
「テキヲカクニン… コレヨリ… セントウタイケイ二… プログラムヲヘンコウスル…」
赤く光る目に、赤黒い石レンガの体。額には『EMETH』という文字があるモンスター… ゴーレムが腕を振り下ろし襲ってきた。
振り下ろされた腕に潰されてしまったら終わりだろうと思いつつ剣から水龍をゴーレムに放つ。しかしゴーレムの動きは止まるどころか遅くもならず、威力を増すばかりだった。
ん…? あれは…
ゴーレムの大きな体の隙間から見える背後に大きな球体が浮いているのが見えた。大きな球体の周りを、時々囲むようにゴーレムの体と同じ色の稲妻発生しているのがわかる。その球体の中の中心に、仰向けになっている人影が見えた。
オリガ… なのか?
稲妻のせいではっきりとは見えない。だがここはオリガの精神世界。俺を除いてここに入れる人間はオリガしかいないはずだ。
「助けてやるからな、待ってろよ」
しかし、ゴーレムの体は石レンガ。オマケに何かの魔法もかかっているせいか、剣による物理攻撃は聞いていないようだった。
このままじゃ、刃がダメになってしまう…
ただでさえ傷を負っているこの剣。そこから刃が駄目になってしまっては使い物にならない。
何か、方法はないのか…
そうだ、外の世界の奴らに聞けば何か変わるだろう。
「ルミル、聞こえるか?」
「はい! なんでしょう?」
「主はゴーレムだ! 額には『EMETH』って光って書いてあって、赤黒い石レンガの体だから俺の剣が効かない。何か方法はないか?」
「ちょっと待ってくださいね」
ゴーレムの攻撃を避けつつルミルの返答を待つ。一瞬がいつもよりも長く感じる。
「額には『EMETH』って書いてあるって言いました?」
「言ったが、何か関係はあるのか?」
「どこかで聞いた事があるんです。ゴーレムの額の文字について。確か、『EMETH』は『真理』と言う意味なのですが、最初のEを無くすと『METH』となって、意味が『彼は死んだ』となるとゴーレムは泥に戻るという事だったはずです」
「わかった、試してみる」
振り下ろされた腕から肩の方へ登り、ジャンプして最初のEへ剣を振り下ろす。するとEの光が消え、『METH』となった。
「ジメツプログラム… キョウセイハツドウ… コレニヨリ… ゼン… キ… ノウヲ… テ… イシス…ル…」
ゴーレムは足の方から泥となっていき、全てが泥となるとその泥も消えた。
残るは球体のみ。球体は未だに稲妻を発生している。
球体を割るしかないな。
剣に魔力を込め、聖なる光を宿らせる技… 『剣舞技 聖臨』
そして、ジャンプし剣を球体に振り下ろす。球体は割れ、中にいた人影… オリガは目をつぶったまま仰向けでその場にゆっくりと落ちていく。そこへ俺は走っていき、オリガを受け止めた。
これって、お姫様抱っこ状態じゃないか…
フレイに見られていないのが幸いだ。しかし、外の世界からこちらを見ていたとすれば…
まぁ、ルミルの言動からすると、こちらの世界の様子は見えていないようだったが。
オリガをその場に寝かし、様子を見る。
このようにしたのは今回で2度目だ。
チラリと見える腹にはもう、刻印は無くなっていた。
急にあたりが光に包まれ、その眩しさに目を閉じた。
- Re: Chage the world ( No.79 )
- 日時: 2018/03/25 18:26
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
〈ちょっとコメント〉
今気づいたのですが、36話を出した時には日付は変わっていたんですね…
ということは、制作時間約2時間40分!? 今までで一番最長だな〜
…ん? コレいらないって? たまには喋らせてくださいよ(笑)
まぁ、37話、始まります。
37話 次の目的
目を開くと、そこはルミルの家ではなかった。
中央には純白の布が敷かれた長いテーブルがあり、囲むように建物を支える柱が並んでいる。
誕生日席のような場所にいる俺のテーブルを挟んだ先には人影があった。
大きな窓から差し込む月光しか部屋を照らすものが無いためはっきりとは見えない。
しかし、その人影は俺の記憶の中にあるものだった。
記憶の中にある名を口に出す。
「オーディン… なのか?」
人影が振り向き、頷いた。オーディンのようだ。
鎧のせいで顔は見えないため、表情はわからない。
いったい何を考え、何を思い、俺をここへ呼んだのだろうか。
「あんたには聞きたい事がたくさんある。」
「ほう… そうか。我もお主に話したい事がたくさんある。しかし… 時間が無いようだ」
話したい事があるなら、時間がある時に呼んでくれ。
「とりあえず、これだけ伝えておこう。お主達、次はハイランドへ行き秘宝を貰い幻獣界へ来い。話は、そこからだ」
「どういう事だよ…」
再び光に包まれ、眩しさで目を閉じる。
「お〜い、聞こえるかい?」
「ん…?」
目を覚ますと、シドとジュリィがこちらを心配そうに見ていた。
「大丈夫そうだな」
ジュリィが胸をなでおろす。
そんなに長い時間、俺は目を覚まさなかったのだろうか。
… オリガは大丈夫なのだろうか。
「オリガは…?」
「大丈夫だよ。目を覚ましてルミルの話を聞いて、フレイヤと先に飛空艇に戻ったみたいだから」
安心した。もう、心配しなくてよさそうだ。
とりあえず立ち上がり、体を伸ばす。
そして、オーディンから聞いた話をシドとジュリィにも話した。
「幻獣王がアタシ達に遊楽の街へ行けだって?」
「そして秘宝を貰って幻獣界へ来いだってさ」
「ふ〜ん。どーいう意味だかわかんないけど、ハイランドへ行くってのは確定っぽいね」
シドはスマホを取り出すと、報告書を提出しに行ったフレイに飛空艇に戻るよう伝えた。
すぐ出発するらしい。
「おや、そろそろ行くのですか?」
部屋の奥の方からルミルがやってきた。
「うん。次の目的ができたから」
「そうですか… 」
ルミルがポケットから何かを取り出す。
「これ、フレイに渡してください。単なる手紙です。中身は内緒ですよ。」
「直接じゃなくていいのか?」
「私には… ちょっと無理です…」
ルミル頬がわずかに赤くなる。
確かに、中身はフレイ以外見ないほうがよさそうだな。
「シドさん達、これからも頑張ってくださいね」
「ルミルも、頑張るんだよ」
「はい! では」
ルミルは俺達が飛空艇に乗って見えなくなるまで手を振り見送ってくれた。
その後俺は自分の部屋に戻り、ハイランドへ着くまで剣を磨く事にした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
レオンから「ルミルからだ」と言われて手紙を渡された。
オレは自分の部屋に戻って、ベッドで横になりながら読む事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フレイへ
言葉にできない思いとか、直接言えない事とか、この手紙で伝えるね。
フレイに伝わるといいな… (バカにしているわけじゃ無いからね)
初めて出会ったのは、レヴェリー王就任25周年記念パーティーの時だったよね。
あまりそこまでに至る経緯は覚えてないけど、立場を考えないで一緒にいてあんなに楽しい思いをしたのは初めてだったの。だって私、他の人と分かり合えない事ばかり知ってたり専門だったりするでしょ?
きっとそれが原因で友達いないし…
でも、フレイは話がわからなくても興味深々で聞いてくれたよね。
こういう経験、私にとって初めてで嬉しかったの。本音で語り合えて、私の事を認めてくれて… 本当に嬉しかった。その時話してくれたフレイの話、面白かったよ。今でも覚えてる。
覚えているぐらいいい思いをしたから連絡先交換したんだと今になって思ってるんだ。
時々でもいいから、連絡ちょうだい。
そう言った理由、わかってくれた?
ちゃんと文章を理解しているならわかるはずなんだけど、きっとフレイの事だから念のために書いとくね。
あなたが私の支えになっているから。
自分で思っている事なのに書いてたら恥ずかしくなってきちゃったな…
フレイが私の支えになっているのと同じく私も、フレイを陰からでも支えられるようになろうと頑張ってるから。フレイも頑張ってね。
だから… 悩み事とか旅の話、いろいろな話でもなんでもいいから、連絡ちょうだい。
長くなってごめんなさい。もう紙のスペースも少ないから、思っている事、ストレートに言います。
本当は直接言いたいけど、私にはきっとできないから。
本当にストレートに言うからね? 驚かないでよ?
直接会って話した回数は少ないけれど、私、フレイの事が好きです。
もし、私でいいのならば… 旅が終わったら返事ください。待ってます。
ルミル・ストレイト
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えぇ!?」
最後の文章により、思わず声が出てしまった。
なぜなら、オレも… ルミルの事は気になっていたから。
あの他者を思いやる心にオレは惹かれていたから。
それよりもっと驚いた事は…
オレが、誰か… ルミルの支えとなっていた事。
緑の国の人達に支えられて生きてきたオレは、緑の国の人達のように誰かを支えたいと思っていた。
まさか、こんな風に実現するとは…
- お願いします ( No.80 )
- 日時: 2018/03/20 21:52
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
私、ありえない間違いを今までしていました…
それは、このスレッドの題名。
皆様はお気付きでしたか?
『change』が『chage』となっていた事を。
『n』が抜けていた事を…
今は修正してあります。
読者様にご迷惑をおかけした事をお詫び申し上げます。
(迷惑なんかかかってない…? お詫びってなに? という事はつっこまないでください)
そこで、読者様にお願いがあります。
間違いをしているのに気づいたら、コメントしてください。
このように気づかない場合がありますので。
- Re: Change the world ( No.81 )
- 日時: 2018/03/25 19:33
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
37.5話 最高責任者さん
「ここがハイランド…」
飛空艇発着場にユピテル号を停め、ハイランドヘ来た。
世界1とも言われている遊園地。地図を見てその凄さが一目でわかる。
「まずは、秘宝ってのがなんなのかを調べなきゃな。一番手っ取り早いのは…」
「ここの最高責任者に聞く。だろ?」
「レオン、それだ!」
こんなにも単純なことも思いつかなかったのか。
…さすがフレイだ。
でも、自分の考えの後にどうすればいいのかを考えないで発言するところは俺も同じだ。
最高責任者に聞く。そうするにはどうすればいいのだろうか。
「最高責任者に聞くって言ったけど、どうやってそもそも会うんだ?」
「そういう事なら私にお任せを!」
一応、病み上がりのオリガが言った。
何かいい方法があるのだろうか。
「オリガ、何かいい方法あるの?」
「これでも私、軍の中で諜報担当だよ。最高責任者さんに協力してもらってここで潜入捜査した事だってあるんだから。まぁ、任せてよ」
オリガが前へ進む。
俺達はオリガについていく事にした。
ここは星型となっていて5つの角ごとにエリアがあるらしい。
エリアは北の角を1とし、時計回りで2,3,4,5となっており今から行くのはエリア1のようだった。
- Re: Change the world ( No.82 )
- 日時: 2018/03/29 17:35
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
38話 条件
エリア1は、他のエリアと違っていてアトラクションがなく雰囲気は落ち着いていた。
エリア自体がスタッフルームのようだった。
あたりには事務所のような建物が並んでいる。
ここでハイランド全ての管理をしているのだろう。
「ニャー」
「猫… ?」
どこからか猫の鳴き声がした。
「待てー! ニョー」
後ろから誰かが走ってくる音がする。
「ちょっと、そこの君! その猫を捕まえて!」
「君… ってアタシのこと!?」
猫を追いかけ走ってくる男性が頷く。
それを見るとジュリィは猫を見てタロットカードを取り出す。
「ニャー ニュー ニョー」
「不思議な鳴き方をする猫だな、ちょいと止まりな」
取り出したのはジュリィが最もよく使う死神のカード。
猫の前にいつもとは違う小さく可愛らしい死神が現れ鎌を振るうと、猫はその場で倒れた。
「ジュリィ、『捕まえる』だよ?」
「大丈夫。気絶しているだけさ… えっと…」
男性が猫を捕まえたのを確認すると、ジュリィはさっきのものとは違うカードを取り出した。
「その猫、起こしていいか?」
男性は少し悩むと、
「部屋に戻ってからでもいいですよね?」
「その方がさっきみたいにならないかもね〜」
男性に案内されてついたのは、事務室という看板がついていた部屋だった。
…ということは、この人はハイランドのスッタフなのであろう。
「お願いします」
「了解! さて、猫ちゃん起きろ」
取り出したのは、審判する人が描かれたカード。そこから暖かい光が放たれると、猫を包みこみ、猫が目を覚ました。首元を掴まれているせいか、猫はおとなしい。
「ニョーを捕まえてくれてありがとう。」
「ニョー… ? この猫の名前か?」
「そうです… あ、私(わたくし)はここの最高責任者のタンド・リキンです。みなさんがエリア1に入るということは、私に用があるということですよね」
「リキンさんやっぱ勘が鋭いね。実は…」
オリガはタンドにここに来た理由を話した。
「秘宝… 『他世界への鍵』のことですね。でも、タダではあげませんよ。なんて言ったって、無の守一族の宝ですから。」
「秘宝って名が付くぐらいだもんね」
「…でも、オーディンが言ったんですよね。今から言う条件を満たしたら差し上げましょう」
「本当か!?」
「条件を満たしたらですよ」
「条件とは?」
「ここにあるアトラクション全てやってきてください。この台紙にスタンプを押してもらえばやったという事になります。中には絶叫系もありますので、仲間と分けて乗ってもいいですよ」
「それならきっと簡単だな。さて、行くか!」
「全てやったら再びここに来てくださいね。いってらっしゃい」
そして事務室を後にした。
この条件なら、すぐに達成できそうだった。なぜなら、このメンバーにはこういうのが好きなやつらが沢山いるからだ。言ってしまえば、俺以外だろう。
「なぁレオン、アレ乗ろうぜ!」
「命の保証… できないな」
「何言ってんだよ! あの高さから落ちることは絶対ないって。だから、な?」
「そういう意味… っておい!」
フレイに誘われたのは、絶叫系のジェットコースターだった。
俺が乗り物に弱い事をフレイは忘れているのだろうか。いくら飛空艇は慣れたからってこれはさすがに酔うだろう。乗る前からそれはわかるはずだ。
腕を引っ張られジェットコースターの列に並んでしまった。
後ろにも人が来てしまったため、戻る事は出来ないだろう。
…ここは、酔い止めの魔法をいつも以上に強くかけ我慢するしかないようだ。
俺は、覚悟を決めてそのジェットコースターに乗る事にした。
- Re: Change the world ( No.83 )
- 日時: 2018/04/06 23:04
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
39話 時には息抜きも
「よし、次だぜ!」
フレイはジェットコースターへのワクワクが止まらないらしい。
昔からそうだったよな。こういうのを待っている間、お前はまるで欲しいものを買って貰える時の小さな子供みたいにテンションが上がるのは。立場を考えないのは。
「シートベルトの確認のため、スタッフがお客様の元に向かいます」
スタッフと思われるお兄さんがシートベルトを固くしめる。
これだけしめれば落ちることはないだろう。
ブザーがなった。いよいよ始まるらしい。
「みなさん、今日はご来場ありがとうございます…」
そこからこのジェットコースターの説明が始まった。
…地味に長い。きっとこのせいであの長い行列ができてしまうのだろう。
「良い旅を!」
俺にとっては『酔い旅』だがな。
ゴゴゴゴ、という音がしたと思うと、機体が動き始めた。
早速目の前に大きな登り坂が見えてきた。
ゆっくりと上がり、坂の頂点で止まると一気にスピードを出し下った。
その勢いで一回転もし、もう一つの坂を上がる。
「もう、ダメだ…」
「ちょ、おい! どうしたんだよ?」
酔いが最高潮まで達した。
やはりこのようなジェットコースターは俺には無理だった。
気がつけば、ジェットコースターが終点まで付いていた。
「お前、そういえばこういうのダメだったな… ゴメン」
「次こんなことしたら、後がないと思えよ…」
「…はい」
機体から降り、外に出る。まだ、少しふらふらとする。
俺のふらつきを見たためだかわからないが、フレイはより反省してるように見えた。
「少し休憩したらどうだ?」
「そうだな… あそこのベンチででも休んでるか」
近くにあった海の見えるベンチ。
そこに俺は座り目を閉じる。
涼しい潮風が頬に当たる。その気持ちよさは孤児院にいた頃を思い出す。
少し休もう。ここなら静かだし落ち着ける。
そして俺は座りながら寝た。
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フレイがこっちに戻ってきた時、レオンはいなかった。
フレイ曰く、休憩しているとのことらしい。
ジェットコースター… きっと酔ったんだな。絶対そうだ。
「自分で運転するか、慣れた乗り物以外は酔う」って前に言っていたような気がするもの。
「お〜い、オリガ?」
「ん? なに?」
「あれ、乗ろうよ」
フレイヤが指をさした先にあったのは、クルクルと回るコーヒカップ。
なんだか、とてつもなく早く回りそうで楽しそうだった。
「いいよ、でも次は私が指定するね」
コーヒカップの列に並ぶ。
相変わらず、ここに来るお客さんは多い。さすが世界一。
並んでいる途中にコーヒカップを見ると、ありえない速さで回っているのもあった。
人の力であれほどまでできるとは…
なんだか肩が震えている。
震えている右肩にはフーが乗っていたはずだ。どうしたのだろうか。
「どうした、フー?」
「ワゥ…」
あんな回転したら、吹き飛ばされそうで怖いワン。
そう言っているように感じたのはきのうせいだろうか。
「怖いんだね?」
「きゅぅ…」
フーはいつもよりも元気がなかった。
よほど吹き飛ばされるのが怖いのだろう。
どこか、安全な場所はないだろうか…? ん?
急にフーがジャンプして地面に降り、どこかへ走って行った。
吹き飛ばされるのが怖いみたいなのに、高い所からのジャンプは怖くないようだ。
走って行った先にいたのは、シド。
フーは得意なジェスチャーを使ってシドに来た理由を伝えているみたいだった。
その必死に何かを伝えようとしている姿はとても可愛らしかった。
どうやら無事伝わったようだった。
シドはフーを肩に乗せフレイと共にどこかへ行ったみたいだった。
「オリガ、あそこにしよ〜」
「あ、うん! いいよ」
フレイヤが声をかけてきた。
気がつけばもう私達が乗る番になっていた。
フレイヤが指定したコーヒカップは、先程ありえない速さで回っていたコーヒカップだった。
見た目は他のと変わりない。しかし、腰元あたりにシートベルトがある。差込口へ差し込むとカチッと音が鳴った。これでシートベルトは完全に着用できただろう。
安全確認のため、スタッフのお姉さんがやって来た。
コーヒカップの扉を閉じると共に、話しかけられた。
「このコーヒカップは回しすぎ注意ですよ。先程のようになってしまいますので。…と言ってもここに乗ったという事は、最速を味わいたいということですよね。くれぐれも気をつけてくださいね」
スタッフのお姉さんが操縦室へ戻ると、ブザーが鳴った。
「みなさん、今日はご来場ありがとうございます!くれぐれも回しすぎにはご注意くださいね。では、開始です!」
ファンシーな曲が流れると共にコーヒカップが回り始めた。
早速、フレイヤは中央にある銀色の円形をしたハンドルを回し始める。
「最高まで回していいよね?」
「もちろん! だってそのためにここにしたんでしょ?」
「えへへ、ノリがいいねオリガは〜 ミントもいたら、もっと楽しかっただろうな…」
フレイヤがボソッと呟く。大がつくほどの親友だったミントのことを。
毎回、ミントの事を思うと『なぜあそこで自らを犠牲にしてあの魔法を唱えたのか』という疑問がわいてくる。
確かに、ミントがあの魔法を使わなければ緑の国は滅んでいただろう。でも、それ以外に方法はなかったのだろうか。
いつもそうだ。戦いの結末を迎えると共に過ごしたり、戦った誰かがいなくなる。
院長も、女王様も、ジンくんも… みんな私達を残していなくなってしまう。家族だってそうだ。
その時人は『そういう運命だったんだから仕方ない』とか『あの人のおかげで今生きていれているのだから頑張ろう』とか前向きになろうと言ってくることがある。でもそれって言い訳だと思うんだ。
運命にだって抗えるし、他の方法がきっとその時は思いつかないだけでもっとあると思う。なのにいなくなってしまった人達をそんな風に言うのは、なんだか生かされた者としてずっと嫌だった。
なぜ皆が生きていられる結末を選ばないのだろうか。
「お〜い、大丈夫?」
「ん?」
「ボーッとしてたから」
「…考え事、してたの」
「今はこの旅で滅多にない、思いっきり遊ぶ時だよ。何にも考えないで弾けようよ。ずっと考えてたり、悩んでたりすると、気づけたり、変えられたりした事とかできないで終わっちゃうよ… だから、ね?」
フレイヤにはフレイヤなりの考えがあるようだった。最後の一言から伝わってきた。
「そうだね… さて、遊ぶぞ!」
「おー!」
先程の速さを超える勢いでハンドルを回しコーヒカップを回した。
降りた後にスタッフのお姉さんから聞いたが、歴代最高速度が出ていたらしい。そのため入場料無料券をもらった。もしここへ来る時があったら使ってみよう。
次に私のリクエストで、乗り物型のシューティングゲームをやった。機体に備わっている銃のおもちゃから出る光線を、周りにあるモンスターの動く人形にある小さな的に当てるという簡単な物だった。ペアで乗ると1vs1ができる仕組みになっているようでフレイヤと得点を競う事になった。
結果はもちろんフレイヤの勝ち。さすが、2丁拳銃を操り百発百中のフレイヤ。降りた場所にある得点板に載っていたフレイヤの得点は私を含めお客さん、スタッフさんが驚きを隠せないぐらいのものだった。ここでもフレイヤは歴代最高得点を取ったらしくまた入場料無料券が貰えた。後に、この出来事がこのゲームの常連達の間で伝説として語り継がれていくらしい。まぁ、後ろにいたお客さんが言っていたのだが…
その後は、レオンを除いたメンバーで様々なアトラクションを楽しんだ。お化け屋敷でのシドの対応、ジュリィの反応は忘れられない。
「はぁ… 疲れた…」
「私はバリバリ元気だよ〜」
「オレも多分このメンツじゃ一番アトラクションに乗ってるけど疲れてないぜ」
なんだこの兄妹は。数百ともあるアトラクションで乗っていないものが残り3つほどとなったなかでもバリバリ元気だ。疲れというものを知らないのだろうか…
「アタシもまだ行ける」
「僕もあんまり乗ってないから大丈夫だよ」
この2人はまぁ、あんまり乗っていないのだから大丈夫だろう。
それにしても今日1日の疲れがバッと出てきた。どこかで休みたい。
「休んだら…?」
「そうしたいけど、そんな場所あったっけ?」
「今もいるかわかんねぇけど、レオンが休んでるエリア5には海の見えてベンチが置いてある休憩所があったはずだぜ。近いからどうだ? あと、様子見てきてくれっか?」
「了解… あとは任せたよ〜」
エリア5の休憩所… あそこだろうか。
気がつけばもう夕方。街灯の明かりがつき始めるか始めないかぐらいの時間になっていた。
潮風が気持ちく、水平線に太陽が沈み始めオレンジ色と夜空の色が混ざり合い幻想的な環境のなか、レオンはベンチで1人で眠っていた。
「寝てる…?」
目を閉じ、静かに寝ている。近くにマジックペンでもあったら落書きしてやりたいぐらいに静かに無防備に寝ている。しかし、疲れが出ている現在の私には、そんな気力もなかった。
とりあえず、そろそろエリア1に戻らないといけないから起こしておこっと。
「お〜い」
無反応。相変わらず寝ている。
「お〜い、起きてよ」
まぶたが少し動いた。こいつ、もう起きているな。なんならさっさと起きないだろうか。
「…起きないと、ふふっ」
「…悪かったな」
やっと目を覚ましてくれた。とりあえず、隣にでも座っておこう。本来は休みにここへ来たのだから。
胸がドキドキする。2人っきりになった事なんてあまりないしなんと言ったって…
- Re: Change the world ( No.84 )
- 日時: 2018/04/07 01:21
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
39話、実は3500字オーバーしています。重かったらすみません。
40話 オリガの思い
「お〜い」
声が聞こえる。俺を呼んでいる…?
夢だったりしないだろうか。
「お〜い、起きてよ」
この声はオリガなのか? そろそろエリア1へ行くのだろうか。
…でも、まだ寝ていたい。
「…起きないと、ふふっ」
まずい。現実だ。このままじゃ何をされるかわからない。
「…悪かったな」
目を覚ますと、目の前にオリガがいた。目が合うとオリガはニコッと笑い、横に座った。
目の前に見える景色は、石レンガの地面に柵。そして遠くに水平線に沈む太陽。
もうこんなに時間が経っていたのか。寝てる間に何も盗まれていないといいが…
誰もベンチから動き出さない。オリガは何が目的でここへ来たのだろうか。
「…何しにきたんだ?」
「休憩。いっぱい乗ったから疲れちゃってさ。あと、フレイにレオンの様子見てきてくれっていわれてさ〜 …まさかだけど、ずっと寝てた?」
「あたりだ。ここ、懐かしく感じるんだ… だから」
「なんとな〜く、わかるかも」
立ち上がり、柵の方へ向かう。柵に海を見ながら寄りかかる。
周りにはこの時間のせいか誰もいない。…つまり、2人っきりだ。
フレイ達も残ったアトラクションに乗っているらしく、当分来ないだろう。
今がチャンスかもしれない。
「なぁ」
「ん?」
「俺… 前に『いろいろ聞かせてくれ』って言ったよな」
「うん、私を助けてくれた時にね」
「今でも… いいか?」
「誰もいないから… いいよ」
落ち着け、俺。
何に緊張しているんだ。素直になるって決めただろう。
…きっと、これは緊張じゃない。きっと。
こんなふうに思っていること、バレないでくれ…
相手は現役諜報部員。声のトーンとかで分かってしまうかもしれない。
「ルミルから裏で聞いたんだ。『あの刻印は刻印を押される事を受け身が願ってくれないと、あんな風に押されたことにならない』って。…本当か?」
それは、皆に内緒でルミルから言われたこと。
ストレートに聞いてしまったがいいのだろうか。よく、『女の子の心は繊細だ』と言うが…
「……本当、だよ。私、願ったの。刻印は力がアップするって聞いたし、その他の事、全部聞いた。自分が自分じゃなくなるかもしれなかったけど、克服して利用しちゃえばいいやって思ったの。でも、あんな事になるなんてね… 私の考えが甘かったよね。 …本当にごめんなさい…」
「そんな謝るなよ。結果的に無事だったんだ。だから、な? でさ、なんで…」
「強くなりたかったの。みんなに追いつきたかったし、足手まといになりたくなかった。それに…」
オリガの目が潤い輝く。あ… 俺、言いすぎたみたいだ。と感じた。
オリガが泣くことなど、滅多に見たことがない。遠い昔に「涙は人の前で見せるものじゃないもん」と言っていた。もしかして、ずっと考えたり、悩んだりしていたのだろうか。1人で抱え込んでいたのだろうか。フレイがパーティーの時に言っていたかもしれない『オリガはよく1人で抱え込んでしまう』的なことを、今改めて思う。
「それに… 嫌だったから… 戦いとか終わったら、誰かが、いなくなるのが… 嫌だった、から…」
震える声で微かに言ったのが聞こえた。表情は下を向いていて髪に隠れているためわからない。
「嫌だ」などと素直に他人へ自分の気持ちが言えない、気持ちの晴れない今の社会。それがこんなにも重りになっていることがよく伝わる。
たとえ憎しみや恨みのある帝国相手でも、’’戦えない状態’’ つまり生きているが戦闘はできない状態にし、敵を死なさないように掟を守って戦っていた俺達反乱軍。でも、帝国… その他諸々の敵となった者… 立ち向かってくる者達はそのような掟などない。そのため、本気でかかってくるので身近かな人がいなくなってしまうということはたくさんあった。たとえ戦いが終わっても、いなくなってしまった人々は戻らない。共に過ごすことなどできない。それがオリガにとっては嫌だったらしい。
「つまり、自分がもっと強くなって誰もいなくならない結末にしたかったんだな」
オリガは静かに頷く。軍に入ってから… いやもしかしたら孤児院が襲われた時から考え、悩んでいたのだろう。ずっと、誰にも話さないで1人で抱え込んでいたのだろう。そして、1人で解決しようとしたのだろう。オリガの苦しみは俺達にはきっとわかりきれない。だがそれに気付き、手を差し伸べることができたと思う。だって俺達は信頼できる仲間… 切っても切れない絆で繋がっている仲間のはずだから。
「1人で抱え込むのやめろよ… 俺達… いや、言いにくかったら俺だけでいいから… 何かしら言ってくれよ。もう嫌なんだ… 何もできないで終わるのは…」
何もできないで終わる。守りたいものとか守れないで終わる、戦えたのに何もできず失って終わる。そういう事が俺の人生で悔いとして残っている。ジンとの最期とか、本当によくしてもらっていたのに俺は何もできなかった。それがただ悔しくてしょうがなかった。
せめて、大切な人だけは何もしないで終わりたくはない。こんなふうにオリガは言ってくれた。だから助け船を出して綺麗さっぱり、スッキリと解決したい。
「それに、力とかなんて関係ない。大切なのは… 思うことだ。」
かたい思いあえあれば、人は前へ進められる。いや、何かしらの思いがあれば行動できる。
守りたいとか、救いたいとか思っていれば自然と体が動く。きっとミントはそのような思いがあったからあのような結末を選んだのだろう。オリガだって、誰かがいなくなるのが嫌という思いでそのような行動をしたのだろう。だからこそ大切なのは、思うことなんだ。
今の俺がオリガにできること… それは…
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泣いちゃった。こんなふうに自分の気持ちを言うなんてこと、初めてだったから。
「涙は人の前で見せるものじゃない」それがモットーの私だったけど、今回ぐらいはいいや。
まさかレオンにこんなふうにしてもらうなんて思いもしなかった。
「俺を頼ってくれ」だなんてみたいな事自分から言い出したのもそうだけど、今みたいに優しく暖かく抱きしめてくれるなんて…いつもとの姿とのギャップがあってちょっと戸惑っちゃうなぁ。
でも今は、その暖かさを感じていたい。悩んでいる事とか全部包んでくれそうな暖かさをずっと…
永遠に片想いで終わっちゃうかと思ったけど、無事? 出会えたし両想いにもなれるなんて。
やっぱりレオンはかっこいいよ。その姿、思い、優しさは。
私もいつかなれるかな…? 自分に子供ができたときとかに。
この人に出会えて本当に良かった。運命って… 不思議なものだなぁ
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それは、オリガをいろんな意味で支えてあげること。
俺は、いつの間にかオリガの笑顔とかに惹かれ、好きになっていたのだろう。
最初にフレイに言われた時は完全に否定したが、今なら認めてやってもいい。
約束、まだ覚え… あ!
「なぁ…」
「何…?」
「約束の場所、こわれっちまったよな…?」
「うん。今、決めなおそう」
元通り、柵に寄りかかる。
なにか待ち合わせにいい場所あっただろうか。
俺の記憶を探る限りはない。
「なんかいい場所あったかな〜」
オリガが頭をぽりぽり書きながら呟く。
さっきまで潤っていた目も、今では元通りだ。
「似たようなところ思いついたの。」
少し間を空けて小さな声で呟く。
「城の玉座の後ろのテラス。ほら、私ら2人だけに女王さまが許可取ってくれたでしょ? 夜、星空の下で待てっるから」
「『待ってるから』? なぜ俺が遅れる前提なんだよ」
「いい間違えだよ! もう、そんなこと突っ込まなくていいの!でも、来なかったら私ずっと待ってるから。どこにも行かないから、安心してよ」
「フッ、どうせ途中で飯食べたりするのにどこか行くだろ?」
「笑わないで! 星空の下って聞こえなかった? 私が待つのは夜限定ですよ〜」
笑いがあふれる。こんなふうにいつまでも笑っていられたらどんなに人生楽しいだろう。
ん?
オリガのスマホの着信音がなる。
「はいはーい、ん? あ、了解」
「なんだって?」
「全部のスタンプ貰ったからエリア1の事務所へ来いだって」
「さて、行くか」
俺達は、歩き始めた。
- Re: Change the world ( No.85 )
- 日時: 2018/04/15 20:28
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
41話 関係
「お疲れ様です。約束通り差し上げますね。ついてきてください」
スタンプがすべてうまり、事務室へ戻った俺達。
タンドさんは誰も見ていないことを確認すると奥の本棚を動かした。
どかした本棚のあった場所には、先が暗く、どこまであるかわからないほどの地下へと続く階段があった。
まさか、このような場所に秘宝の眠る場所があったとは。
少し降りると、後ろの方で本棚が動く音がした。
「出口、なくなっちゃったけどいいの?」
「大丈夫。別の方法がありますし、あっちではニョーがうまくやってくれているはずですから」
さらに降りると、部屋があった。
壁には松明が飾られ、辺りを照らしている。その壁に描かれていたのは…
「これは… 幻獣の壁画?」
土で作ってあると思われるレンガの壁に描かれていたのは幻獣の絵。
少し消えかけて色が薄くなったりとしているが、だいたい何が描かれているのかわかる。
「そうです。ここに描かれているのはそれぞれの属性を司る神とその使い… 幻獣の絵です。昔、私の祖先が描いたとされています。」
どの方向にも壁画がある。中心には人… 神がおりその隣に幻獣がいる。幻獣の背後には建物らしきものが描かれていた。それについて聞くと、「その建物は魔石のありかです」とタンドさんは教えてくれた。
確かに、今まで魔石を求めて行った建物に似ている。ここを見ればどこに何があるかすぐわかりそうだ。
「守一族と神と召喚士と幻獣の関係、わかりますか?」
「常識ってカンジで覚えたけど、あんまり理解できてないぜ。俺は」
それでいいのか国王。
先が思いやられる…
「では、説明しましょう。うまくできるかわかりませんが…」
その後、タンドさんは壁画を使って説明してくれた。
「この世に魔法などの属性が出来た時、同時にそれを司る神が生まれた。
神は魔力が強く、特に自分の司る属性の魔法の威力は計り知れないものだった。
ある時神は人々に魔法を教えた。すると文明は栄えていった。
文明が栄えることで人は力を持ち、互いに力を求めて争うようになった。
そのうち、神の力をも求めるようになっていき、神は自分を守るための使い…幻獣を生み出した。
力を求める人、自分を守るために生み出された戦うための幻獣は戦うようになっていった。」
「だからバハムートはあんなふうに言っていたんだ〜」
「バハムートにあっているんですね。さっき言った戦いでその力が危険視されバハムートは魔石とされてしまったんです。だからそう言ったんだと思います。」
タンドさんは説明を続けた。
「だが状況はずっと変わらず、どちらも犠牲をうむばかりだった。
そんな時、世界を創造したとされる神… 創造神が皆の前に現れこう言った。『争いを止め、共に手を取り合いなさい。』と。そこで神は魔力の強い人間を選び、契約させ力を与えた。それが私達守一族です。
しかし戦うために生み出された幻獣は危険なものばかりだった。そのため神は幻獣をバハムートのように魔石に変え世界の様々な場所へ安置した。
ある日、幻獣はそれぞれの主へこう言った。『これでは、存在する意味… 生きる意味がない』と。
神にはもう、戦う理由がなかったため幻獣は必要なかった。消してしまってもいいと思った。神にとって幻獣は自分を守るための道具にすぎないのだから。でも幻獣にはそれぞれの感情…心ができてしまっていた。戦いのおかげで道具ではなく、1つの生き物となっていた。だからと言って、巨大な力を持つ生き物を自由に野放しにするわけにはいかなかった。
そんな時、神と契約した守一族の者が『我らが作り上げた召喚魔法で幻獣を呼び出し、共に協力して生きていく事を望む者が我が一族にはいる』と言い出した。
神は思いもよらぬ言葉に驚いたが、それなら安全だと思った。
なぜなら、創造神の言った『共に手を取り合う』という事ができ、幻獣を手放すことができたからだ。
そして、『共に協力して生きていく事を望むもの達』はそれぞれの幻獣を従えるために守一族と離れ、神との契約を無きものとし幻獣と契約した。離れた者達は後に召喚士と呼ばれて言った。
…という感じですかね」
守一族と神と召喚士と幻獣の関係。それは古の頃から続くものだった。
「さて、秘宝についても説明しますね。この『他世界への鍵』は、その名の通り別の世界へ行くための鍵です。
この鍵が対応している扉は世界には3つあります。しかし私が把握しているのは幻獣界への扉のみです。」
「どこにあるんだ?」
「この大陸の北側にある『召喚士の里』の下です。私は守一族の者なので詳しくはわかりませんが…」
「ありがとう、タンドさん。あとは私達に任せて」
タンドさんがオリガを見て何かに気付く。すると、何か安心したようだった。
「任せますね。では、これを」
宝石のように輝く石… 『他世界への鍵』を貰った。
「…どうやってここから出るんですか?」
誰もが思った事をシドが聞いた。
ここへ来る途中に、別の方法があるとは聞いたが…
「私が今から私以外の者を対象にして転送魔法を唱えます。行き先は、召喚士の里の入り口です」
「ありがとうございます。 …飛空艇もですか?」
「はい。戻ってくるのも大変でしょうし」
タンドさんは瞬時に詠唱を終えた。
辺りが光に包まれ、その眩しさに俺は目を閉じた。
- Re: Change the world ( No.86 )
- 日時: 2018/04/17 21:38
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
42話 里の案内人
召喚士の里。それは、十数年前に廃墟となってしまった里。
そして、ミントの本当の故郷。
その場所に俺達は今立っている。
木々の隙間から漏れる星や月の光で辺りはなんとなくわかる。
家は屋根が崩れていたり、半壊していたりと様々。壁には蔦が生えていたりもする。
道は石レンガで作られているようだが、苔が生え隙間から雑草が溢れていて歩きにくそうだった。
奥にある広場であったであろう場所にある噴水の水は枯れ、人気が全く感じられない
はずだった。
「動いた…?」
シドが壁が少し崩れている家の方を見る。
目を凝らしてよく見ると、茶色い尻尾が見える。
「とりあえず、行ってみようよ〜」
モンスターかもしれないため、慎重に近寄っていく。
歩くと雑草が音を立て揺れてしまった。それに気づいたのか尻尾が動き、顔が見えた。
子供のような外見で、金髪の右側を編み込みにしたストレート。耳が尖っている。
…目が合ってしまった。
「!?」
「あ…」
尻尾を持つ子供はすぐに剣を取り出し構えた。
子供のような外見に尻尾… クロエルだ。
クロエルが一歩こちらへ踏み出そうとした時、フレイヤが前に飛び出し叫んだ。
「ちょっと待った〜!」
クロエルが驚く。
「私達は敵意ありません! ほら、構えてないでしょ」
クロエルが俺達を見る。
そして、手にあった剣が姿を消した。
「ここに何しに来たの?」
クロエルが初めて喋った。その声はまさに子供の声だった。
「幻獣界へ行くためにここにやって来たの。あと、個人的な話になっちゃうけど、帰郷ってところかな」
オリガにも召喚士の血が流れており、遠い昔に祖父母に会いに家族でここへ来たことがあると前に話していたことを思い出す。
本当の故郷に帰る…ってどんな気持ちなんだ?
俺は幻獣界の民だと書かれていた。しかし、正直なところ孤児院へ来る前の記憶が無い為本当なのかわからない。でも、もうじき幻獣界へ行く。そこの王のオーディンなら俺の事がわかるかもしれない。わずかな希望を抱く。
「敵じゃない?」
「最初っからそうさ。お前から仕掛けたんだろうが…」
「ごめんなさい、おばさん。ここへ来る人間達、いつも襲ってくるから…」
「あ、アタシが… おばさん…」
19歳にとってその言葉は衝撃的なものだっただろう。
…俺もそう言われたらさすがにショックだ。
「ま、それは置いといて。どこか休める場所はないかい?」
「それなら、ここ。他、危ないから」
それは、クロエルが隠れていた家だった。
中に入り、転がっていたランタンに火を灯しそれを囲むように壁に寄りかかり座る。
クロエルの名はヴェルと言うらしい。
年は外見よりももっと上で、俺達よりも700歳ぐらい上らしい。
さすがモンスター。長生きなヤツはほんと長生きだ。
それを聞いてジュリィは「お前の方がよっぽどおばさんだろう」と思ったであろう。
…しかし、外見だとヴェルの方が若く見える。 …外見だと。
「『他世界への鍵』を持ってるって言ったね」
「幻獣界へ行くには、必要だからな」
「それを持っていて輝きを失ってないなら、幻獣界へ行けるよ」
ヴェルがジロジロと『他世界への鍵』を見つめる。
珍しいものなのだろうか… 他の宝石と変わらないような気がするが。
「力、取り戻した方がいいかもね」
「力?」
「そう。輝きがあっても鍵の力がなければ行けないよ。狭間に行っちゃうかもしれないからね」
「どこで力を?」
「今日は疲れたから明日。案内してあげる。ヴェルはここの案内人だから」
とりあえず、幻獣界へ行くのは後になりそうだった。
ランタンの火を消し、眠りにつく。
今日1日だけで、いろんな事があった。この旅はあとどのぐらい続くのだろうか。
世界の平和を願うのなら早く終わってしまった方がいいかもしれない。だが、この旅が終わったら皆それぞれの道へと歩んでしまう。せっかく会えたのだからまだ一緒に話したり遊んだりしていたい。
まだ、旅が続くことを願って俺は眠ることにした。
- Re: Change the world ( No.87 )
- 日時: 2018/04/20 18:54
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
42.5話 シドとジュリィの思い
正直なところ、僕はこの場所で深い眠りにつくことはできなかった。
静かで月光が綺麗な場所なのに何でだろう。座っているから?
とりあえず、歩いて体でも伸ばしてリラックスしよう。
眠りを妨げないように静かに立つ。崩れた壁から外に出てみた。
石レンガの道を歩いていく。雑草が生えているため少し歩きにくい。
石レンガの道に沿って建てられている家は、人が住めるような物ではないぐらい崩れたり、壊れたりしている。
なんとか壁が崩れているぐらいの程度の家もあり、休み所ぐらいならできそうな場所もあった。しかし、安全の保証はできそうにない。
壊れ具合から見て、この里は植物などの生き物を除いて滅びた当時のままに近いようだ。
でも、生き残った人がいた様な形跡がない。もしかして滅びた時に全員… あるいは…
『私が孤児院に来る前… 院長に助けられた時、私以外、里に人がいなかったって聞いたことがある』とミントが前に言っていた。
里の者はいったいどこへ…?
そうこう考えているうちに、大きな木のある場所に辿り着いていた。
ここだけは他と違い、雑草は生えていなく、壊れて危険な場所もない。
森に囲まれた草原は月光により輝き、夜とは思えないほど明るい。
その草原の真ん中に里を見守っているかのようにたたずむ巨大な神木。葉の一つ一つが風で揺れ、様々な個性を引き出していた。まるで、人間かのように。
「大きい…」
「そうだな」
「う、うわっ!?」
急にかけられた声に驚く。
後ろを向くと、ジュリィが立っていた。
「そんなに驚くことしたか…? アタシ…」
「背後に急に立たないでくださいよ…」
「急に? …ずっとついてきていたんだが」
「ま、まぁ、ともかく! ジュリィは何しにここへ?」
「目ぇ開けてみたら、シドがどっか行くのが見えてな、気になったからついて来ただけさ。…アンタこそなんでここに?」
「ただ探索していただけです。眠れないので…」
「へぇ〜」
ジュリィが神木を背に地面へドサッと座る。
すると光の粒が少し舞い上がる。
「この光… なるほどね」
ジュリィはボソッと呟く。何かわかるのだろうか。
「なぁ」
「なんだい?」
「アンタはどーいう目的で旅してんの? 敵は母国なんだろ?」
どういう目的? それは…
「……」
「フクザツなんだな、アタシは10代最後ってことで楽しむって目的で旅してっけど。
…と言うのは表向き。裏は、アイツらが心配だから見守るっていうかサポートするつもりで旅してんだ。親友との約束だから。」
初めてジュリィの本当の思いが聞けたような気がする。
レオンに聞いたところ、ジュリィと孤児院メンバーは小さい頃から家族同然の付き合いらしい。
「小さい頃はみんな純粋で可愛かったのにな…」とジュリィが呟いたのを聞き逃さなかった。
小さい頃から接してきていた彼女には、『年上』という立場だからこそのいろいろな思いがあるのだろう。
それは、責任とも言えるかもしれない。
…責任か。
「うまく言葉にできませんが、僕は、帝国を止めるつもりで旅をしているんだと思います。あそこまで技術を進歩させたのは僕ですし、実は… 僕の母は皇帝と再従らしいんです。それに、皇族の血を引いて今生きているのはいるのは僕と皇帝のみ。でも皇帝は操り人形同然。だから、同じ皇族の血を引くものとして、皇帝を楽にしてあげたいんです。だって本当は皇帝は… もうこの世の者ではないんですから。」
「なんかいろいろありすぎて、頭パンクしそう… とりあえず、アンタも責任ってもの、感じてるんだな」
「レオン達が孤児となってしまう原因を作ったのは帝国ですし、もう僕以外の帝国府関係者はパナソのものとなってしまっていますから。あ、僕の後輩はまだ本当の事を知っていませんが。だから帝国を正しい道へと戻すことができるのは、本当のことを知っている僕しかいないかと思いまして」
リガンにシトリー… みんな同期で昔はワイワイやっていた。仲が本当に良かった。
時に皇帝… いや、パナソが残虐な進軍命令や任務を下すことがあった。いくらその命令が国のためとなろうと僕達は反論して中止するように求めた。いくら特殊部隊でも罪なき人々の命を奪うのは心が痛む。
でも、ジンが帝国を抜けたあたりからみんな人が変わったかのように任務を遂行するようになった。会話も減って合う機会も少なくなった。きっとこれにはパナソが関わっているのだろう。
もう、僕しか帝国を正しき道へ戻すことができないかもしれない。
だから、レオン達と共に帝国を止めるために旅をしているのだろう。
「重いもん背負ってんのは一緒なんだな」
「ですね」
「でもさ、こーいうのできんのあんまないよね。未来なんてどうなるかもわかんないし。ただ… 今を全力で楽しんで生きないと、さ」
未来の保証なんて誰にもできない。後のことなんてどうなるかわからない。
それだからこそやることややりたいこと全てやって全力で楽しんで生きる。
それがジュリィの思い。そして覚悟。
僕だって半端な覚悟や思いでここまでやってきたわけではない。
でも、全力でやるまでもしていなかった。
なぜなら、全力でやった結果が、今の帝国なのだから。
…僕は恐れていたのかもしれない。
未来が悪い方向に行ってしまうかもしれなくて、思いっきり全力でやることを。
…このままじゃいけない。
みんな、平和な未来を望んで、これ以上悲しむ者が出ないようにするためにここまでやっている。僕も平和な未来を望んでここまでやってきたんだ。
「決めました」
「…何を?」
「全力でやることをです」
「…ふ〜ん。深くは聞かないけど、固まっているんだな」
ジュリィは全てお見通しだったかのような態度だった。
これで僕の悩みは晴れた。すっきり前へ歩いていけそうだ。
…そうすれば、きっと…
「さて、戻りましょうか」
「戻ったらヴェルとか起きてそうだな」
気がつけばもう、朝日が昇る時間帯だった。
草原の輝きは失せていない。まるで、人々が抱く希望のように。
結局、眠れなかったけどいっか。
こうして全力でやっていくのは、あの頃のように楽しいから。
- Re: Change the world ( No.88 )
- 日時: 2018/04/23 21:22
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
43話 懐かしい音色
「ヴェルは迷わないし、1人でも大丈夫… 行くよ」
ヴェルに俺達はついて行く。
見た目は俺達よりもずっと子供に見えるが、豊富な知恵、常識などからずっと年上だと改めて感じる。
しかし、『1人でも大丈夫』という言葉から少しの寂しさも感じる。
その寂しさは、俺がここにいる誰よりも知っているものだろう。
「何かあったら僕達に言ってくださいね」
シドの言葉にヴェルはこちらに振り向く。
「ヴェルは本当に大丈夫なんだから! そんなこと言っていられるのも今のうちだからね」
「後ろ… 」
「え? うぎゃっ」
傾いている木の枝に前を向いたヴェルがおでこをぶつける。
…全然大丈夫じゃないだろう。
「うぅ… いてて…」
木の枝が太かったため、よほど痛かったのだろう。若干涙目になっている。
それに気づいたフレイヤはヴェルに近づきぶつけた所を撫でて
「痛いの痛いの飛んでけ〜」
と言いつつ傷薬を塗る。
少し赤みを持っていたおでこが元の色に戻り始めた。
「少しスースーする…」
「緑の国産なおし草の傷薬だよ〜 少しスースーするけど、それが消えたら痛いの消えるから」
「…ありがとう」
お礼を言うとすぐ前へ向き直り、進む。
ヴェルは痛みには弱いらしい。
少し歩くと、道と同じ石レンガで造られた小屋のようなものについた。
小屋は4方位が入り口となっており北側のずっと先には大きな神木があるのがわかる。また真ん中に祭壇のようなものがあって祭壇の天井だけ屋根がない。
お昼12時ごろになれば太陽が、夜0時ごろになればちょうど月の光が入る設計となっているのだろう。
「ここだよ、ちょっと待ってね」
ヴェルが背負っていたミニリュックから何かを取り出す。
その何かは3つに分かれた金の細長いもので、組み立てると
「フルート?」
木管楽器に分類されるが今は金属で作られている楽器… フルートだった。
「そうだよ。これでとある曲を吹くの」
「銀メッキじゃないのか?」
「フルートは銀以外に、銅、金、プラチナなどがあって素材が変わると音が変わるの。この里でずっと使われてきたのは金色なの」
そう言うとヴェルは「音出ししてくる」と言ってどこかへ行ってしまった。
「最近吹いてねぇな…」
フレイがボソッと言い放つ。
孤児院にいた頃、フレイはよく緑の国に住む人々の手伝いをしていた。
働き者な性格のせいかわからないが手伝いはすぐ終わってしまい、暇だと俺によく言ってきていた。
それを見た院長はフレイにある楽器を買って与え、教えていたのをよく覚えている。
時に変な音が聞こえて笑っていたら怒られたっけ。
「なんだっけ、お兄ちゃんが吹いてたの」
「サックス。まぁ、オレが吹いていたのはサックスの中で2番目に音が高いアルトサックスだけどな」
「よく変な音鳴ってたよな…」
「リードミスはしょうがねぇんだってば! 木管楽器なら誰でもなっちまうさ」
「フルートはなっていないっぽいけど…」
「あれはエアリード式つって、アイスの棒みたいなの使ってないからなんないんだ。使ってないぶん難しいらしいけどな…」
フルートの音色が聞こえなくなった。
「お待たせ。きっと大丈夫だから吹くね」
ヴェルは祭壇に立ち、北側を向き吹き始めた。
暗くも明るくもないなんだか懐かしく感じるメロディ。俺は… 聞いた事ある…?
なめらかでビブラートのかかったその音が里中に響く。ただ、フルートの音色だけが。
最後の1音の余韻が消えたと同時に、地下へと続く階段が音を立てて現れた。
「じゃあ、行こう」
ヴェルはフルートを片付け、再び俺達を案内してくれた。
- Re: Change the world ( No.89 )
- 日時: 2018/04/28 00:09
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
43.5話 生命の輝き
階段を下りると、1本道となっていた。
道の両端は水路となっており、壁にはハイランドにあった部屋のように松明が均等についている。
また、光の粒が空中を漂っている。何かに引き寄せられているみたいに。
「この光の粒の正体って…」
「人間や動物、モンスターが神のもとへ旅立つ時に現れる光だよ。ヴェルとかは『生命(いのち)の輝き』って呼んでる。理由はなんだっけ… 覚えてないや」
今回はちゃんと前を向いて話すヴェル。よっぽど痛かったのだろう。
生命の輝き… 俺達はこの旅でどれぐらい見てきたのだろう。見届けたのだろう。
見るたびに誰か、あるいは何かを失っていた。だからこの光を見ると、胸が苦しくなる。
生命のように輝かしい光の粒。それが理由のはず。
俺は、なんで知っているんだ?
「ついたよ、あの滝に他世界への鍵を入れて」
先ほどとは違い、人工物が1つもなさそうな場所に着いた。
天からは神木の根が垂れ下がって、浅い湖に少し先がついている。
どうやら湖は海からの水が流れ込んでいるらしく、奥は3メートルほどの滝となってそこから太陽の光が入り、湖が反射することでこの幻想的な空間を作られているらしい。
「服、濡れちゃうな」
「大丈夫だよ、おばさん。ここら辺の水はちょっと特殊な水だから。」
「…おばさんじゃないって言ってるだろ…」
湖に足を踏み入れる。
水に入ったという感覚はあるものの、濡れている感覚は全くない。
これはきっと水属性の幻獣の加護があるためだろう。
ということはここの近くの海にその加護をもたらす幻獣… ウェンディーネの魔石があることとなる。
気配がするという事が俺の中で根拠となっている。
さっきからちょっと俺、自分でいうのもアレだが何かおかしい。
ヴェルのような過去を知る者しか知らない事、幻獣の気配とかが歩き進むとどんどん正確にわかってくる。
生命の輝きが俺をそうしているのか? あるいは俺が思い出しているのか?
…ヴェルなら知っているかもしれない。
「ヴェル、ちょっといいか…」
フレイ達に素早く手順を教え、ヴェルがこちらに走ってきた。
「何?」
「実は、ここへ来てから知らないはずの事とか、幻獣の気配とかがわかるようになってきているんだ…
これっていったいなんなんだ?」
ヴェルは「まさか…」とつぶやく。
「お兄さん、もしかして幻獣界の民? それしか考えられない…」
「そう、らしい。詳しくはわからないが…」
「そうか、多分原因は生命の輝きを体内に取り込んじゃっているんだよ。意識ないみたいだけど」
「意識はしてない。なぜ…?」
「もしかしたらのもしかしたらなんだけど、確率はかなり低いと思うけど、幻獣の血が流れてたりするのかも。そのお兄さんの体に。幻獣って生命の輝きをもとにして作られた道具、じゃなくて生物なの。だから幻獣は生命の輝きを体内に取り込む事でいろいろな事を知れたり、体力の回復ができるの。でも、はっきりとした原因はわからないな… ここから出て休む?」
「いや、大丈夫だ。もうじき幻獣界へ行ける。そこで全てがはっきりするからな」
「うん、わかった。もうちょっと我慢してね」
幻獣界へ行けば、きっとわかる。俺のほとんどが。
そう思うと、『頑張ろう』とか、『やっとだ』いろんな気持ちが入り交ざった気持ちになってくる。
でも、一番は安心した気持ちだ。
なぜならヴェルから見て俺は、『お兄さん』だったから。
- Re: Change the world ( No.90 )
- 日時: 2018/04/28 19:52
- 名前: 新・ゆでたまご (ID: Gui0iSKB)
すごい・・・
この一言です。
僕は、こういうファンタジー系はまっっっったく書いたことがないので、すごいなぁと思います。
ファンタジーって、物語がごっちゃになる感じがして、とても難しいイメージです。
しかし、この小説はとても読みやすく、そしてわかりやすいです!
しかも、銅賞受賞したんですか!すごいですね!
僕も、ファンタジー系に挑戦してみようかな、と思えるきっかけになりました!
いや、書くぞ!ちょうど一つ物語終わったしw
完結まで読んで、感想を書きたいと思います!
これからもがんばってくださいね!
- Re: Change the world ( No.91 )
- 日時: 2018/04/29 16:58
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
コメントの返信です。
新・ゆでたまご さん
コメントありがとうございます!
こんなに褒めていただくなんて… 照れちゃいます
物語はごっちゃになっていませんが、作者のくせに登場人物がごっちゃになってます(笑)
見直ししておかなければ…(汗)
ファンタジー系をお書きになるんですね。あとで読みます!!
ここでポイントを。
ファンタジー系を書く時は、ある程度の設定、流れを決めておくといいですよ(書きやすく、わかりやすくもなるはず。話を膨らませる事もできます)
決めたらメモ。そうすればきっと私みたいにはならないはず…
お互いに頑張っていきましょうね!
(追記)
読みましたよ!(まだ物語始まってないのにねw だからここに書きます)
正確には読んだという事にまだなりませんが…
音楽系ですか。 楽しみです(私が吹奏楽部所属ですので)
音楽っていろいろ題材にしやすいですよね。記号や奏法… いっぱいあるので。
ただ、マニアックな話になってしまう事があるので気をつけてください。
(CTWの話の中にフルートが登場していましたよね? あれって私がフルートを吹いているのでついつい出してみました。ちょっとサックスを掛け持ちで吹いていた事があるので、違いをフレイに言わせてみました。そしたらエアリード式やらリードミスについてマニアックになってしまいましたので…)
音楽委員会ってものがあるんですか…
私の小学校にはなかったんですよね(途中で学校が閉校して統合したけどなかったですw)
いいな〜
- Re: Change the world ( No.92 )
- 日時: 2018/05/04 21:12
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
44話 幻獣界へ
「これで大丈夫。ほら」
他世界への鍵が輝き、宙に浮く。
そこから放たれた光が湖の真ん中で扉の形となっていく。
「そこを開けば幻獣界だよ。いってらっしゃい」
「うん、行ってきま〜す!」
光の扉に触れると、勝手に開いた。
俺達は迷わず足を踏み出す。
「よっと」
後ろの方で扉が閉まる音がした。
「ここが幻獣界…」
ひとの気配が全くないが、民家のような建物が今まで行った街と同じように並んでいる。
空には満月が浮かび、石造りの城があり、窓から明かりがもれている。
とても静かな場所だった。
「目指すは城ってことか」
「他には何もなさそうだしね」
街灯の明かりが道を照らしている。
その明かりを辿って道なりに歩くと、あっという間に城へついた。
扉の前に立つと、まるで俺達を歓迎するかのように重い音を立てて扉が開いた。
城の中は赤い絨毯が敷かれ、古い洋館のような雰囲気が漂っている。
ロビーと思わしき入ってすぐの場所には、途中で分かれている階段が奥にある。
「ワゥ」
「どーしたの、フー?」
フーがオリガの肩からジャンプして大理石の床に降りる。
こちら側を向いて尻をつけて座り、前脚で手招きをした。
『ついて来い』ということなのだろうか。
伝わったと思ったらしくフーは階段を登り、迷わず右側へ登って行った。
「ワゥ!」
「はいはい、早く来いってことでしょ」
「フぅ」
フーに案内され階段を上り右側へ行くと、細い廊下があった。
松明のように壁にかけられた蝋燭は灯る火は熱さを感じさせず時々揺れ、廊下や同じく壁にかけられている絵画を程よく照らす。
再び階段を上る。
上りきると、左側の道と合流できる場所に出た。
そこはシャンデリアが飾られ、今までの場所より少し豪華だった。
「きゅ〜」
そっちじゃなくてこっち。と言うかのようにフーが俺達が見ていた方向と逆の方向を指差す。
そこには、入り口と同じくらいの扉があった。
いかにも、この先玉座という雰囲気を出している。
「この先が… やっとだな」
「何が待っていても受け止めるしかない。そんな気がしてきたな」
この扉の向こうに、オーディンが待っている。
それぞれの思いを胸に、扉を開いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回は珍しく1000文字以下のお話とさせていただきました。
…来週、テストがあるんで(涙)
ということで連載遅れます。
- Re: Change the world ( No.93 )
- 日時: 2018/05/12 00:36
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
45話 覚悟と思い
扉の向こうに広がっていた場所は、前に夢のような感覚でオーディンと会った時と同じ光景だった。
長い白い布の敷かれたテーブルの左右にある椅子は誰もおらず、寂しい印象を受ける。
「よくぞ来てくれた、若者達よ」
奥に立っていたオーディンが言う。
オーディンのその一言により、重い空気が辺りを包み込む。
「まずはここに来てくれと頼んだ理由から話そうとしよう。気を楽にして良いぞ」
そういわれても、相手が幻獣王なのだから楽にはなれない。
緑国王とは違って。
「伝えたいことがあるのだ。いろいろとな。まず1つは、お主達のその戦いに最後まで協力するということ。…まぁ、もうしておるがな」
確かに、俺達の力となって共に戦ってくれている。
1つ目は特に重要にしなくて良さそうだ。
「2つ目は帝国を操りし者のことだ。彼奴の本当の目的は、世界と世界の間にある世界を繋ぐゲートと言われておる次元の狭間の中の『狭間の世界』から神のいる次元へ行くための扉を開くことだ」
パナソの目的。それは神のいる次元へ行くための扉を開くこと。
なぜそんなことをようとするのだろうか。
「なんでそのようなことを?」
「彼奴の名は、パナソ・ホウフハ・マニプュレートという。気づいただろうか?」
「ホウフハの名を持つ… そういうことか!」
どういうことだよ。ちゃんと言葉にしてくれよ…
「昔話にあっただろう? ホウフハの一族と。一族の目的は古くから1つ。『神から与えられた使命を果たす』という事。その使命こそが『世界へ試練を与え、神を超える者を作り、扉の向こうの神へあわせる』という事なのだ。今までしてきた帝国の行いを世界への試練と考えると、お主達は帝国の行い… つまり戦いで力も能力も、ましてや思いの強さも強くなったであろう。」
「という事は… オレ達が!?」
「そう。お主達が神を超える者に選ばれたのだ。だからお主達を帝国… いや、彼奴は孤児になるよう仕向けたのだ。」
「そうだとしたら、あたしはどうなるんだ? 帝国から酷い目にもあってないし、孤児にもなっていない」
「シドとジュリィ。お主達は寄り添う者として選ばれたのだろう。この4人の者との今までの関わりを思い出してみなさい。見守ったり、支えたりする事が多かっただろう」
「確かにそうですね…」
「彼奴は全てを見通していたのだ。使命を果たせずにいると25歳で亡くなってしまう呪いから一族を解放するために」
「初めから見通していた… としても、パナソは僕達と大体同い年。レオン達をこの運命にするために仕向けるためにはかなりの歳上でないといけないのでは? とっくに亡くなっていてもおかしくはないのではありませんか?」
「彼奴は、表に出ていないだけでお主達よりも倍以上歳上だ。しかし、呪いの影響はうけていない。それは、その見通し… 作戦が神に気に入られたからだ。だから神は彼奴に永遠の命を与えたのだ。作戦が成功すれば使命を果たせ、神自身の目的も達成できるのだから。」
パナソのしてきた事は、簡単に許せる者ばかりではない。
だが、オーディンの話を聞いてパナソは、一族を苦しめてきた呪いと使命から開放すべく自分を犠牲にしてでも解き放そうとしている事が分かった。
永遠の命。憧れる者もいるだろうが、死にたくても死ねず、逃げ出したくても逃げ出せず、周りの者を何度も失い続けながら生きていかないといけない物。考えれば考えるほど、パナソの悲しみが分かってくるような気がした。
皆それぞれに正義がある。その言葉の意味が理解できたようなきがする。
「でも、なぜ魔石を集めているの〜? 私たちに与えられてきた試練はほとんど魔石… 召喚獣をつかってなかったよ」
「それは扉を開くためだ。我々の魔石をすべて集め、そこにあるという型にはめれば扉が開くと我々は聞いておる。それと同時に、主からその扉は開いてはならぬとも聞いておる」
扉を開く事は全てを司る神の目的なのに、属性を司る神… 幻獣達の主はそれを許さないと言う。
神が許さないのだから、ちゃんとした理由があるのだろう。
「なぜだ?」
「今、世界は4つに分かれている事は知っておるな。その状態で扉を開くと世界のバランスが崩れてしまい、存在が消えてしまうというのだ」
「神とパナソは知っているの?」
「神は知っておる。しかしパナソは知らぬだろう…」
「さきほど『その状態で』と言いましたよね。ならば世界が元通り1つになったら、バランスなどはだいじょうぶなのですか?」
「そうだ。だが今のところ1つになる方法は見つかっておらぬ。」
「どうすれば…」
「現在、ホウフハの一族はパナソ以外いない。つまり、パナソで最後なのだ。だからパナソを…」
「そんな事できるかよ! 同情じゃねーけど、自分を犠牲にしてでも一族のためにやってるやつをやっちまうなんてよ」
「そういえば、言っておらぬかったな。」
「え?」
「バハムートから聞いたのだが、『どの道使命を果たせば、永遠の命はなくなって身は限界なのだから死んでしまう。例え果たさなかったらこの苦しみを永遠に背負うことになる。レオン達を選んだのは、そんな自分を開放してくれそうだからだ』とパナソは言っていたらしい」
「開放してやる… か」
なんだか複雑な気持ちだ。
パナソの思いを知ってしまったからなのだろうが、俺達に頼むなんて…
「やるしか、なさそうだな」
「うん… それが思い… 願いなら。私達に託しているのだから」
「決まったようだな。3つ目を言わせていただこう。パナソをどれかにしても我々は、この戦いを最後に消える事を選んだ」
「え…」
「もう、今の時代に我々は必要ない。仮にまた同じような事をするような奴が現れても、我々がいなければこのようにはならない。だから…」
「……」
いろいろな事がありすぎて、返す言葉が見つからない。
しかし、1度覚悟を決めた者を止めるわけにはいかない。なぜなら、たくさんの思いがあって覚悟を決めたのだから。その覚悟は本人以外には全てはわからない。だが、その覚悟を受け入れる事はできる。
だから…
「わかった、俺達が扉を開く事を防いでパナソの願いを叶えてやればいいんだな」
「話のわかるやつで助かる。そうだ」
「やってやるよ。それが俺達に託されたものなんだからな」
「ありがとな。では、健闘を祈る。」
「こちらこそ。ではまた」
皆が部屋から出て行く。
俺が出ようとした時、オーディンに声をかけられた。
- Re: Change the world ( No.94 )
- 日時: 2018/05/19 20:09
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
46話 運命に抗え
「話したい事があるとやらを言っておらぬかったか?」
「… 忘れていただけだ。」
おっと危ない。本当に忘れていた。
なぜなら、話された事が衝撃的だったから。
聞きたい事がたくさんある。
やはりここは1番知りたいことをストレートに聞くべきなのだろうか。
1番知りたいことーーー俺と幻獣との繋がり。
それがわかれば幻獣界の民とか、生命の輝きについての事をより深く聞けるはずだ。
しかし、オーディンも俺に『話したい事がある』と言っていた。
それと俺の知りたいことは関係あるのだろうか。
「ここに来るまでの間、俺のことを『幻獣界の民かもしれない』ってヴェルとかが言っていたんだ。俺には孤児院にいた頃よりも前の記憶はない。知っているはずの人はもういない。だから幻獣王のあんたなら… って思ってな。つまり、俺と幻獣の繋がりを知りたいんだ」
「ほう、そうか」
オーディンは辺りを見回し、誰もいないことを確認する。
それほど重要なことなのだろうか。
「『幻獣界の民かもしれない』と言ったな。確かにお主は幻獣界の民だ」
「じゃあなぜ新世界にいるんだ?」
自分が幻獣界の民だというのは、薄々そんな気がしていた。
だからこそ思いつく疑問を投げかける。
「幻獣界には人間が誰1人おらぬかっただろう」
この世界に来た時のことを思い出す。
人の気配がなく、民家が立ち並ぶ静寂に満ちた夜の世界ーーーそれが第一印象でもあり、事実だった。
「この世界に人がいないのは、我々が追い出したからだ」
「追い出した? なぜだ?」
「お主達に言った通り、我々は消えることを選んだからだ。この世界は幻獣がいる事で成り立っている。つまり我々、幻獣が消えるということはこの世界が消えるに等しいのだ」
「残された人々はどうなるんだ?」
「世界が消え、残された人々は狭間の世界へ行き着くがそこから出られなくなる。要するに、その残された人々のために追い出したのだ」
救われた、と言っても過言ではなかった。
もしかすれば、などとこの話を聞いたことで少ない希望を持てた。
残された人々が新世界にいる。ということは両親に会えるかもしれない。
普通に旅が終わっても暮らしていけるかもしれない。
「しかし… お主は消える可能性がある」
「……え?」
その希望は、すぐに壊れてしまった。
俺が幻獣が消えるのと同時に消える可能性がある……?
いや、『可能性がある』と言っているだけだ。
言動からすると、消えないという事もあるとも言っている。
ただ、言われたことについて受け入れられない。
「なんでだ?」
「それを話そうと思ってここへ呼んだのだ。すぐに信じてはくれなくてもよい。ただ、受け入れてほしい…」
すでに前に言われたことが受け入れられないのだが。
オーディンは一息吐くと意を決したように言う。
「お主は……我と血が繋がっておる」
『血が繋がっている』という事は俺の親族と言うことになる。
確かにすぐには信じられるようなことではなかった。幻獣と人、種族は違うのにそのような事はあり得るのだろうか。
いや、あり得る。竜人という人と竜の血を引く種族がその証拠だ。
「正確に言うと、お主は我の息子だ。そのためだろうが、お主の体には幻獣の血が濃く流れている」
血。話を聞いて思い出す。シドに初めてあった時のことを。
かなりの重傷を負ってジンにより、雪の国のシドの診療所とも言える小さな家に運ばれた。
意識が朦朧としていて詳しくは覚えていないが、出血が酷く輸血しないといけなかったらしい。
しかし、俺の血が珍しく2種類あり、片方の物しかなかったとのちに聞いた。
きっと片方の物は人間の血の事であり、なかった物が幻獣の血なのであろう。
そう考えるとオーディンの話したことに説得力がつく。まぁ、幻獣王なのだから真実なのであろう。
「他の幻獣の民は消えないのか?」
「幻獣の血を引いているのはお主のみ。幻獣の民とは新世界、古世界から迷いやってきた者でここに住むことを選んだ者のことを指す。全ての幻獣の民が幻獣の血をひいているわけではないのだ」
「つまり、俺が幻獣の血をひいているから消える可能性があるんだな」
オーディンは静かに頷く。
もし、俺が消えたらどうなるのだろうか。消えた時、感情や記憶も失ってしまうのだろうか。
ただ確実にわかるのは、オリガとの約束を守れないこと。
「約束……守れないな」
「そう決めるのはまだ早い。我は『可能性がある』と言ったのだ」
全てが決まったわけではない。なのになぜ諦めようとしていたのだろう。
そんな自分が悔しくて目線を伏せる。
「消える運命、かもしれぬ。だがその運命に抗おうとする力こそが人間の力であろう」
オーディンが俺を励まそうとしているのが伝わってくる。
『運命に抗う』、響きだけでなぜだかかっこいいと思ってしまう。まぁ、それは置いといて。
目線を戻し、俺の思いを伝えようと声を出そうとした途端、
「やる気になりおったな。運命とは抗えるもの。お主の力見させてもらうぞ」
目を見て伝わったのだろうか、小さく微笑み言った。
「最後の最後までちゃんと見てろよ、今まで見なかったぶんな」
「もちろんだ」
「じゃ、俺、行くから」
「行ってらっしゃい」
最後の言葉には何やら温もりを感じた。
ちゃんとゆっくり話せるのはこれが最後かもしれない。でも、思いを伝えることができた。そのことだけで満足だ。
後ろにある大きな扉を開く。その先には未来に無限の可能性があることを示すかのように明るく、眩しかった。
まるで勇気づけるかのように。
しかし『消える可能性がある』という事をみんなに言う勇気はない。特にオリガには言えない。
だってオリガの思いを聞いてしまったのだから。
複雑な気持ちを胸に、扉の奥へ踏み出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誰もいなくなった部屋にただ1人佇むオーディン。
ここに残されているのは冷たい夜空と無機質な大理石。そして、息子ーーーレオンの思いという名の覚悟。
彼にあの事を言って良かったのだろうか。それは言ってしまった今でもよくわからない。
『真実は言ってしまった方がいい。人はそこから進もうとするから』
誰もいないはずなのに、愛する妻ーーーレオナの声が聞こえたような気がする。
いつもそうだ。困った時、つまづいた時に彼女の声が聞こえたような気になる。それはきっと胸に刻まれ、記憶に残っている言葉だからだろう。
彼女はオーディンにとって大切な人であり、支えてくれた人でもあった。
種族は違う。あの頃はそんな事どうでも良かった。
ただ、彼女のそばで……
そこで不意に思う。彼にもそのような人がいるのだろうか。
言動からするにいるのだろうと思える。それが仲間なのか、大切な人なのか……
気になるが彼も年相応の事をしているのだと思う。
「レオナ…… そちらへ行くのはもう少しだけあとになりそうだ。見ているかはわからないがそちらへ行く時は、とびっきりの土産を持って行こうと思う。それまで寂しい思いをさせるが、待っていてくれ」
オーディンは満月に向かって語りかけた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回から『ー』(ダッシュって言うんだっけ…?)を使いたかったのですが、そのような形状の物がたくさんあってわからないためよく「ソーダ」などで使う『ー』を使う事にしました。
『ー』が三つ連続で使われている時は、本来ならダッシュを使っているところです。
もしキーボードのどこを押せばいいか知っている方いましたら、コメントお願いします。
- Re: Change the world ( No.95 )
- 日時: 2018/05/22 20:59
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
第5章 (題名は考え中です)
47話 食材が…
「お、きたきた。遅かったな」
「まぁな」
扉の向こうは、飛空艇のリビングのような部屋だった。
リビング、と言ってもキッチンが付いていてテーブルが中央に置かれているだけなのだが。
「お腹減った〜」
「そういえば朝から何にも食べてなかったな」
フレイとオリガがこちらを見る。
その目線からは『何か作ってくれ』という事が伝わってくる。
「わかった、昼飯作ってやるよ」
「やったー! でも、もう夜だけどね」
窓を見る。すると日の明かりではなく、月の明かりが僅かに入ってきていた。
ヴェルと別れた時はまだ朝だったはず。幻獣界には1時間ほどしかいなかったのにこの世界はもう夜なのだろうか。思考を巡らせてみる。記憶の奥底からとある本の内容が重い浮かび上がった。
それは『幻獣界は時の流れが違う』という事で、時差がどのくらいなのかは証明できていないという事。
その内容が本当ならば、この事のつじつまが合う。
「さて、作るか」
アイランドキッチンの後ろ側にある冷蔵庫の中を覗く。確かシルフ村などで買ったスノラ米やウリブーの肉などの食材があるはずだ。すべて組み合わせれば、カレーが作れるだろう。
ーーー誰もいじっていなければ。
「なんだと……」
「どーしたんだ?」
冷蔵庫、冷凍庫、野菜室の中に食材が1つもない。
予想しなかった展開に少々戸惑いを覚える。
いったい誰が……
「誰が… やったんだ?」
皆顔を横に振る。誰も嘘をついているようには思えなかった。
「なぁ、これは?」
ジュリィが一枚のメモ書きらしきものを見つけた。
きっと食材がない事と関係があるはず。そう信じてその紙を見せてもらった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
食材があの場所になさそうだから、ここから取っていくぞ。
国の復興のためにって動いてるが、腹が減っちゃ何もやる気がでねぇだろ?
全員分作らなきゃいけねぇから、一応全部持ってっとく。
材料見た感じ、カレーが作れそうだな。
ちびっ子どもが喜びそうだ。
…なぜここに食材があるかわかったてか? 妖精がきっとここに来るよう仕向けたんだろ。きっと
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前は書いていなかったが最後の言い訳に『妖精』を使っている事から、材料を持ち出した犯人がわかった。
「リベロ、アンタかよ……」
そういえばあの戦いが終わった後、元孤児院、反乱軍アジトで昼飯作りに手伝わされた。
その時に作ったのはカレーだったはず。きっとその時使った食材がここにあったものなのだろう。
「勝手に使うなよ」と言いたいが、俺も調理を手伝ったため「自分で使っただろ」と言われてしまう。
完全にはめられた。
「なんか他にないの〜」
「記憶の限りない。食べに行ったほうが早そうだな」
食べに行くならメェ〜村が一番お手頃だろうが、今の時間はやっていないだろう。
そうすると行く場所が限られてくる。
「フー吉亭ならきっと今でも食べさせてくれるだろう。いや、食べさせてもらおう」
「どーしたんだよ、急に熱くなって」
この件のお詫びのような形で料理を食べさせてもらおう。
そういえば、このメンバーであそこへ行くのは初めてのはずだ。少しワクワクする。
「シド、フー吉亭まで頼む」
「了解だよ」
「来る前に事前に連絡をいれろ」と言われていたこと思い出す。
自分の育った家に予約を入れるのは不思議な感覚だった。
- Re: Change the world ( No.96 )
- 日時: 2018/05/30 14:43
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
48話 夕食
緑の国から川を挟んで北のエノースゥ大平原の真ん中にあるフー吉亭。
だいたいメェ〜村と灯火の街の間にあるのだが、どちらの地域にも属さない。
旅人ぐらいしか通らない場所にあるのになぜ飲食業を続けられるのか。
ーーーそれは安心と安全を第一にしているから。
前に野菜はサウス大陸の気候で育てられる物なら裏の畑で農薬不使用で作られていて、どこかから輸入、買うときは現地へ行き直接見て選んでいたり、生産者の方に詳しく聞いてみたり、食中毒や体に害をなす症状についても勉強し、管理方法を工夫したりなどをしているとリベロが言っていた。
「あたりまえのことだ」という感じに軽く喋っていたが、それはかなり大変な事だろう。移動費やら何やら考えるとあの料金では赤字になりそうな気がする。しかし、今のところ赤字になったという事は聞いていない。逆に売上絶好調らしい。
リベロは「妖精のおかげだ」と言っているが、実際は安心と安全を第一にするために努力し、客の信頼を得ているからだろう。
カランカランと扉を開けると鈴の音が響いた。
「いらっしゃい…… ってか、おかえりか」
「あんたに『おかえり』って言われたことないぞ」
ずっと変わらない厨房とつながっているカウンターに4人席の配置、美味しそうな匂い。
あの頃と同じように俺を出迎えてくれる。
「ワゥ」
「きゃぷぅ」
オリガの方を飛び降りたフーがフー吉の所へ向かう。カウンターの端へ行き、尻をつけて座ってなにか話している。ワゥワゥ言っているようにしか聞こえないが。
「好きなとこ座ったら、呼んでくれ」
席の都合上、シドとジュリィはカウンター席で食べる事にした。そこでシドが頼んだのは野菜たっぷり塩ラーメン、ジュリィが頼んだのは山ベリーのパンケーキ。ジュリィにもスイーツ好きという女心が一応あるみたいだ。
ーーー山ベリーのパンケーキか。そういえば、ジンがここへ来るたびに必ず食べていた。しかも朝から。
「注文、頼む」
「はいよ!」
フー吉が自分の身の丈ほどあるメモ帳を背負い、こちらへやってきた。頼む時はフー吉が持ってきた紙に直接メニュー名と席番号を書き入れるのがここのルール。
俺が頼んだのは塩焼きそば。ここで目覚めた時、試作品だと言われて食べた物の改良版だ。フレイはウリヴィ肉をサイコロステーキにし、カレーに入れたゴロゴロカレー。フレイヤはソルト草が具材のむすび定食。オリガは具材たっぷりホットサンド。オリガ、ジュリィの物はどれも夕食ではなく、朝食向きのものだった。
「へい、注文の品」
もちろん、食べ物を運ぶのはリベロだ。
「そんなんでたりるのか?」
「ど〜してもこれが食べたかったからさ」
オリガは至福のひと時を楽しむかのように美味しそうにホットサンドを食べている。
「なんか疲れが取れたような気がする……」
「そん中には疲労を回復する効果があるファントム・パンプキンが入っているからな」
「なるほどね」と呟くように言ったオリガは再びホットサンドを口にする。
ーーーそういえば、オリガは料理が上手になったのだろうか。
昔に孤児院の中から料理本を見つけたためか、料理に興味を持ったらしい。「ちょっと作ってみたいものがある」との事なので緑の国へ院長と買い出しに行き材料を買い、オリガに調理を任せてみた。
その時に出てきたのはウリヴィ丼。ウリヴィと呼ばれる猪のようなモンスターの肉を使った丼。
湯気が立ち、とろ〜りとしたタレが肉と合わさって輝き、見た目だけでもは美味しそうに見えた。
食欲を増進させる香りに誘われ、ウリヴィ丼の一部を口に運ぶ。
野生の動物特有の鍛えられた肉の弾力、甘さと辛さが混じり合ったタレ、ホカホカのご飯が口の中で絶妙なハーモニーを奏で、とても美味しい、と思って入られたのは味を知る前だけだった。
肉の火加減、ご飯のふっくら具合はとてもよかった。しかし、タレが異常なほどにまずい。ドロッとした何か−−−−例えるならスライムのような物を口にしている感覚だった。味が何とも言えなかった。
何を入れたのか聞いてみると、「もしかしたら調味料入れ間違えたかも。まいっか」と軽くなかったことにしようとしていた。
あの料理の味は悪い意味で忘れられなかった。
「オリガ」
「ん? なに」
「お前、料理上手くなったのか?」
「ま、まぁ、上手くなったはずだよ」
挙動不審すぎるだろう。それに『はず』とはなんだ。
「そういえば、オリガは普通の家庭料理ならできるようになったんだって〜」
「フレイヤ、ナイスカバー」
小声で言ったのだろうが、隣に座っているがゆえにまる聞こえだった。
でも、フレイヤが言うには本当のことだろう。家庭料理さえできれば一応だいたいは生きて行ける。
「ま、よかったな」
「なんか初めてレオンに褒められたような気がする……」
そんな会話を聞いていたのか、ジュリィが少し笑っているのが背中から伝わる。
ジュリィもあの丼の被害者だったからだろうか。
「ゲホッ、ゲホッ」
「だ、大丈夫かい……?」
「変などごろに、入っだみだいだ」
ジュリィは笑っていたせいか、パンケーキが自分ではよくわからない変なところに入ってしまったらしい。
そのせいかさっきから咳が止まらず、ずっと噎せている。隣に座っているシドがジュリィの背中をさする。
「へい、水」
「ありが、どう」
た行の発音に濁点がついてしまっているのも変なところに入ってしまったからだろう。
リベロから水を受け取り、一気に飲み干すとフーが「どんまいワン」とでも言うかのようにジュリィの腕にポンッと前足をおく。
「ワゥ」
「フー…… どうしたんだ?」
「きゃっぷ〜」
どうやらパンケーキが食べたいだけだったらしい。
ジュリィはフーのサイズに切られたパンケーキをフーへ渡すと、フーは人間がおにぎりを食べる動きと同じように前足を使ってパンケーキを少しずつ食べていった。
「きゃぷ」
「どうした、フー吉」
「きゃぷ」
フー吉がリベロのスマホの前で鳴いたとたん、リベロのスマホがプルルルルと鳴り出した。
まさかフー吉、お前に予知能力がッ……と思ってしまうが実際のところ、リベロに構って欲しかっただけなのだろう。
「もしもし、あぁ? ……そりゃ大変だな、どっちもよ。だからこっちから有能なやつを送る。……大丈夫だ、いろいろできるやつだからよぉ」
画面をスライドし、電話を切る。
「おいレオン、なんか用事入ってるか? 明日」
「特にないが、やる事は…」
「そうか、なら竜牙村に向かってくれ」
「はぁ?なぜ俺た…」
「いいから! とりあえず村もここも未来が無くなるかもしれねぇんだ。いいな?」
「だからなぜお…」
「村長に言っちまったから、言ってくれよ」
「……わかった」
話を最後まで聞け。
でも、任された仕事はやるしかない。
「だが、今日は夜遅いから明日行く。それでいいな。あと」
皆食べ終わっていた。ならば会計にしたいのだが、ちょっと今日はお金を払う前に決着をつけたい話がある。
「いいかげん俺が買った食材勝手に使うのやめろよ」
これだけは、これこそは今日こそ決着を決めたい。
いつもは言われっぱなしだったが今回こそは。
- Re: Change the world ( No.97 )
- 日時: 2018/05/30 15:22
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
49話 トーゲ・ンガへ
朝日が世界を照らし始めてから何時間かたったコックピットの中。
俺は運転席の左側の席に座って外の景色を眺めていた。
世界地図の真ん中にある中央海からみて東にあるイースト大陸。
その大陸の南の方に位置する竜牙村へ向かっていた。
イースト大陸へ来るのは何時ぶりだろう。
前に来たのは、イフリートの魔石を取りにきた時だっただろう。
そういえばアイヤは無事生活していけているだろうか。別れた時はじいちゃんを目の前で亡くしたショックで立ち直れていなかったはずだ。それに身寄りをなくしたことで1人になってしまっていたと聞いた。周りの人が優しいといいのだが……
「そういえばさ」
「ん?」
コーヒーを片手に本を読むシドが隣の席ーーー運転席から話しかけてきた。
コーヒーが本にかかり読めなくなるという事は考えていないのだろうか。
「リベロさんとの決着、ついた?」
「アレか…… どちらも寝落ちでつかなかった」
「寝落ちだったんだ……」
昨晩の事だ。
みんなが飛空艇のマイルームへ戻ったあともリベロとずっと話していた。
今日こそ決着をつける。そう決めたのに溜まりに溜まった疲労や時間が遅かった事から、どちらも途中で寝てしまったのだった。
「次こそは必ず決着をつける。そう約束してきたんだ」
「決まるといいね」
今朝、ちゃんと約束した。次こそ、次会う時にはと。
ーーーあれが会うのが最後だったらどうする?
不意にそんな考えが浮かぶ。次会うのが戦いの後だったら俺は消えてしまっているかもしれない。
もちろん、消えない可能性があるという事はわかっている。しかし、輸血の時に起きた問題を考えると消えてしまう可能性の方が高い気がする。
約束。する時はとても簡単なのに、果たそうとする事を考えると嫌になってくる。
あの時なぜ、この事を考えなかったのだろう……
「いろいろ、考えているみたいだね」
「……まぁな」
いろいろ考えている、か。
オーディンに会えば何事もスッキリ解決できると思っていたが、悩みが増えてしまった。
誰にも言えない、自分自身の悩みが。
この悩みがなくなるのはきっと……
なんとなく前を向く。すると目の前に活発な火山が見えてきた。
確かその火山の麓に位置するのがムスペルヘイムだったはずだ。ということは
「火山が見えてきたって事は、そろそろ着くって事だよな」
「そうだよ、さて降りますか。ん?」
「どうした?」
「遠回りしてもいいかい?」
「俺は構わんが」
シドが下にある竜牙村を見て、何かに気づいたらしい。
飛空艇の高度を下げるのではなく、右に旋回させムスペルヘイムの方へ行くように仕向けた。
「ムスペルヘイムから竜牙村まで、歩いて行く事になるかも」
「かなり距離があるんじゃないか?」
「飛空艇発着場が村にないからしょうがないさ」
ムスペルヘイムから、竜牙村まで歩く……だと。
つまり、トーゲ・ンガを超える必要があるという事だ。
ーーートーゲ・ンガ。その名を聞くと誰もが坂道を思い出すほど坂道だらけのカラフルな道。
建物がちゃんとあるが、人の住んでいる痕跡がないのだが、特産物のカラフルな煉瓦が注文すれば作って送ってくれる事から誰かしらはいると言われている。
「そろそろ降りるよ」
今度こそ高度を下げる。
ムスペルヘイムに着陸した。
「相変わらず暑いなぁ、ここは」
「火山もありますし、何と言っても……」
「温泉街!今度こそ入れるといいな……」
前にイフリート関連でここへ来た時は探索も観光をせずに帰ってしまった。
また、帝国の属国という事もあったためすぐ帰ってしまった。しかし、ここは観光地という事もあってか帝国の管理は甘く、ムスペルヘイム事態で管理している独立国のようになっているため、あまり警戒せずに過ごしていても大丈夫そうだ。
「あれ、お兄さん達ですか?」
「ん?」
後ろを振り向くと、10歳ほどの少年が立っていた。
アイヤだった。前よりも少し身長が伸びた気がする。
「そうだぜ…… ってアイヤか?」
「そうですが…… どうしましたか?」
「大きくなったな、身長」
「成長期ってやつですよ。それに」
アイヤが後ろを振り向く。遠くから白い女性がこちらへ来ているのがわかる。
色白の肌にシルクのように白く輝く長い髪をなびかせ、童顔に見える。
こんな日差しのムスペルヘイムとは場違いとも思わせる格好に姿。
只者ではないような雰囲気を纏っている。
「シルクさん、この人たちが言った人だよ」
「あら、そうなの。初めまして、この子の付添人のシルクです」
「初めまして、アイヤの話からして私達の事はわかっているようですね」
「……えっと、なんでしたっけ? 忘れちゃった……」
「えぇ!?」
「すいませんねお兄さん達。シルクさん、天然というか、馬鹿というか…… 不思議な人なんで」
シルクさん、やはり只者ではなかった。
アイヤとの関係は付添人という事しかわからないが、アイヤは大丈夫なのだろうか。
ーーーまぁ元気そうで良かった。
「あ、そろそろ電車の時間だわ。行くわよ、アイヤ」
「ホントだ、お兄さん達またどこかで」
シルクさんに連れられアイヤが駅の方へ俺達に手を振りながら向かっていく。
それを見届け、俺達もトーゲ・ンガの方向へ向かった。
- Re: Change the world ( No.98 )
- 日時: 2018/06/03 15:32
- 名前: 和花 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
8月から書き始めたCTW。もう9カ月も経っているとは…
そして閲覧数があと少しで2000。募集スレは1000を超えました。
みなさま、ありがとうございます。
それでは、50話を。
50話 トーゲ・ンガ
「暑さの次はカラフルな坂か……」
目の前に広がる光景を見てフレイが呟く。
未だに謎の多いイースト大陸。この大陸を領地としている国、ソエルは特殊な気候のレイン・コールが晴れないと入れない。それに情報が記された書物、伝説などが全くないためどのような場所なのかもわからない。
また、トーゲ・ンガのように坂道が多かったり火山があったりとなぜこのような地形となったのかもわからない。よく研究の対象にされるが、解き明かされていない事が多い。
「誰もいないのかな?」
家や八百屋のような建物が道の両端に立ち並ぶ。
窓から中を伺えるが、住んでいるような痕跡はない。
噂話は本当のようだ。
「ここに今いるのはあたしだけですよ」
「!?」
突然声を掛けられた。
さっきまで誰もいなかったはずの後ろに女性が立っていた。
見た感じだと、俺達より少し年上。グレープ色のショートヘアが似合っている。
エプロン姿という事は……
「もしかして、特産物の煉瓦を作っている…」
「そう、あたしはセナ。ここを統治している者よ」
セナと名乗った女性は、両手を広げて「ここ全てを統治している」と表した。
人の姿を見かけないため統治するのは簡単そうに思える。
「そういえば、なんでここに人がいないの〜?」
「それはここが住む場所ではなくて職場だから。あたしの両親がここ統治している時は村みたいなものだったよ。でも今はここをカラフルな煉瓦を作るためだけの場所にしているの」
「なぜ?」
「実は、あたしぐらいの子はみんな都会に憧れて、レヴェリーとかに行っちゃたんだ。それで残っていたのは高齢の方ばかり。ここは坂ばっかりでキツイし、近くの店に行くのも大変だから住民会でムスペルヘイムへ引っ越して、ここを職場体験場にしてみたらと提案したら大当たり。ということ」
セナさんは高齢の方のために提案したのだろうが、見方を変えたら追い出したという事になってしまう。
だが、大当たりという事は皆賛成したという事。職場体験場にしたとはいえ、現実はどうなのだろうか。
──そんな時、プルルルルとセナさんの携帯が鳴った。
「はい、トーゲ・ンガ煉瓦作り体験教室です。……えっと来月から開始で予約入っているので再来月になってしまいそうです。……あ、わかりました。ありがとうございます」
ピッと電話を切る。
「来月から体験教室を始めるんだけど、予約がかなり入ってきているの。準備とかしないといけないからあたしはこのぐらいで」
セナさんは走って俺達とは逆の方向に走っていく。
煉瓦作り体験、どんなことをするのか少し気になる。俺ぐらいでもできるのだろうか。
──できるならば、やってみたい。
「さて、僕達も行こうか」
シドに続いて歩っていく。まだ何個も坂があるみたいだ。
周りを見渡すと……
- Re: Change the world ( No.99 )
- 日時: 2018/06/07 21:56
- 名前: 井桝美紗 (ID: 9j9UhkjA)
和花。さん! はじめまして、ファンです!
私もジャンルは違うのですが、この小説カキコで小説を書かせて頂いている、井桝美紗という者です。
こんな私が和花。さんにコメントしていいものかと悩み悩んで早三週間弱……コメントさせていただくことにしました!
いつも楽しみにしています!
魅力的な文章、続きが気になる展開、十人十色で様々な動きを見せるキャラクター達……こんな作品が書けるなんて、本当にすごいです! 尊敬します!
そろそろ物語も後半ですかね? この素晴らしい作品が最終話を迎えるときが近いのが少し寂しいですが……クライマックスも楽しみです! レオンたちが幸せになって、ハッピーエンドを迎えられますように……
これからも連載頑張ってください! 応援しています!
- Re: Change the world ( No.100 )
- 日時: 2018/06/07 22:55
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
井桝美沙さん
おぉぉぉ、コメントありがとうございます!
ファンだなんて言ってくれるなんて(照)
……まぁ、このようにハイテンションになるのでコメントは誰でもOKでいつでもOKです
物語も後半です。(きっと)
執筆開始時と今を比べると、文字数がどんどん増えていっているのでいつ終わるかわかりません(笑)
今年中には終われる気がします。
以前から言っていますが、続編製作決定しています。
今までに出たキャラも登場予定です。
ここでちょっとCTWの話を。
1のテーマは絆となっていますが、実はCTW全て(番外編も含め)共通のテーマで作っています。
ここでは言いませんけどね(最後のお楽しみ?)
あと、お知らせ。
来年受験生のため、連載がものすご〜く遅くなることでしょう(天気予報風)
もしかしたら一年の休みをいただくかもしれません。
どうなるかわかりませんが…
さてさてここで閉めさせていただきます。
今回はありがとうございました! 井桝美沙さんも頑張ってくださいね!
ーお知らせ2ー
作者テスト前のため、連載遅れます
- Re: Change the world ( No.101 )
- 日時: 2018/06/10 00:54
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
51話 ビューティー・チャーミング・ウツクーシー
「なぁ、あれ使えないか?」
周りを見て発見したのは竜車。ソクリュウという『一応』人懐っこい竜を使って走る車だ。おとぎ話にでてくる馬車という乗り物を基にして作られ、今では大陸内を移動するための手段として使われている。
「6人…… ギリギリ乗れるかな?」
「大丈夫! 1人は手綱を持つためにソクリュウに乗るし、この子ムッキムキだから〜」
よくよく見ると、平原を走るソクリュウより足の筋肉が付いている。
トーゲ・ンガの坂道を往復して付いたものだろう。
「誰が運転するんだ?」
「はいはーい、私にお任せを〜」
手を挙げたのはフレイヤだった。
昔からフレイヤはどのような生物にも好かれやすかった。だから、人を選ぶというソクリュウもフレイヤなら大丈夫だろう。
──フレイだったら投げ飛ばされるのが想像つくのはなぜだろうか?
「ソクリュウ、よろしくね」
「グルルルル」
ソクリュウが喉を鳴らす。フレイヤのことを気に入らなかったのだろうか。
そんなソクリュウにとったフレイヤの対応は、
「これほしぃ〜?」
「クワァ! クワァ!」
ソクリュウの好物の山ベリーを取り出し、パン食い競争のように山ベリーを上から手で吊りすぐには食べられないようにすることだった。
山ベリーに夢中のソクリュウ。ぴょんぴょんと跳ねる姿は可愛らしい。
「ほしぃ? ほしぃよね〜」
どんどん山ベリーを高いところへ持っていく。
「これは私の物。食べたいなら私に従いなさい」
「……クワ」
一気にソクリュウの勢いが収まった。フレイヤから絶対女王のようなオーラが出ているように感じる。
そのオーラは、フレイのボケを突っ込む時と同じようなものだった。
「あのオーラには、絶対に逆らってはいけないような気がするのはオレだけか?」
「なに、同情を求めているのか? ──俺もそう思う」
「だよな! やっぱレオンはわかってくれるぅー!」
「バカ、やめろ! 聞こえちまったらどうすんだよ……」
その瞬間、フレイヤがこちらへ振り向きOKの合図をしていた。
幸い、聞こえてはいなかったようだ。
「さて、乗り込むとすっか」
荷台は荷物も人も入れるようなぐらい快適で大きなものだった。
俺とオリガ、フレイとジュリィとシドで向かい合わせに座る。
──オリガの隣に座るのはあの時以来か。あの時の事を誰も見ていないといいが……
「うそ……」
「どうしたんだ!?」
フレイヤの力の抜けた声が聞こえた。
何かあったのだろうか。ちょっとした胸騒ぎがする。
「この子、女の子だ……」
「……」
この旅で一番衝撃的で、どうでも良いことだった。
外見からすれば筋肉質で体がゴツく、メスには見えなかった。しかしフレイヤによると、走り方が、尻尾の動きが女の子らしい。
一瞬、オカマという物が脳裏をよぎる。しかし、竜に限ってそんなことはないだろう。
「……名前はどうなってるの?」
竜車のソクリュウは必ず名前の彫ってある木板を首に下げている。そこに載っている名が女の子らしけらば女の子だと認めてやっても良い。
──なぜだろう。このソクリュウを女の子だと認めたくない自分がいる。
「『ビューティー・チャーミング・ウツクーシー』だって〜 どれが名前だろう?」
「その名をつけた方、どういう心境だったのだろう……」
「あ、そろそろ着くよ〜」
約3分ほどしたら、竜車が止まった。それは竜牙村に着いたという合図だった。
竜車を降りると、畑が広がる田舎村という印象だった。だが、畑にはなにも植えられていなく、荒らされた形跡が目立っていた。
「まずは村長さんにあいにいってみますか」
「そうだね、ビューティー・チャーミング・ウツクーシー、ありがと」
「クワァ」
無事山ベリーを貰ったビューティー・チャーミング・ウツクーシーは満足そうに来た道を戻って行った。
それを見届け、見えなくなったあたりから俺達は村長の家へリベロからもらったメモを頼りに歩いて行った。
- スレ数100のご挨拶 ( No.102 )
- 日時: 2018/06/13 19:28
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
記念すべきスレ数100の今回は、挨拶とさせていただきます。
(テスト期間中だって? 気にするでない。)
2017.8.26からスタートしたこの小説。
最初の頃に言いましたが、私にとっての初投稿&初作品です。
何もかもが初めてでした(笑)
最初の頃を見ていただけばわかりますが、文章力、量や話の内容が少なすぎますね(汗)
なのに登場人物の数が多い。実は私、全員覚えていません。
メモるべきでしたね(笑)
それに対して現在。第4章と第1章のスレ数、文章量が莫大に増えました。
第4章の題名を『それぞれの思い』という物にしてしまったからこうなったんだと思います。
……第5章はどうなることやら
文章も会話も土地も人も閲覧数も、クレッシェンドかかってます(笑)
(クレッシェンドってだんだん大きくって意味です)
それはいいことなのですが。
このまま頑張っていきます!
急に終わりになってしまいましたが、本日はここらへんで。
これからもよろしくお願いします!
もし、この作品について呟きたい、私へコメントしたいという方いましたらここのスレでお願いします!
……Twitterは私やっていませんが時々覗いています。もしこの話の話題をつぶやく時はぜひ『#CTWだぞ』とつけてみてください。そうすれば私も見やすいです。
なぜ『だぞ』ってつけたって?
なんとなくです(笑)
- Re: Change the world ( No.103 )
- 日時: 2018/06/25 23:05
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
52話 本題へ早く
「今月もダメじゃのう……」
「あら、メダラーさんとこもですか」
竜牙村についた俺達。
歩いている途中、様々な人の会話が聞こえる。
どの人も畑を眺めて呟く。今月もダメだった、と。
だいたいこの村で何が起きているのかは畑を見れば一目瞭然だった。
土は踏み固められ、作物は食い荒らされている。その対策用と思われし柵も壊されている。
このようなことをするのは、モンスターしかいない。
──つまり、俺達が呼ばれた目的はその荒らしに来るモンスター倒しだろう。
しかし俺達だけでどうにかできる数なのだろうか。
どの畑も無惨な姿となっていることから1匹の大きなモンスター、あるいは複数のモンスターが来ていることになる。それをたった6人で追っ払うと考えるとかなり大変な作業だ。
「あなた達がおじいちゃんが呼んだ人たち?」
振り向くと水色の髪をポニーテールにした俺達より少し年上の女性が立っていた。
『おじいちゃんが呼んだ』という言葉からこの人は村長の孫なのだろう。
「綺麗な人……」
「よく言われるわ。……告っても無駄よ?」
「べ、別に。オレにはそーいう人いるし、大丈夫だし」
フレイのいう通り、その女性は美しい人だった。
『よく言われる』とはどのくらいなのだろう。
「まぁ、呼ばれて頼まれて来ましたって感じ。まず村長に話を聞きたいんだけど……」
オリガの他人に対する態度がいつもと違う。何かを敵対視しているような気がする。
それは目線でわかった。プライバシーに配慮してここは言葉にしないでおく。
まぁ、気にするのもしょうがないような気がする。この件については『年頃だから』という言葉で片付く。
──そもそもそれをなぜ俺が考えているんだ? 誤解を招いてしまうのでこれ以上は考えるのをやめよう。
「なるほど〜 なら私についてきて。あ、自己紹介まだだったね。私はアミュよ〜」
「よろしくって、前に一度会っているんだけど…」
ジュリィはアミュさんに一度会っているらしい。しかしそれにアミュさんは気づいていない。
「ん? そうなの? 私、いろんな人に会っているからよく忘れるんだ。ごめんね〜」
「いや、別に人違いって可能性もあるんだ。だから気にしなくていいよ」
「ふふ、そう言われると気がラクになるわ。あ、そうそう。ついてきてって言ったけどここよ」
アミュさんが指差した先には、少し大きな民家が建っていた。
「見た目は大きい家だけど、これ全部が家ってわけではないの。村役場が合体してるだけでね〜」
カランコロン
扉についた鈴が来客が来たことを知らせる。しかし出迎えてくるものはいない。
「これが村役場…」
「ん?初めて?」
「オレら城でそーいうの済ませちゃうから」
中はログハウス風で、カウンターが目の前にある。奥には事務机がたくさん並んでいる。
これが村役場。城とは違って民間的な温もりがあった。
その温もりは、現実を、世界を知らなかった頃に感じたものに近かった。
「誰もいないね〜」
「もしかしたら、上で会議しているのかも。行ってみよっか」
案内され、2階へと階段を上る。
「もうこのままでは、村全体で赤字ですわ」
「この村をあいつらに渡してわしらはムスペルヘイムに移り住もうじゃないか? トーゲ・ンガの者は皆出て行っておるぞ」
「それは反対だ! みな、職も住む場所も捨てるということになる。代々先祖たちが大切に残してくれた土地を我々で終わりにしてしまうのか?」
「じゃあどうしろというのじゃ!あいつらはいつでも凶暴になってしまった。多くの若者が昼に行くのが良しと言われ退治しに行き、やられたのはお主の左腕がよくわかっておるじゃろう?」
2階に近くなるにつれ、様々な声が聞こえてくる。
その声に宿った思いは、その者の本心なのか。時々、自分に言い聞かせているようにも聞こえる。
「しーっ。ちょっと様子見てから入ろうか〜」
会議室と思われし部屋の扉は開いたまま。中の様子を伺うのにはちょうどいい。
それに、こういう事を最も得意としたやつがここにはいる。
「オリガ、お前から見てあいつらはどんな感じだ?」
反乱軍の中の諜報活動を主な活動にしている諜報部。手に入れた情報は部長、ディエナだけにしかし伝えてはならないというルールがあり、詳しい事はよくわからないが成し遂げた任務、功績は軍内ではトップクラスのものだった。そこの2番手がオリガなのだ。
「そうだね… 結構焦ってる。特にあのじーさん、焦りゆえに苛立ってて寿命減ってそう」
顔や態度、声のトーンで基本わかってしまうところがすごい。
寿命が減っているかどうかはおいといて。
「なるほど、ルガイアの被害で話し合ってんだ。……こういうの久しぶりだから、体なまって全盛期みたいにできないな〜」
ルガイアの被害について話しているとはどこでわかったのだろう。
配られた紙面は皆手に持っていて裏側で見えない。見るなら一瞬だろう。それに会話中も『あいつ』で統一されておりわからないはずだ。
諜報部の2番手の実力は、計り知れないものだった。
──いつ見られているかわからない。今後は俺も気をつけよう。
「ルガイアの被害について話してるのは当たり」
「基本情報手に入れるのは朝飯前だから」
「ゲハ爺も落ち着いてきた事だし、そろそろ入ろうか」
「失礼します。ソグア村長、来客をここに呼びました」
「なにか文章がおかしいが、アミュ、入れて良いぞ」
「サンキュ〜 おじいちゃん」
「最後までちゃんとしなさい!」
てへっという顔でこちらを見てくる。それは『OK』の合図だった。
「失礼します」
案内された通り、横一列に並ぶ。
ゲハ爺と呼ばれた者が鋭い目つきでこちらを見る。
「こやつら、本当に大丈夫じゃろな…?」
事前に俺達の事を調べてはいないようだった。
幸か不幸かはさておき、まず名を名乗ろう。
そして、いつも通り名を名乗った。
「ほぉ、ハイウィンドにティークの名を持つものか。ハイウィンドの者よ、風魔法は使えんのじゃ?」
「髪色からわかるように、使えません。氷が私の属性です」
「父よりも母の血が濃いという事じゃな。ほれティークの者、遠距離攻撃は得意じゃろな?」
「まぁ得意だ。でも、アタシの武器はタロットカード。近いも遠いも同じものさ」
「ふん、名前が偉大なだけで本人の能力はそこそこなのじゃな。期待はせんぞ」
自分達は生まれる時代、場所を決める事はできない。それは運命が決める事だから。
名前だって同じだ。なのにゲハ爺は『その名前だからこそ』という自分の信念だけに囚われている。
世の中の評価とは、そのようにしてつく事を今、この時改めて思う。
「なんだと、お」
「やめよう、そんな事言ったて逆らえないからさ」
「…認めねぇ」
ジュリィを止めたシドの言葉が、今の俺達を表していた。
世の中で、あるいは世界でついてしまった基準、評価にはこんなちっぽけな俺達では逆らい、抗うこともできない。わかっている。わかっていた。そんなこと、わかっていた。
でも認めたくない。親とか名前とか血筋なんて関係なく、1人の人が、自分という人格がここにはいる。その事が偉大さや強さで消えてしまうのは嫌だ。
「ゲハ殿、そこらへんにしておきなさい。彼達は1人の人間としてここに立っているのだ。それに聞いた話だと、この者達は昔から孤児だったという。親の顔など覚えている者の方が少ないだろう。紙面でしか自分の事をしれないこの者達にそう申すか? ゲハ殿よ」
「……すまなかったのう。少し、熱くなりおってしまった」
「大丈夫です。私達は自分達の事を知らなすぎただけですから」
フレイヤがゲハ爺を励ます。こういうところのフォローは上手だ。
「さておき、本題へ入るぞ」
俺達に託された村の未来が、今、近付こうとしはじめた。
- Re: Change the world ( No.104 )
- 日時: 2018/06/27 22:38
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
53話 幽霊屋敷へ
「リベロ殿が言っていた『各地を旅する6人』とはこの者達であっておる」
「ソグア村長、そう言える根拠はなんでしょうか?」
左腕を負傷している男性が村長へ問う。
それは俺達も疑問に感じている事だ。なぜ初対面のはずなのに確信できるのだろうか。
「緑国襲撃事件の翌日の新聞を読んだかね?」
「あの日の新聞…… あっ!」
「『竜王バハムート 正気に』と中に見出しがあっただろう。そのページの中にこの者達が写っておる写真がある。それが根拠。あと1つ。1番はじにいる彼は、緑国王にして反乱軍の長だ」
「名を聞いた事があると思ったら…… そういうことでしたか」
フレイが緑の国の王、反乱軍の長という肩書きだけで信頼を得られるなんて思いもよらなかった。
「おじいちゃん、戻して」
「おっと、また話が逸れてしまうところだった。今度こそ本題へ移るぞ。話を聞いてて大体わかっておるかと思うが改めて話させてもらおう。頼む」
「わかりましたわ」
村長が頼んだ相手は、ゲハ爺の隣に座るお団子ヘアのお婆さんだった。
首に掛けていた老眼鏡をかけ、机に置いていた紙を持ち上げて読む。
「『ルガイアの農作物被害並びに村の経済』について話していましたわ。数ヶ月前、村の近くに巣を持っていたルガイアが何の前触れもなく竜牙村の畑を襲撃。その被害は出荷する野菜にも影響。対策をするも効果なし。ということから今後どうするかで話し合った第5回竜牙村当主会で『退治を依頼』と言う案が出ましたわ。だからあなた達を読んだのですわ」
息継ぎの無い早口。聞き取るのが地味に難しい。
「なるほど、僕達は『ルガイアの退治』をすればいいのですね。もちろん引き受けます」
「おぉ、ありがたい。頼んだぞ」
「行ってらっしゃ〜い」
『引き受ける』と言ったところからの会話は早かった。
アミュさんもソグア村長も心配などせず俺達に託してくれた。
きっと、あの新聞に載っている俺達の功績を知っているから信じてもらえるのだろう。
「では、行ってきます」
シドの返答をきに家を出る。
相変わらずの畑が広がる風景。茶色と緑が混ざる景色に飽きを感じない。田舎とは、そういうものだと実感する。
早速ルガイアの元へ、と行きたいところだが情報が1つも無い。さぁどうする。
「情報、何もねぇな」
「そうだな。右も左も分からないのと一緒だな。」
どの方角、どのようにしてなどという情報は雇い主の口から一切出てこなかった。
やはりここは、地味な聞き込み調査をするしか無いのか。
──と思ったところだった。
「情報を手に入れるための情報を手に入れたよ〜」
「情報を手に入れるための情報? 何じゃそりゃ?」
「『幽霊屋敷』の住人なら知ってるってあの子が言ってたよ。この道まっすぐだって」
フレイヤが指さした方向には森へと続くデシンル行道があった。
さらに森の向こう側に茶色い大きな屋根がわずかに見える。あれが幽霊屋敷だろう。
「とりあえず、行ってみよっか」
「そうするか」
幽霊屋敷。名の通り幽霊は出てくるのだろうか。
出てきたとすればジュリィが大変な事になる。なぜなら昔から『とてつもなく』がつくほどの幽霊が苦手なのだから。ハイランドのお化け屋敷で絶叫したらしいのだから、本物が現れたら気絶でもしてしまうのでは無いだろうか。その場合はシドに押し付けよう。きっと幽霊など平気なはずだから。
俺達は幽霊屋敷へと向かって行った。
道の途中で起きる出来事が、どれほど大変なものかを知らずに。
- Re: Change the world ( No.105 )
- 日時: 2018/07/02 19:20
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
お知らせ
再びテスト期間になりましたので更新遅れます。
- Re: Change the world ( No.106 )
- 日時: 2018/07/13 20:41
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
54話 遭遇
デシンル行道は昼なのにとても静かだった。
虫やモンスターの鳴き声は無く、風による木々のざわめきが少ない。
「嵐の前の静けさって感じだね〜 まるで森が私達を拒んでいるように感じる」
「そんなのんきに言ってられっかっての。ただ、こんな静かだとつまんないよな」
「誰か隠れてたりして……」
「そ、そんなこと言うな」
ジュリィの様子がやはり変だった。
歩いてはあたりを見回し、再び歩いく。その様子は盗人が逃げるようににている。
──幽霊の事を気にしているのだろう。
「どうした? ジュリィ」
「怖いんだ、ほら、あーいうの脅かすのとか得意にしてそうじゃん」
「幽霊なんていませんよ。だいたいポルターガイストなどの現象はモンスターのせいですから」
シドの言っていることは世の中の常識とも言えることだった。
誰もいないのに扉が開く、声が聞こえるなどの事は調査すると、どれも邪霊系のモンスターの悪戯であったと結果が公表されている。だから幽霊はいないとほとんどの人が思っている。
しかし公表されているのはモンスターが原因の物だけ。残りの2割ぐらいは公表されていない。
公表されていない理由は単純。モンスターの仕業だと言い切れるものでは無いという事。その事についてポルターガイストなどの調査をする幽霊等事案調査部、通称幽調(ゆうちょう)は幽霊の仕業だと言いたいらしいが部長のブチョーが『幽霊などいない』の一点張りのため公表できずにいると、雑誌のインタビューで明かしていた。しかしその雑誌が世界中で読まれているため、幽霊の仕業だと認識する人が出てジュリィのように怯えてしまう人が大勢いる。
「いや、あの幽調が社内のマル秘インタビューで明かしたんだ。信じられるだろ……?」
「幽霊など空想中の生物。魔法や生物学理論で証明できないものはこの世に存在しないはずです。ですから幽霊はいません!」
「なぜかシドが言うと説得力あるんだけど……」
ジュリィは下を向いて少々考える。そして何かを決意したのか顔を上げて話す。
「よし、決めた! 幽霊なんていない!信じてやるもんか」
「おぉ、ジュリィが〜」
「最後の一言、なんかひどく無いか?」
スッキリとした笑顔で鼻歌まじりで先に進むジュリィ。あそこまで機嫌のいいところはあまり見た事が無い。
「さて、幽霊屋敷に行こうか」
「キャウ!」
シドが再び出発の声をあげた時、オリガの肩にベッタリとくっついていたフーが華麗にジャンプをして地上へ降り、鳴いた。
「どーしたの、フー?」
「ワゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ」
フーが喉を鳴らす。それは何かに警戒している時、あるいは威嚇をしている時によくする行動だ。
ただ、威嚇をする相手などいない。考えられるのは何かを警戒しているという事。
ガサガサと大きな物が森を走る音が聞こえた。
「ジュリィ、避けろ!」
「──っ」
フレイが叫んだ時、鳥の翼のような物がジュリィ目掛けて攻撃する。が、ジュリィの方が早くに気づき咄嗟に避ける。
「なにっ!?」
「あ、なんとなくわかったかも!」
「え、なにが!?」
1人のんきにフレイヤが手を叩く。
「この森が静かだった理由は、きっとこの子。だって……」
フレイヤが指さした先に、大きな鳥のようなモンスターが姿を現した。
そのモンスターは、翼を大きく広げ、奇声を上げ俺達を威嚇している。フーはそれに驚いたのか、「くぅ〜ん」と鼻を鳴らして元の場所へと戻った。
「負けちゃったの?」
「ワゥ」
どうやら体の大きさで負けてしまったらしい。
「ガルダヌスってこんなに大きかったか?」
「それは食べれるやつの方だ。こいつは品種が違う。いわゆる亜種ってやつの野生だ」
「さすが一応料理人──っ」
ガルダヌスと聞いて誰もが思い浮かぶのは、よく食用として出回っているガルダヌスだろう。
普通の鳥サイズで、焼き鳥にしても美味しい。だが、今目の前にいるのはよく知られていないガルダヌス亜種というモンスターだ。図鑑ではこちらがガルダヌスと言われ、小さい方が亜種とされているが実際は逆。しかし間違っている方で世の中に通っているため今さら直せない。
「縄張りに侵入してしまったという事ですね」
「もしかしてだけど、今回の依頼とそれ、関係ありそう」
「なんで〜?」
「さっきからここら辺観察していたんだけど、あれ」
行道と森を分けるために左右に植えられた低木。そこにはみんな大好き山ベリーがなっていた。
今の所見てきた感じだと、竜牙村の周りでルガイアが食べる物は目の前にある山ベリーぐらいしかない。
でも、低木の山ベリーが食べられた形跡が無い。たくさん実がなっている。それはルガイアがここへ来ないで別のものを食べているということになる。ガルダヌスの習性を考えると『来ないで』というよりは『来れない』と言う方が正しいかもしれない。
「確か、ガルダヌスって自分の『縄張りに入った者は誰であっても容赦しない』って言うよな」
「そう。山ベリーの形跡とかから推測できるのは『ガルダヌスが何らかの理由で縄張りを広げ、その縄張り内にルガイアの唯一の食料があったけど入れなくて竜牙村に来て食い荒らしてる』ってこと。きゃっ!」
肌をも切りそうなぐらいの強風が吹いた。ガルダヌスが攻撃してきたのだ。
──きっと、待ちきれなかったのだろう。
「あっちは力ずくでアタシらを追い出したいみてぇだな」
ジュリィがタロットカードを左手で構える。その手から見える絵柄は月と塔と力。
3枚のうち1枚を右手で勢いよく取り、ガルダヌスへと絵を見せる。
「月のカードっ! 不安をあげる」
ガルダヌスは俺達とは違う方向に攻撃する。何か別のもの目掛けて翼で攻撃しているように思える。
「敵に当たってるのに実感がな〜い。ほら、不安になる。アタシからのプレゼントは、幻想だよ」
ジュリィが薄い笑みを浮かべてガルダヌスに話しかける。その様子は、
「フレイヤと生き物に対する対応が似ているな」
「ん?何にか言った〜?」
「なんでもない!」
いつものんきに悠々としてなにも聞いていなさそうなフレイヤだが、自分の話題となると、急に反応する。特に悪そうな話題では。人はこれを地獄耳というのではないだろうか。
「攻撃するなら、今のうちだ」
「了解! えい!」
オリガが瞬時に魔法を詠唱し、ガルダヌスの足場あたりを凍らせる。未だに幻想を見ているガルダヌス。幻の敵目掛けて攻撃した時、足を滑らせて胴体を地面に打つ。体が巨体のため、かなりのダメージだろう。
「ちっ、効果が切れちまった」
「大丈夫、混乱しているから」
混乱している隙を突いて、一斉に攻撃する。
「レオン、今だッ!」
「ああ、剣舞技 氷鬼!」
剣に氷を宿らせ一気にガルダヌスを斬り裂く。その様子が鬼のように見えるから氷鬼と名付けられたのだろう。
「これで終わりだ」
最後の一撃に魔力をありったけ込める。剣に宿った氷が大きくなり、大剣を振り回すように斬りかかる。
手応えはあった。
「グォォォォ」
「やったか!?」
「きっと、な。手応えはあったぞ」
ありったけの魔力を使ったせいか、フラついて地面にしゃがんでしまった。
「大丈夫?」
一番に寄ってきたのはオリガだった。魔力回復薬をくれた。
「無茶しすぎだよ……」
「いけるって思ったからな」
回復薬の中の液体を一気に飲み干す。味は薬にしては珍しいソーダ。
体に力が戻ってくる。『良薬は口に苦し』ということ言葉が似合わないように思える。
「ホント?」
「まぁな」
「ふーん」
オリガは気づいているのだろうか。俺がありったけの魔力を使った理由に。
いけると思ったとは言っているが、本心は、カッコつけたかっただけ。
ベストタイミングでトドメを任されると、やはりカッコつけたい。それに、好きな人の前だから。
俺は、そういう年頃なのだ。自分で言うのは恥ずかしいが。
「何か聞こえた?」
フレイヤがあたりを見渡す。ガルダヌスは傷を負い倒れて動いていない。周りも何もない。
「何もないよ、さぁ、行こうか」
「フレイヤってば耳腐って、ぐほぉ」
フレイヤのストレートパンチがフレイの腹に直撃する。
懐かしい光景を久しぶりに見た。
「なんて言った?」
「なんでもありません……」
妹に負けるフレイ。そこで手を出さないのは彼なりの優しさなのだろうか。それとも勝てない事を知っているためだろうか。真相はわからない。
「今度こそ行くよ…」
倒れたガルダヌスを避け道を進む。放っておいても光となって消えるか、この地を離れるだろう。
だいたい依頼の元凶は倒したため一件落着と思われるが、実際はどうなのかわからないため幽霊屋敷へ向かう。
──その時だった。
倒れるほどの強風が俺達を襲った。
「いてて…… 不意打ち食らっちゃった」
「そんなのんきに入っている場合かよ! 強風で今すぐ立てないのによぉ……」
台風以上の強風。それを放てるのは……
「ガルダヌス、まだ動けたか……」
先ほど倒したガルダヌスのみ。
今俺達は立ち上がれない。なのにガルダヌスは先ほどよりも力を増し、襲ってこようとしている。
この危機的状況を表すなら、バハムートを目の前にしたフー、だろう。絶体絶命だ。
「グァァァォォォゥ」
ガルダヌスの鋭い爪を持った翼が俺達を攻撃しようとしている。
諦めて目をつぶった。
──しかし、強風が一瞬で止み、ガルダヌスの悲鳴が聞こえた。
恐る恐る目を開けると、ガルダヌスの背に刀が刺さっていた。
「この技、もしかして……」
シドがぼそっとつぶやく。すると刀を取る人影が現れた。
「久しいな、シド・メロよ」
そこに現れたのは、帝国の上官が着る軍服に少し丈の短いスカートを履いた女が立っていた。
「名乗らなくてもわかるだろう」
「もちろん、ラーミナ特殊部隊リーダー、ディール・ルカヴァジーチェル」
ラーミナ特殊部隊。それは、大昔の話にある国の特殊部隊を真似て作った帝国の最強部隊。その強さは戦場にて大いに発揮されると言われ、敵にしたくない相手ナンバーワンだ。
「お前と会うのは、ジンのあの命令が出て以来だな。お前にもあの命令が出ていたが……」
ディールと呼ばれた女は俺達の一つ二つ上の年齢であろう。外見からすれば。
ディールは刀を光らせる。その瞬間、俺達は唾を飲む。命の危機が迫っているように感じたためだ。
「今回は私の命令無視と独断でここにいる。リーダーとして許されない行為だが、私自身の思いがあってここにいる」
刀を光らせたかと思うと、鞘にしまった。それは敵意がない事を示している。
ガルダヌスが光となって消えると同時にこちらへ近寄ってきた。
「だから敵意はない。詳しい話は後だ。あの屋敷へ行くぞ」
「元からその予定だったんだけど……」
ディールを加え、幽霊屋敷へ再び歩き出した。
その時俺は思い出した。ディールは俺がシドに出会うきっかけとなった傷を、負わせた人物だったことを。
- Re: Change the world ( No.107 )
- 日時: 2018/07/13 20:43
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
55話 ディールの目的
「すみませーん、誰かいますか?」
幽霊屋敷の鍵のしまった門を叩く。鉄格子の音が大きいため、声が聞こえなくても来客が来たことぐらいはわかると思うのだが返事がない。
「やはりここは……」
待ちきれない、と言わんばかりにディールが右手で刀の柄を掴む。
それに気づいたシドは急いで止めようとする。
「待って、待って! ここは人様の家ですよ」
「……そうだったな」
その時、がちゃりという鍵の開いた音がした。
誰かが中から開けたと思われるが、そこには俺達以外誰もいない。
「ひぃっ!」
「大丈夫だよ…… ってえぇ!?」
石畳の道の先にある幽霊屋敷の入り口の大きな扉まで開いている。
風で開いたとは思えない。
「す、進もうぜ」
中に全員が入ると、扉は自動で閉まった。
「この屋敷には、最新の技術が取り込まれているのだな」
「いや、違うと思うけど……」
ディールは意外にも天然な人なのかもしれない。地位や外見、その剣捌きからは想像できないが。
「とりあえず、この屋敷の客間へと案内してもらうか。屋敷の者! 私達を案内してくれ」
返事も音もしない。本当にこの屋敷には人はいるのだろうか不安になってくる。
「留守なのだな、では、勝手に使わせてもらうぞ」
「良く言えば天然マイペース、悪く言えば自分勝手というところは変わりなさそうですね」
シドの声はディールには聞こえていなかった。
床が大理石でできているエントランスを抜け、右へと続く薄暗い廊下へ進む。
暗い色の木材で作られ、赤いカーペットが敷かれているこの廊下は一定の距離で置かれた蝋燭の灯のみでどこに何があるのかがわかる。そのような雰囲気は幻獣界の城と同じだった。
キィキィと古い木材が踏まれたような音がした。
「誰かいるのか!?」
振り向くが誰もいない。元通り前を向くと
「嘘だろ…!? 扉が開いてやがる」
先程まで閉じていた扉が、まるで俺達を誘っているかのように開いている。
「やっぱり……」
「幽霊などいませんよ」
ジュリィの言いたい事を察したかのようにシドが答える。
でも、ここまでポルターガイストのような事が立て続けで起こると本当にいるのではないかと思ってしまう。
「屋敷が入れと言っているのか。ならば入るのみ」
部屋の中に入ると、入り口と同じように扉が閉まった。
しかし
「開かない……」
「罠だったのか?」
鍵を閉められてしまった。
「嘘… もうイヤ…」
ジュリィが脱出を諦めたかのように部屋に置いてあったソファへ座る。
「何もかもが終わったわけではないさ。別の方法を探せばいい」
「やっぱレオンは励まし上手だな……」
励ましたつもりはない。ただ自分の考えを言っただけだ。
「座って話でもしよう。そこから考えればいい」
「そうですね」
部屋の中央にある四角形の机。それに合わせて置かれた椅子に座った。
「どこから話せばいいか……」
「どこからも何も、オレ達に会いにきた理由を話すんじゃ……」
「あ、そうだったな」
ディールが胸ポケットから一冊の本を取り出した。その本は薄く、赤いカバーに表紙に帝国の徽章が描かれている。あれは、帝国軍人手帳だ。ジンが持っているのを見たことがある。
「元仲間がいるため疑ってはいないだろうが、私はこういうものだ」
その手帳から取り出したのは証明書。バイクや電車などの運転免許証のようなものだった。
「元仲間って言ってくれるんですね」
「ああ。共に戦場を駆け巡り、任務をしたからな。あの頃は私も楽しかった。その生活を送れた仲間を裏切り者と言うほど私は冷酷ではない」
シドは少し安心する。ディールがシドを、裏切り者としてではなく元仲間として接してくれていることに。
──この人の場合、裏切り者として接するならすぐ斬っているだろう。
「さて、会いに来た理由を話すぞ。まずはラーミナ特殊部隊の話からだ。知っていると思うが、我らラーミナ特殊部隊は部隊で動けば世界最強と言われている。しかし、それは昔の事だ」
「昔の事?」
フレイヤの問いかけにディールが頷く。
確かにここ最近、ラーミナ特殊部隊の話を聞いていない。聞いたとしても過去の偉業についてぐらいだ。
「なぜなら今は、僕達3人が抜けて全員揃っていないから」
シドが静かに話す。僕達3人、それはジンとシドと後もう1人の女性──スピカを指す。
前にジンから特殊部隊を抜けた理由を聞いたことがある。だが、答えてくれなかった。
「それもあるが、残った我ら──私とリガンとイサチは自分の大切な物を対価にして、パナソから力をもらった。 それは部隊で動かなくても1人で国半分を破壊できる力だ」
「国半分を破壊できる力……」
イサチとは会ったことしかないが、リガンとは一度戦ったことがある。炎を素手の両手に宿し、剣と対等に戦えるあの力は今でも覚えている。ただ、あの時は手加減していたという事がディールの話から伺えた。
「巨大な力を手に入れた我らは、その日を境に部隊で動くことはなくなった。なぜなら1人で十分任務を遂行できたからだ。それが世界最強と言われなくなった理由だ」
「みんな…… 変わってしまったのですね」
「ああ。あの頃とずっと変わらないのは、もうお前だけだ」
「寂しい…… ものです」
ジンと後1人の女性はもうこの世にはいない。残ったディール、リガン、イサチは巨大な力を手に入れてしまった。記憶にあるあの頃にはもう戻れない。だからシドは寂しいのだろう。
「でも、残ったやつらは巨大な力を手に入れただけだろう? それなら変わらないやつは変わらないと思うんだけど」
ジュリィが問う。『変わらないやつは変わらない』それは小さい頃の俺達を知っているまま、今の俺達に会えたから分かることだろう。様々な経験や知識、力を手に入れ俺達は再会した。それでも変わらないやつは変わらなかった。特にフレイは。
「先ほど『自分の大切な物を対価にして』と言っただろう。それが嫌なものでな。巨大な力を使うたびに、どんどん消されていくんだ。消える量と力の量と比例しているため、私はあまり使わないのだが」
さすがパナソ。ちゃんと考えてはいるようだ。
「みんなはなにを対価にしたのです?」
「リガンは感情、イサチは記憶。そして私は魔力を対価にした」
感情も記憶も魔力も、人間には必要なものだ。感情は人と接するのに、記憶は自分の生きた証を証明するために、魔力は生活をするために、誰かを守るために。どれも大切なものである。
「どうしてみんなはそれを選んだのでしょうか……」
「リガンとイサチは過去が関係している。まず入った時の事から話す」
「了解でーす」
「イサチを人質にされて入ったんだ。無理やり入った、と言った方が正しいな」
その考えはなかった。なぜなら火山で出会った時は、イサチと楽しそうに任務を遂行していたのだから。
それと感情はどういう関係なのだろうか。
「リガンは生まれつきフラムマディと呼ばれる特殊な炎が使えたんだ」
フラムマディ──神の炎。
古い文献で読んだことがある。世の中には属性を司る神の力を持って生まれるものがいると。
「スモールランドという国を知っているか?」
「もちろんだ。オレとフレイヤの本当の故郷だからな」
「リガンとイサチはスモールランドが滅ぼされた時、10歳だった。それにリガンはフラムマディを持っていた。スモールランドが滅ぼされた理由…… わかるだろう」
スモールランド。フレイとフレイヤの故郷。帝国に跡形もなく滅ぼされた小さな国。
まさかリガンとイサチはそこの出身だとは思わなかった。
10歳…… 軍に入れるのは15歳。そしてフラムマディなど神の力を完全に操れるようになるには5年かかる。
──そういうことか!
「その年にリガンを手に入れて育て、完全なフラムマディを手に入れるためにスモールランドを滅ぼしたんだな」
「詳しく言うと、リガンを確実に帝国へ来させるために故郷のスモールランドを滅ぼしたんだ。故郷が消えれば行くあてがなくなり、誘えば生きるためだと思ってこちら側に来るだろうとでも思ったのだろう」
「ま、言わねーけど、もう一つ滅ぼされた理由があるぜ」
「そうか」
「反応、薄っす」
もう一つの理由。それはパナソの計画であり、俺達が1人残されて生かされた本当の理由でもあった。
しかしここで話すと少し厄介になる。それを察してフレイは控えたのだろう。
「無理やり入った話の続きだ。そこで帝国は計画通りリガンに助け舟をだした。『帝国の一員となればその醜い炎を操れるようになり、生活も安定する』とな」
「『醜い炎』? せっかくの力なのに〜?」
「リガンは、フラムマディを完全に操れていなかったため危険視されていたんだ。だから、同年代の子供達の輪に入れなくて寂しかったらしい」
生まれつき持った神の力。操れれば称賛の声が上がるが、操れなければ危険視されて批評の嵐。だからこそリガンにとって醜い力だったのだろう。それに、いつ自分の身が滅ぶか怖かったのだろう。
「それなら、帝国の一員となった方が将来有望じゃないのか?」
「故郷を、家族を滅ぼしたんだやつの仲間には誰もなりたくないでしょ……」
「確かに。」
「それで?」
「その頃、イサチに出会った。イサチの父親は酒好きだが酒癖が悪く、飲んでいる時に酒がなくなると母に暴力を振るっていたらしい。それでいつの間にか母はいなくなり、暴力の矛先はイサチへと向けられたらしい。リガンによると出会った頃のイサチは、顔以外痣だらけだったらしい」
顔以外痣だらけ。それは見ていても痛々しいだろう。回復魔法を極めれば、痣はなくなる。きっとあの綺麗な肌になったのは回復魔法を極めたからだろう。攻撃もしてこなかった理由はそれだろう。
ただ残るのは、心の傷だけ。
「顔は、父が愛した美しい1人の女性──母親に似ていたから殴れなかったらしいと本人が言っていた。それで、だ。当時痣だらけだったイサチも子供達の輪に入るどころか、冷たい目で見られていたらしい。ある日、2人は出会って、リガンとイサチは似た境遇だったためか仲良くなった。誰よりも。」
「なるほど。それを帝国が知ったからイサチが人質に取られちゃったんだね」
「帝国にいてもあの2人はずっと一緒でした。特殊部隊に配属された時も」
「我らは上から下された任務はどんなものでも絶対なんだ。もし拒否をすれば…… リガンの場合はイサチへと罰が向けられる。でもリガンは優しいから、国を滅ぼしたりなどはできない。そこでリガンは感情さえ無ければ任務を遂行でき、イサチを守れると思ったから対価として感情を選んだんだ」
「全ては友のために。って感じだな」
「そしてイサチは子供の頃あったことがトラウマだったため記憶を選んだ。記憶を選ぶということは、子供の頃だけではなく今までの全てが徐々に消えていくということになる。しかしイサチは『記憶はなくても心が覚えている』から大丈夫と言っていた。それが2人の選んだ理由だ」
リガンは友を守るため、イサチは過去を捨て未来を生きるためにそれを対価として力を得た。
ならばディールはどうして魔力を対価としたのだろうか。2人は違う自分の力を捨てる決断をしたのだろうか。
「ディールはどうしてそれを選んだんですか?」
「ほう、私の事も問うか」
腰のあたりまである鶯色のストレートの髪を耳元に掛け、ディールは話を続けた。
「魔力を使う魔法は、人の痛みを知らずに戦える。『人の痛みを知りなさい』という父の教えもあってか、私には魔力は必要ない。もし故郷に戻っても、魔力は必要ないしな……」
魔力──魔法を生活で使わない地域など、この世界にあっただろうか。
魔力はすべての人々が使える。そのためかライフラインの他に魔力を使う魔法は生活をも支えている。
「故郷…… ディールの故郷はどこなんです?」
「私の故郷はこの世界じゃない」
「!?」
「古世界、倭の国出身だ。この刀もそこのものだ。この世界にはないぞ」
古世界。それは大昔に分けられたもう1つの世界。
まさか異世界人がここにいるとは。
「よく驚かれるが、私以外も結構いるぞ。逆もある。まぁ、普通の人は行けないが」
「なぜディールは来れたのです?」
「幻獣界とここを繋ぐ扉があるように、古世界と新世界を繋ぐ扉があるんだ。幼い頃の好奇心で触ってしまったらこのザマだ」
以外にも簡単な話だった。
「で、話を元に戻すけど、オレ達に会いに来た理由ってなんなんだ?」
「話は単純。私達は巨大な力を手に入れた。もう、普通の人間ではない。それにもう長くはない。最近知ったのだが、大切な物以外にも命が対価として削られているらしい。だから次会うときは最後の戦いになるだろう」
「──」
シドが顔を上げる。ディールは今まで見せたことのなかった笑みを浮かべ「そのときは」とシドを見つめて言った。
「私達のことを頼む。裏切り者でも、敵でもなく──仲間として、友として」
少しの間沈黙が訪れる。ディールは自らの身を滅ぼすのを仲間であり、友であるシドに頼んだ。
「僕でいいんでしょうか? そんなこと、僕にできるのでしょうか?」
「気にするな。もし戦う時、私達はお前を敵としか認識してないかもしれない。正気ではないかもしれない。私達はお前を思い出せないかもしれない。だがイサチが言ったように『記憶がなくても心が覚えている』だろう。心の中に眠る思い出を刃として、力として私達に貫け。──それでいいんだ」
最後のディールの一言が、ディール自身に言い聞かせているようにも聞こえた。ディールは本当にそう思っているのか。自分が消えるということを恐れてはいないのだろうか。
シドの答えは
「やります。やってみせます。この世に生き残るものとして」
「その答えを待っていた。頼んだぞ」
ディールはシドの答えを聞き終えると、刀を取り出し目に見えぬ早さで扉を斬り裂いた。
「次会う時は、強くなっていることを期待しているぞ」
そう言ってディールは去っていった。
「脱出、成功?」
「つまらないな〜」
「だ、誰!?」
聞いたことのない声が聞こえた。ふと、ディールが出て行った扉の方を見ると……
両手にパペット人形をつけ、片目が髪で隠れたタキシード姿の男の子が立っていた。
その男の子の足元は少し透けているように見えた。
「でぇぇぇぇぇぇたぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ジュリィの悲鳴が部屋に響く。
「あれ〜 インパクトだいぃ〜?」
「こ、こないでこないでこないでこないでぇぇぇぇぇぇ」
ガクッと力が抜けたかのようにジュリィが気絶する。
「あぁもう、ジュリィったら!」
「あんたは、誰だ?」
タキシード姿の男の子は答えた。
「僕はルドだよ〜 見て大体わかるように、もう死んじゃっているんだ〜」
のんきに、自分はこの世の者ではない、と。
- Re: Change the world ( No.108 )
- 日時: 2018/07/07 07:56
- 名前: シャドー ◆PuIGSTlbSo (ID: 5Hbj4fpw)
あ、すっかり書き忘れてましたが体格と精神年齢は5歳でお願いします
- Re: Change the world ( No.109 )
- 日時: 2018/07/07 18:42
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
シャドーさん
あ、了解です。
男性ではなく、男の子に直しておきます。
- Re: Change the world ( No.110 )
- 日時: 2018/07/26 21:52
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
55.5話 帰るべき場所
帝国に戻ったディールは、城の長い洋風の廊下を歩いていた。
この長く親しんだ廊下とも、あと少しで別れを告げなくてはいけないのだろう。
なんだか、寂しい。
「どこ行ってたの?」
優しく暖かな声──イサチだった。
「ここでは言えない。『いつもの場所』へ行こうか」
「……気になるなぁ。ま、いっか」
イサチはリガンとは一緒ではないようだ。
基本イサチは回復専門のため、誰かと共に任務をこなすことが多い。
ならば、今日はオフの日という事になる。
──命令無視と言ったが、私も今日はオフの日だった。
城の西の棟。軍事関係の部署が固まる西の棟の片隅に『いつもの場所』はある。
そこでは作戦会議や休憩など色々な事をしていた。
「ここもすっかり寂しくなっちゃったね」
昔はここで悪ふざけをよくしたものだ。騒がしいと先輩から言われたこともある。リガンとジンが原因なのだが、連帯責任ということでまきぞいをくらうこともあった。
「出会いは別れへの始まり、とよく言う。だがあの別れ方は良くなかったな」
「引き止めていたりしてれば、きっとジンは生きていたんだろうね」
「スピカもな……」
彼ら2人は、帝国をそれぞれの思いで抜けた。ジンは帝国の外れてしまった道を外から正しく戻すため、スピカは深くは語ってはくれなかったが『私の使命を果たす』と言っていた。
──ふと、抜けた次の日の記憶が蘇る。
彼らは殉職と帝国内の連絡でされているが、その連絡が来たのは彼らが抜けて夜が明けた時。つまり、任務で命を失ったことを意味する殉職は嘘となる。このことから私は、『帝国は彼らを消す準備をしている』のだろうと予想した。
その予想は残念なことに当たってしまった。更に翌日、私とシドの元に彼ら2人を消す命令が下った。
拒否権は無かった。なぜ、私達なのかと軍令部長に問うとリガンとイサチを加えると感情が邪魔をして任務に支障が出るとのことだった。
感情を押し潰し、シドはスピカを、私はジンを探した。というのは報告書の内容。実は私達には作戦があった。
実際、彼らは大切な仲間だ。だから、ターゲットと出会った時にわざと見逃すという作戦をたてた。
しかし私は、ジンと戦う事になってしまった。私達が見逃すことを上は考えていたらしく、見張りがいたのだった。
そして、ジンの後輩──レオンに致命傷を与えてしまった。更に私も重傷を負った。
その判断は正しかったのだろうか? 今もわからない。
「でも、スピカは生きているかもしれない」
重傷を負い、治療を受けて容体が安定した1週間後。
私は、『いつもの場所』へ行った。すると、シドの可愛がっていた軍令フーが1枚の手紙を持っていた。
リガンとイサチが来てからその手紙を読んだ。ここにいる者でしか見られないようにして。
手紙の差出人はシドだった。内容は、彼らと同じく帝国を抜けるということと作戦は成功したということだった。
シドの今までの功績からして、上から絶大な信頼を得ていた。だから私のように見張りに来た上官は、仕事をせずにどこかへ行ってしまったという。そして、スピカを見逃したあと自らも行方をくらました。
「シドはやっぱり、飛空挺技師としても特殊部隊の一員としてもすごかったな〜 まさか、あんな理由であんな風に抜けるとは思わなかったけど」
シドが抜けた理由。それは、戦いで使うためだけの飛空挺をこれ以上作りたくはないということと、仲間を傷つける仕事はしたくないというものだった。そこからはシドの優しさが伝わってきた。
「今考えれば、抜けた彼らは自分の意志を貫くために抜けたのだな」
「……私だってそうしたかったよ。でも、ね」
ここに残る私達はそれぞれ抜けられない理由があった。
先ほど、レオン達に話したものだ。
「さて本題へ戻るか。私はシドの元へ行ってきた」
「……言ってくれたんだ。私達の思い」
「残りは少ないからな。彼らも、真実へと近づいている」
彼らの今までの言動からして、パナソの目的、自分が孤児となった理由、幻獣の思い、世界についてわかっていた。ただ一つ、わかっていないのは神の本当の目的。
神……創造神は『神を超えるもの』を作って何をしたいのだろうか?
未だ世界にホウフハの一族によって試練を与え続けているという。もしかして、皇帝の目的は、扉を開いて力を手に入れるのではなく、帝国が世界と戦うことで……
「なんだ!?」
目の前が真っ暗になった。まるで、よく聞く狭間の世界のように。
「わかっちゃったみたいだね」
「!?」
声のする方へ振り向く。するとそこに立っていたのは
「スピカ…… なのか?」
「そうだよ。タイチョーがいいところまで行ったから出てきちゃった、テヘ」
少し照れている金髪のスピカだった。
いいところとは、なんなのだろう。
「いいところと言うのは?」
「創造神のやってる事。まぁ、パナソがやっている事だけどね」
「やはり、帝国が世界と戦っているのは……」
「そう。それは世界への試練。『神を超えるもの』を育て、見つけるためのね」
「そうか。ならばこの世界から出るにはどうすればいい?」
「私、衝撃的な事言ったよね!? そこスルーなの!?」
目の前で騒がれても困る。衝撃的だったが私にとって時間のほうが大切だ。
「そんなに聞かれたいのか。ならば、なぜそれを知っている?」
「うーん、どこから話せばいいか……」
「ならばいい。では──」
「あぁもう! ちゃっちゃと話します! 私の目は、創造神の目だからなの!」
「つまり、スピカが見ているものは創造神も見えているという事か」
「よくわかったねー まぁ、簡単に言うと創造神が乗り移っているってこと。創造神がタイチョーの前に現れたいって思ったから私がここに現れたの」
創造神が私の前に? 明日どうなってしまうのだろう。
「で、現れた要件は── ん?」
瞬きにも似た短い間、スピカと瓜二つの女性が見えた。
違いは蒼いドレスだけ。顔つき、目の色、髪型、身長は全く同じように見えた。
「大丈夫?」
「あ、あぁ。大丈夫だ」
「で、現れた要件は『扉の守護者』にならないかってこと。なるには、命を失うしかないけどね」
『扉の守護者』。その扉とは、どの扉だろうか。
民家の扉か、城門か。まさか、扉職人になれとか言わないだろうか。
「あ、扉って狭間の世界への扉。つまり世界と世界をつなぐゲートの事だよ?どの道、扉は開かれる運命だけど今はダメ。しかも扉は認められたものしか開けてはならない。『扉の守護者』の役目はその名の通り扉を守ることと、開けようとする者、その先へと向かおうとしている者の実力を確かめること。どう?」
「少し考えさせてくれ」
期待は裏切られたが、やりがいはある仕事だろう。
さきほど命を失えばなれると言っていたが、もうじき失うため問題ない。
神が私を扉までこれた実力を確かめる者にしたいと言っているのだから、強者を相手にできるかもしれない。でも──
「私は遠慮しとく。この命、失った後はどこへ行き着くのか、そもそもどこかで存在できるのかわからない。だが、私は少し休みたい。今までを振り返る時間が欲しいのだ。というか、管理人はいなくていいのか?」
「管理人はもういるよ。ジン君の後輩の緑髪の子。あの子、自分の命がもたないってこと知っていたみたい。最後まで仲間にも他人にも隠していたみたいだけど。誰よりも早くに真実に気づいたみたいだからこんな感じで誘おうって思ってら、あの子から出てきてくれたの。『命尽きても、役に立ちたい。仲間も、世界も大好きだから』ってね。で、ダンチョーはいいのね」
深く頷く。この短い19年間の人生。いろいろなことがあった。
だから、いいんだ。
「じゃあ、次会うときはいつになるかわからないけれど約束しよう。再会の約束を」
「もちろんだ。出会うなら『いつもの場所』でな」
スピカがこれまでにない笑顔で頷き返す。
いつだって、私達の帰るべき場所はあの場所だ。
ずっと忘れない。
「大丈夫?」
「──ん? あ、大丈夫だ」
気がつけば元の場所に戻っていた。
イサチが心配そうに見つめてくる。
「イサチ、あとでリガンに言っておいてくれ」
「きゅ、急になに?」
「帰るべき場所はいつだって『いつもの場所』だとな」
「う、うん」
イサチは私が本当に言いたいことがなんだったのかわからずにどこかへ向かった。
今はわからなくたっていい。でも、覚えていて欲しい。
この『いつもの場所』こそが思い出の現れであり、たどり着く帰るべき場所だということ。そして、こここそが──
「私達が存在した証拠。生きた証だからな」
夕陽が窓から差し込む部屋でただ1人、ディールは呟いた。
- Re: Change the world ( No.111 )
- 日時: 2018/07/24 09:23
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
56話 あっさりとした別れクル
「で、君達は何をしに来たの〜?」
「ルガイアが竜牙村を荒らしているの。その原因はこの屋敷の人なら知っているって聞いたから来たんだけど…」
こういう年齢の子の相手にはフレイヤがちょうどいい。
「そうなんだ〜 それは悪型になったガルダヌスが原因だよ〜 だってお母さんと子供に逃げられてガォ〜ってなっているみたいだから」
「なんか現実的っ!?」
何が原因で夜逃げされたのかは知らないが、気が荒くなっており、縄張り意識がいつもより高くなっていたのだろう。基本、あのようなモンスターは縄張り内に別のモンスターが入ってきても自分より弱く、敵意さえなければ襲いはしないはずだから。
「さっきのガルダヌス、もしかして……」
「ここに来る前にいたの? この森にいるのは一匹だけだから、倒したり、追っ払ったりしたらもう大丈夫なはずだよ〜」
「一件落着、なんだな」
ルドは頷く。これで竜牙村も大丈夫だろう。
「あ!」
「どうしたの?」
「ルガイアが戻ってきているよ〜 僕、仲良しだからすぐわかるんだ〜」
窓の方を見ると、山ベリーをたくさんのルガイアが食べている。
いつもと変わらない顔だが、久しぶりに好物を口にしたのだから胸は高鳴っているだろう。人間と同じ感じ方ならば。
「じゃあ、オレ達も帰ろうぜ」
「もう夜だよ〜 夜はルガイアが凶暴になるから朝の方がいいよ〜」
先ほどまで夕方だったのだが、外は暗くなり始めている。
「泊めてくれるの?」
「もちろん! どこを使ってもいいよ〜 楽しんでいってね」
「楽しむ……?」
とりあえず俺達はここで泊まることにした。
夕食を作り、皆で食べた。厨房の広さ、施設の充実さには驚きを隠せない物だった。しかし、古いものばかりなのが残念だった。
──そして、今に至る。
ふかふかのベッド、充実した部屋。なんの不自由さを感じない部屋だ──と思っていたのだが、なにか横に気配を感じる。
恐る恐る目を覚ますと、ルドとフーの姿があった。
「──っ!?」
「作戦成功だね〜 」
「ワゥ」
どうやらフーとルドで俺を脅かそうとしていたらしい。
やるならきっとジュリィの方がいい、と心では思うが、夜中に悲鳴をあげられても困る。俺で良かった。
「何しに来たんだ?」
頭の後ろ側をポリポリとかき、ベッドに座る。
「お兄さんから幻獣に似た匂いがしたから、誰も気づかない今に聞こうかな〜って思って」
「なんでわかるんだ?」
「僕の友達がそう言ってて嗅いでみたら、匂いがしたから〜」
なんという嗅覚。俺自身でもわからない匂いもわかってしまうだなんて。
「友達?」
「うん、カーちゃんだよ」
ルドはポケットから緑色の石を取り出した。
薄暗い室内のため、はっきりとは見えない。しかし、次の瞬間、その石が何なのかがはっきりとわかった。
「魔石だと……」
「招ぶからまってね〜」
石──魔石が緑色に輝く。それは風属性の幻獣を召喚するときに見かける特有の光だった。
「出ておいで〜 カーバンクル」
出てきたのは小型のウサギのような生物。何に例えればいいのかわからない。
額には、緑色の宝石が付いている。
伝承などで聞くカーバンクルは、紅色の宝石をつけていると聞くが……
「何かついてるクル?」
「しゃ、喋った!?」
「喋るクル! みんな喋れるクル!だからカーも喋れるクル!それで何か疑問に思っているみたいクルけど、何クル?」
「額の宝石、紅じゃないんだな」
「カーも元は紅だったクルよ。でも、こっちの方が好きなんだクル! 風魔法も使えるクル! 元は無属性だったのに、風属性にされてしまったクルけど」
どうやら、自分で色を変えられるらしい。そして、色によって使う魔法もかえられるらしい。都合のいいやつだ。
気づけば、カーバンクルは浮いていた。
「ディン坊から聞いているクル。君達は魔石を集めているみたいクルね。それにカー達の願いも知っているみたいクルけど、1つ聞いていないことがあるクル」
「なんだ?」
「もし、扉が開いてしまったらってことクル まぁ、管理人がしっかり者だからってことでディン坊は言わなかったクルけど」
扉が開いてしまったら。そんな事を深く考えた事などなかった。
開いてしまったら、世界がどうのこうのとは聞いていたが大丈夫
だろうとしか思っていなかった。なぜなら、俺達には幻獣が付いているのだから。
「開いてしまったら、カー達を全員召喚するクル。そしたらカー達が命かけて閉じるクル」
その言葉には、覚悟が込めてあったような気がする。
『命をかけて』など、幻獣が滅多に言う事はない。なぜなら、そこまでしてやる事などあまりないのだから。
「そしたら、お前らだって消えてしまうだろ?」
「どの道消える事は決めてあるクル。この世界にカー達はもう必要ないクル。世界はもうじき変わるクル。この先はまだ言えないクルけど」
「それってほんと〜?」
先ほどまで黙っていたルドが、いつもと変わらない口調でカーバンクルに問う。
聞いていないように思えて、聞いているようだ。
「まだ寝てなかったクルか?」
「うん、いろいろ聞こえちゃって…… で、カーくん消えちゃうの〜?」
見た目と精神年齢が同じならば、内容は深く理解できていないだろう。
事の重要性、消えるの本当の意味。それを知った時、この子はどうなってしまうのだろう。
「ちょっと旅に出るクル。もしかしたら、帰ってこれないかもしれないクル」
「そんな〜 僕、寂しいな〜」
「大丈夫クル。カーはいつでもそこにいるクル」
カーバンクルはルドの胸に前足を当てる。それは、心を示していた。
「ルドは1人じゃないクル。困ったら竜牙村の人に聞くクル」
「わかったよ〜 カーくんも僕の事、思い出してね」
「もちろんクル。じゃあ、先に寝ててクル。おやすみクル」
「おやすみ〜 お兄さんは行ってらっしゃいだね。僕、朝は遅いから」
「ああ。良い夢を」
ルドが退室する。
うとうとしていて、歩きがしっかりしていなかったが幽霊なので大丈夫だろう。
「それで良かったのか?」
「もちろんクル。カーは寂しいけれど、寝てる間にルドの記憶を少し書き換えるクル。カーは、人形で、今までの思い出は夢にするクル……」
「それがあの子のためか?」
「大きくなって真実を知るよりも、全部なかった事にして前に進んだ方がいいクル。だから」
「そうか……」
「でも、カーはカーに似た人形に、カーの思いを閉じ込めたクル。夢の最後に『すべてを知りたくなったら、カーの名前を呼ぶクル』って伝言したクル。いつになるかわからないクルけど、思い出すきっかけは与えたクル」
いつの間にか、書き換え作業が終わったらしい。
本人がこれでいいと言っているのだから、俺は口出しできない。
でも何かが納得いかない。
「納得できないクルよね。でもカーが決めた事クルから」
「わかっている。きっと俺が納得いかないのは、全部なかった事にするってとこだと思うんだ。でも、あんたが決めた事だからな」
「話がよくわかるクルね〜 さすが、王選を勝ち抜いたディン坊の息子クルね」
「オーディンの事はよくわからないけどな」
カーバンクルはオーディンをディン坊と呼ぶ事から、オーディンよりも年上なのだろう。考えられないが。
カーバンクルは大きなあくびをして、再び話し始めた。
「そろそろ寝るクル。次は、ウェンディのところに行くといいクル。ま、寝るクル。おやすみクル」
「また明日な」
カーバンクルが魔石へと戻る。
それを確認すると、俺も眠りについた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ルドはベッドで寝ていた。
いつも隣にいたカーバンクルは、カーバンクルに似た人形になっていた。
目覚める時は、かつてのように動かない。更に動いた事をルドは『知らない』。
だが、ルドは悲しんでいない。
──記憶がなくても心が覚えている、のだから。
- Re: Change the world ( No.112 )
- 日時: 2018/07/26 21:22
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
57話 再び活躍のB・T・U
「あら、お帰り〜」
「アミュさん、村は?」
竜牙村に戻ると、アミュさんがいた。
「大丈夫そう。急にルガイアが帰って行ったから、ビックリしちゃった」
「森の異変に気付いたんだね〜」
「とりあえず、報告は私がしとくよ。そして、ありがとう。村を代表して言わせてもらうよ」
アミュさんが一礼する。こんな風にお礼をされたのは初めてで少し戸惑う。
今後も、このように感謝される事をしたいものだ。
「じゃあ、行きますね」
「どこへ?」
「海底神殿ってとこ。アタシ達の旅の目的の1つは、魔石集めだからな」
「海底神殿ね〜 まずはノーグルリーチ村に行ったほうがいいよ。行けばわかるから」
ノーグルリーチ村。確か、緑の国から東に行った谷底の村だ。近くには遺跡があって、そこへ行くものは何かをすると聞いた事がある。
「じゃあ、行こうぜ」
「行ってらっしゃい!」
アミュさんは前と同じように見送ってくれた。
しかし、飛空艇のあるムスプルヘイムまで戻るにはかなりの時間がかかる。
行きの時に使った、『あいつ』がいてくれれば── と思った瞬間、フレイヤがいつの間にか持っていた笛を吹いた。
その音は遠くまで響いた。すると地平線の向こうから何かがやって来た。
『あいつ』が来たのだ。ビューティー・チャーミング・ウツクーシーが。
「はい、いい子いい子〜」
ビューティー・チャーミング・ウツクーシー──略してB・T・Uはあの短時間でフレイヤのペット、いや、手下となっていた。
「やっぱ、ハンパないって」
フレイがボソッと俺に話しかけてきた。なんだか、どこかで聞いた事のあるような……?
「ま、また俺を巻き沿いにするのかよッ!」
「え、別によくね? オレ達、仲いいし」
「仲はいいのは認めっけど、誤解を招くだろ!」
「お兄ちゃんどうしたの〜? レオンも珍しく熱くなっちゃって」
「なんでもないぜ!」「なんでもない!」
「ハモってる」
フレイヤは俺達が話していた内容を深くは知らないようだった。それどころか、くすくすと笑っている。
「さっさと乗ろうよ、ここ地味に暑いし」
「だな! フレイヤ、頼んだ」
「はいはーい、お任せを」
来た時と同じ道を使い、トーゲ・ンガをぬけ、ムスプルヘイムまでついた。
「ありがとう、ビュー」
まるで敬礼をしているかのように、B・T・Uは背筋を伸ばしピシッとして足早に帰って行った。
「温泉入りたかったな〜」
飛空艇へと向かうため、ムスプルヘイム内を歩く。今回も次の予定が入ってしまい温泉など観光を楽しむことができなかった。
「最近は緑国襲撃戦で大きなダメージがどちらにも残っていますから、帝国もすぐには動かないと思うよ。入るチャンスはある」
「なんかシドのその言い方だと、私らが働いてないみたいに聞こえる…… けれどホント!?」
オリガが目を輝かせる。『決めるのは俺だ』と伝えるかのようにシドはこちらを見て『どうする?』と口パクで言ってきた。
「たまにはいいかもな、入るか」
「ヒャッホーイ!」
1番喜んだのはフレイだった。
「じゃあ、行ってきます!」
女性陣は地図看板の下にあったパンフレットを持ってどこかへ行ってしまった。
このようなこと、以前にもあったような気がする。
「んで、どこ行く、どこ行く?」
「子犬か! 少し落ち着け」
「だって世界一の観光都市だぜ! 興味ないのか?」
「別に、興味はある。だが、フレイ、はしゃぎすぎだろ」
「普通にそんなこと言わないでー! 滅多に行けないからさ、プライなベートで」
「一国の主人だもんな、一応」
「おぉ、わかってんな! って、一言多いぜ」
親友ということもあってか、フレイが緑の国の王だったという事を忘れていた。
おまけに、反乱軍の長、つまり俺達の上官だという事も忘れていた。
しかし、今までの行動、他人からの接され方から皆誰もが王として扱っていないような気がする。まぁ、本人がそれでいいと思っているようなので気にする事ではないだろう。
「レオン、シド、準備はいいか? 今回はオレに任せてくれ!」
「準備はできてるよ。どこに行くんだい?」
フレイは後ろに振り向き、『温泉卵専門店』と書かれた看板を指差す。
和風とやばれるジャンルの建物が並ぶ中、瓦屋根の上にある黄色の看板が異様さを表している。目立つため興味を持ちやすいが、雰囲気は壊れている。
「温泉卵。食べてみないか?」
「賛成だ」
「だろ! 美味そうだし」
温泉卵。ゆで卵とは違い、トロッとしていると聞く。
少し、楽しみだ。
俺達は温泉卵専門店へと足を運んだ。
「いらっしゃいませー 何個ですかー」
「3つ!はい、これ」
「温玉3つ入りましたー」
店員は代金を受け取ると、奥へ去っていった。
カフェのように配置された立ち食い用のテーブル。椅子がないのは室内が狭いからだろう。和と洋が入り混じっていると感じるのも、それが原因だろう。
「お待たせしましたー 特性温泉卵3つです」
エッグカップに入った温泉卵。テーブルに備え付けられている出汁醤油を数滴かけ、スプーンで口に運ぶ。
「美味しい……」
「やっぱ、温泉だと一味違うな〜 風呂で手作りしたやつよりも美味いし」
とろ〜りとした白身に綺麗なオレンジ色の黄身。そこに醤油の出汁が効いている事で旨味が増す。
「もっと大きいので作ったら……」
「それは無理だな。黄身まで熱が行く前に白身が固まる恐れがある」
「さすが料理人……」
実際に作った事がないので正確にはわからない。しかし、予想はつく。
最後の一口を食べ、カップを片付けるとスマホが鳴った。
「もっしもーし、私達、やりたいこと全て終わったから飛空挺の方向かうね」
「了解。俺達も向かう」
電話を切る。毎回、このようなタイミングの良さはなんなのだろうか。
「なんだって?」
「飛空挺の所に向かうだとさ」
「タイミング良すぎだろ……」
そんな会話を交えて歩いていく。
そして飛空挺内にて合流した。時刻は昼頃だろう。
「さぁ、ノーグルリーチ村へレッツゴ〜!」
「そんな簡単に言うけど、あそこは谷底だから飛空挺では行けないよ。緑の国で停めて、マゾア川を渡って山を歩いて行くしかないからね」
「──マジか」
「うん、マジ」
今回も険しい坂や道を通らないといけないようだ。こんな時にまたB・T・Uが来てくれれば、と考えてしまう。人間、楽したいものだという意味がよくわかる。
「歩かなくても大丈夫だよ。これ使えばビューはすぐ飛んでくるから〜」
一瞬、フレイヤが何を言っているのかわからなかった。なぜなら、遠く離れたところからB・T・Uが飛んでくると言ったからだ。
「これさ、私がビューを運転している時に作ったの。吹けば瞬間移動魔法が対象に発動して、目の前に出てくるんだ〜 まだ完成品じゃないから目の前には出てこないけれど」
「すごいよ、フレイヤ! 見たことない、こんなの」
「えへへ、まぁ見たことないのもわかるよ〜 だってこれ、世界に2つしかないもん。」
「そうなると、もう1つは?」
「もう1つは、フォレストリーさんが持ってる。私の育ての親だよ〜 教えてもらったの」
そうなるとやはり聞きたいことがある。
「量産したりできないの? 世界で必要としている人が絶対いると思うんだけど……」
「それは無理かな〜 術式組むのも大変だし、なにか間違えると対象の生き物に多大なストレスがかかっちゃうから」
「そうなんだな。で、そのフレイヤが持ってんのは話聞く限り使えるみたいなんだがどうなんだ?」
「前に読んだの見たでしょ? 無事だったから大丈夫。だから、心配せずに行きましょ〜!」
あれは無事と言っていいのだろうか。忠実な手下とはいえ、なにか間違えたら出会った当初みたいになると感じて不安なのではないだろうか。
「じゃあ、緑の国に出発!」
フレイヤの掛け声に合わせたかのように艇体は空中に上がり、サウス大陸の方へ飛んで行った。
- Re: Change the world ( No.113 )
- 日時: 2018/07/29 11:48
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
58話 遺跡? 神殿?
緑の国に飛空艇を停め、笛でB・T・Uを呼び、山を越えた。
そして目の前にあるのはノーグルリーチ村。ファントム・パンプキンや薬草の産地でよく知られた村だ。
「そーいえばさ、なんでアミュさんは海底神殿に来る前にここへ行けって言ったんだろうね」
「単純な話で、海底神殿の鍵がここの近くの遺跡にあるからだよ」
「おぉ、さっすが〜 物知り〜」
「褒められている気がしません……」
「あ、ごめんクル。ウェンディの場所の鍵、ここじゃなかったクル」
「は? っていつの間に!?」
いつの間にか足元にカーバンクルがいた。
魔石から幻獣は自分で出られないのでは無いのだろうか。
「なんで出てきたんだ?」
「カーは『魔石に戻る』なんて一言も言って無いクル。君たちが勝手に解釈しているだけクル。実際にはカーは透明になっただけで、今までの会話は全部聞いていたクル」
「ふ〜ん。で、どういう事?」
「クル?」
「ウェンディーネのいる場所の鍵が、ここじゃない事!」
「あ、それはクルね……」
カーバンクルは震えながら話してくれた。
ここの近くにある遺跡にある秘宝は、ウェンディーネのいる海底神殿ではなくリヴァイアサンのいる海底神殿の鍵であるらしい。
さらに、ウェンディーネのいる海底神殿は神殿ではなく遺跡らしい。なので鍵もいらないらしい。おのれ、カーバンクル。言い間違いおって。
「ごめんクル…… でも、君たちをウェンディのところへ導いたのはリヴァイアサンのところへ案内するためクル。ウェンディがいないとあの長いやつ目覚めないクルから。まぁと・も・か・く、海底神殿の鍵を取りに行くクル!カーは戻るクル!」
今度こそ、カーバンクルは魔石へ戻った。
村に入る。すると地図看板に丁寧な事に『遺跡見学者はフォーチュンベルへ』と書いてある。とりあえずフォーチュンベルと呼ばれる店へ入る事にした。
「いらっしゃいませ〜」
店というよりはカフェだった。カウンターは2種類あり、食べ物を頼む方と遺跡見学の受付で分かれている。
「いらっしゃいませっす。見学っすね〜」
「正確には秘宝を手に入れにきたんだけど……」
「あれ、そうなんっすか? 守っているやつちょーヤバいっすよ。だから見学ってしてるっす」
「ヤバいんだ… 」
「そうっす。なんで必ず同行者をつけてるっす。今は……」
黒髪の身長の高い男はカフェを見渡す。どの店員も忙しそうだ。
「特別だい、だい、大サービスでこの店長の俺が可愛い君達のためについて行ってあげるよ!」
目の前の男は「よし、決まった」とつぶやく。
さっきまでの落ち着きはどこへ行ったのだろうか。ジュリィが呟いた瞬間あたりからハイテンションになっている。
「可愛いってオレらも入るのか!?」
「んなわけ無いでしょお兄ちゃん!」
フレイヤのストレートパンチがフレイの腹に直撃する。
きっとフレイヤは相手が身内のため手加減などしていないだろう。鍛えているフレイでさえ、その場にうずくまってしまったのだから。
「入って無いっすよ。俺が言ったのは君達の3人に向けてさ」
男は女性陣を見てウインクした。この男──チャラ男に入いるのでは無いだろうか。どういうものがチャラいというのかは本当にはわからないが。
「ジュリィ、私も入っているみたい」
「ま、まぁそうだな」
ジュリィはフレイヤにどう対応していいのかわからないらしい。フレイヤは、こういう人でも誰でも仲良くできる。さらには疑いもしない。内心ではどう思っているのかわからないが。
「どうした、水色の髪の嬢ちゃん」
「なんなの……」
「ん?」
「なんで私らがあんたよりも弱い前提になってんの? こんなやつに私、負ける気がしないんだけど」
「うぅ……」
オリガが笑いながら話したと思ったら、白い目で男を見つめている。
怒っているというよりは、見下しているのだろう。
「お客様、避けて!」
声の通り、左右へ移動する。
するとモップが飛んできて、男に直撃する。
「痛いっすよ!」
「店長の言動の方が別の意味で痛々しいわ! あ、お客様大変ご迷惑をおかけしました。このチャラいくせに店長が務まって店が繁盛しているおかしなアグラル・サンゼ店長に変わってお詫び申し上げます」
モップを投げたと思われる赤髪の女性が深々と頭をさげる。
この人の方が客を相手にしたほうがいいのでは無いだろうか。
「リアちゃん、手加減はしてよ…… 顔が真っ赤っすよ」
「そこらの薬草でもすり潰して塗ってきなって」
「そうするっす」
アグラルと呼ばれた店長の男は、店の奥の方へ去って行った。
「話は聞いていたよ。秘宝を取りに行くんだってね」
「同行者がなんとかって言ってたけど、なんなの?」
「この村の決まりで、遺跡に行くには認められた同行者が必要になってるの。それは見学者をモンスターから守るためと、秘宝の間に近づけないようにするため」
「近づいちゃ、ダメなのか?」
「秘宝に守り神がいるの。トゥスルムと言って人間に近い竜人なんだ。秘宝に近づく者は容赦無いからね、同行者が必要なの。まぁ、本当は同行者がいても秘宝の間には行っちゃダメなんだけど、きみたちなら大丈夫さ」
「結局、僕達の同行者は?」
「わたし。ここで1番強いって言われているんだ。あ、そうそうわたしはリア・メルリ。よろしくね」
差し伸ばされた手を掴み、握手する。カフェの制服姿のためどのくらい強いのかは想像できない。でも、この自信なら強いのだろう。
「さぁ、行こっか」
リアを先頭にして、俺達は遺跡へと向かった。
- Re: Change the world ( No.114 )
- 日時: 2018/07/29 22:03
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
CTW物語アンケートを、リク依頼・相談掲示板のCTWいろいろ募集で開催中。
ご協力をお願いします。
59話 剣に宿りし刀魂
「あれが遺跡だよ」
リアに案内されて10分ほど歩くと、遺跡と言う割にはしっかりとした建物が建っていた。見学業をやっているだけあってか、道は整備されている。
中へ入る。
「こういうの、慣れているんだね」
「迷いの森の古代遺跡やボルケーノ火山だって行ったからね」
「何のために?」
「魔石集めだよ。最初の頃は、帝国から守るためにやっていたけど今は違うんだ〜」
「へぇ〜」
リアとオリガの会話がはずむ。性格が少し似ているからなのだろうか。
「……ん?」
オリガが何かに気づく。
「どうした?」
この遺跡をよく知るリアは異変に気付いてはいないらしい。その事から遺跡関連では無いことがうかがえる。
「帝国は魔石を手に入れても、私達の所へ置いていってる。さらに最近、魔石関連の行動をしていない。どういう事だろう?」
その言葉により、今までの帝国の行動が脳裏に浮かぶ。最初のフェニックス。1度フェニックスの力を使っただけで撤退した時、持ち去っていなかった。忘れて行くという事は考えにくい。ただ、考えられるのは──
「本当の目的と関係あるのかもな。……構えろ」
「あ、ホントだ」
目の前にアンタレスと呼ばれる赤い大きな体のサソリが2体現れた。
こいつの毒はかなり痛いと聞く。刺される前に倒さなければ。
「わたしの出番かな」
後方にいたリアがジャンプをしてアンタレスの前に出る。カフェの制服──エプロンを豪快に外し私服の姿になると、短剣が両手には握られていた。
「ツインダガー使いなんだな」
「魔力、抜かれちゃったからさ。女の子が剣を握るのっておかしいかな?」
「いや、よくいる。特にツインダガー使いはな」
「へぇ〜 わたし以外で見た事無いな〜」
「1級持ちあたりになると、普通だ。行くぞ」
「あ、うん! ──1級持ちって行った!?」
前に監獄に潜入した時に、俺は剣術1級持ちと言った。その検定を受け、合格したのはだいぶ前の話だが実力は衰えていないはず。
「剣舞技 龍水!」
刀身から2匹の水の龍が現れ、アンタレスを攻撃した。アンタレスは光となって消える。この技は出し方は違うが、フレイの火猪と同じようなものだ。だから、自我を持っている。
「最近つまんなかったぞー!」「たまには使ってよー!」
「ごめんな、お前らの活躍する場所なかったからな」
「ていうか、何でいつも水属性なんだー!」「雷龍や炎龍にもなりたいよー!」
「同時に話すなっ! 少し出てていいから、黙ってろ」
『はーい』
剣舞技で生き物の名を冠する技を使う時には、その剣に宿っている生き物が発動者のやりたい技の魔法の属性となって現れる。剣に宿る生き物に発動者が力を求める理由を1度認められれば簡単にできる剣舞技だが、認められるまでが大変なのだ。
「剣舞技…… それにツインじゃないのに2匹も…… そして喋ってる……」
「フウ達双子なんだー!」
「だからいつでも一緒なのー!」
双子の龍──フウとライはリアに答える。
「フウ達はわかっているだろうけど刀魂(とうこん)って呼ばれてる生き物だよー!」
フウはまるで聞いた事のないような人たちに向けるかのように話す。
「あなたの刀魂はー?」
「出てきてくれないんだ…… もしかしたら、いないのかも」
「大丈夫! あなたのツインダガーから気配を感じるよー ただ魔力が少なくて出れないだけ。もしかして雷属性持ちー?」
ライが問う。
雷属性。それは、古世界の方に偏ってしまったと言われる属性だ。悪天候を表すとされて新世界では縁起の悪いものとされており、魔力を抜かれる事もある。
「そうだよ。抜かれちゃったんだ…… だから、出てきたくても出れないんだよね」
申し訳ないと言わんばかりに暗い表情を浮かべるリア。そこに助け舟を流したのはライだった。
「ライに任せて! ちちんぷいぷいのぷい!」
リアのツインダガーに妖精が通った後に現れる小さな光の粒がかかる。起きた変化はそれだけで、何も変わっていないように思える。
「あなたの短剣に魔力をあげたよー! これで魔力を込めなくても大丈夫!さぁ、剣に宿る獅子を出してあげてー!」
「ありがとう。やってみるね」
リアが深呼吸をする。そして構える。
「剣舞技 雷獅子!」
ダガーから稲妻が走り、目の前に小さな獅子が2匹現れる。
「で、できた…!」
「普通の人間はさー 魔力のみがちゃんとしてて刀魂が宿るほどの事をしていないんだけど、あなたは逆だったのー! これから仲良くしてあげてね」
「もちろん! で、きみ達名前は?」
2匹の獅子はじゃれつきながら答える。
「おれはトォオーノ」「僕はトネール」
「トォオ、トネ、よろしくね」
『うん!』
トォオーノとトネールはリアの短剣に戻った。左がトネールで右がトォオーノのようだ。
「じゃあ、行こう!」
再びリアの声で俺達は歩き始めた。
- お知らせ ( No.115 )
- 日時: 2018/07/30 23:51
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
お知らせです。
よりよい物語作りのためのアンケートをリク依頼・相談掲示板の『CTWいろいろ募集【アンケート実施中】』で行っています。
よければご協力よろしくお願いします。
- Re: Change the world ( No.116 )
- 日時: 2018/08/02 01:02
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
60話 3つの試練
「覚悟はいい? ヤバかったらわたしに言ってね。これで脱出できるから」
リアがポケットから四つ葉のクローバーのキーホルダーを取り出す。
見ただけだと、バッグなどにつけると可愛らしさがプラスされるキーホルダーに思える。本当に脱出などができるほどの効果を持っているのだろうか。
「それで本当に脱出できるのか?」
「もちろん! テレポ石を使った時、出現場所が特定できるようなやつだからね。それに、いざとなったら用でテレポ石もあるから大丈夫」
「そんなら安心できるぜ!んじゃレッツゴー!」
フレイはまるで遠足にでも行くかのように大きな扉を開ける。
重たい音が聞こえなくなり、砂埃が消えると扉の向こうの景色が見えた。
「わたしは扉の外で待っているね」
リアを置いて行く。フーも安全のためにリアに見守ってもらうことにした。
扉の向こうは今まで歩いてきた道とは違く、吹き抜けとなっており、中央に位置する秘宝は祭壇の上に無防備に置かれている。石レンガの繋ぎ目からは緑が生え、この空間が生きているように感じる。
「鍵ってこんな感じなんだ……」
鍵は、俺達の思う扉に差し込み回すタイプの物ではなく、白い花だった。ただそこに、力強く生えている。
「むしったら怒られそうだな」
「そうだろうね、だから容易に触っちゃ……って、フレイ!」
「え?」
珍しく大声をあげたシドの先には、花に触れようとしたフレイがいた。
こんな無防備に秘宝が置いてあるだなんて罠としか思えないだろう。
「お兄ちゃんったら、もう! お花は力強いけれど繊細なんだよ!」
「そ、そうか…… まぁ、オレの中に作戦があったんだけどな」
「バレる前にやる? そんなのつまみ食いしか通用しないからね」
「なんでわかったんだよ! はぁ……」
妹に攻められて悔しい兄。フレイの言う、『兄としてのプライド』が傷ついているみたいだ。
「やった、私の勝ち〜 でも、喜んでいる場合じゃないかも」
先ほどから地響きがする。単なる自信ならいいのだが、そうとは考えられない。
「誰?」
奥の暗闇から、足音がする。ブーツの音だ。
「守り神さんとーじょーだな」
陽の光の当たるところでやっと姿がわかる。
長い銀髪に高身長でスタイルの良い女性。瞳は閉じていて、前が見えているのかわからない。服装も肌も白いため、一言で言えば『白い女性』だろう。
「高身長で胸もあって優しそうでスタイル良いなんて…… 羨ましい……」
自身と比べるオリガ。体については能力以外平均的(胸は同年の平均の少し下。本人談)な彼女にとって憧れでもあり敵視するものでもあるのだろう。
──オリガの身長、俺にとってはちょうどいいんだけどな。
ハイランドで抱きしめた時のことが脳裏に浮かぶ。今思うと恥ずかしいことだが、自分の気持ちに素直になれた良い思い出だ。
「我が名はトゥスルム。幻獣王より遺跡と宝の守護を任されたものです」
トゥスルムは一礼する。どうやら、礼儀正しく丁寧な口調の神らしい。
「幻獣王って言ったな。俺達がここへ来た理由、わかるのか?」
「ええ。ですがその花を簡単にそなたたちに渡すことはできません。なぜならば我の目的は消え、眠ることとなり、この身が朽ち果ててしまうのだから」
「それでもアタシらは必要なんだ。この戦いの元凶、パナソはレオンらを孤児にした。それは『神を超える者』にするためだ。そうなると、アタシらを神のいる世界へ連れていく必要がある。そのためには扉を開く鍵──魔石が必要となる。だからそれを阻止するためにアタシらが魔石を集めているんだ」
「そうですか。それはどなたから聞いた情報ですか?」
「幻獣王、オーディンだ」
「なるほど。さすがの我も王の御子息様の口から言われれば信じます」
トゥスルムと俺があったのは初めてなはずだ。なのに、オーディンの息子だとわかってしまうとは。さすが守護神だ。
「先ほどのお話を聞いたからには、幻獣達の覚悟などもお聞きに?」
「この戦いが終わったら消えるってやつと、もし扉が開いたら命かけて閉じるってやつだろ?」
「そうです。──今の口調ですと、どうやって消えるかはお聞きになっていないようですね」
「自分たちで決めたことだから、自分達で消えるんじゃないの〜?」
「幻獣は元はと言えば神に作られた、対人間用の道具です。幻獣達は自らの力や、他の幻獣の力で自らの身を滅ぼす事はできない作りになっており、人のみが滅ぼす事が可能です。だから、そなたたちが幻獣を倒すのです。」
俺達が幻獣を倒す? そのような事ができたら人類史上初の快挙だ。少なくとも、幻獣界へ行けたり幻獣と共に過ごしている俺達は世界が4つに分けられてから初の事なのだが。
「私達が? なんで……」
「古の時代の最後の戦争にて、幻獣と人は確かな絆を得る事ができました。その時と同じように、今はそなたたちと幻獣の間にも絆ができています。その絆が、幻獣を倒す力となるか否かわかりません。ですが、絆のできたそなたたちだからこそ頼める仕事。言うのは2度目ですが、そなたたちが幻獣を倒すのです。でないと、意味がありません」
オーディンがあの時、自らが消える方法を俺達に教えてくれなかった理由がよくわかる。俺達はトゥスルムに言われて幻獣との間に絆ができていた事を改めて感じた。きっとオーディン達は俺達との間に絆がある事をわかっていたから言えなかったのだろう。
「答えは1つ、『はい』しかありません。なぜならばその覚悟を聞いた時、そなたたちは了承したのだから。でもあの時は深く考えてはいなかった。なので我からもう1度問います。それが我からの1つ目の試練。さぁ、やりますか?」
俺達の答えは決まっていた。
「やってやる。それが、今まで共に戦ってきてくれた事のお礼になると俺達は思うからな」
「さすがですね。幻獣王から我への頼み事、そして1つ目の試練は合格です。さて、2つ目の試練はそなた達がこの『キーフラワー』を持つ権利があるかどうかです。……が、幻獣との絆があるから大丈夫でしょう。さぁ、3つ目の試練です。我の力に勝ちなさい」
最後の『我の力に勝ちなさい』と言った瞬間、辺りの雰囲気がガラッと変わった。
俺達はそれぞれの武器を構える。相手は守護神。油断などできない。
トゥスルムは銃の先端が剣となっている武器を使っている。それは、近距離、遠距離のどちらも攻撃できる事を意味する。
「フウ、ライ、行くぞ!」
『りょーかい!』
「剣舞技 炎龍!」
フウとライの体が炎となり、龍が炎を吹き出すような勢いでトゥスルムに直撃する。ぶつかった衝撃で煙が上がる。それをうまく使い、不意打ちを刻みこむ。
普通なら肉をさばくような手応えがあるはずだが、トゥスルムには傷しか付いていなかった。それに、行動を読まれていた。
「我は竜人。そなたたちよりも皮膚は硬く、視力はよいぞ」
言動からして先ほどとははるかに違う戦闘モードに入っているようだ。
皮膚が硬いとの事から、斬撃は効果は無に等しいだろう。そうなると魔法攻撃、剣舞技ぐらいしか俺の攻撃は効かない。
「魔法でどうだ!」
フレイヤが瞬時に詠唱すると、トゥスルムの足元の地面にヒビが入り、ガタンゴトンと音を立て上下に地面が揺れた。
「くっ……」
トゥスルムは反撃するかのように、風魔法を唱え、辺りに強風が吹く。
だがトゥスルムは次の行動に移せるような姿勢になれない。足元が揺れているせいだろう。
強風をいかしオリガがジャンプする。それと同時にジュリィがトゥスルムの周りにシャボン玉のような割れる水を浮かばせる。飛んでいる間に揺れがおさまったことを確認してオリガは、トゥスルムの周りに浮く水のシャボン玉を割り凍らせ、トゥスルムを動けなくする。そして、槍の刃を魔法で氷の刃として空中から降ってくると同時にトゥスルムに直撃させる。ジュリィとオリガの合わせ技だ。
「やっぱ効いてないか〜」
「そなたの余裕もそこまでだ」
「え?」
トゥスルムの周りに鏡がどんどん浮かび上がる。それに俺達は目が向く。
「かかったようだな」
今まで閉じていた目を開く。鏡にはオッドアイが綺麗に写り、俺達と目があう。
「うわ、金縛り?」
「動けねぇ」
俺以外が金縛り状態となってしまった。
「さすが幻獣の血を引く者…… この攻撃は効かぬか」
「そうみたいだな」
初めて幻獣の血を引いててよかったと思えた。まさかこのような感じで思えるとは。
「フウ、ライ、別のもいけるか?」
「フウは風がいいー!」「ライは雷がいいー!」
「順番にやってやるから待ってろ!剣舞技 風龍!」
「やったー!」というフウ。さっきトゥスルムが起こした風によりフウ達の威力が上がっている。それをわかりやすくするかのようにフウ達の体が巨大化している。それはまるで天を仰ぐ龍のようだ。
フウがトゥスルムに噛みつき、ライが周りに浮かぶ鏡を割っていき壊す。鏡はその場に散らばると、光となって消えた。
「レオン! 僕も参戦するよ!」
誰よりも早く金縛りの解けたシドが再び参戦する。
「次行くぞ! 剣舞技 雷龍!」
「がんばるよー!」
「それじゃあ僕も!」
シドが雷属性の魔法を唱え、稲妻がライにあたりフウのように巨大化する。落ちてきた稲妻の勢いを衰えさせることのないスピードでライはトゥスルムに巻きつき放電する。
「グハッ…… まさか我がここまでやられるとは……」
トゥスルムには確実におおきなダメージだ。
続々と他の皆も金縛りが解ける。今のところ、確実にきいているのはフウとライと魔法を使った合わせ技。俺の魔力はもうじき底をつく。そう考えると次に放つ剣舞技が最後だろう。
「魔力あるー?」
「おう、いっぱいあるぜ」
「じゃあ次、合わせ技やろー!」
フウとライがフレイに合わせ技を頼む。フレイの属性は火。やるのは再び炎龍だろう。
「レオン、避けて!」
「なにっ!?」
トゥスルムが銃口をこちらに向けている。引き金が引かれ、避ける時間がない。
どうするべきか。そう思った瞬間だった。
「ワゥ!」
「リア・メルリ参上! さぁ、今のうちに!」
目の前に現れたのはリアだった。防御魔法をわずかな魔力で唱えてくれたのだ。
「フレイ! やるぞ」
「任せろっ!」
「剣舞技 炎龍!」
フウとライがフレイの有り余った魔力をふんだんに使った火属性魔法で強化される。そして、トゥスルムを焼き尽くす。
「どーだ!」「すごいでしょー!」
トゥスルムは火が消えると再び立ち上がろうとする。しかし、立ち上がるほどの力は残っていないようだった。
「ご、合格だ…… まさか我が、我が、ここまでやられるとは……」
「話ができる状態にしてあげるから、動かなで」
フレイヤがトゥスルム近づき、回復魔法を唱える。
「ありがとうございます」
「あ、戻った」
「そなたなど潰そうと思えればいつでも可能ですよ」
「す、すいませんでしたーっ!」
微笑みの裏の確かなる殺意がフレイの背筋を凍らせる。
「話を戻しましょう。さぁ、受け取りなさい。我の大切な『キーフラワー』です」
キーフラワーが増え、花束となり受け取る。祝福されている気分だ。
「そしてこれも」
トゥスルムが首から下げていたネックレスを渡す。
「我の役目は終えました。あとは朽ち果てるだけ…… でも我はここにいたいのです。幻獣王からそのネックレスで我を呼び出し先ほどの状態を引き出せば、朽ち果てないと聞いています。どうか、早めにお願いしますね」
トゥスルムがネックレスの中へと消える。
──その時だった。
キーフラワーの生える祭壇に鳥がとまり、へし折った。
その鳥は、悪名高く肉厚で美味しいブラックチョウだった。
「ちょっとそっちに出ますね」
トゥスルムが再び出現する。
「我の花をよくも……」
「キィィィィィ」
ブラックチョウは威嚇するが相手は守護神。一瞬で血抜きのされた美味しい鶏肉となってしまった。
「これで朽ち果てないね〜」
「はい、これは後で美味しくいただきます。ネックレスは持っておいていいですよ。では、さようなら」
今までよりもご機嫌で「食材が手に入ってよかった」と呟きながら来た道を戻るトゥスルム。俺達はなんてすごい神を味方にしたんだろう。
「じゃあ、戻ろうか。みんな、手をつないで」
手をつなぎ輪となる。キーホルダーの鈴のチリーンという音と同時にあたりが光に包まれ、魔法が発動した。
- Re: Change the world ( No.117 )
- 日時: 2018/08/02 23:48
- 名前: 和花 (ID: qU5F42BG)
思った以上に60話が長くなってしまいました……(3話ぐらいに分ける予定でした)ノーグルリーチ村編、ウェンディを手に入れたら終了です。
61話 海底遺跡へ向けて
「よっと」
転送された場所はフォーチュンベルの中。
「ただいま戻りました〜」
「あ、おかえりなさいっす」
アグラルは何事もなかったかのように店番をしている。
顔の赤みは治ったようだ。先ほどのようにチャラチャラとしていないのはいろいろあったからだろう。
「さて、これでわたしの仕事は終わり。なんか、いろいろありがとう」
「こちらこそ〜 案内わかりやすかったし、トゥスルムを倒せたのもリアのおかげだよ」
「そんなに言われると、照れちゃうなぁ」
リアが照れながら答えた。
「そうだ、これはあんたが持っていたほうがいい」
トゥスルムのネックレスを差し出す。
「え! なんでわたしが?」
「トゥスルムは遺跡の守り神なんだろ? 遺跡を管理しているのはこの店だから、俺達よりもあんたの方が持っているのにふさわしいと思ってな。本当は店長に渡したいが、きっと……」
「言いたいこと、わかったよ。『トゥスルムにシバかれる』でしょ?わたしが受け取っておくね」
リアがネックレスを受け取り、首からさげる。意外にも似合っている。
「それじゃあわたしはここの仕事をするね。また、近寄ったら来てね」
「じゃあね〜」
リアがエプロンを取り出し身につけながら店の奥の方へ走って行った。
次に向かうは海底遺跡。すぐに行きたいところだが、1つ問題がある。
「次行くのは海底遺跡だよな。どうやって行くのかアテはあるのか?」
「え、ジュリィ、水属性の魔法でどうにかならないの〜?」
「さすがに無理さ。あのかどうかわからないし」
水属性使いのジュリィは問題を解決できる魔法はないらしい。
となると、飛空艇を改造するべきだろうか。
「シド、ユピテル号を潜水艦にできないのか?」
「うーん…… オケアトゥスかレヴェリーに行けばできると思うよ」
「そうか…… でも時間も費用もかかるよな。あ、国の修復費、どうするかな……」
世界のいろいろなものが揃う港町、オケアトゥス。世界の都市とも言われ、技師もたくさんいるであろうレヴェリー。どちらもここから気候などを考えると時間がかかり、別の道を通るので道のりは遠くなる。
「ねぇ、ふっくらおじさんに一度聞いてみない? 海とか川とか好きでよく探索しているから、持っている気がするよ」
「あのふっくらおじさんか! 価値はありそうだな」
船着場の店主のボブ。小さい頃、よく相手をしてもらって前に1度船を借りたこともある。ボブなら潜水艦を持っていそうな気がする。
「そうと決まれば船着場だな!よし行くぞ」
フォーチュンベルを後にし、ノーグルリーチ村をでた。
行きと同じようにB・T・Uを呼び出し緑の国に戻った。
「おかえりなさいませ陛下! どうなされましたか?」
街の復興作業をしていた兵士がフレイにかけ寄り話しかける。
フレイは周りを見渡すと兵士の問いに答えた。
「海底遺跡行くためにふっくらおじさんを探してんだけど、どこにいるかわかるか?」
「ボブ殿ですか…… あまり見かけていませんので、船着場に居られると思います!」
「そうか、ありがとよ! あと、今はかしこまった場所じゃないから敬語なんて使わなくていいぜ」
「ですが──」
「いいんだ、そのほうがオレも気が楽だし」
「そうですか…… ならそうさせていただきます! 次から」
「りょーかい! オレ、復興作業手伝えないけど、頑張ってな!」
「はい! フレイさんも頑張って」
兵士が去って行く。
他の国では考えられない、王の緩さ。そのおかげで民は王に親近感を持て、気軽に意見を言えるようになり、王は民を深く知れる。
そして、面倒見のよく協力的な国民。裏表がなく信頼できる民だからこそ王は上下関係を気にしない行動ができるのだろう。その2つが合わさっていることで緑の国は成り立っているのだと感じる。
緑の国の城側の門、北口からマゾア側の方へ歩いて行く。
だいたい徒歩10分で船着場に到着した。
「おう!久しぶりだな!」
ご機嫌のボブ。そんな時はだいたいいい魚が釣れた時だ。
「ふっくらおじさん、潜水艦ってある?」
「潜水艦か? ボケてるやつならあるぞ、うおうお ニ〇ニだ」
まるで用意をしていたかのように鍵をくれた。うおうお ニ〇ニにはいつもの絵の魚がゴーグルをつけている。
「ボケてるとは、いったい……?」
「潜水時間が20分ぐらいしかできねぇ。もうこいつも古いからなぁ」
潜水時間が20分。それではマゾア川の上流まで行き、海底遺跡につくことしかできない。
「それじゃあ海底遺跡、探検できないじゃん。も〜」
「海底遺跡つったな、あそこは幻獣様の加護があって招かれざる客以外なら呼吸もできるらしいぞ」
「──行けそうだな」
召喚士の里の地下で感じたウェンディーネの気配。それが感じられたということは、俺達は招かれざる客ではないという事だ。
「行くんだな。せいぜい海のモンスターには気をつけろよ!」
「ふっくらおじさんも高血圧には気をつけてね」
「さっさと行けッ!」
潜水艦に乗り、俺達は海底遺跡へと向かった。
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作者名のところに。とアルファベットがないのは、打ち込み忘れたからです。
寝ぼけてました。
- Re: Change the world ( No.118 )
- 日時: 2018/08/04 06:37
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
再びお知らせ
小説家になろう のほうでこの作品の修正・リメイク版を連載開始しました。
今後は 小説家になろう の方を先に連載します(こちらのやつは遅れて連載)
また、CTWいろいろ募集もやめませんのでどんどん応募してくださいね。
小説家になろう の方では読む事だけなら登録しなくてもできるようです。
「登録はしてないけど、コメントは書きたい!」という方、ぜひ、こちらのスレッドでどうぞ。
どちらのサイトのCTWもよろしくお願いします!
ということで、連載が遅れます。
- Re: Change the world ( No.119 )
- 日時: 2018/08/07 17:07
- 名前: シャドー ◆PuIGSTlbSo (ID: y/BzIObq)
どうやったら見れるんですか?
- Re: Change the world ( No.120 )
- 日時: 2018/08/07 17:34
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
シャドーさん
まず『小説家になろう』あるいは『小説を読もう』と検索。
(有名なサイトですので、すぐに出るかと)
でてきたらそのサイトの中にある検索欄に『CTW』と入力。これできっと出てきます。
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
- Re: Change the world ( No.121 )
- 日時: 2018/08/07 17:44
- 名前: シャドー ◆PuIGSTlbSo (ID: y/BzIObq)
はい!
あ、僕は別の小説サイトのところで活動してますのでよければみてくださいまし!
ハー・メルンで検索してください!(点はなくていいですよ!)
- 重大なお知らせ ( No.122 )
- 日時: 2018/08/07 18:01
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
いつもCTWをお読みの皆さん、こんにちは。
今回は『小説カキコ』版のCTWについてのお知らせです。
まぁ、簡単に言いますと、こちらのCTWの連載をストップします。
作者の自分勝手な行動ですいません。
(CTWいろいろ募集は続けます。)
理由はリアルでの多忙化です。
来年作者は受験生。今はまだ余裕がありますけれど、受験勉強やらテスト勉強が大切になってきます。作者はリアルでの生活を大事にしていきたいと思っています。ですので2つのサイトに連載するのは大変かと思い、この決断をしました。
今後はこちらではCTWいろいろ募集を時々やらせていただきます。また、CTWの続きは『小説家になろう』の方で続けさせてもらいます。(やり方は>>120)
『小説家になろう』の方では、自分で決めた時間に掲載できる予約掲載というものがあります。事前に作っておき、設定すれば多忙の中でもその時間に自動的に掲載できるということから『小説家になろう』の方では続けさせてもらいます。
今までこちらのCTWをお読みになってくれた方々、募集に参加していただいた方々、本当にありがとうございました。皆様のコメントがとても励みとなっており、CTWをより良いものとしてくれました。
良い経験でした。何度も言いますが、本当にありがとうございました!
そして、『小説家になろう』版も宜しくお願いします。
では、またどこかで。
- Re: Change the world ( No.123 )
- 日時: 2018/08/07 18:38
- 名前: シャドー ◆PuIGSTlbSo (ID: y/BzIObq)
そうですか・・・まあ仕方ないことですし
小説家になろうでもまた仲良くしてくださいね
>>121にもある通りハー・メルンでも活動しますのでよろしくお願いします
一つ聞きますが応募したキャラは小説家になろうでも出ますか?
では
- Re: Change the world ( No.124 )
- 日時: 2018/08/07 18:59
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
シャドーさん
出す予定はあります!
まぁ、内容によったりなどしますが……
あと、今後はCTWいろいろ募集のスレで質問していただいてもよろしいですか?そっちの方がよく見るんで。
- Re: Change the world ( No.125 )
- 日時: 2018/08/07 19:05
- 名前: シャドー ◆PuIGSTlbSo (ID: y/BzIObq)
あ、はい
- 最後のお知らせ ( No.126 )
- 日時: 2019/01/31 20:58
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
皆様『超』お久しぶりです。和花。です。
この場をお借り(?)して、カキコでの【最後のお知らせ】をさせていただきます。
また、一度でもコメントをしてくださった方、募集にて応募してくださった方にはお願いがあります。
そのような方は【お願い】に書かれていることを合わせてお読みください。
ゴホン、長ったらしい前置きはこの辺にして。
さてと本題に入ります。『カキコ版CTW』についてです。
早速ですがストレートに言わせていただきます。
2月3日をもって、こちらのCTWを削除します。
(募集のほうは後ほど)
理由は単純。2つのサイトでの管理が難しいから。
ネットが発展した世の中。何が起こり、何が拡散されるかわかりません。
こちらのCTWはすでに更新を中止していますし、言って仕舞えば放置状態。
もし何か問題が起きた場合の対処がネットであるため難しい、と判断し削除する意向にしました。
ですが安心してください。
『小説家になろう』にて連載は続けます。
(ちなみになろう版CTWは一部リメイクされています。URL https://ncode.syosetu.com/n6424ex/)
今後は現在と変わらずなろうにて活動を続ける予定です。
もうじき、こちらの作品は完結します。
(シリーズとしてはまだ完結ではないです)
ゴールを迎えられるのは、ここでの読者様のおかげでもあります。
様々なアドバイス、キャラクターや設定の提供…… 本当にありがとうございました。
また2017年 冬大会にて処女作にもかかわらず『銅賞』を取れたことも読者様のおかげです。
本当に、本当にありがとうございました。
これからも頑張っていきますので、程よい温かさで見守っていただけると幸いです。
【お願い】
一度でもコメントをくださった方、募集時に応募してくださった方にお願いがあります。
簡単なことで『CTWのあとがきに名前を掲載していいか』ということです。
許可がありましたら、その時(コメントしてくださったor応募してくださった時)の名前で掲載いたします。
NGまたは返事なしの場合は『カキコ時代の読者様』とまとめて表記します。
返事はこのスレで2月3日までにください。
宜しくお願いします。
- Re: Change the World 【大切なお知らせ 有】 ( No.127 )
- 日時: 2019/01/31 21:35
- 名前: 鵙 (ID: OLpT7hrD)
和花さんへ、
久し振りにスレが上がっていた為、見ていない分も含めカキコの分は見てきました。
こうなるとなろう、の方でも是非見ていきたいです、読んでいて非常に楽しかったので。
一つしか変わらないんだ、と思うと凄いなって思います。
もっと褒めるべき場所があるのでしょうが、語彙力の無い私故、お許しください。
【お願い】の件についてとある料理人のキャラを応募したのですが、
その時の名前を忘れてしまったのでこの名前で訪問させてもらいました。
ちなみに返答としては掲載して構いません、自分もそういうことは忘れたくないので。
なろう、にコメント機能があるかは知りませんがもしかしたらこんな名前で伺うこともあるでしょう。
その時は宜しくお願いします。
小説カキコでの執筆、お疲れ様でした。なろう、においての活躍、期待しております。
- Re: Change the World 【大切なお知らせ 有】 ( No.128 )
- 日時: 2019/01/31 22:12
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
鵙さん
早速のコメントありがとうございます。
料理人のキャラで応募…… となるとその時の名前は硯箱(さん)でしょうか?
なろうにコメント機能はあります。一応、カキコから移転したということもあり、現在はログインなしでも書けるようにはしてあります。ですが今後、ログイン必須にするかもしれません。
掲載OKですね。承知しました。