ダーク・ファンタジー小説
- Re: Chage the world −チェンジ・ザ・ワールド− ( No.23 )
- 日時: 2017/09/17 19:24
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
今回から題名に第何章かを書かなくなりました。
10話 帝国の野望
「おじいちゃん、ただいま。」
「お、おう、アイヤか…」
無事に先に行っているお兄さん達……フレイ達と合流した。
「どうして物陰に隠れているの?」
「盗み聞きってやつだよ。ほれ、静かにせい。」
さすが火山の中。
マグマが噴き出ており、暑苦しい。
汗が無限に噴き出る。
そんなことに耐えながら耳をすますと声が聞こえてきた。
「残る鍵はあと5つ。そうだよな?」
「うん、残っているのはコールドとリヴァイアサン、ウェンディーネとオーディンとバハムート!」
今回は皇帝とパナソではないらしい。
俺達ぐらいの男女がいた。
「そういや、これ集めてどーすんだっけ?」
「封印を解くんでしょ! 陛下が力を手に入れるために。 そして神に近くなるために!」
ボケとツッコミという感じか。
女の方がツッコンでくれるおかげでいろいろ知れそうだ。
「さてと、さっきから人の気配がするのよね〜」
「そうだな、フーの匂いもする。」
さっきから肩に乗っていたフーがブルブルと震えだす。
喰われる……と思ったんだろう。
「見えた!」
「さっすが〜 千里眼のリガン!」
「出てこいよ、剣舞のレオンに氷槍のオリガ、そして炎の守一族!」
まさか、ここで二つ名で呼ばれるとは思いもしなかった。
それに、あいつらをどこかで見たことがある。
確かその名は……
「おひさおひさ〜 帝国のデコボココンビのリガンとイサチ!」
「やっぱりお前だ! もう騙されねえぞ!」
オリガとリガンには何かあったらしい。
だがそれは置いといて、俺達も姿を現す。
「やっと皆さん出てきたって感じ? ならばこれでオサラバよ。 行っけ〜 イフリート♡」
召喚されてイフリートがでてきた。
「ウオォォォォォォォォォォ」
咆哮を上げ、こちらを睨む。
炎の守一族がいるのに。
「ど、どういうこと? おじいちゃん……」
「彼奴はお前の知るイフリートではない。彼奴にはこちらを焼き尽くすことしか残っていない」
「ってことは目を覚まさせればいいよね?」
すると、イフリートの足元から岩が突き出てきた。
高くなり、イフリートをどんどん上にあげる。
そして途中で岩は砕け、イフリートがデコボコの岩肌の地面へ直撃した。
「土属性魔法か…… しかし効かぬぞ。 イフリートは。」
「水属性魔法なら効くんだぜ。」
「そんなんわかってるよお兄ちゃん!」
「こっちのことも忘れんなよ!」
気がつくと、両手に炎を宿したリガンが俺に向かって飛んできていた。
瞬時に剣でリガンの拳を止める。
「誰が忘れたといった?」
「うわぁ、相変わらず怒ると怖いねー」
「怒っていないけどな」
振り払う。
剣を構え魔力を剣に込める。
成功したことはあまりない。だが、やるしかない。
一か八かの勝負で決まる、あの技を。
「剣舞技 龍水!」
剣に水が宿り、リガンに向かって剣を振るう。
すると水が龍の姿のようになりリガンを襲った。
剣舞技。それは剣に魔力を込め剣を振ると同時に魔法を発動させる技だ。
俺の魔法の属性は無のため、他の属性はなかなかできなかった。
だが、ジンは『想いが強ければできる』と言った。
当時はわからなかったが、今ならわかる。
この技は、『守るべきものへの想い』が強ければできるということが。
「ぐはぁ… お前もできるようになったんだな」
「謎が解けたからな」
「じゃあ、イフリートに任せて撤退するか。おい、イサチ。撤退……ってあれ?」
「イサチならもう逃げたわよ」
「何だって⁉」
「でも、あなたは逃さないわ」
ミントが笑顔でリガンへ寄る。鞭をビシッと引っ張って。
「うわぁ…… ヤベェのでてきた…… 俺の今は亡きオカンに似てる……」
嫌なことを思い出したかのような顔をしてリガンは瞬間移動魔法を瞬時に唱えて撤退した。
「なーんだ、つまんないのー」
「まだ強敵が残っているけどな」
再びイフリートへ振り向く。
そして武器を構えたのだが……
「お主達、これは炎の守一族の使命だ。 下がっておれ。」
おじいちゃん……フアンがイフリートへ近づく。
イフリートは咆哮を上げた。
より力を高めたのだろう。
「イフリートよ、落ち着け。お主はそのようなものではないだろう?」
「ウオォォォォォ」
イフリートは勢いをつけたままだ。
それでもフアンは語る。
「思い出せ、召喚士との約束を。 守るべきもののために力を使うという約束を」
一瞬だが、イフリートの勢いが弱まる。だが、再びつく。
そして、フアンに向けて、必殺技のヘルファイアをはなつ。
「おじいちゃん‼」
「ダメだ、アイヤ! 来るんではない! そのほかの者だ」
ヘルファイアがおさまると、フアンの服はほとんどが焼け、体は火傷していた。
それでもフアンはイフリートへ近ずく。
傷む体を引きずるように歩きながら。
そんなフアンを容赦なく攻撃するイフリート。
まさにその姿は、地獄の炎を操る魔獣だった。
弾き飛ばされたり、燃やされたりしながらもフアンは立ち上がり、イフリートへ歩いて行く。
「この命、燃え尽きても、お主をもとに、戻す!」
立ち上がるもすぐに膝をついたフアンにアイヤは泣きながら近づく。
「もう嫌だよ…… おじいちゃん…… せめてこれ使って……」
アイヤの手には回復薬が握られていた。
「いらん! アイヤがピンチの時に、使いなさい。さあ、もど、れ」
アイヤが戻ってくる。
「なんでお兄さん達はおじいちゃんを助けないの‼ なんで‼」
「……」
俺達は黙り込んでしまう。
アイヤの気持ちもわかるが、この戦いには俺達は加わってはいけない。
なぜなら、
「この戦いはね、フアンさんの一族の長としての誇りがかかっているの。」
「だとしても! おじいちゃんが… 死んじゃうよ…」
「アイヤ、おじいちゃんの眼をよく見てごらん」
ミントが優しい声でアイヤを納得させる。
「あの眼には覚悟が現れているでしょ? それだけおじいちゃんには大切な戦いなの。もし私達が助けたらあの眼の輝きはなくなっちゃうし、おじいちゃんの誇りを一生傷つけちゃうの。だから、ね」
やっとのやっとでフアンはイフリートの元へたどり着く。
イフリート胸に手を当てて語る。
「イフリートよ…… おも、い、だせ…… お主の誓いを……」
フアンの手が煌る。
すると、イフリートの勢いがおさまった。
「よか、た…… 思い出した、の…… だな」
イフリートが頷く。
「フアン様…… 申し訳ありません…」
「いいのじゃ…… ぐはぁ」
フアンが倒れる。そして、アイヤと共に駆け寄る。
「おじいちゃん‼」
「フアン様‼」
「もう、わしはやりきった。悔やむことなどないぞ。だから、イフリート。誓いを忘れるな。そして、アイヤ。お主を、お主を1人にしてすまん。本当にすまん」
その声はフアンの命の灯火のようだった。
「もう泣くな。笑え。」
アイヤががむしゃらで笑う。
「さようならだ。アイヤ。元気でな」
「おじいちゃん‼ おじいちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん」
アイヤの悲鳴混じりの声が火山に響いた。
続きます