ダーク・ファンタジー小説
- Re: Chage the world ( No.39 )
- 日時: 2017/11/13 20:59
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
20.5話 いつから
ここはどこ?
目を覚ますと、どこを見ても真っ白い部屋にいた。
窓や扉は無く、完全な密室だった。
「脱出不可って感じ? なら壊せばいいかな。 ん?」
動けない。それに魔法も使えない。
気づけば手を特殊な縄で縛られ、上から吊るされていた。
足の指先が少し床につくが、動く事はやはり出来なかった。
「なんなのよ、コレ…」
捕まるってこんな感じなんだ。
自由が無くて、この先どうなるのか不安になってくる。
覚悟を決めて諜報部員になったはずなのに、実際なってみるとかなり不安だ。
心が落ち着かない。こんな時こそ冷静にならなきゃいけないのに。
1人でも大丈夫って思ってたのに、いつから私はこうなったのだろう。
やっぱりみんなに再会してから? 違うような気もする。
じゃあやっぱり…
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研究所…… 正式名称はミテス監獄。
本来なら重罪の者が入れられる場所なのに、最近は皇帝に逆らった者が入れられているらしい。
中では何が起きているのだろうか。あまり想像したくはないな…
「おーい、聞いてるか?」
「ん?なんだ?」
雪の国の宿屋の100号室。
明日に備えて俺達は宿屋に泊まっていた。
「最近しゃべんない事多いな、悩みあんのか?」
「必要な時以外は喋ってないつもりなんだが」
「そうかな? 僕はなんか別の理由がある気がするよ」
別の理由?
それは、この気持ちの事か?
「お前さ、オリガがいなくなってから何かヘンだぜ」
「そ、そうか?」
「なんつーのかな、暗〜い人みたいに見えんだ。ん?もしかして、お前、オリガの事……」
「そういうのも少しあんのかな、でも、なんか違う気がする」
「お、認めた。じゃあ何が違うんだ? 」
「わからない。だから、考えてたんだ」
「ふ〜ん、きっとそれ、オリガにあったらわかるんじゃないか?」
「さぁな… やっぱりわからない。」
俺はいつからこうなったんだ?
最初はいつも明るく、おせっかいなやつだと思ってたのに。
アイツは、俺にとってなんなんだ?
- お知らせ ( No.40 )
- 日時: 2017/11/24 20:23
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
お知らせです。
次回21話は、
作者がリアルの方で忙しいので(部活、実テ… など)
12月7日以降に更新予定です。
楽しみにされていた方、その他の皆さま方
申し訳ございません。
- Re: Chage the world ( No.41 )
- 日時: 2017/12/06 21:05
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
21話 シルフ村にて
雪の国から帝国まではかなりの距離がある。
人間の徒歩で行けば、数日はかかるだろう。
そのため俺達は、飛空艇の定期便があるシルフ村へ行くことにした。
「この山登るんだよね…」
シルフ村は雪の国から約5キロのところにある。
山の山頂にあり、行くには山を登るか…
「ん? エレベーター運行時刻予定表だって」
エレベーターがあるらしい。
「お前、エレベーターは大丈夫なのか?」
「たぶん大丈夫だ。」
「ふ〜ん、飛空艇は?」
「駄目だ。絶対。」
「お、きた〜 乗ろうよ」
山の中を垂直に上がるエレベーターに俺達は乗った。
中は普通のエレベーター。快適なものだった。
「ここがシルフ村なんだね。帝国と位置関係は一緒だけど、ここもいいね」
「空気が美味し〜 」
村というよりは、街のようだった。
石レンガの家が建ち並ぶ様子は、活気のあった頃の灯の街に似ている。
風が強いのを利用しているのか、風車が多く見られる。
人々はみな、いきいきとしていた。
「定期便の時間までまだまだあるから、村でもまわろ〜」
「じゃあ、私達まわってくるね」
フレイヤとミントはどこかへ出かけて行った。
「オレ達はどーすんの」
「僕は飛空艇のパーツでも見ようと思うんだ」
「俺はここの食材でも見に行こうと思う」
「ならオレは、ついてくぜ」
…ということで村をまわることにした。
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皆様、とてつもなくお久しぶりです。
明日、実力テストが待っているという作者、和花。です。
まぁここ数週間いろいろありましてここに至ります。
どうやら、大会が始まったようですね(笑)
皆様、ぜひ投票してくださいね。
私、今、剣と魔法のログレス(アプリ版)をやっています。
w9 職;デスペ 名前;和花。 です。
この小説をお読みになっている方で、ログレスをやっていたらぜひdmをくださいね。お返ししますから。
今度、2次スレにて小説を出そうかな…
長くなってしまいましたが、お読みいただきありがとうございます。
次回もヨロシク!
- Re: Chage the world ( No.42 )
- 日時: 2017/12/07 21:16
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
22話 待ち時間
「高地トマトにシルフペッパー、スノラ米か」
「食材に詳しいね、料理できるの?」
「食材と調理器具さえあればだいたいな」
待ち時間があるため、俺達はシルフ村をまわっていた。
まず八百屋に行って新鮮な野菜を見て、次に魚屋へ行った。
平地では育ちにくい野菜などが見れて満足だ。
「なぁレオン。これはなんだ?」
「ん、これか」
見た目は丸い瓜のようだが、冷たい。おまけに硬い。
「あんちゃん達、いいやつに目をつけたね〜」
「これは雪の国の領地にできるブリザードメロンだな」
「正確には、スワルフ湖の土地だよ〜 今の時期が旬さ。どうだ、食べてみるか?」
「いいんですか? ならば」
「はいよ、お金はきっちり貰った。切ってくるから待ってな」
店のおばさんがブリザードメロンを店の奥に持って行き、切ってきてくれた。
普通の土地ではウォーターメロンと呼ばれているこの植物だが、
このような寒い土地では中が凍り、ブリザードメロンとなる。
「みずみずしいんじゃなくて、アイス感覚だな」
「水分が凍っているんだが、中にある成分がこの土地に合わせて進化して、アイスのようになっているんだ。」
「へ〜 皮も美味しいな」
あっという間に時間が過ぎていた。
さてと、戻るか。
- Re: Chage the world ( No.43 )
- 日時: 2017/12/08 22:59
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
23話 より強い力
レオン達が待ち時間を潰している頃…
「やっぱり、どう脱獄すべきかな…」
オリガは、どうやって脱獄するかを考えていた。
扉も窓がなく、時間がわからない密室。
縛られた手。
おまけに武器もない。
脱獄不可とも絶体絶命ともいう状況だった。
「お目覚めかな?」
「!?」
目線を前へ向けると、パナソがたっていた。
「この体勢疲れたんだけど… っていうかなんなのよ!」
「君にはいろいろ聞きたい事があるんだ。」
「なによ」
「単刀直入に言う。君は『世界を変える』気があるかい?」
「意味不なんだけど」
「ならば『神を眠りにつかせる』ってのはどうだい?」
「より難しいんだけど」
『世界を変える』『神を眠りにつかせる』?
さっきからよくわからないことばっかり。
「もっと簡単に言うと?」
「これが最後だ。『より強い力』は欲しいかい?幻獣や神をも超える力を」
『より強い力』か。
それさえあれば、何にでも守れるだろうか。
それさえあれば、みんなに追いつけるだろうか。
それさえあれば、私も強くなれるだろうか。
この提案を受け入れてしまえば、強くなれるだろう。
しかし、それは帝国側… 帝国を、皇帝を動かしているやつの思い通りになってしまう。もしかしたら、利用されるかもしれない。
でも、その『より強い力」を私が利用すれば一石二鳥だ。
例えば帝国に利用されたフリをして力を使えば、帝国を中から変えられるかもしれない。また、ここから出られるかもしれない。
損することよりも得することの方が大きい。
だから、私の出した答えは…
「その『より強い力』もらうことにするよ。」
「覚悟はしているかい。なにが起きても知らないよ」
その言葉、そっくりそのまま返せるような結末にしてやる。
私が頷くと、手を縛っていた縄が消え、足が床に着いた。
しばらく吊るされていたため、歩くということができるだろうか。
「こっちだ。」
ワープしてたどり着いたのは、大ホールだった。
下には大ホール全体に魔法陣が描かれている。
私は魔法陣の中心に行った。
「もう戻れはしないよ。」
「大丈夫」
「フッ。なら始めようか」
魔法陣が紅く光上がる。
「戻れたら奇跡だよ」
パナソのその言葉が聞こえた瞬間、視界が暗くなっていき、後ろに倒れた。
床に背中がつかない。
後ろに倒れ続けているのだ。
まるで深海へと沈むように。
手を伸ばせば差し込んでいるわずかな光に届きそうだけど、
それはできないものになっていた。
自分が自分で無くなるのがわかってくる。
意識が保てなくなってきたから。
次に目がさめる時はいつだろう。
その時は、君と一緒のときがいいな……
- Re: Chage the world ( No.44 )
- 日時: 2017/12/18 21:04
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
24話 (1) 他の方法
待ち時間を有効に使い、ミント達とも合流した俺達。
あとは飛空艇に乗るだけだったのだが…
「えぇ!? 帝国行き定期便はただいま運行していないの!?」
「申し訳ございません。お客様の安全を第一にしておりますので…」
なんと、定期便は運行していなかった。
確かに今の帝国は危険がいっぱいだ。
たとえ俺たちが乗れたとしても、反乱軍という事がばれてしまったら他の客にも危害が加わってしまう。そのことも考えた最善の事なのだろう。
「他に方法はないのですか?」
「他、ですか…」
受付嬢が腕を組み考える。
「飛空艇の工場へ行ってみてはどうでしょうか。レンタルなども行っていますし…」
「ありがとな。あとはオレ達でがんばるよ」
「今回は申し訳ございませんでした。では、良い旅を」
飛空艇の発着場をあとにした。
工場は地下にあった。そのためか少しくらい。
山に埋め込んであり、シャッターを開ければいつでも出発できるようになっている。
「兄ちゃん達、お客さんか?」
下で作業中の誰かが問いかけてきた。
「飛空艇のレンタルをしに来たんです。空いてるのありませんか」
「ちっと待ってろ」
しばらくすると、大きなゴーグルを首にかけた男がハシゴを登ってやってきた。
「レンタルつったな。残念だが今はねぇんだ」
「全部なのか?」
「いいや、全部じゃねぇ。問題があるが一応使えるやつはいる。そーだ、こん中に飛空艇技師はいるか?」
「僕が飛空艇技師資格を持ってます」
「ならちょっとこっち来い」
シドとゴーグルの男が奥の収納庫へ行ってしまった。
「あの… よかったら… あちらで」
「ん? 待合室?」
「お茶とか… どうぞ…」
少し気弱そうな少女が待合室まで案内してくれた。
そこで俺達は待つことにした。
- Re: Chage the world ( No.45 )
- 日時: 2017/12/19 21:10
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
24話(2)
待合室には、中央に低いテーブルと黒いソファなどが置いてあった。
作業場よりは明るく、世界地図やモニターが壁にあり事務室のようだった。
「これ… どうぞ」
「ありがとう。君、ここで働いてるの?」
「手伝い… してるだけ。お兄ちゃんがここで… 働いてるの」
気弱い… というか人見知りの少女はお茶を置いていくとどこかへ行ってしまった。
「ん、このお茶おいし〜」
とくに何かをするわけでもなく、時間が過ぎていった。
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一方その頃。
シドはゴーグルの男と収納庫の奥へ歩いて行っていた。
「こいつが例のやつだ」
「HKT−64型、ですね」
「正確には HKT−64型 改 ユピテル号だ」
見た目は白い龍のようで鋭い。
後ろに尖っている翼の下にはエンジンがある。
外見だけでは異常はないようだった。
乗降口から中に入った。
通路も金属製でシステムが起動してないせいか暗い。
階段があり、登るとコックピットだった。
メーターや非常ボタン… たくさんある。
「それで、問題とは?」
「システムは起動すんだが操作不能なんだ。それにエンジンが起動しねぇ」
「いろいろ試してもいいですか?」
「かまわねぇよ ま、頼んだぞ」
考えられる原因は2個。
1つはプログラムミス。
データに一つでも間違いがあると正常に機能しない。
「起動するには… これかな」
目の前に薄緑色の透けるモニターとキーボードが浮かび上がった。
そのモニターをタッチすることで操作ができるらしい。
『地図表示』『運転』『データ入力』『設定』と、現れた。
ここまでは正常のようだった。
「『設定』っと」
秘密裏に教えてもらったパスワードをキーボードで打ち込む。
すると英語やら数字の文字式などが現れた。
これを1から確認していく。
「久しぶりだな〜 この作業。みんなげんきかな」
帝国に所属していた頃、プログラムやパーツの組み立てをして仲間と共に『便利さ』を求めて開発していたのを思い出す。
シルフ村と同じく、帝国も山にある。帝国領の町や村は帝都を除くと地上にあったため飛空艇が欠かせなかったのだ。
そのためにできていたのが『飛空艇部門』。
より安全で快適になるように技術を高め競っていた。
あの頃が一番自由で、一番楽しかった。
「異常なし。…となるとどこかの破損かな」
2つ目は、破損。
操作不能でエンジンが起動しないとなると、どこかの線が切れているなどの破損が考えられる。
1階へ戻り、通路の床にある扉を開いた。
床下は配線やモーターなどがある飛空艇の心臓ともいう場所だった。
明かりをつけ、すみずみまで見る。
「ここが原因かな」
配線が一部ショートして切れていた。
モーターが近いことから熱を持ってしまったのだろう。
「これでどうだろう」
おまけでオイルを注し、コックピットに戻った。
下にいるゴーグルの男に合図し、システムを起動しエンジンを起動させた。
「このユピテル号、水で動くんだ…」
ゴーグルの男が両手を使って丸っと合図した。
これできっと大丈夫だろう。
「おめぇすげぇな。こいつはおめぇにやる。そうすれば目的果たせんだろ?」
「いいんですか?」
「オレがやるって言ったんだ。大切に使ってやれよ。」
「ありがとうございます」
「こいつを動かしといてやるからおめぇは仲間んとこ行ってろ」
「はい!」
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「お待たせ」
「お、シド。あの飛空艇って…」
「貰ったんだ。さて出発するよ。みんな乗って」
シドが戻ってきたのと同時にシャッターが開いた。
ユピテル号はいったいどんな飛び方をするのだろう。
酔うことを覚悟して俺達はユピテル号へ乗った。
目指すは敵の本拠地。
どんな危険があるかはわからない。
それでも俺達は行く。
- Re: Chage the world ( No.46 )
- 日時: 2017/12/25 10:36
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
25話 艇内にて
星空の綺麗なメンダ地方の夜。
艇内は薄暗く、静かだった。
ユピテル号にはたくさんの設備があった。
生活に必要なキッチンや5畳ほどの部屋が7つ。
洗面所やエンジンルーム… 困る事はないだろう。
その7つの部屋は、各自1つ使って自分の部屋にした。
コックピットへ行くとシドがいた。
操縦席に座って本を読んでいる。
「ん? どうした?」
「暇… なんだ」
「そろそろ着くけど、準備とかしたらどうだい? 備えあればなんちゃらって言うし」
なんちゃらが気になる。
「そうするか。着いたら言ってくれ」
「わかったよー」
月光が入り少し明るくなっている自分の部屋に戻った。
置いてあるのは備え付けのベッド、壁に寄り添うようにあるテーブルのみ。
剣を魔法で取り出す。
何もなかった目の前に出てきた剣を手で掴み、ベッドに座りながら手入れをする。
銀色に光り輝き、約75センチで市販で売っている物よりも大きい。しかも、俺の魔力の込め方で攻撃力が変わってくる。だから峰打ちなどが簡単にできる。
この剣のおかげでどれほど助けられたのだろう。
剣舞技もこの剣のおかげだ。なかったら生きていなかったかもしれない。
…と思いつつ剣を磨く。
刃毀れやサビは無い。しかし、大きな傷がかなり目立つ。
これは、あの時… 7年前の帝国に襲われた時についた傷だった。
この時、勝てなかったせいで傷がつき、重症を負って、みな別れてしまった。
だから、決めたんだ。
『何かを守れるような力』を手に入れて、強くなって、みんなと再会するって。
反乱軍に入って、そんな力を手に入れられたと思った。
でも、何も守れていない。
魔石や街、仲間さえも。
悔しかった。
俺は何も変われてない。
あの時から何も。
「……」
自然と視界が滲む。
『目標があるんでしょ? ならまだ頑張れる。仲間や、大切な人がいるならもっと頑張れる。人間ってのは、そんな生き物なんだから』
ふと思い出す。
院長に何回も言われた言葉。
気づけば横にフーがいた。
「ワゥー」
短い前足で俺を突いてくる。
俺には仲間がいる。
この旅を通して得た絆だってある。
『そろそろ着くよ〜』
アナウンスが流れた。
剣を魔法でしまう。
「さて、頑張るか。」
今度こそ守ってやる。
魔石も街も、仲間も約束も。
- Re: Chage the world ( No.47 )
- 日時: 2017/12/26 18:14
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
26話 ミテス監獄へ
「そういえば、普通に発着場に来て大丈夫だったの?」
「大丈夫。ここは後輩が運営してるから」
帝国の城下町の発着場。
夜のため、人気(ひとけ)がなく薄暗い。
「先輩、久しぶりっス」
ランタンを持って歩いてきた男が来た。
「お、久しぶりだねヨツバ。監視カメラとか大丈夫かい?」
「大丈夫っス。親父がわざと飛空艇調整中にハンマー投げ飛ばして壊して、今はメンテしてるんで」
すごいな… この人の父親。
「ささっと中に入ってください。渡したいものがあるんで」
「丁寧にありがとう。」
「へへっ、褒められるのも久しぶりだな〜」
事務室であろう部屋へ来た。
「これっス。酒場のマスターから貰ったっス」
酒場のマスター… 諜報活動中のディエナだろう。
渡された丸まった紙を広げる。
それはどこかの地図だった。
「ミテス監獄の地図っス。データ化します?」
「よろしく頼むよ」
後ろにあったスキャナーに紙を挟め、データ化した。
それが俺達のスマホに送られてきた。
「紙の方は証拠隠滅のためにシュレッダーにかけとくっス。そこの荷物用のエレベーターから下に降りられるっス。」
「ありがとう。」
ヨツバは手を後ろで組み、胸を張って
「ご健闘を祈るっス。先輩達、どうかご無事で!」
小声で言った。
「行ってくるね、後輩のみんなによろしく頼むよ」
俺達は、エレベーターで山を降り、すぐ近くにあるミテス監獄へ向かった。
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「あれ、行っちゃった?」
「ディエナ姉さん、来てたんっスか!?」
レオン達が監獄へ向かってすぐに、ヨツバの元へディエナが来た。
「今来たの。そういえば、水色の、髪の女の子、いた?」
走ってきたせいか息が少し切れている。
「いなかったっスよ。その子がどうしたっスか?」
「帝国兵から、聞いたんだけど、その子…」
ディエナは呼吸を整えて
「『操られてる』かもしれないの。それで、バハムートの魔石を回収したって。
さっき報告書書き手伝っててチラ見したら、その子の名前が載っててさ」
「連絡した方がいいっスか?」
ディエナは首を横に振る。
この判断が正しいのかわからない。
なぜなら…
ディエナの知っているレオンは、悩むと行動を起こす事が出来ないから。
きっと今のレオンは『助ける』という事で頭がいっぱいだろう。
だから伝えない方がいいだろう。
陰ながらに今まで見てきて、レオンにとってのオリガは大きな存在みたいだったから。オリガにとってもレオンは大きな存在だったから。
だから、みんなに任せておこうとディエナは自分に言い聞かせる。
『みんななら大丈夫』と。
やはり、小さい頃から見てきた者として少し心配だった。
大きくなったからって変わるという事は当たり前じゃない。
「ディエナ、行くなら言ってくれよ」
後ろから少し癖のある声が聞こえた。
振り向くと、毛先の鋭いみんなの姉貴的な存在だった女が階段を降りていた。
「だって急だったんだもん。しょうがないでしょー」
「だからって洗い物全部アタシに押し付けんなッ!置き手紙書くならちゃんと言ってくれ!」
気を取り直して女を真剣な表情で見つめる。
「なんだ?」
「任務を与えるね。レオン達の様子、バレないように見に行って。危なかったら助けてあげて」
「なんでそれをアタシが!?」
「ジュリィ・ティーク。これ、反乱軍としての仕事。頼むよ。じゃあ」
その場を離れる。
「アタシ、反乱軍に所属してないんだけど…」ってジュリィの声が聞こえたけど、やっぱり任せられるのはあなたしかいない。
これは反乱軍…… いや、共に見守ってきて親友だったから頼める仕事だから。
- Re: Chage the world ( No.48 )
- 日時: 2017/12/28 18:28
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
27話 贈り物
メンダ山脈のふもとにある『ミテス監獄』
石レンガの高い壁に囲まれて、中の様子は分からない。
俺達は、近くのラノリ村に隠れていた。
村長に話をし、最終準備をしていたのだ。
「この村も帝国領だって事を忘れないでね」
村長のおばさんに言われた。
「わかってますよ、こんなに帝都に近いんですから。」
「帝国人って訳ではなさそうだね、あんたら、どこ出身だい?」
「育ったのは緑の国だぜ。出身は違うけど」
「緑の国!? 私の妹を知ってるかもね」
このおばさんの妹が緑の国に?
雰囲気的に当てはまる人がいる。
赤い口紅で、昭和風のあの人。
「もしかして、オバチャンの?」
「そうだよ。そうそう、これ持ってきな」
オバチャンの姉は部屋の奥へ歩いて行くと、開けていない段ボールを取り出して持ってきた。
「あんたら、もしかして反乱軍の子たちかい? オバチャンがこれを今日送ってきたんだ。『来たら渡して』って」
ガムテープを豪快に開ける。
中に入っていたのは、どこかの鍵。
手紙も2つほど入っている。
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よぉ、久しぶりだな。
元気にしてるか? 負けてなんかいねぇか?
ボブやオバチャンからは全部聞いたぞ。
また旅にでたんだな。
再会したかった仲間には出会えたようだな。
たまには来いよ。その仲間と共にな。サービスしてやる。
フー吉も待ってるぞ
んで、本題だ。
おめぇがそこにいるって事は、監獄に用があんだな。
なぜわかるか? さぁな。俺にもわかんねぇ。カンってもんだ。
鍵があったろ?
それ、監獄の使用されてない部屋の鍵だ。
潜入すんなら使え。潜入しねぇなら隠しとけ。
持ってると少し厄介だからな。
感謝すんなら妖精にしろ。
その鍵はいつの間にか店にあったんだ。
前にはなかったのにな。
だから感謝すんなら妖精にしろよ。俺じゃなくて
頑張れよ。フー吉亭 店主リベロ
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1つ目の鍵は、リベロからのものだった。
あいかわらずなんでも妖精のせいにしているようだった。
「リベロさん、元気そうだね」
「元気なかったらこっちが調子狂うけどな」
「2つ目の手紙もあるよ」
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みなさん、お元気ですか?
緑の国兵士団団長のルミネです。
最近はドジってないですよ!!
プレゼントの鍵はリベロさんの手紙で説明されてたと思うので、
私は情報をみなさんにプレゼントします。
昨日までの情報です。
ジェシィさんが持ってきてくれました。
ほとんど監獄についてです。
・監獄には、脱走者用のモンスターがいる。かなり強め。
・パスワードは『ラーメンの具』
・白い部屋は入ったら最後。
・監視カメラの数は5個。指令室で電源OFFにできる。
こんな感じです。
みなさん、絶対に生きて帰ってきてくださいね。
陛下、たまには連絡してあげてください。
ルニルさんが怒ってますよ(笑)
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「あ… やべ…」
フレイは何かを思い出したようだった。
「ルニルさんって?」
「フレイといい感じの人。レヴェリーで働いてるよ」
「そうなんだ〜」
フレイヤはフレイに近ずいていき笑顔で
「女は、怖いよ」
と言った。
潜入という大きなことをやる前に、こんな雰囲気にして良かったのだろうか。
まぁ、フレイは落ち込ませといていいのだが。
「そろそろ深夜の2時だよ。潜入するにはちょうどいいけど、いくのかい?」
「行きます。色々とありがとうございました」
「じゃあいってらっしゃい。気をつけるんだよ。」
オバチャンの姉に見送られて静かに村を去った。
月光のおかげで平原は明るい。モンスターはいるが。
正方形となっている監獄の壁の一つに扉らしき物があった。
そこで鍵を使い、中に入った。
- Re: Chage the world ( No.49 )
- 日時: 2018/02/16 09:02
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
28話(1) 潜入
リベロから貰った鍵を使い、ミテス監獄の中へ入った。
扉を開いた先は暗い部屋。少し広く奥にある扉からわずかに光が中へ入っている。
「暗くちゃ何もできねぇだろ」
フレイが魔法を瞬時に詠唱した。
出てきたのは手乗りサイズの火でできている猪。
…ちなみに子供連れだ。
「1人1匹使えばろうそく代わりになる。そんでこの部屋を探索しようぜ」
「そうだね。というかお兄ちゃん、こんなカワイイの作れるんだ…」
火猪(ひのしし)を使い辺りを探索する。
ところどころ蜘蛛の巣やホコリがあったりとこの部屋が使われてないことがよくわかる。
「ワゥ」
「どうした? フー」
「きゃぷ〜」
フーの向く方向に大きな段ボールがあった。
中は… ここの軍服だ。ヘルメットもあるおかげで変装できる。
「これ、使えるな」
「ワゥ」
「どうしたんだ? レオン」
「これ、使えそうだろ?」
「そうだな。さてと」
フレイの持っていた親の火猪の元に子供の火猪が集まる。
それと同時に皆集まる。
「使えそうだね」
「何着あるの?」
「……5着。全員着れるよ。」
「さてと、着替えるか!」
サイズはちょうどいい。
しかし微妙に汗臭かったりホコリ臭かったりした。
「火猪、ありがとな」
火猪が消えた。そしてわずかに光が入ってきている扉により、耳をすませる。
足音はしない。人の気配もしない。
「班に分かれようぜ。指令室に行くのは…」
「僕でいいかな。あと… レオン」
「それで決定だな。んじゃ、いろいろまわるのはオレ達でいいよな」
「え… お兄ちゃんと一緒…」
「ワガママ言わないの。」
「はーい」
扉を開くと誰もいなかった。
ラッキーな事に監視カメラもない。
「オレ達はコッチから行く。じゃあな」
フレイ達は俺達と反対方向にばらけて行った。
「さて、僕たちはあっちだね。指令室は…あそこかな?」
昼か夜かもわからなくなるただ真っ白い廊下。
ヨツバから貰った地図によると、この廊下の突き当たりの部屋が指令室らしい。
「どうやらこのエリアは、ここで働く人の生活のためのエリアのようだね」
「なぜわかるんだ?」
「シャワールームに食堂。生活に必要な施設ばっかりだからさ」
監視兵とすれ違うこともあったが、特に何もなく指令室へついた。
中には誰もいない。これでいいのだろうか。
「これをこうして… よし、電源OFFっと」
モニターに映っていた画面が消える。
「そういえばなんで俺を指名したんだ?」
「単純に言うよ。オリガを助けられそうだから。」
「あいつなら1人でも大丈夫じゃ…」
「違うんだ。今日の…」
シドの言葉が突如鳴った警報で遮られた。
『侵入者発見。侵入者発見。直ちに西入口付近へ移動せよ』
「俺達の事がばれたのか?」
「さっきのモニターを見たとき、僕達とは別に1人いたんだ。きっとその人。」
「君たちも西入口に行って!」
「は、はい」
見回りに来た兵士がこちらにもやってきたようだ。
「レオン、行くんだ。」
「シドは?」
「僕は西入口に行く。怪しまれないようにするためにね。」
「そうか、じゃあ」
「そうそう、望んでいない出会い方をしても決して諦めないでね」
「何のことだ?」
「まぁ、あとで」
シドは出て行った。
さて、俺も行くか。
とりあえず、右に。
- 年末の挨拶 ( No.50 )
- 日時: 2017/12/30 21:54
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
今回で今年の更新も終わりです。
ですのでここでは年末の挨拶をさせていただきます。
皆様、おはこんばんは(おはようとこんにちはとこんばんはを合体させました)
CTWの作者の和花。です。
なぜ急に挨拶を?
それは29話(1400字ほど)を書いていたのですが、消えたからです。
新しく新年に書き直します。
(ジュリィを登場させようとすると毎回何かあって消えて没になってしまうんですよね…)
気を取り直して。
いつもこの物語を読んでいただきありがとうございます。
なんと、8月26日に始まってから約4カ月で閲覧数が700を突破!
うん、めでたい。
小説書き初心者なのにこんなにも見てくださるなんてありがたいです。
(閲覧数なので読んでるとは限らないので見ているという表現にしました)
ぜひ投票もよろしくお願いします。
次に、物語について。
だいぶ前に4章に突入したCTWですが、まだまだ4章続きます。
章名が【それぞれの思い】なだけあって、いろいろ入れたいんです。
たぶん、1000字以上が多くなります。
先に言っときます。
10章もいかないかもしれません(汗)
今のところ物語は中ですが、もうそろそろ後半になる予定です。
頭の中でいろいろ考えてますけど、やっぱり10章までいかないかもしれません。
他の作者様に比べて設定がややこしいのに、物語が短くてスミマセン。
必ず完結はさせます。
オリガファンの方!(推しキャラいるのかな…)
いつまでも仲間に合流しなくてすみません。
次回、ファンならきっと望んでない出し方をしますが、悲しまないでください。
よく読んでいれば、今のオリガの状況がわかりますけど…(26話参照)
人気キャラ投票を【CTWいろいろ募集】(リク依頼・相談掲示板)にてやります。(12月31日〜1月31日まで)
投票のしかたは簡単。
【CTWいろいろ募集】のスレッドにて、コメント欄に名前とキャラの名前を書くだけ。(1人2票まで)
よろしくお願いします。
後に【CTWいろいろ募集】のスレッドで詳しく書きます。
ーお知らせー
まだまだ先ですが、この物語が完結したら続編出します。
お楽しみに〜
さて、挨拶はここまでにします。
みなさん、次の年に会いましょう!
良いお年を。
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.51 )
- 日時: 2018/02/16 09:00
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
28話(2) 望まぬ出会い方
警報が鳴り続き兵士達が西入口へ走っていく中、俺は兵士達と反対の方向へ走っていた。スマホの画面に表示されている電子化された地図を見ながら。
「西入口はあっちだぞ」
前方から走ってきた兵士が話しかけてきた。
ここは、上手く誤魔化さなければ。
「先ほど西入口に行ったのですが、『先輩に東入口へ行き、挟み討ちしろ。まぁそんな事が起こりはしないがもしもの保険だ』と言われたのです。だから東入口へ向かっています」
「お前1人で大丈夫なのか?」
「はい。こう見えても剣術1級持ちですから」
「… 任せたぞ」
兵士は走って行った。
その後も何度も兵士とすれ違ったが、何も言われなかった。
右へ行ったり左へ行ったりと、兵士達は見た感じだと迷っているようだった。
そんな兵士達を潜り抜け、長い廊下の突き当たりに大きな部屋があるのが見えてきた。地図で確認すると、そこの部屋は『大ホール』らしい。
俺は、迷わず扉を開いた。
床に描かれた大きな魔法陣が紅く光っている。
その魔法陣の真ん中に人が立っている。
あの後ろ姿は… 間違いなく…
「オリガ… ?」
水色の髪に、白色のバンダナ。その特徴は間違いなくオリガだった。
しかし、呼びかけに反応がない。それに、雰囲気が全く違う。
大ホールの床がピキピキと音をたてながら凍り始めた。
この戦法はオリガの得意とするものだった。
「マジか…」
剣を取り出し構える。
その瞬間、氷塊が襲いかかってきた。
飛んできた氷塊を避け、壊しつつオリガに近づく。
オリガは槍を構えて魔法をずっと詠唱し続けている。
無限に氷塊は現れ、襲いかかってきていた。
アイツは、自分の意思でやっているのか?
「剣舞技、火炎!」
剣に魔力を込め、火を宿す。
そして、オリガの背後に一気に近づいて剣を振るった。
金属のぶつかる音が大ホールに響いた。
槍を使って弾かれてしまった。
オリガの瞳は紅くなっていた。
確認できた。
昔に一度だけ、アイツと戦った事があった。なぜだかわからないが、その時も同じように瞳の色が紅くなり襲ってきた。
あの時は院長が不在だったから、俺1人で戦った。どうすればいいかよくわからなかったので自分を守るためにアイツに剣を振るい、正気に戻らせると同時に一生残る傷をつけてしまったのだった。
剣と槍がぶつかる衝撃で、風が一瞬だけ起こる。
風でオリガの服が一瞬めくられお腹が見えた。
そこにあったのは俺のつけた傷と、魔法陣と同じく紅く光るまがまがしい刻印。
見つけた、という気の緩みが出てしまったせいか、弾き飛ばされてしまった。
壁に打ち付けられたがすぐに立ち上がり、さっきのように近づく。
今度こそ、傷付けずに助けてやる。
「魔封剣、峰打ち!」
オリガに剣から放たれた波動が当たる。
この合わせ技なら気を失ってしまうが、刻印は封じ込めるはず。
傷がつかないようにできただろうか。
そんな心配を胸にオリガの元へ走る。
倒れる寸前に間に合い、抱きしめ支える。
床に横にしてやり、回復薬を飲ませた。
腹の刻印は消えていなかった。
ただ、光は失っている。魔封剣の効果だろう。
心配なのは、峰打ちができたかということのみ。
「…あれ? ってレオン!?」
「あれ? ってなんだよ。」
オリガは正気を取り戻し、立ち上がった。
心配して損をした気分だ。
前よりも元気になっている。
「レオン、ありがと」
「……」
「もしかして、照れてる?」
「照れてない!ったく、大変だったんだからな」
オリガと会話したら、なんだか、心の中にあった霧が晴れたような気がした。
…きっと安心しているんだろう。
前は心配なんかしないで、『アイツなら大丈夫』と思えてた。だけど今回は『助けなきゃ』って自然に思えた。
相手が帝国だからか? 仲間だからか?
いや、もっと別の事のような気がする。
わかりそうでやっぱりわからない。
「素直になりなよ〜」
「照れてないからな。さてと、フレイ達と合流するぞ」
「みんなで来てくれたんだ」
「仲間だからな。あとで話、聞かせろよ」
「はーい」
遠くから重い音がするのに気付かないまま、俺とオリガは大ホールを後にした。
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.52 )
- 日時: 2018/01/08 13:40
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
お知らせ
次回の更新は、1月13日以降になります。
理由は、1年間で一番大切なテストがあるからです。
キャラ投票待ってまーす
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.53 )
- 日時: 2018/01/13 22:33
- 名前: 通称:中二病 (ID: qgJatE7N)
アドバイスなどをもらったので、文法などの勉強になると思い、3話ぐらいまで拝読させていただきました。僕も異世界ファンタジー系が好きなので、これからも拝読させていただきます。あと、戦闘シーンの表現などのポイント的なものを教えて頂ければ幸いです。
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.54 )
- 日時: 2018/01/14 19:40
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
通称:中二病 様
了解です。
通称:中二病 様のスレッドにて返信しておきます。
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.55 )
- 日時: 2018/01/14 21:15
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
29話 脱出
「ん? なんだろ」
先ほどから、遠くからこちらへ走ってくる音が聞こえていた。
それにオリガも気がついたのだろう。
「もしかして…」
「何かわかんの?」
情報の中に『脱獄者用のモンスター』的なものがあったような気がする。
その事を伝えた。
「そうなんだ… アレが…」
オリガが指をさした方向に、鋭く尖った角の生えた大きな牛のようなモンスターがこちらへ向かってきていた。
「お〜い、無事か〜」
そのモンスターの前には、フレイとフレイヤ、シドとミントと人の女性が必死に走ってきていた。
「無事だよ… って、ちょっと何連れてきてんのよ!」
「ちっと厄介な事があってよ〜」
すると女性は走ったまま後ろを向き、カードを手に挟み、モンスターへ向かって叫んだ。
「死神のカード、停止しろッ」
少し癖のある声。それは、聞いた事あった。
モンスターは停止した。命が尽きてはいないようだ。
「レオン、東入口から脱出だ!」
「わかった」
角を曲がり、すぐのところにある東入口。
俺達もそこへ向かって走り出した。
東入口に着きフレイ達とも合流すると、モンスターが立ち上がる音がした。
「さ〜て、瞬間移動するよ」
女性が取り出したのは、テレポート石…略して『テレポ石』と呼ばれるものだった。
それを地面に投げつけ1秒ほどたったら、風景は変わり、発着場となっていた。
「飛ばされたのがココで良かった…」
ミントが胸をなでおろす。
テレポ石は、行きたい場所のどこに瞬間移動するか不明という欠点があるからだろう。
「おぉ、皆さんおかえりっス」
ヨツバがこちらへ気づき、歩み寄ってきた。ディエナも一緒だ。
「おかえり、ジュリィ」
「別にレオン達、大丈夫だったぞ」
ディエナに呼ばれた女性… ジュリィ・ティーク。
俺の1つ上で、少し男勝りで賭け事が好きだったやつのはずだ。
ジェシィと共に昔、よく遊んでいた。
ジュリィはこちらを向き、ニコッと笑った。
「これからもお前らに、ついていくからな」
「え、なんで」
「心配なんだとよ、ディエナが」
ディエナがそっぽを向く。だが、すぐ戻った。
その時、フレイのスマホの着信音が鳴った。
「ん? もしもし。…なんだって!?」
すぐに電話をきり、内容を言ってくれた。
「ルミネからだったんだけどよ、今すぐに緑の国へ来いだってよ」
「な、なんで?」
「帝国に襲撃された。あん時みたいにだってよ。しかも… バハムートを使ってだ」
バハムート。それは、幻獣の中で1、2位を争うぐらいの強さを持つ竜王の名だった。
その名だけで、どれほど大変なのか想像はつく。
「行ってきな。各地にいる軍のメンバーには私から言っておくから」
「先輩、頑張ってください」
「了解だよ。そっちも頑張ってね」
急いでユピテル号に乗り、エンジンをかける。
最大速度で緑の国へ俺達は向かった。
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.56 )
- 日時: 2018/01/22 18:28
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
29.5話 あの日の続き
「今回は何が目的なんだ…?」
コックピットから遠くの方で夜空が紅く光り、煙がたっているのが見えた。
緑の国が襲撃されている。聞いていたことが景色で目に入り、どんどん現実味を帯びてきた。
俺達が経験した7年前のあの日… 緑の国襲撃事件の続きが始まってしまった。
事件の時の帝国の目的は『反乱軍の壊滅』だったため、関わりの深かった孤児院が集中的に襲われた。
だが今回はバハムートを使い、国事態を襲っている。
再びルミネからの電話がかかってきた。
「メェ〜村など近辺の村などにも避難を要請しときました」
「都市のやつ達は?」
「城の地下にて避難しています。」
「戦状は?」
「レヴェリーからの派遣要員、反乱軍の皆様などで応戦していますが、バハムートの攻撃による被害が… ちょっと電話きります」
剣を取り出す音と共に電話が切れた。
「心あたりとか、あんの? ほら、国宝とか」
「国宝… あるって言われてっけど、実物は確認されてない」
「ふーん、お兄ちゃん、ホント〜?」
「そんな目で見んな! あるかもしれねぇって思っちまうだろ…」
フレイの口調からないのだろうと予測できる。
「まぁ、と・も・か・く、オレ達の故郷がピンチなんだ。準備はいいな。」
みな頷く。思いは同じだった。
「よし、行くぜ」
ユピテル号をジャングルの中で停め、俺達は緑の国へ走り出した。
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.57 )
- 日時: 2018/01/31 08:07
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
お知らせ
作者のリアルでの都合により、連載が遅れます。
これに伴い、キャラ投票も延長させていただきます。
申し訳ございません
- Re: Chage the world ( No.58 )
- 日時: 2018/02/02 11:58
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
30話 戦いへ
壁に囲まれた国内では、帝国兵達と戦っている者がたくさんいた。
建物は燃え盛り黒煙を上げている。また石レンガの塀は崩れ、ところどころの道をふさいでいる。
上空には漆黒の翼を広げた竜……バハムートが飛んでいた。
「いったん隠れよう」
手の甲に火の粉が当たる。だが、そのような事を気にしてられなどいない。
帝国兵や辺りに散らばる亡骸をよけ、少し大きな建物の裏に隠れた。
「シド、ちょっと手伝ってくれないか?」
小声でフレイが問う。
「いいけど、何を?」
「城の地下図書館へ来て欲しいんだ、話はそこ…」
フレイの声を遮るかのように、近くで連続音が聞こえた。
銃を持った誰かがいる。ここで見つかったら命はないだろう。
「だいたいわかったよ。手伝えばいいんだね」
フレイが頷くと「時間を稼いでくれ」と俺達に言い残しシドと共に城へ走って行った。
時間を稼ぐ… この状況だと戦えという事だった。
とりあえずここは、
「分散して帝国兵と戦う。それでいいか?」
「OKだ、じゃあ、行ってくるから」
ジュリィはタロットカードの札を何枚か浮かせ、歩いて行った。
その余裕が少し心配だ。
「レオン、私とフレイヤって一緒に行動していいかな」
提案してきたのはミントだった。
ミントの鞭は、攻撃範囲は広いが威力が弱い。フレイヤの銃は弾1発分の威力は強いが、リロードに時間がかかる。弱点を互いに補うための判断だろう。
「かまわない。行けるか?」
「準備は大丈夫だよ〜」
「こっちもOK」
フレイヤとミントもジュリィとは反対の方向に走って行った。
残るは俺とオリガだけ。
「それじゃあ私も行ってくるとしよっかな」
オリガは形見の槍を取り出し、上空を見た。
いや、屋根までの距離を確認しているようだ。
「屋根の方で戦うのか?」
「まわりが見やすいし、状況も把握できる。私の得意な場所だからね」
「だが裏を返せば見つかりやすいという事になる。おまけに腹の刻印は消えてない。…無理をするなよ」
オリガが一瞬戸惑う。俺は何か変なことでも言っただろうか。
「どうした」
「いや、ちょっとね… レオンが私のこと心配してくれた事にビックリしてね…」
「そうか?」
「ま、まぁ気を取り直して! まわりをよく見るし、無理もしないでがんばるから! ただ… 生きて戻ってこよう」
「もちろんだ。約束、覚えているからな」
オリガは屋根までジャンプし、走って行った。
さて、俺も行くとするか。
- 閲覧数1000突破! ( No.59 )
- 日時: 2018/02/05 20:39
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
今回は、コメントです。
気がついたら、閲覧数が1000超えていました!
皆様、ありがとうございます。
リアルの方で学級員長を務めたり… などと忙しく小説カキコに行けなかったにも関わらず、更新できなかったにもかかわらず、見にきてくれたり、開いてくれたり… などとしていただいた方、しつこいようですが本当にありがとうございます。
これからも頑張っていきますので、CTWをよろしくお願いします。
- 2017年冬の小説大会にて銅賞を受賞しました ( No.60 )
- 日時: 2018/02/06 21:07
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
またまたコメントとなってしまいます。
物語を書こうと思っているのですが、いつも愛用しているキーボードが不調でして…
タブレットとかで画面に表示されるキーボードでしか文章を打てません。
明日ぐらいには大丈夫になるはずですので、お待ちください。
さて、本題へ。
2017年冬の小説大会にて銅賞を受賞しました!
投票していただいた皆様、本当にありがとうございました。
銅賞を受賞できた… という事は、読んでくださっている方がいるという事でいいですよね。
趣味で書いているものなのに読んでくださって嬉しいです。
今年中にたぶん続編(CTW2)を書けると思います。
だいぶ先になります。お待ちください。
連載約半年で、このような賞を貰えるとは思っていませんでした。
これからも頑張っていきますので、CTWシリーズをよろしくお願いします。
- Re: Chage the world ( No.63 )
- 日時: 2018/02/08 19:23
- 名前: 流聖 (ID: tOdZcpTQ)
同級生だよ!和花ちゃん!コメントが投稿できたよ!これで今までの思いを伝えられるんだね❗すごいよ!面白い!同級生にこんなすごい子がいるなんて嬉しい!これからも頑張ってね❗アイアムアPマン❕
- Re: Chage the world ( No.64 )
- 日時: 2018/02/09 20:46
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
コメントの返信
流聖さん(一応さんにしといた(笑)) うん、同級生だね!
これからも頑張るよ〜
コメントで文字化けしてるところがあるね〜(同じコメントが2つもある!?)
そこはコメントの右下の【修正 削除】って所からとんだページで自分の入れたパスワードを入れると、修正・削除ができます。面倒だけど、頑張って!
あと、改行するといいよ〜
リアルでもこっちでも、改めてよろしくね
- Re: Chage the world ( No.65 )
- 日時: 2018/02/13 17:46
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
長らくお待たせしました。31話です。
31話 緑の国の伝説
緑の国の城の図書館。
一部の者しか入れないその図書館には、緑の国の歴史、国宝、伝説… について詳しく書いてある本が眠っている。
地下へと続く螺旋階段を降り、オレとシドは図書館へ入った。
木製の古いドアを開けた先は真っ暗だった。
火猪を出し、辺りを見渡す。
ところどころ石レンガの壁にはヒビが入り、隅には蜘蛛の巣がかかっている。
本棚も埃をかぶり、長年使われていなかった事がよくわかる。
「スイッチはっと。コレか?」
壁にあったスイッチを押すと、辺りは明るくなった。
中央には使い込まれた茶色の木製の机と椅子が4つ。それを囲むように本棚が並んでいた。
「ここで何を探すのかい?」
「【緑国伝説書】っていうこの国の伝説が書かれている本。オレの記憶が正しけりゃここにあるはずなんだ。」
孤児院にいた頃、フレイヤとオレと女王様と院長で特別にここにきた事がある。
なんの用があってここに来たかは覚えていないが、
『緑の国が危機に陥った時、ここの【緑国伝説書】を探しなさい。きっと’’ある幻獣’’の元へ導いてくれるわ』
と女王様に言われたのだけは覚えている。
’’ある幻獣’’とは何なのかわからない。だが、今、この状況を覆すにはその力が必要だと自然と思えた。
「ら、り…… うげ、り から始まる本はこんなにあんのかよ」
「りょ だから り の最後の方だと思うよ。普通の順番だったら」
りょ から始まる本は見た感じだと約100冊。
この量を2人なら、短時間で見つかるだろう。
「これかな?」
見つけたのはシドだった。
他の本とは違う材質の表紙で、【緑国伝説書】と書いてある。間違いなく、この本だろう。
中央にある机に持って行き本を開くと、目次が目に入った。
関係ありそうなのは、256ページ。
256ページを開く。すると、伝承のようなものが載っていた。
『多次元宇宙より来し機竜 この地に降りし 石となりて眠りこの地を守らん 悪と対峙せし刻 善となりて 悪を伐つ その名は アポロン』
「アポロン…? 聞いたことないな」
「続きを読んでみようぜ」
更にページをめくる。
『機竜は待つ 共に戦いし者の血を引く者を この地に伝わりし秘宝を 目覚めの刻を』
’’ある幻獣’’とは、多次元宇宙より来た機竜… アポロンという事はわかった。
この伝承が正しいのならば、この地…緑の国のどこかに石となって守っているということになる。
また、眠りから目覚めさせるためには『共に戦いし者の血を引く者』が『この地に伝わりし秘宝』を使わなければならない事にもなる。
「フレイ… 確かここの王様だったよね。何かわかるかい?」
「『この地に伝わりし秘宝』ってのはわかるんだけどよ、それ以外がわからない」
『この地に伝わりし秘宝』というのには、心当たりがあった。
それは、この地の王… 緑の国の王となりし者しか知らない国宝のことだろう。
「そういえば石となって守ってるってあったよね。これはあくまで推測だけど、石って石像の事を指してるんだと思うんだ。守るという事は、見ているという事にもなる。」
機竜、石像、秘宝… ん?
「わかったッ!」
シドの話を途中で遮ってしまったが、わかった。
とある場所に心当たりがある。
「昔よく遊んでいた場所に、機械みたいな竜の石像があってその石像の台の丸いとこに欠けている部分があったんだ。んで、その欠けている部分の形が国宝とピッタリなんだ」
「はめるってことかな」
「きっとそうだ。よし、広場へ行くぞ!」
「国宝、忘れないように」
「おっと危ねぇ」
なんだか頭の中がスッキリした。
これでやっとバハムートに対抗できる。それにこの国を守るという事で、恩返しがやっとできるのだから。
- Re: Chage the world ( No.66 )
- 日時: 2018/02/13 18:42
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
32話(1)生きた証
フレイヤと共に行動するのは何度目だろう?
孤児院の時も、この旅でもだいたい一緒にいる。まぁ、オリガもだけど。
ただ、フレイヤといる時だけは少し違う。
なんだか気持ちが緩んで、同い年だから言える話だってしちゃう。しかも共感できちゃう。
足りない部分も補えて、戦いでも楽しかったりする。
だから、今回も私はフレイヤを選んだんだろうなぁ。
「見えてる?」
「ん?」
「ぼーっとしてたからさ〜」
帝国兵を’’戦えない状態’’にし、いろんな所から音がする中休憩していた私達。
フレイヤは弾の補充、私は鞭の確認をしていた。
「’’戦えない状態’’にするのはもう慣れてきたな〜」
「人の命を奪わないのが反乱軍だからね」
人の命を奪わない… それが反乱軍の掟。
命を奪うということは、その者の’’生きた証’’を残さずこの世から消すということになる。
また、新たな憎しみや恨みを作ってしまうことに繋がる。
だから、前の反乱軍の長… 女王様がそのような掟を作ったのだろう。
「’’生きた証’’ね…」
「どーしたの?」
「私がもしこの世から消えてしまうってなった時、私の’’生きた証’’は残せるかな…って思ってさ」
「死亡フラグ? こんな時にそんなの考えるって」
「まさか〜 私はバリバリ元気だよ! ケガだってしてないし! ただ、帝国兵と戦ってて思っただけ。」
「なら良かった〜 私、そんな事になったら泣いちゃうもん」
ここが戦場だからこそ笑いあえるのだろう。
「さて、次行こうか」
「この兵士達、目が覚めたらキリがないんじゃない?」
「大丈夫。 目が覚めたら状態異常魔法のどれかがかかるようにしてあるから」
これでよしっと。
毒や呪い… いろんな状態異常魔法のどれがかかるか少し楽しみだ。
かかったらきっと一度は軍の拠点の救護室へ向かうだろう。
『用心深い兵以外は、状態異常を治す薬類を持たない』という事を事前にオリガに聞いておいて良かった。
念のために、薬類を持っていないか探して没収もしたので大丈夫だろう。
「次ってどこ行くの〜?」
「バハムートの所とか。まぁ、みんなと合流しながら行こっかな〜」
「バハムート!? 竜王様だし、幻獣でもトップクラスだし、暴走中なのに!?」
「大丈夫だよ、きっと。私達には仲間だって幻獣だっている。だから… ね?」
遠い昔、世界が1つだった頃に人間と幻獣が協力して、いろんなのに立ち向かったって話がいくつもある。
それで起こってしまった戦争で幻獣と人は別れてしまったけれど、再び協力できると私は信じてる。
それが召喚士や守り人、神の力を受け継ぐ人達… 様々な種族の人達が目指してる事なのだから。
そうだよね。お守りの中の人…
- Re: Chage the world ( No.67 )
- 日時: 2018/02/14 11:28
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
32話(2) 合流
「ん? 月のカード。幻想でも見てな」
向かった先にいたのは、ジュリィだった。
周りを囲んでいた兵士が次々と倒れていく。幻想に囚われたのだろう。
「ジュリィだ〜」
「お、フレイヤにミント。そっちは終わったのか?」
「うん。終わったよ」
バハムートや飛空挺がいる方を南とし、城の方を北とすると、私達がいるのは西側。
私とフレイヤは南西を、ジュリィは北西を担当し両方とも鎮圧したので西側の心配はもうない。
「気づいたんだけど、帝国兵達が援軍を呼ばない理由」
「なになに〜?」
「バハムートの時間稼ぎらしい。反乱軍の掟を利用したね。他にも…」
そこからジュリィはたくさんの事を話してくれた。
時間稼ぎ以外の理由。次にどこが狙われるか…
どれも全て、帝国兵が耳につけている通信機から入手したものらしい。
「つまり、次はレオンのいる北東に行けばいいってこと?」
「そうなる。さーて、行こうか」
城門前を通り、北東… 商店街の方へ行く。
私達のいた住宅街とは違い、メイン通りの幅は広く、直線に長い。無駄に周りを警戒しなくて済む。
「レオン、大丈夫か?」
「そっちこそな」
レオンは剣舞技の中で少し威力の強い、龍の名を冠する技で戦っていた。
まとまっている帝国兵に向けて、レオンの放った水龍が飛んでいく。
「思ったんだけどさ、その技って全部龍に任せてない?」
「攻撃するのは龍だが、操ったり生成したりするのは俺だ。大変なんだぞ」
「ふ〜ん、そうなんだ」
結局、自分は直接攻撃してないじゃない。
まぁ、それは置いといて。
「ここらへんは片付いた。そっちは大丈夫なんだよな」
「もちろんさ」
「じゃあ、次は南東…オリガの所だね」
「南東は飛空挺から降りてくる帝国兵が多い。オリガと同じく屋根で戦う事になるぞ」
あたりを見回す。屋根へ登れそうなのは… 花屋横にある宿屋の階段。
「あれしかなさそうだね」
「行こ〜」
オレンジ色の屋根へ登ると、国のほとんどが見えた。
そんなか、飛空挺から降りてくる帝国兵と戦っていたのはオリガとメイスを振り回す少年。
あの少年はきっと…
「赤髪にメイス… ノアかな!?」
何事にも積極的で明るく、いつもヘラヘラしていた赤髪の少年… ノア・マルティネス。
オリガと仲が良く、少しの間、孤児院で共に生活した仲間。
里親が見つかって別れて何年ぶりだろう。
「おぉ、レオンとか久しぶりだなぁ! こんな時に会えるだなんて、ついてないな」
「再会を喜んでる暇があったら、あの集団を止めたらどうだ?」
オリガとノアの目の前には、帝国兵の集団が迫ってきていた。
最後の時間稼ぎ… というよりは、こちらを潰そうとしているようだった。
「メンバーが増えたことだし、もうひと頑張り!」
オリガは槍を1回転して持ち直し、帝国兵の集団へ襲いかかった。
それに続くように私達も戦う。
フレイ達は今、何をしているだろうか。
「時間稼ぎをしろ」と言われてから何分経ったのだろう。
…また考え事をしてしまった。戦闘中に。
「これで… 最後ッ!」
息切れがする。私達は何十人の帝国兵と戦ったのだろう。
最後の1人を’’戦えない状態’’にした途端、今までの疲れが出てきた。
体への影響は疲れだけではなく、傷が痛み出すというものもあった。また服も汚れたり切れていたり、自分の武器も傷ついたり痛んだりしていた。
「疲れた〜」
「まだ、大物が、いるけどね…」
「いったん拠点へ戻ろう。疲れただろ?」
ノアの提案を受け入れることにした。
国から少し離れていた拠点は、反乱軍のアジト… 孤児院だった。
そこでは避難者、怪我人、反乱軍の者… いろんな人が協力し助け合っていた。
「なぁ、疑問に思ってたんだけどさ。なんで拠点を攻撃しちゃダメなんだ?」
ノアが聞いてくる。その様な事もわからずに戦っていたのか…
「世界が4つに別れた時、結ばれた協定があるでしょ」
「確か、’’4大陸協定’’だったよね?」
会話にオリガも入ってきた。
「アタリだよ、オリガ」
「世界のジョウシキってやつでしょ、わかんないだなんてねぇ」
ノアがボソッと「マジか…」と呟いたのは、確かに聞こえた。
さて、話を戻そう。
「その’’4大陸協定’’では、戦いの事についてもあるの。それで、『相手の拠点への攻撃及び侵入を禁ずる』というのがあるから… わかったよね?」
確認も含めてノアに言う。
しかし、ノアは壁に寄りかかって寝ていた。
「あはは、寝てるね」
「相変わらずみたいだね」
笑うしかない。
「ノアー! 仕事!」
「は、はい!?」
ジェシィに呼ばれると、ノアはビクッとして起き走って行った。
過去に何かあったのだろうか。こんなに年下に弱いノアは初めてだった。
向こうでは、ジェシィが何かを訴えている。ここでノアとはお別れだろう。
まるでノアと入れ替わるかの様にジュリィがやってきた。
「妹さんに合わなくていいの?」
「大丈夫さ。アイツは私がいなくとも」
そんな時、レオンとフレイヤもやってきた。
「どうした?」
「お兄ちゃん達の準備が終わったって。機械みたいな竜の石像まで来てだって」
「了解だよ」
何をする気だかはわからない。
でも、バハムートをどうにかできる様な気がした。
拠点を後にする。
目指すは、小さい頃よく遊んだ場所の1つ。中央広場へ。
- Re: Chage the world ( No.68 )
- 日時: 2018/02/15 12:17
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
32話(3)幻獣と共に
「総員撤退せよ!」
帝国軍がバハムートだけを置いて撤退していく。
日の昇る方がだんだんと明るくなっていく。
もう少しで夜が明ける。きっとこの戦いも終わるだろう。
「お〜い、早く来いよ〜」
道の先にある少し広い所… 中央広場でフレイとシドは待っていた。
2人の後ろにあるのは機械みたいな竜の石像。
何か、関係あるのだろうか。
「何をする気だ?」
「『この地に伝わりし秘宝』… 国宝を使って、幻獣アポロンを召喚する。たぶん、バハムートに対抗できる」
聞いたことの無い幻獣だった。
とりあえず、ここはフレイに任せてみよう。
「国宝っと。これをこう… なんだ!?」
真横にバハムートの衝撃波が降ってきた。
上空を飛びながら衝撃波を次々と放ってくる。石像を狙っているみたいだ。
「シド、防壁魔法を頼む。レオンとかはバハムートの狙いをこちらから離してくれ!」
「わかった」
シドが防壁魔法を詠唱したのを確認し、バハムートへの攻撃を開始した。
自分の武器や魔法で攻撃する。しかし、バハムートの見えないバリアによってダメージが与えられない。
他に方法が無いのか… そう思った時だった。
「我らを使うのだ…」
どこからか声が聞こえた。
「誰…?」
ポケットの中が光る。いや、ポケットの中に入っていたお守りの中の石が光る。
小さい頃、ひいおじいちゃんから貰ったお守り。『時が来れば、効果が現われる』と言われたようなきがする。
ポケットから取り出し、石に魔力を込める。まるで魔石を使う時のように。
「誰だかわからないけど、お願い!」
石を空へ投げる。目がやられるほどの輝きを一瞬放つと、無属性特有の薄い灰色に輝く魔石となった。
そして現れたのは…
「幻獣王… オーディン!?」
「使ってくれてありがとう。お主達と共に我らも戦おうではないか」
オーディンが言い放つと、皆の持っていた魔石が輝き、召喚獣として姿が現れる。
イフリートにフェニックス、コールドとフェンリル、バイウ・カハの三姉妹。
今、私達が仲間にしている幻獣がここに集った。
「王様!? まだ仲間にされてなかったんじゃないの!?」
「う〜ん… コールド、私じゃ答えられない」
「おう、久しぶりだな焼き鳥!」
「その呼び方やめてって言ったよね?」
「姉さん、フェンリルだよ!」
「グルぅぅぅ」
皆、再会を喜んでいる。何のために呼ばれたかを知らないで。
「大丈夫なんですか? 皆、こんな感じで」
「皆、共に揃い人間と戦うのが久しぶりなものでな… ちょっと待っておれ」
甲冑に包まれ、八本足の馬スレイプニルに乗った王は槍を掲げると
「皆の者、我が仲間バハムートを止めよ!」
と叫びバハムートへ攻撃し始めた。
戦い方は様々。だがそれぞれの思い、考え… は皆同じように感じた。
「万物を貫け、グングニル!」
オーディンの放った槍がバハムートのバリアを破壊する。
やっと、ダメージが与えられるようになったのだ。
「皆の者、今こそ攻めるのだ!」
自身の中で最大のパワーを使い、技を放つ。
バハムートには聞いているようだが、まだ倒れない。それに対して召喚獣達はパワーを使い果たし、魔石へと戻っていく。
最後に残ったのはオーディンだった。
「我が最後の力を使って、あの者を呼び出す手助けをしよう…」
手を石像へ向けるとオーディンは何かを放ち、魔石へ戻ってしまった。
だが、石像に変化が起きた。
他の幻獣と比べ物にならないくらいの大きな光る魔法陣が石像の上空にできる。
現れたのは…
- Re: Chage the world ( No.69 )
- 日時: 2018/02/15 23:02
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
32話、長いですね(自分で言うんかい)
書いてる途中にエラーが起きたり、重くなったり、時間がかかったり(32話(2)は1時間掛かってます)… などと様々な事が起きる可能性があるため、このように分割して連載させていただきます。
前置きが長くなってしまいましたね。それでは32話(4)どうぞ。
32話(4)死闘
「わたしを呼んだのはあなた達ですか?」
巨大な魔法陣から現れたのは、機械仕掛けの10メートルほどの竜…アポロン。
他の幻獣と雰囲気が全く違う。
「そうだぜ、アポロン。すべて見ていたんじゃないのか?」
女性のような優しい声でアポロンは続ける。
「主の持つわたしの魔石からその場の音、雰囲気は感じ取れていました。また、景色も僅かですが見えました。ですが、わたしが存在するのは多次元宇宙。王様に呼ばれるまでは意識を集中してこちらの世界を見ていなかったため、わからない事もあります」
「そ、そうか…」
フレイは頭の後ろをぽりぽりと書く。困っているようだ。
「貴様は機竜か… 何百年ぶりだ…」
「竜王バハムート…」
バハムートがアポロンに話しかける。帝国に操られているせいか、気が荒いように感じる。
「竜王… なぜあなたは’’扉’’を開けようとする者の側につき、この地を滅ぼそうとするのですか」
「貴様は忘れたのか。この地に住まう者はかつて世界が1つだった頃、我ら竜族を滅ぼそうとした事を」
「忘れてはいません。いや、忘れてはいけません。ですがそれは過去の話。囚われていては、前には進めません。」
「それだけか」
「否、他にもあります。わたしは昔、与えられた使命を果たそうとしているのです」
「ほう… そうか。ならば我も与えられた使命を果たそうではないかッ!」
バハムートがアポロンに襲いかかる。
「主、わたしはこの土地と生ある者達を守ります。ですが相手は竜王。わたしの援護をお願いできますか」
「了解だぜ! おっし、ひと暴れするぞ」
私達は再び屋根に上り攻撃し始める。
バハムートの攻撃対象がアポロンとなっているせいか、先程のように受けるダメージは少ない。
体の傷が痛むが、攻撃はやめない。だって、未来がかかっているのだから。
「消えろ」
アポロンが鋼鉄の爪をバハムートに振り下ろす。
「グハッ…」
バハムートにとって大きなダメージとなっただろう。
しかし、衝撃波、ブレスの威力が弱まることはなかった。
「ヤバい… 魔力もカラッポになってきた…」
「大丈夫? ミント。 コレ使って」
フレイヤから渡されたのは使って失われた魔力を回復する薬… 魔力回復薬だった。
この戦いで魔力がそこをつくたびに使っていたせいか、わたしの分はもう無くなっていた。
フレイヤのメインの攻撃は銃撃だが、時に魔弾と呼ばれる少し強い魔力を込めた攻撃もある。
仲間の中で唯一の遠距離攻撃ができ、動き回るバハムートに確実にダメージが与えられるのにいいのだろうか。
「いいの?」
「魔弾がもう無くなっちゃってさ〜 回復魔法ぐらいでしか魔力使わないし、ミントの方が魔力強いし… まぁ、私は通常弾、散弾、火炎弾とかいろいろあるから大丈夫。使って」
「ありがとう」
「えへへ、頑張ろうね」
フレイヤは銃のリロードを済ませると、すぐに私を離れた。
私は渡された魔力回復薬を使い、自分の傷を癒し再び鞭を振るった。
「まだ、負けるわけにはいかねぇ…」
「ジュリィ… 大丈夫かい…?」
「シド… あんたもな」
皆、体力・魔力・精神力が限界に達していた。
長きにわたる帝国軍との戦い。残るはバハムートだけだが、相手は竜王。だいぶ動きは鈍くなってきたが、まだ魔石には戻らない。
アポロンも鋼鉄の翼には傷が付いていた。胸のあたりにあるコアらしき者にもヒビが入り始めていた。
このままでは負けてしまう。何か方法は無いものか…
そんな中、幼い頃に聞いたおとぎ話を思い出した。
世界が1つだった頃に起きた’’終末戦争’’を終わらせた少女の話。
確か、その少女が使ったのは…
「アポロンよ、その程度の力では、我を倒すことはできん!」
アポロンの悲痛な叫びが響き渡る。コアが破壊されてしまったのだ。
「主… 申し訳ありません。わたしは… どうやらここまでのようです… この世界に、召喚していただいたのにも、かかわらず… 敵を… バハムートを、倒せなくて…」
「アポロン… ありがとな。あとは… オレ達にまか、せろ…」
「少し… 休ませて… いただきます」
アポロンは光となって消え、魔石に戻った。
やはり、あの禁術と呼ばれる魔法を使うしか無い。この戦い、未来、思い出のためにも。
命が消えても、体が滅びたっていい。それでも、みんなの中にある記憶には私は生き続けるから。
「ジュリィ… バハムートの動き、封じられる…?」
「今残ってる、魔力、全部使えばギリギリ、いけそうだ…」
「ありがと… お願いね… レオン、オリガ、ジュリィの魔法… 効果が出るまで、バハムートを、固定できる?」
「任せろ…」
「りょーかいだよ…」
「シド、フレイ、フレイヤは… 一瞬、でもいいから… バハムートの動きを、止められる…?」
「OKだよ…」
「任せろって…
「ミント… わかった…」
「みんな、ありがと… 動きを、止めて… 固定して、封じる。そしたら… 私が、デカイのやる、から」
皆、動くだけでも一苦労なのにありがとう。責任重大だな… 私。
頷いてくれたと同時に作戦が開始する。それに合わせて私も詠唱し始める。
おとぎ話では世界を滅ぼしたけれど、あれは唱えた少女の魔力が莫大な物だったから。今ここで私がやったら、この国ぐらいの範囲で滅びるまでには至らないだろう。
「神の見張る…試練与えし… この世界に… 刻は来たれり…」
その言葉にオリガが振り向く。
さすが重宝部員… いや、昔話好き。この魔法がどんなものか知っているのだろう。
いつものオリガだったらきっと私の事を止めるだろう。でも、今回は止めてくれない。
私の覚悟が伝わったのだろう。振り向いた時、涙目だったもの。
フレイヤの撃った弾のおかげで一瞬、バハムートの動きが止まった。
その瞬間を逃さず、オリガとレオンが自身の得意とする技でその場に固定する。
「多次元より… 飛来せし… 流星… 」
「ジュリィ、今だ!」
「わかってる」
ジュリィの魔法が効く。幻獣には効かないと言われていた拘束魔法が。
「今こそ… 降り注げ! 流星雨(メテオレイン)!」
上空に掲げていた手を勢いよくバハムートへ振り下ろす。
それに対応するかのように、空から隕石が雨のように降ってくる。
隕石が無差別にあたりを破壊する。
ごめん… フレイ。国の修復費、増やしちゃった…
でも、これで未来が助かるんだからいいでしょ?
1つ大きな隕石がバハムートに当たる。
魔法が解けた瞬間に隕石が当たったため、地面へと押しつぶされた。
アポロンと同じように光となって魔石に戻り、その場に落ちた。
「ミントーーーーッ!」
一番にそばにやってきたのはフレイヤだった。
その場にしゃがんでしまった私を、支えながら少し立たせてくれた。
あぁ、もう立つ力も残ってないんだ。
ゆっくりだけど、皆そばに来てくれた。
オリガは槍を支えに、シドは双剣を背当てにしてその場に居座る。
そんな時だった。私から出た光が空へ昇って行くのが見えたのは。
もう、時間も無いんだ… 最期くらい、わががま聞いてくれたっていいじゃない。
「ミント… お前…」
「レオン、気づいちゃった? 私、もう空に消えちゃうみたい。」
「嫌だよぉ… ミント…」
フレイヤの事を泣かせちゃった。相変わらず、泣き虫だね。
「みんな泣かないでよ… こっちまで… こっちまで悲しくなっちゃうじゃん」
フレイ、後ろ向きで立って泣いてるの隠してるんだろうけど、バレバレだよ。ほら、男でしょ?
「別れは新たな出会いの始まり… そう言ってくれたのは、ミントだったよね…」
オリガ、覚えててくれたんだ。ノアが孤児院を離れる時に言った言葉。これから言うことも、覚えててほしいな。
「そうだよ。出会いがある分、別れがあるのと一緒。別れがある分、出会いだってあるんだよ。その度に、出会った人との記憶ができる。私は記憶の中で生き続けるから、これは永遠の別れじゃない。その記憶こそが、
私の’’生きた証’’。」
女王様が残したように、私も’’生きた証’’が残せたよ。もう少しでそっちに行くね。
「ミント… 僕、医者なのに… 助けられなくてごめん…」
「いいの。これは私の選んだ事だから…ね。シドは何にも悪くない」
これは自分の選んだ事。そう言い聞かせて涙をこらえる。
実際、記憶の中で生き続けるって言ったけど、実際に見て、触れて、話して、感じられるのはコレが最期。
別れの時は笑顔の方がいい。ジン君、そう言ってくれたよね。
だから、言い聞かせてこらえるよ。
「まだ、勝負は終わってないからな…」
「ジュリィったら、もう。小さい頃の話でしょ。…私も言わせてもらうよ。まだ、負けてないから」
いつまで続けるのかな、この勝負。
諦めたら負けって勝負。結局、最期までわからなかったよ…
「今まで… ありがとな」
「…レオンっぽくない。いつものクールさはどこ行ったの? まぁ、いいや。言うなら、自分の気持ちに嘘はつかないでねって事かな」
手や足の感覚が消えてきた。それに、体も透けてきちゃった。
本当の、本当に終わりなんだ… ここ数年、楽しかったな…
もう、お別れしなきゃ。約束しなきゃ。
「…もう、お別れみたい。1つだけ約束。…またどこかで会おうよ。記憶じゃないどこかで。だから忘れないで。閉ざさないで。私と共に過ごした日々を。そして…」
『ありがとう。またね』
- Re: Chage the world ( No.70 )
- 日時: 2018/07/15 12:05
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
どの道、私は消える運命。
パナソの目的を知ってしまった私には、任せられた『使命』があった。
それは、生ある者ではできないこと。生を失ってこそできること。
タイミングは任されていた。だから今私はこうしている。
でも、何かを拒んでいるような気がする。
みんなが離れていく…
いや、私がみんなから離れていってるんだ。
最期の、最期まで、涙はこらえたけど…
前向きにみんなを励まそうとしたけど…
やっぱり、別れは辛いなぁ。
あぁ、もう泣かないでよ… フレイヤ…
そんなに泣いたら、みんなを困らせちゃうよ。
…少なくとも私は困る。私だって、泣きたいよ。思いっきり泣きたいよ。
でも、私が泣いたら… 雨になっちゃうよね。
せっかく、朝焼けが綺麗なんだもん。私は我慢する。
この世界ともお別れ。
目を閉じて、寝ちゃえ。
次、目がさめるのは──
- Re: Chage the world ( No.71 )
- 日時: 2018/02/16 10:14
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
33話 勝利
目の前で、ミントは消えた。
バイウ・カハの死の予言は、今、戦いの終わりを告げると同時に的中した。
自分の気持ちに嘘はつくな… なんの事を言っていたんだ?
俺の胸には、仲間を失った事による喪失感と疑問が入り混じったような気持ちだけが残っていた。
この気持ち… 前にも感じた事がある。あぁ、あの時か。
「フレイヤ… もう泣かないの!」
「う… うん。 私、泣かない!」
切り替えは早いな。まぁ、それがいいところなのだが。
「さて、宣言しなきゃな」
フレイはポケットの中に入っていたスマホを取り出し通話状態にした。
相手は、拠点にいるジェシィ。
「もしもし、みんなそっちにいるか?」
「集めたほうがいい?」
「お願い。みんなが聞きたい事、話すからな」
スマホからガサゴソと音が聞こえる。
「集まったか? んじゃ、宣言するぜ」
フレイは周りを確認すると、深呼吸をして言った。
「帝国軍撤退及びバハムートの撃退に成功。よって、我が緑の国、反乱軍の勝利だッ!」
スマホから歓声が聞こえる。
あの帝国に勝ったのだ。7年前とは違う結末を迎えられたのだ。
「やべ、足攣った…」
「お兄ちゃんったら、かっこつけるから…」
「いったん、ユピテル号に戻ろう。そして拠点に戻ろう。話はそこから」
ジュリィはポケットからテレポ石を取り出す。
監獄からの脱出やその他諸々、この人は何個その石を持ち、使ったのだろうか。
「どこに飛ばされるかわかんないけど、戻るよ!」
見えてきた景色はユピテル号のコックピットだった。
「さて、飛ばすよ」
拠点の近くに飛空艇を着陸させる。
俺達を待っていたのは、ジェシィとヒメカだった。
「姉さん達、お帰り!」
「みなさん、お疲れ様です」
それから、今まであった事全てを話した。
ミントの事も、国の様子の事も。
「いろいろ… あったんだね」
「まぁな」
「とりあえず、どちらの国もいろんな意味での致命傷を負ったでしょ。だから、少し休んだら?」
「そう… だな。休ませてもらう」
「…でも、手伝いとかあるからね」
ジェシィの最後の言葉だけは聞かなかったふりをしよう。
皆それぞれ、自分の仕事を、手伝いをしていた。
フレイはレヴェリーへの報告書作り。シドとフレイヤは怪我人の治療。
ジュリィとオリガは修復作業の手伝いや、物資の確認。なぜその2人に任せたのだろうか…
フーは、避難してきた他のフーと戯れている。ん? あれは… フー吉!?
フー吉がいるという事は、リベロもいるという事か。
昼飯作りを手伝わせられそうな予感がする。
時計が昼になった事を伝える。
「レオン、いるなら手伝え」
「了解… だ」
予想どおりリベロに呼ばれた。今日の昼飯は… カレーか。
ご飯は炊けている。あとはルーだけという事か。
食材を切り刻み、焼き、煮る。久しぶりの作業だが、体は覚えていた。
ご飯にルーをかけ、カウンターに置く。そして、戻ってきた皿を洗う。
そんな事をして過ごし、あっという間に1週間が過ぎた。
1週間の内には、追悼式、復興作業などいろんな事があった。
他国の支援などもあり、国や周りの村や町ではだいたい住めるようになった。
だんだんと拠点に住む人は少なくなり、前と同じようになった。
「ふぅ、やっと完成した! ありがとな、ヒメカ」
「いえいえ。こういう文章は得意ですので」
フレイの報告書も完成したため、今日中にはレヴェリーへ旅立てそうだ。
「さて、レヴェリーへ行こうぜ!」
「ちょっと待って〜 オリガがまだ帰ってきてないよ」
小さい子達と遊ぶフレイヤが言った。
数十分前、オリガは森の中の昔よく遊んだ場所に作ったミントの墓標へ向かった。
だが、帰ってきていない。
あまり遠くなく、出てくるモンスターも攻撃しなければ襲ってこない。
なのになぜ帰ってきていないのだろうか…
もしかして、刻印の効果が出てきたのか…?
腹に刻まれたまがまがしい紅い刻印。魔封剣で封じ込めたが、消えてはいなかったはずだ。
その刻印を知っているのは俺だけ。確認するしかないな…
「俺が行ってくる。ちょっと用もあるからな」
「早めに帰ってこいよ〜」
拠点… アジトを後にする。
お願いだ。無事でいてくれ…
- Re: Chage the world ( No.72 )
- 日時: 2018/02/25 20:55
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
お知らせ
テスト勉強があるため、少し更新が遅れます。
短い話なら書けるかな…?
最近更新してない番外編については、本編の方が落ち着き次第再開します。
リク依頼スレの『CTWいろいろ募集』でいろいろなものを募集していますので、そちらでキャラクターを作って頂けますと番外編の話が出来上がるかもしれません。
- Re: Chage the world ( No.73 )
- 日時: 2018/03/02 21:45
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
また、おしらせです
私の愛用しているキーボードが再び不調です。
直るかどうかわかりませんが、今までよりも打つのが遅くなります。
…まぁ、電源を切り忘れたのが原因なのですが
テストが終わり次第、連載スピードを上げていきます
- Re: Chage the world ( No.74 )
- 日時: 2018/03/04 19:01
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
33.5話 情けない
「そろそろレヴェリーに行くね。ミントの分も頑張る」
昔、よく遊んでいたジャングルの中の海の見える崖にオリガはいた。
思い出の場所… 今はミントの墓標があるこの場所をあとにしようとしたその時だった。
「…誰」
誰かの気配がする。
しかし、周りを見ても誰もいない。ジャングルの木にでも隠れているのだろうか。
念のため槍を取り出し構える。
すると何かの音が後ろから聞こえた。
…後ろだ!
氷球を音のした方へ放つ。
誰もいないはずなのに、氷球がバリアにぶつかり消えた。
そのバリアが消えると同時に現れたのは…
「パナソ… 」
「久しぶりだね」
皇帝の側近にして、帝国を影から操る者パナソだった。
「自我を取り戻してしまうとは… 残念だよ」
「あんたの思い通りには、私はならないよ」
最後にあった頃のパナソとは雰囲気が違かった。
皇帝がいないから? それとも1対1だから?
なんだか、嫌な予感がする。
「私に何の用?」
「君に刻まれた刻印を完全なものにする。それが用だ」
パナソの周りに10本ほどのナイフが現れる。
私の刻印に用があるならさすがに殺されはしないだろう。
刻印のおかげで力は強くなり、辺りのモンスターは楽に倒せるようになった。
でも、また捕まってしまったら刻印にきっと私は蝕まれ、みんなに迷惑をかけてしまう。
どうにかここをやり通さなければ。
飛んでくるナイフを弾き飛ばしなら攻撃する。
「あんたは結局何がしたいの」
「一族の使命を果たしたいだけさ。だから、帝国を利用しているんだ」
「使命って何なの」
「『神を超える者を作る』そう聞けば大体わかるだろう?」
昔話のような何かに、そのような使命を背負った一族がいたような気がする。
確かその一族の名は『ホウフハの一族』。実在しているのか不明だったはずだ。
よくは思い出せないが、世界に関わることであるには変わらない。
もっと、情報を集めなければ…
「キャッ!」
幅の広いジャングルの木に打ち付けられる。衝撃のせいで足が動かない。
…また私はダメだった。1人ではダメだった。
迷惑をかけたくない。その一心でここまで生きていたが、私はいつも助けられてばっかりだ。
情けない。こんなの… 情けなさすぎる。
刻印が紅みを増す。前回よりも効果があるらしい。
まわりがだんだん暗くなっていき、見えていた景色に向かって手を伸ばす。
しかし後ろから伸びてきた赤黒い帯のような物が私に巻きつき、暗い空間へと更に引きずりこむ。
目に溜まっていた涙が流れると同時に、私の意識がとぶ。
- Re: Chage the world ( No.75 )
- 日時: 2018/03/06 21:33
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
34話 俺の思い
「オリガ!」
ミントの墓標がある崖に俺は来た。
そこにいたのは、木に寄りかかるように寝たオリガだった。
「何があったんだ…?」
近寄ってみる。
脈はあるが、反応がない。体も冷え切っている。ただ、生きているだけ。
… やはり、そうだったか。
少しだけ見える腹にある刻印が赤黒く気付かないほどにひかる。
原因は予想通りだった。
…あの時、刻印を完全に封じ込め消し去っていたら。
オリガはきっとこんな風に苦しまなかっただろう。
また、できなかった。
後悔しか胸には残っていなかった。
そんな時、足元を突く何かに気がつく。
「クゥ〜」
「フー…」
「ワゥ、ワン、ワン! ワゥ」
まだ、全てが終わったわけではない。
勝手に諦めていた俺に、鳴き声と動きでフーが伝えてくれているような気がする。
小動物に励まされるなんて、なんてダサいのだろう。こんなものだから、守りたいものも守れないのだろう。
「フー、ありがとな」
「ワゥ」
気が晴れないままオリガを背負い、アジトへと向かう。
背中から、かすかなあたたかみが伝わってくる。向かう途中に目を覚まして、ごめんとか言ってきそうだと考えさせられる。そしたら俺はどう言い返そう。なんでもいいか。
なんでもいい… そう思えるのも笑って包んでくれるオリガのおかげなのだろう。
だからもう一度話す事ができるなら、隠したりとか誤魔化したりとかしないで話そう。素直に話そう。たくさんあるんだ、伝えたい事。
フレイとかミントに俺は変わったとよく言われた意味が、よくわかったような気がする。
今まで他人の心配なんか、どうでも良いと思っていた。なぜなら大丈夫だと思え、信じられたから。でもそれは自分に言い聞かせていたものだった。一度考えると止まらなくなる… それが俺だから、自分の心、気持ちに嘘をついてそう考えていた。
だけど大切な人を失いかける事で気づけた。それだと失い続けるだけだって事を。
オリガを救いたい。たくさんの『ありがとう』を伝えたいから。あの笑顔を取り戻したいから。
俺にとって大切な人だから。
アジトが前方に見えてきた。飛空挺のエンジンが音を立て起動しているのがわかる。
世界の中心とも言われるレヴェリーに行けば、この刻印だってきっとどうにかなる。
わずかな望みをかけ、みんなの待つ飛空挺へ向かった。
- Re: Chage the world ( No.76 )
- 日時: 2018/03/11 22:36
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
34.5話 焦らずに
「やっぱりそうだったんだね」
ユピテル号のコックピット。
操縦席に座りコーヒーを飲んでいるシドに、オリガの刻印について話していた。
シドはあの監獄から脱出した時には、刻印の存在には気づいていたらしい。
さすが医者。体調だけではなく変化にも気づけてしまうとは。
「あの刻印は、いくつかの他の種類の刻印が合わさってできてるっぽい。専門じゃないから対処法はわからないけど、どんな効果があるのかぐらいはわかったよ。」
シドはコーヒーの入っていたマグカップを横にある備え付けのミニテーブルに置くと、刻印について話してくれた。
「一つ目は能力向上。これは特に害はないから問題ないはず。二つ目は自我を封じ込める効果があるやつ。これのせいでオリガは眠ってしまっているんだと思う。三つ目は魔封剣のおかげで消えてきていたみたいだけど、回復し始めてる、刻印をつけた者… パナソに操つられる効果があるやつだね。前、監獄で戦ったって言ってたよね。その原因はきっとこれ。まぁ他にもあるみたいだけど、今一番効いているのは二つ目に言った自我を封じ込めるやつだか…」
「オリガを助けるには、俺はどうしたらいいんだ?」
ついつい話をそらしてしまった。
だがそれは、今一番俺が聞きたいことだった。
刻印の責任などは俺にある。その他にもいろいろある。
でも、今の自分の心にあるのはオリガを助けたいという気持ち。
シドはスマホを取り出すと、誰かの連絡先を探しているようだった。
「レヴェリーに刻印について詳しい知り合いがいたはずなんだ。その人ならきっと知ってるはず。だから、そんなに焦らなくても大丈夫」
「そ、そうか… すまなかった」
とりあえず待つ。レヴェリーに着くまで待つ。それが今の俺にできること。
何もできていないように感じてしまって、少し悔しいような気がする。
そんな思いをしていたのは、焦っていたからだろう。
少し落ち着こう。焦っていたら、気づけたはずのことにも気づけないのだから。
- Re: Chage the world ( No.77 )
- 日時: 2018/03/14 22:21
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
35話 魔法的状態異常専門
前方に、今まで見てきた中で一番大きな城が見えてきた。
城の周りには様々な大きさの家や店が立ち並び、飛空艇発着場や駅のホームまである。
その地に住む者ではないからわからないが、地方に住む者から見た感じだと不便なことが一つもないように感じる。
発着場にユピテル号を停め降りた時、どこからか声がした。
「シドさ〜ん、やっほ〜」
声のする方へ視線を移すとコッチコッチと手招きをしている女性が、飛空艇発着場の地上入り口の奥に立っている民家の前に立っていた。
「ん…? あれって…」
「どうした?」
フレイが目を見開いて女性の方を見る。
そんなに見ても距離があるため近くに行かないと無意味だとジュリィが話そうとした時。
フレイが小声で
「やべ… 何言われても覚悟しとかなきゃ」
と言ったのが聞こえた。
フレイがこんな風に言う時は、何かを忘れてしまったり怒られることをしてしまったりした時だけだ。
…ということはあの女性と知り合いということになる。
「シドさん、お久しぶりです。あと、フレイ! たまには連絡ぐらいちょうだいって言ったよね?」
「ご、ごめんな。最近忙しかったからよ…」
「ま、それは置いといて。初めまして、刻印などの魔法的状態異常専門のルミルです。みなさんと私、同い年なんですってね。フレイやシドさんからいろいろ聞いていますので、とりあえず、中にどうぞ」
栗色の長い髪に黒のスーツ。そして、魔法的状態異常を専門とする珍しい医者。俺達と同い年には思えないぐらいしっかりしていて大人びいている。
背負っていたオリガをベッドに寝かせ、こうなってしまった経緯をルミルに話す。
ルミルは1冊のノートを取り出し、刻印を見ながら話したこと、状態などを書き込んでいく。
「なるほどね。」
「どういう状態なの?」
「刻印は外からじゃ消せないみたい。そして、刻印の力にこの子が負けちゃうともう前のようには戻れない。
結構、危ない状態だね。これ作り出したやつ、かなり凄腕だよ…」
外からは消せない。ならばどうすればいいのだろうか。
「どうやったら消せるんだ?」
「刻印に宿ってる主を中で倒す。それしかないかな」
「中って… どこ?」
「この子の精神世界… っていうのかな。急に言うのもあれなんだけど、今から1人、この子の精神世界へ行ってくれないかな? 意識だけ精神世界に飛ばすんだけど」
「そんなら、こいつがやってくれるぜ」
「ちょ、おい!」
フレイが俺の背中を押す。
それは、俺に任せるということに等しかった。
周りを見ると、皆任せたという顔をしていた。
「君が行くの?」
いったん深呼吸をし、ルミルの質問に俺は答えた。
「ああ。俺が行く」
と。
- Re: Chage the world ( No.78 )
- 日時: 2018/03/18 02:37
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
36話 精神世界での救出
「わかったわ。じゃあ、これから言うことをよ〜く聞いてね」
そして言われたのは2つ。
1つ目は精神世界にいられる時間は限られていること。他者の精神世界に意識を飛ばすという事は、様々なリスクを負うということになる。またルミルの魔力を使うためでもある。ルミルによると、「魔力が無くなっちゃったらどうなるかわからない」という。強制的にこちらの世界へ戻るか、精神世界に閉じ込められるかのどちらかであるらしいが、もし閉じ込められた場合は、こちらの世界との繋がりが消えてしまうため一生戻れないらしい。
2つ目は、刻印に宿っている主を倒す事。これをしなければ助けても刻印が消えないため意味がないらしい。ある意味一番重要だ。
「…というところかしらね。私もあんまりやった事ないから必ず成功するとは言えないけれど、準備はいいかな?」
「とっくにできている。よろしく頼む」
「フレイとは違って頼もしいね。じゃあ、始めるわ」
「違ってってなんだよ…」と隣でフレイがつぶやく。ガンガン突っ走って行く、あまり考えないタイプなのだからそう言われてもしょうがないと思う。
さて、行くか。
目を開くと、先程の場所とは違う場所にいた。
あたりは真夜中の外のように暗く、見る限り何もない。
…ここがオリガの精神世界。
元からこのようなのか、刻印によってこうなってしまっているのかはわからない。
俺の精神世界もこのようなものなのだろうか。
「聞こえる?」
「聞こえてるぞ」
ルミルの声がどこからか聞こえた。
「よかった〜 そっちに声聞こえるみたいね。何かこっちから連絡があるときは、今みたいに話しかけるから驚かないでね」
「了解」
遠くの方で、何かの重い音が鳴ったのが聞こえた。
それが刻印に宿っている主なのだろう。とりあえず、音のなった方向へ行く事にした。
真っ暗な空間の向こうに、重い音の正体… 刻印に宿っている主らしきモンスターが見えてきた。
そのモンスターの全長が見えるあたりまで来た。距離は数十メートルあるだろう。
そこで俺は剣を構えさらに近寄る。
「テキヲカクニン… コレヨリ… セントウタイケイ二… プログラムヲヘンコウスル…」
赤く光る目に、赤黒い石レンガの体。額には『EMETH』という文字があるモンスター… ゴーレムが腕を振り下ろし襲ってきた。
振り下ろされた腕に潰されてしまったら終わりだろうと思いつつ剣から水龍をゴーレムに放つ。しかしゴーレムの動きは止まるどころか遅くもならず、威力を増すばかりだった。
ん…? あれは…
ゴーレムの大きな体の隙間から見える背後に大きな球体が浮いているのが見えた。大きな球体の周りを、時々囲むようにゴーレムの体と同じ色の稲妻発生しているのがわかる。その球体の中の中心に、仰向けになっている人影が見えた。
オリガ… なのか?
稲妻のせいではっきりとは見えない。だがここはオリガの精神世界。俺を除いてここに入れる人間はオリガしかいないはずだ。
「助けてやるからな、待ってろよ」
しかし、ゴーレムの体は石レンガ。オマケに何かの魔法もかかっているせいか、剣による物理攻撃は聞いていないようだった。
このままじゃ、刃がダメになってしまう…
ただでさえ傷を負っているこの剣。そこから刃が駄目になってしまっては使い物にならない。
何か、方法はないのか…
そうだ、外の世界の奴らに聞けば何か変わるだろう。
「ルミル、聞こえるか?」
「はい! なんでしょう?」
「主はゴーレムだ! 額には『EMETH』って光って書いてあって、赤黒い石レンガの体だから俺の剣が効かない。何か方法はないか?」
「ちょっと待ってくださいね」
ゴーレムの攻撃を避けつつルミルの返答を待つ。一瞬がいつもよりも長く感じる。
「額には『EMETH』って書いてあるって言いました?」
「言ったが、何か関係はあるのか?」
「どこかで聞いた事があるんです。ゴーレムの額の文字について。確か、『EMETH』は『真理』と言う意味なのですが、最初のEを無くすと『METH』となって、意味が『彼は死んだ』となるとゴーレムは泥に戻るという事だったはずです」
「わかった、試してみる」
振り下ろされた腕から肩の方へ登り、ジャンプして最初のEへ剣を振り下ろす。するとEの光が消え、『METH』となった。
「ジメツプログラム… キョウセイハツドウ… コレニヨリ… ゼン… キ… ノウヲ… テ… イシス…ル…」
ゴーレムは足の方から泥となっていき、全てが泥となるとその泥も消えた。
残るは球体のみ。球体は未だに稲妻を発生している。
球体を割るしかないな。
剣に魔力を込め、聖なる光を宿らせる技… 『剣舞技 聖臨』
そして、ジャンプし剣を球体に振り下ろす。球体は割れ、中にいた人影… オリガは目をつぶったまま仰向けでその場にゆっくりと落ちていく。そこへ俺は走っていき、オリガを受け止めた。
これって、お姫様抱っこ状態じゃないか…
フレイに見られていないのが幸いだ。しかし、外の世界からこちらを見ていたとすれば…
まぁ、ルミルの言動からすると、こちらの世界の様子は見えていないようだったが。
オリガをその場に寝かし、様子を見る。
このようにしたのは今回で2度目だ。
チラリと見える腹にはもう、刻印は無くなっていた。
急にあたりが光に包まれ、その眩しさに目を閉じた。
- Re: Chage the world ( No.79 )
- 日時: 2018/03/25 18:26
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
〈ちょっとコメント〉
今気づいたのですが、36話を出した時には日付は変わっていたんですね…
ということは、制作時間約2時間40分!? 今までで一番最長だな〜
…ん? コレいらないって? たまには喋らせてくださいよ(笑)
まぁ、37話、始まります。
37話 次の目的
目を開くと、そこはルミルの家ではなかった。
中央には純白の布が敷かれた長いテーブルがあり、囲むように建物を支える柱が並んでいる。
誕生日席のような場所にいる俺のテーブルを挟んだ先には人影があった。
大きな窓から差し込む月光しか部屋を照らすものが無いためはっきりとは見えない。
しかし、その人影は俺の記憶の中にあるものだった。
記憶の中にある名を口に出す。
「オーディン… なのか?」
人影が振り向き、頷いた。オーディンのようだ。
鎧のせいで顔は見えないため、表情はわからない。
いったい何を考え、何を思い、俺をここへ呼んだのだろうか。
「あんたには聞きたい事がたくさんある。」
「ほう… そうか。我もお主に話したい事がたくさんある。しかし… 時間が無いようだ」
話したい事があるなら、時間がある時に呼んでくれ。
「とりあえず、これだけ伝えておこう。お主達、次はハイランドへ行き秘宝を貰い幻獣界へ来い。話は、そこからだ」
「どういう事だよ…」
再び光に包まれ、眩しさで目を閉じる。
「お〜い、聞こえるかい?」
「ん…?」
目を覚ますと、シドとジュリィがこちらを心配そうに見ていた。
「大丈夫そうだな」
ジュリィが胸をなでおろす。
そんなに長い時間、俺は目を覚まさなかったのだろうか。
… オリガは大丈夫なのだろうか。
「オリガは…?」
「大丈夫だよ。目を覚ましてルミルの話を聞いて、フレイヤと先に飛空艇に戻ったみたいだから」
安心した。もう、心配しなくてよさそうだ。
とりあえず立ち上がり、体を伸ばす。
そして、オーディンから聞いた話をシドとジュリィにも話した。
「幻獣王がアタシ達に遊楽の街へ行けだって?」
「そして秘宝を貰って幻獣界へ来いだってさ」
「ふ〜ん。どーいう意味だかわかんないけど、ハイランドへ行くってのは確定っぽいね」
シドはスマホを取り出すと、報告書を提出しに行ったフレイに飛空艇に戻るよう伝えた。
すぐ出発するらしい。
「おや、そろそろ行くのですか?」
部屋の奥の方からルミルがやってきた。
「うん。次の目的ができたから」
「そうですか… 」
ルミルがポケットから何かを取り出す。
「これ、フレイに渡してください。単なる手紙です。中身は内緒ですよ。」
「直接じゃなくていいのか?」
「私には… ちょっと無理です…」
ルミル頬がわずかに赤くなる。
確かに、中身はフレイ以外見ないほうがよさそうだな。
「シドさん達、これからも頑張ってくださいね」
「ルミルも、頑張るんだよ」
「はい! では」
ルミルは俺達が飛空艇に乗って見えなくなるまで手を振り見送ってくれた。
その後俺は自分の部屋に戻り、ハイランドへ着くまで剣を磨く事にした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
レオンから「ルミルからだ」と言われて手紙を渡された。
オレは自分の部屋に戻って、ベッドで横になりながら読む事にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フレイへ
言葉にできない思いとか、直接言えない事とか、この手紙で伝えるね。
フレイに伝わるといいな… (バカにしているわけじゃ無いからね)
初めて出会ったのは、レヴェリー王就任25周年記念パーティーの時だったよね。
あまりそこまでに至る経緯は覚えてないけど、立場を考えないで一緒にいてあんなに楽しい思いをしたのは初めてだったの。だって私、他の人と分かり合えない事ばかり知ってたり専門だったりするでしょ?
きっとそれが原因で友達いないし…
でも、フレイは話がわからなくても興味深々で聞いてくれたよね。
こういう経験、私にとって初めてで嬉しかったの。本音で語り合えて、私の事を認めてくれて… 本当に嬉しかった。その時話してくれたフレイの話、面白かったよ。今でも覚えてる。
覚えているぐらいいい思いをしたから連絡先交換したんだと今になって思ってるんだ。
時々でもいいから、連絡ちょうだい。
そう言った理由、わかってくれた?
ちゃんと文章を理解しているならわかるはずなんだけど、きっとフレイの事だから念のために書いとくね。
あなたが私の支えになっているから。
自分で思っている事なのに書いてたら恥ずかしくなってきちゃったな…
フレイが私の支えになっているのと同じく私も、フレイを陰からでも支えられるようになろうと頑張ってるから。フレイも頑張ってね。
だから… 悩み事とか旅の話、いろいろな話でもなんでもいいから、連絡ちょうだい。
長くなってごめんなさい。もう紙のスペースも少ないから、思っている事、ストレートに言います。
本当は直接言いたいけど、私にはきっとできないから。
本当にストレートに言うからね? 驚かないでよ?
直接会って話した回数は少ないけれど、私、フレイの事が好きです。
もし、私でいいのならば… 旅が終わったら返事ください。待ってます。
ルミル・ストレイト
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「えぇ!?」
最後の文章により、思わず声が出てしまった。
なぜなら、オレも… ルミルの事は気になっていたから。
あの他者を思いやる心にオレは惹かれていたから。
それよりもっと驚いた事は…
オレが、誰か… ルミルの支えとなっていた事。
緑の国の人達に支えられて生きてきたオレは、緑の国の人達のように誰かを支えたいと思っていた。
まさか、こんな風に実現するとは…
- お願いします ( No.80 )
- 日時: 2018/03/20 21:52
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
私、ありえない間違いを今までしていました…
それは、このスレッドの題名。
皆様はお気付きでしたか?
『change』が『chage』となっていた事を。
『n』が抜けていた事を…
今は修正してあります。
読者様にご迷惑をおかけした事をお詫び申し上げます。
(迷惑なんかかかってない…? お詫びってなに? という事はつっこまないでください)
そこで、読者様にお願いがあります。
間違いをしているのに気づいたら、コメントしてください。
このように気づかない場合がありますので。
- Re: Change the world ( No.81 )
- 日時: 2018/03/25 19:33
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
37.5話 最高責任者さん
「ここがハイランド…」
飛空艇発着場にユピテル号を停め、ハイランドヘ来た。
世界1とも言われている遊園地。地図を見てその凄さが一目でわかる。
「まずは、秘宝ってのがなんなのかを調べなきゃな。一番手っ取り早いのは…」
「ここの最高責任者に聞く。だろ?」
「レオン、それだ!」
こんなにも単純なことも思いつかなかったのか。
…さすがフレイだ。
でも、自分の考えの後にどうすればいいのかを考えないで発言するところは俺も同じだ。
最高責任者に聞く。そうするにはどうすればいいのだろうか。
「最高責任者に聞くって言ったけど、どうやってそもそも会うんだ?」
「そういう事なら私にお任せを!」
一応、病み上がりのオリガが言った。
何かいい方法があるのだろうか。
「オリガ、何かいい方法あるの?」
「これでも私、軍の中で諜報担当だよ。最高責任者さんに協力してもらってここで潜入捜査した事だってあるんだから。まぁ、任せてよ」
オリガが前へ進む。
俺達はオリガについていく事にした。
ここは星型となっていて5つの角ごとにエリアがあるらしい。
エリアは北の角を1とし、時計回りで2,3,4,5となっており今から行くのはエリア1のようだった。
- Re: Change the world ( No.82 )
- 日時: 2018/03/29 17:35
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
38話 条件
エリア1は、他のエリアと違っていてアトラクションがなく雰囲気は落ち着いていた。
エリア自体がスタッフルームのようだった。
あたりには事務所のような建物が並んでいる。
ここでハイランド全ての管理をしているのだろう。
「ニャー」
「猫… ?」
どこからか猫の鳴き声がした。
「待てー! ニョー」
後ろから誰かが走ってくる音がする。
「ちょっと、そこの君! その猫を捕まえて!」
「君… ってアタシのこと!?」
猫を追いかけ走ってくる男性が頷く。
それを見るとジュリィは猫を見てタロットカードを取り出す。
「ニャー ニュー ニョー」
「不思議な鳴き方をする猫だな、ちょいと止まりな」
取り出したのはジュリィが最もよく使う死神のカード。
猫の前にいつもとは違う小さく可愛らしい死神が現れ鎌を振るうと、猫はその場で倒れた。
「ジュリィ、『捕まえる』だよ?」
「大丈夫。気絶しているだけさ… えっと…」
男性が猫を捕まえたのを確認すると、ジュリィはさっきのものとは違うカードを取り出した。
「その猫、起こしていいか?」
男性は少し悩むと、
「部屋に戻ってからでもいいですよね?」
「その方がさっきみたいにならないかもね〜」
男性に案内されてついたのは、事務室という看板がついていた部屋だった。
…ということは、この人はハイランドのスッタフなのであろう。
「お願いします」
「了解! さて、猫ちゃん起きろ」
取り出したのは、審判する人が描かれたカード。そこから暖かい光が放たれると、猫を包みこみ、猫が目を覚ました。首元を掴まれているせいか、猫はおとなしい。
「ニョーを捕まえてくれてありがとう。」
「ニョー… ? この猫の名前か?」
「そうです… あ、私(わたくし)はここの最高責任者のタンド・リキンです。みなさんがエリア1に入るということは、私に用があるということですよね」
「リキンさんやっぱ勘が鋭いね。実は…」
オリガはタンドにここに来た理由を話した。
「秘宝… 『他世界への鍵』のことですね。でも、タダではあげませんよ。なんて言ったって、無の守一族の宝ですから。」
「秘宝って名が付くぐらいだもんね」
「…でも、オーディンが言ったんですよね。今から言う条件を満たしたら差し上げましょう」
「本当か!?」
「条件を満たしたらですよ」
「条件とは?」
「ここにあるアトラクション全てやってきてください。この台紙にスタンプを押してもらえばやったという事になります。中には絶叫系もありますので、仲間と分けて乗ってもいいですよ」
「それならきっと簡単だな。さて、行くか!」
「全てやったら再びここに来てくださいね。いってらっしゃい」
そして事務室を後にした。
この条件なら、すぐに達成できそうだった。なぜなら、このメンバーにはこういうのが好きなやつらが沢山いるからだ。言ってしまえば、俺以外だろう。
「なぁレオン、アレ乗ろうぜ!」
「命の保証… できないな」
「何言ってんだよ! あの高さから落ちることは絶対ないって。だから、な?」
「そういう意味… っておい!」
フレイに誘われたのは、絶叫系のジェットコースターだった。
俺が乗り物に弱い事をフレイは忘れているのだろうか。いくら飛空艇は慣れたからってこれはさすがに酔うだろう。乗る前からそれはわかるはずだ。
腕を引っ張られジェットコースターの列に並んでしまった。
後ろにも人が来てしまったため、戻る事は出来ないだろう。
…ここは、酔い止めの魔法をいつも以上に強くかけ我慢するしかないようだ。
俺は、覚悟を決めてそのジェットコースターに乗る事にした。
- Re: Change the world ( No.83 )
- 日時: 2018/04/06 23:04
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
39話 時には息抜きも
「よし、次だぜ!」
フレイはジェットコースターへのワクワクが止まらないらしい。
昔からそうだったよな。こういうのを待っている間、お前はまるで欲しいものを買って貰える時の小さな子供みたいにテンションが上がるのは。立場を考えないのは。
「シートベルトの確認のため、スタッフがお客様の元に向かいます」
スタッフと思われるお兄さんがシートベルトを固くしめる。
これだけしめれば落ちることはないだろう。
ブザーがなった。いよいよ始まるらしい。
「みなさん、今日はご来場ありがとうございます…」
そこからこのジェットコースターの説明が始まった。
…地味に長い。きっとこのせいであの長い行列ができてしまうのだろう。
「良い旅を!」
俺にとっては『酔い旅』だがな。
ゴゴゴゴ、という音がしたと思うと、機体が動き始めた。
早速目の前に大きな登り坂が見えてきた。
ゆっくりと上がり、坂の頂点で止まると一気にスピードを出し下った。
その勢いで一回転もし、もう一つの坂を上がる。
「もう、ダメだ…」
「ちょ、おい! どうしたんだよ?」
酔いが最高潮まで達した。
やはりこのようなジェットコースターは俺には無理だった。
気がつけば、ジェットコースターが終点まで付いていた。
「お前、そういえばこういうのダメだったな… ゴメン」
「次こんなことしたら、後がないと思えよ…」
「…はい」
機体から降り、外に出る。まだ、少しふらふらとする。
俺のふらつきを見たためだかわからないが、フレイはより反省してるように見えた。
「少し休憩したらどうだ?」
「そうだな… あそこのベンチででも休んでるか」
近くにあった海の見えるベンチ。
そこに俺は座り目を閉じる。
涼しい潮風が頬に当たる。その気持ちよさは孤児院にいた頃を思い出す。
少し休もう。ここなら静かだし落ち着ける。
そして俺は座りながら寝た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フレイがこっちに戻ってきた時、レオンはいなかった。
フレイ曰く、休憩しているとのことらしい。
ジェットコースター… きっと酔ったんだな。絶対そうだ。
「自分で運転するか、慣れた乗り物以外は酔う」って前に言っていたような気がするもの。
「お〜い、オリガ?」
「ん? なに?」
「あれ、乗ろうよ」
フレイヤが指をさした先にあったのは、クルクルと回るコーヒカップ。
なんだか、とてつもなく早く回りそうで楽しそうだった。
「いいよ、でも次は私が指定するね」
コーヒカップの列に並ぶ。
相変わらず、ここに来るお客さんは多い。さすが世界一。
並んでいる途中にコーヒカップを見ると、ありえない速さで回っているのもあった。
人の力であれほどまでできるとは…
なんだか肩が震えている。
震えている右肩にはフーが乗っていたはずだ。どうしたのだろうか。
「どうした、フー?」
「ワゥ…」
あんな回転したら、吹き飛ばされそうで怖いワン。
そう言っているように感じたのはきのうせいだろうか。
「怖いんだね?」
「きゅぅ…」
フーはいつもよりも元気がなかった。
よほど吹き飛ばされるのが怖いのだろう。
どこか、安全な場所はないだろうか…? ん?
急にフーがジャンプして地面に降り、どこかへ走って行った。
吹き飛ばされるのが怖いみたいなのに、高い所からのジャンプは怖くないようだ。
走って行った先にいたのは、シド。
フーは得意なジェスチャーを使ってシドに来た理由を伝えているみたいだった。
その必死に何かを伝えようとしている姿はとても可愛らしかった。
どうやら無事伝わったようだった。
シドはフーを肩に乗せフレイと共にどこかへ行ったみたいだった。
「オリガ、あそこにしよ〜」
「あ、うん! いいよ」
フレイヤが声をかけてきた。
気がつけばもう私達が乗る番になっていた。
フレイヤが指定したコーヒカップは、先程ありえない速さで回っていたコーヒカップだった。
見た目は他のと変わりない。しかし、腰元あたりにシートベルトがある。差込口へ差し込むとカチッと音が鳴った。これでシートベルトは完全に着用できただろう。
安全確認のため、スタッフのお姉さんがやって来た。
コーヒカップの扉を閉じると共に、話しかけられた。
「このコーヒカップは回しすぎ注意ですよ。先程のようになってしまいますので。…と言ってもここに乗ったという事は、最速を味わいたいということですよね。くれぐれも気をつけてくださいね」
スタッフのお姉さんが操縦室へ戻ると、ブザーが鳴った。
「みなさん、今日はご来場ありがとうございます!くれぐれも回しすぎにはご注意くださいね。では、開始です!」
ファンシーな曲が流れると共にコーヒカップが回り始めた。
早速、フレイヤは中央にある銀色の円形をしたハンドルを回し始める。
「最高まで回していいよね?」
「もちろん! だってそのためにここにしたんでしょ?」
「えへへ、ノリがいいねオリガは〜 ミントもいたら、もっと楽しかっただろうな…」
フレイヤがボソッと呟く。大がつくほどの親友だったミントのことを。
毎回、ミントの事を思うと『なぜあそこで自らを犠牲にしてあの魔法を唱えたのか』という疑問がわいてくる。
確かに、ミントがあの魔法を使わなければ緑の国は滅んでいただろう。でも、それ以外に方法はなかったのだろうか。
いつもそうだ。戦いの結末を迎えると共に過ごしたり、戦った誰かがいなくなる。
院長も、女王様も、ジンくんも… みんな私達を残していなくなってしまう。家族だってそうだ。
その時人は『そういう運命だったんだから仕方ない』とか『あの人のおかげで今生きていれているのだから頑張ろう』とか前向きになろうと言ってくることがある。でもそれって言い訳だと思うんだ。
運命にだって抗えるし、他の方法がきっとその時は思いつかないだけでもっとあると思う。なのにいなくなってしまった人達をそんな風に言うのは、なんだか生かされた者としてずっと嫌だった。
なぜ皆が生きていられる結末を選ばないのだろうか。
「お〜い、大丈夫?」
「ん?」
「ボーッとしてたから」
「…考え事、してたの」
「今はこの旅で滅多にない、思いっきり遊ぶ時だよ。何にも考えないで弾けようよ。ずっと考えてたり、悩んでたりすると、気づけたり、変えられたりした事とかできないで終わっちゃうよ… だから、ね?」
フレイヤにはフレイヤなりの考えがあるようだった。最後の一言から伝わってきた。
「そうだね… さて、遊ぶぞ!」
「おー!」
先程の速さを超える勢いでハンドルを回しコーヒカップを回した。
降りた後にスタッフのお姉さんから聞いたが、歴代最高速度が出ていたらしい。そのため入場料無料券をもらった。もしここへ来る時があったら使ってみよう。
次に私のリクエストで、乗り物型のシューティングゲームをやった。機体に備わっている銃のおもちゃから出る光線を、周りにあるモンスターの動く人形にある小さな的に当てるという簡単な物だった。ペアで乗ると1vs1ができる仕組みになっているようでフレイヤと得点を競う事になった。
結果はもちろんフレイヤの勝ち。さすが、2丁拳銃を操り百発百中のフレイヤ。降りた場所にある得点板に載っていたフレイヤの得点は私を含めお客さん、スタッフさんが驚きを隠せないぐらいのものだった。ここでもフレイヤは歴代最高得点を取ったらしくまた入場料無料券が貰えた。後に、この出来事がこのゲームの常連達の間で伝説として語り継がれていくらしい。まぁ、後ろにいたお客さんが言っていたのだが…
その後は、レオンを除いたメンバーで様々なアトラクションを楽しんだ。お化け屋敷でのシドの対応、ジュリィの反応は忘れられない。
「はぁ… 疲れた…」
「私はバリバリ元気だよ〜」
「オレも多分このメンツじゃ一番アトラクションに乗ってるけど疲れてないぜ」
なんだこの兄妹は。数百ともあるアトラクションで乗っていないものが残り3つほどとなったなかでもバリバリ元気だ。疲れというものを知らないのだろうか…
「アタシもまだ行ける」
「僕もあんまり乗ってないから大丈夫だよ」
この2人はまぁ、あんまり乗っていないのだから大丈夫だろう。
それにしても今日1日の疲れがバッと出てきた。どこかで休みたい。
「休んだら…?」
「そうしたいけど、そんな場所あったっけ?」
「今もいるかわかんねぇけど、レオンが休んでるエリア5には海の見えてベンチが置いてある休憩所があったはずだぜ。近いからどうだ? あと、様子見てきてくれっか?」
「了解… あとは任せたよ〜」
エリア5の休憩所… あそこだろうか。
気がつけばもう夕方。街灯の明かりがつき始めるか始めないかぐらいの時間になっていた。
潮風が気持ちく、水平線に太陽が沈み始めオレンジ色と夜空の色が混ざり合い幻想的な環境のなか、レオンはベンチで1人で眠っていた。
「寝てる…?」
目を閉じ、静かに寝ている。近くにマジックペンでもあったら落書きしてやりたいぐらいに静かに無防備に寝ている。しかし、疲れが出ている現在の私には、そんな気力もなかった。
とりあえず、そろそろエリア1に戻らないといけないから起こしておこっと。
「お〜い」
無反応。相変わらず寝ている。
「お〜い、起きてよ」
まぶたが少し動いた。こいつ、もう起きているな。なんならさっさと起きないだろうか。
「…起きないと、ふふっ」
「…悪かったな」
やっと目を覚ましてくれた。とりあえず、隣にでも座っておこう。本来は休みにここへ来たのだから。
胸がドキドキする。2人っきりになった事なんてあまりないしなんと言ったって…
- Re: Change the world ( No.84 )
- 日時: 2018/04/07 01:21
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
39話、実は3500字オーバーしています。重かったらすみません。
40話 オリガの思い
「お〜い」
声が聞こえる。俺を呼んでいる…?
夢だったりしないだろうか。
「お〜い、起きてよ」
この声はオリガなのか? そろそろエリア1へ行くのだろうか。
…でも、まだ寝ていたい。
「…起きないと、ふふっ」
まずい。現実だ。このままじゃ何をされるかわからない。
「…悪かったな」
目を覚ますと、目の前にオリガがいた。目が合うとオリガはニコッと笑い、横に座った。
目の前に見える景色は、石レンガの地面に柵。そして遠くに水平線に沈む太陽。
もうこんなに時間が経っていたのか。寝てる間に何も盗まれていないといいが…
誰もベンチから動き出さない。オリガは何が目的でここへ来たのだろうか。
「…何しにきたんだ?」
「休憩。いっぱい乗ったから疲れちゃってさ。あと、フレイにレオンの様子見てきてくれっていわれてさ〜 …まさかだけど、ずっと寝てた?」
「あたりだ。ここ、懐かしく感じるんだ… だから」
「なんとな〜く、わかるかも」
立ち上がり、柵の方へ向かう。柵に海を見ながら寄りかかる。
周りにはこの時間のせいか誰もいない。…つまり、2人っきりだ。
フレイ達も残ったアトラクションに乗っているらしく、当分来ないだろう。
今がチャンスかもしれない。
「なぁ」
「ん?」
「俺… 前に『いろいろ聞かせてくれ』って言ったよな」
「うん、私を助けてくれた時にね」
「今でも… いいか?」
「誰もいないから… いいよ」
落ち着け、俺。
何に緊張しているんだ。素直になるって決めただろう。
…きっと、これは緊張じゃない。きっと。
こんなふうに思っていること、バレないでくれ…
相手は現役諜報部員。声のトーンとかで分かってしまうかもしれない。
「ルミルから裏で聞いたんだ。『あの刻印は刻印を押される事を受け身が願ってくれないと、あんな風に押されたことにならない』って。…本当か?」
それは、皆に内緒でルミルから言われたこと。
ストレートに聞いてしまったがいいのだろうか。よく、『女の子の心は繊細だ』と言うが…
「……本当、だよ。私、願ったの。刻印は力がアップするって聞いたし、その他の事、全部聞いた。自分が自分じゃなくなるかもしれなかったけど、克服して利用しちゃえばいいやって思ったの。でも、あんな事になるなんてね… 私の考えが甘かったよね。 …本当にごめんなさい…」
「そんな謝るなよ。結果的に無事だったんだ。だから、な? でさ、なんで…」
「強くなりたかったの。みんなに追いつきたかったし、足手まといになりたくなかった。それに…」
オリガの目が潤い輝く。あ… 俺、言いすぎたみたいだ。と感じた。
オリガが泣くことなど、滅多に見たことがない。遠い昔に「涙は人の前で見せるものじゃないもん」と言っていた。もしかして、ずっと考えたり、悩んだりしていたのだろうか。1人で抱え込んでいたのだろうか。フレイがパーティーの時に言っていたかもしれない『オリガはよく1人で抱え込んでしまう』的なことを、今改めて思う。
「それに… 嫌だったから… 戦いとか終わったら、誰かが、いなくなるのが… 嫌だった、から…」
震える声で微かに言ったのが聞こえた。表情は下を向いていて髪に隠れているためわからない。
「嫌だ」などと素直に他人へ自分の気持ちが言えない、気持ちの晴れない今の社会。それがこんなにも重りになっていることがよく伝わる。
たとえ憎しみや恨みのある帝国相手でも、’’戦えない状態’’ つまり生きているが戦闘はできない状態にし、敵を死なさないように掟を守って戦っていた俺達反乱軍。でも、帝国… その他諸々の敵となった者… 立ち向かってくる者達はそのような掟などない。そのため、本気でかかってくるので身近かな人がいなくなってしまうということはたくさんあった。たとえ戦いが終わっても、いなくなってしまった人々は戻らない。共に過ごすことなどできない。それがオリガにとっては嫌だったらしい。
「つまり、自分がもっと強くなって誰もいなくならない結末にしたかったんだな」
オリガは静かに頷く。軍に入ってから… いやもしかしたら孤児院が襲われた時から考え、悩んでいたのだろう。ずっと、誰にも話さないで1人で抱え込んでいたのだろう。そして、1人で解決しようとしたのだろう。オリガの苦しみは俺達にはきっとわかりきれない。だがそれに気付き、手を差し伸べることができたと思う。だって俺達は信頼できる仲間… 切っても切れない絆で繋がっている仲間のはずだから。
「1人で抱え込むのやめろよ… 俺達… いや、言いにくかったら俺だけでいいから… 何かしら言ってくれよ。もう嫌なんだ… 何もできないで終わるのは…」
何もできないで終わる。守りたいものとか守れないで終わる、戦えたのに何もできず失って終わる。そういう事が俺の人生で悔いとして残っている。ジンとの最期とか、本当によくしてもらっていたのに俺は何もできなかった。それがただ悔しくてしょうがなかった。
せめて、大切な人だけは何もしないで終わりたくはない。こんなふうにオリガは言ってくれた。だから助け船を出して綺麗さっぱり、スッキリと解決したい。
「それに、力とかなんて関係ない。大切なのは… 思うことだ。」
かたい思いあえあれば、人は前へ進められる。いや、何かしらの思いがあれば行動できる。
守りたいとか、救いたいとか思っていれば自然と体が動く。きっとミントはそのような思いがあったからあのような結末を選んだのだろう。オリガだって、誰かがいなくなるのが嫌という思いでそのような行動をしたのだろう。だからこそ大切なのは、思うことなんだ。
今の俺がオリガにできること… それは…
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泣いちゃった。こんなふうに自分の気持ちを言うなんてこと、初めてだったから。
「涙は人の前で見せるものじゃない」それがモットーの私だったけど、今回ぐらいはいいや。
まさかレオンにこんなふうにしてもらうなんて思いもしなかった。
「俺を頼ってくれ」だなんてみたいな事自分から言い出したのもそうだけど、今みたいに優しく暖かく抱きしめてくれるなんて…いつもとの姿とのギャップがあってちょっと戸惑っちゃうなぁ。
でも今は、その暖かさを感じていたい。悩んでいる事とか全部包んでくれそうな暖かさをずっと…
永遠に片想いで終わっちゃうかと思ったけど、無事? 出会えたし両想いにもなれるなんて。
やっぱりレオンはかっこいいよ。その姿、思い、優しさは。
私もいつかなれるかな…? 自分に子供ができたときとかに。
この人に出会えて本当に良かった。運命って… 不思議なものだなぁ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それは、オリガをいろんな意味で支えてあげること。
俺は、いつの間にかオリガの笑顔とかに惹かれ、好きになっていたのだろう。
最初にフレイに言われた時は完全に否定したが、今なら認めてやってもいい。
約束、まだ覚え… あ!
「なぁ…」
「何…?」
「約束の場所、こわれっちまったよな…?」
「うん。今、決めなおそう」
元通り、柵に寄りかかる。
なにか待ち合わせにいい場所あっただろうか。
俺の記憶を探る限りはない。
「なんかいい場所あったかな〜」
オリガが頭をぽりぽり書きながら呟く。
さっきまで潤っていた目も、今では元通りだ。
「似たようなところ思いついたの。」
少し間を空けて小さな声で呟く。
「城の玉座の後ろのテラス。ほら、私ら2人だけに女王さまが許可取ってくれたでしょ? 夜、星空の下で待てっるから」
「『待ってるから』? なぜ俺が遅れる前提なんだよ」
「いい間違えだよ! もう、そんなこと突っ込まなくていいの!でも、来なかったら私ずっと待ってるから。どこにも行かないから、安心してよ」
「フッ、どうせ途中で飯食べたりするのにどこか行くだろ?」
「笑わないで! 星空の下って聞こえなかった? 私が待つのは夜限定ですよ〜」
笑いがあふれる。こんなふうにいつまでも笑っていられたらどんなに人生楽しいだろう。
ん?
オリガのスマホの着信音がなる。
「はいはーい、ん? あ、了解」
「なんだって?」
「全部のスタンプ貰ったからエリア1の事務所へ来いだって」
「さて、行くか」
俺達は、歩き始めた。
- Re: Change the world ( No.85 )
- 日時: 2018/04/15 20:28
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
41話 関係
「お疲れ様です。約束通り差し上げますね。ついてきてください」
スタンプがすべてうまり、事務室へ戻った俺達。
タンドさんは誰も見ていないことを確認すると奥の本棚を動かした。
どかした本棚のあった場所には、先が暗く、どこまであるかわからないほどの地下へと続く階段があった。
まさか、このような場所に秘宝の眠る場所があったとは。
少し降りると、後ろの方で本棚が動く音がした。
「出口、なくなっちゃったけどいいの?」
「大丈夫。別の方法がありますし、あっちではニョーがうまくやってくれているはずですから」
さらに降りると、部屋があった。
壁には松明が飾られ、辺りを照らしている。その壁に描かれていたのは…
「これは… 幻獣の壁画?」
土で作ってあると思われるレンガの壁に描かれていたのは幻獣の絵。
少し消えかけて色が薄くなったりとしているが、だいたい何が描かれているのかわかる。
「そうです。ここに描かれているのはそれぞれの属性を司る神とその使い… 幻獣の絵です。昔、私の祖先が描いたとされています。」
どの方向にも壁画がある。中心には人… 神がおりその隣に幻獣がいる。幻獣の背後には建物らしきものが描かれていた。それについて聞くと、「その建物は魔石のありかです」とタンドさんは教えてくれた。
確かに、今まで魔石を求めて行った建物に似ている。ここを見ればどこに何があるかすぐわかりそうだ。
「守一族と神と召喚士と幻獣の関係、わかりますか?」
「常識ってカンジで覚えたけど、あんまり理解できてないぜ。俺は」
それでいいのか国王。
先が思いやられる…
「では、説明しましょう。うまくできるかわかりませんが…」
その後、タンドさんは壁画を使って説明してくれた。
「この世に魔法などの属性が出来た時、同時にそれを司る神が生まれた。
神は魔力が強く、特に自分の司る属性の魔法の威力は計り知れないものだった。
ある時神は人々に魔法を教えた。すると文明は栄えていった。
文明が栄えることで人は力を持ち、互いに力を求めて争うようになった。
そのうち、神の力をも求めるようになっていき、神は自分を守るための使い…幻獣を生み出した。
力を求める人、自分を守るために生み出された戦うための幻獣は戦うようになっていった。」
「だからバハムートはあんなふうに言っていたんだ〜」
「バハムートにあっているんですね。さっき言った戦いでその力が危険視されバハムートは魔石とされてしまったんです。だからそう言ったんだと思います。」
タンドさんは説明を続けた。
「だが状況はずっと変わらず、どちらも犠牲をうむばかりだった。
そんな時、世界を創造したとされる神… 創造神が皆の前に現れこう言った。『争いを止め、共に手を取り合いなさい。』と。そこで神は魔力の強い人間を選び、契約させ力を与えた。それが私達守一族です。
しかし戦うために生み出された幻獣は危険なものばかりだった。そのため神は幻獣をバハムートのように魔石に変え世界の様々な場所へ安置した。
ある日、幻獣はそれぞれの主へこう言った。『これでは、存在する意味… 生きる意味がない』と。
神にはもう、戦う理由がなかったため幻獣は必要なかった。消してしまってもいいと思った。神にとって幻獣は自分を守るための道具にすぎないのだから。でも幻獣にはそれぞれの感情…心ができてしまっていた。戦いのおかげで道具ではなく、1つの生き物となっていた。だからと言って、巨大な力を持つ生き物を自由に野放しにするわけにはいかなかった。
そんな時、神と契約した守一族の者が『我らが作り上げた召喚魔法で幻獣を呼び出し、共に協力して生きていく事を望む者が我が一族にはいる』と言い出した。
神は思いもよらぬ言葉に驚いたが、それなら安全だと思った。
なぜなら、創造神の言った『共に手を取り合う』という事ができ、幻獣を手放すことができたからだ。
そして、『共に協力して生きていく事を望むもの達』はそれぞれの幻獣を従えるために守一族と離れ、神との契約を無きものとし幻獣と契約した。離れた者達は後に召喚士と呼ばれて言った。
…という感じですかね」
守一族と神と召喚士と幻獣の関係。それは古の頃から続くものだった。
「さて、秘宝についても説明しますね。この『他世界への鍵』は、その名の通り別の世界へ行くための鍵です。
この鍵が対応している扉は世界には3つあります。しかし私が把握しているのは幻獣界への扉のみです。」
「どこにあるんだ?」
「この大陸の北側にある『召喚士の里』の下です。私は守一族の者なので詳しくはわかりませんが…」
「ありがとう、タンドさん。あとは私達に任せて」
タンドさんがオリガを見て何かに気付く。すると、何か安心したようだった。
「任せますね。では、これを」
宝石のように輝く石… 『他世界への鍵』を貰った。
「…どうやってここから出るんですか?」
誰もが思った事をシドが聞いた。
ここへ来る途中に、別の方法があるとは聞いたが…
「私が今から私以外の者を対象にして転送魔法を唱えます。行き先は、召喚士の里の入り口です」
「ありがとうございます。 …飛空艇もですか?」
「はい。戻ってくるのも大変でしょうし」
タンドさんは瞬時に詠唱を終えた。
辺りが光に包まれ、その眩しさに俺は目を閉じた。
- Re: Change the world ( No.86 )
- 日時: 2018/04/17 21:38
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
42話 里の案内人
召喚士の里。それは、十数年前に廃墟となってしまった里。
そして、ミントの本当の故郷。
その場所に俺達は今立っている。
木々の隙間から漏れる星や月の光で辺りはなんとなくわかる。
家は屋根が崩れていたり、半壊していたりと様々。壁には蔦が生えていたりもする。
道は石レンガで作られているようだが、苔が生え隙間から雑草が溢れていて歩きにくそうだった。
奥にある広場であったであろう場所にある噴水の水は枯れ、人気が全く感じられない
はずだった。
「動いた…?」
シドが壁が少し崩れている家の方を見る。
目を凝らしてよく見ると、茶色い尻尾が見える。
「とりあえず、行ってみようよ〜」
モンスターかもしれないため、慎重に近寄っていく。
歩くと雑草が音を立て揺れてしまった。それに気づいたのか尻尾が動き、顔が見えた。
子供のような外見で、金髪の右側を編み込みにしたストレート。耳が尖っている。
…目が合ってしまった。
「!?」
「あ…」
尻尾を持つ子供はすぐに剣を取り出し構えた。
子供のような外見に尻尾… クロエルだ。
クロエルが一歩こちらへ踏み出そうとした時、フレイヤが前に飛び出し叫んだ。
「ちょっと待った〜!」
クロエルが驚く。
「私達は敵意ありません! ほら、構えてないでしょ」
クロエルが俺達を見る。
そして、手にあった剣が姿を消した。
「ここに何しに来たの?」
クロエルが初めて喋った。その声はまさに子供の声だった。
「幻獣界へ行くためにここにやって来たの。あと、個人的な話になっちゃうけど、帰郷ってところかな」
オリガにも召喚士の血が流れており、遠い昔に祖父母に会いに家族でここへ来たことがあると前に話していたことを思い出す。
本当の故郷に帰る…ってどんな気持ちなんだ?
俺は幻獣界の民だと書かれていた。しかし、正直なところ孤児院へ来る前の記憶が無い為本当なのかわからない。でも、もうじき幻獣界へ行く。そこの王のオーディンなら俺の事がわかるかもしれない。わずかな希望を抱く。
「敵じゃない?」
「最初っからそうさ。お前から仕掛けたんだろうが…」
「ごめんなさい、おばさん。ここへ来る人間達、いつも襲ってくるから…」
「あ、アタシが… おばさん…」
19歳にとってその言葉は衝撃的なものだっただろう。
…俺もそう言われたらさすがにショックだ。
「ま、それは置いといて。どこか休める場所はないかい?」
「それなら、ここ。他、危ないから」
それは、クロエルが隠れていた家だった。
中に入り、転がっていたランタンに火を灯しそれを囲むように壁に寄りかかり座る。
クロエルの名はヴェルと言うらしい。
年は外見よりももっと上で、俺達よりも700歳ぐらい上らしい。
さすがモンスター。長生きなヤツはほんと長生きだ。
それを聞いてジュリィは「お前の方がよっぽどおばさんだろう」と思ったであろう。
…しかし、外見だとヴェルの方が若く見える。 …外見だと。
「『他世界への鍵』を持ってるって言ったね」
「幻獣界へ行くには、必要だからな」
「それを持っていて輝きを失ってないなら、幻獣界へ行けるよ」
ヴェルがジロジロと『他世界への鍵』を見つめる。
珍しいものなのだろうか… 他の宝石と変わらないような気がするが。
「力、取り戻した方がいいかもね」
「力?」
「そう。輝きがあっても鍵の力がなければ行けないよ。狭間に行っちゃうかもしれないからね」
「どこで力を?」
「今日は疲れたから明日。案内してあげる。ヴェルはここの案内人だから」
とりあえず、幻獣界へ行くのは後になりそうだった。
ランタンの火を消し、眠りにつく。
今日1日だけで、いろんな事があった。この旅はあとどのぐらい続くのだろうか。
世界の平和を願うのなら早く終わってしまった方がいいかもしれない。だが、この旅が終わったら皆それぞれの道へと歩んでしまう。せっかく会えたのだからまだ一緒に話したり遊んだりしていたい。
まだ、旅が続くことを願って俺は眠ることにした。
- Re: Change the world ( No.87 )
- 日時: 2018/04/20 18:54
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
42.5話 シドとジュリィの思い
正直なところ、僕はこの場所で深い眠りにつくことはできなかった。
静かで月光が綺麗な場所なのに何でだろう。座っているから?
とりあえず、歩いて体でも伸ばしてリラックスしよう。
眠りを妨げないように静かに立つ。崩れた壁から外に出てみた。
石レンガの道を歩いていく。雑草が生えているため少し歩きにくい。
石レンガの道に沿って建てられている家は、人が住めるような物ではないぐらい崩れたり、壊れたりしている。
なんとか壁が崩れているぐらいの程度の家もあり、休み所ぐらいならできそうな場所もあった。しかし、安全の保証はできそうにない。
壊れ具合から見て、この里は植物などの生き物を除いて滅びた当時のままに近いようだ。
でも、生き残った人がいた様な形跡がない。もしかして滅びた時に全員… あるいは…
『私が孤児院に来る前… 院長に助けられた時、私以外、里に人がいなかったって聞いたことがある』とミントが前に言っていた。
里の者はいったいどこへ…?
そうこう考えているうちに、大きな木のある場所に辿り着いていた。
ここだけは他と違い、雑草は生えていなく、壊れて危険な場所もない。
森に囲まれた草原は月光により輝き、夜とは思えないほど明るい。
その草原の真ん中に里を見守っているかのようにたたずむ巨大な神木。葉の一つ一つが風で揺れ、様々な個性を引き出していた。まるで、人間かのように。
「大きい…」
「そうだな」
「う、うわっ!?」
急にかけられた声に驚く。
後ろを向くと、ジュリィが立っていた。
「そんなに驚くことしたか…? アタシ…」
「背後に急に立たないでくださいよ…」
「急に? …ずっとついてきていたんだが」
「ま、まぁ、ともかく! ジュリィは何しにここへ?」
「目ぇ開けてみたら、シドがどっか行くのが見えてな、気になったからついて来ただけさ。…アンタこそなんでここに?」
「ただ探索していただけです。眠れないので…」
「へぇ〜」
ジュリィが神木を背に地面へドサッと座る。
すると光の粒が少し舞い上がる。
「この光… なるほどね」
ジュリィはボソッと呟く。何かわかるのだろうか。
「なぁ」
「なんだい?」
「アンタはどーいう目的で旅してんの? 敵は母国なんだろ?」
どういう目的? それは…
「……」
「フクザツなんだな、アタシは10代最後ってことで楽しむって目的で旅してっけど。
…と言うのは表向き。裏は、アイツらが心配だから見守るっていうかサポートするつもりで旅してんだ。親友との約束だから。」
初めてジュリィの本当の思いが聞けたような気がする。
レオンに聞いたところ、ジュリィと孤児院メンバーは小さい頃から家族同然の付き合いらしい。
「小さい頃はみんな純粋で可愛かったのにな…」とジュリィが呟いたのを聞き逃さなかった。
小さい頃から接してきていた彼女には、『年上』という立場だからこそのいろいろな思いがあるのだろう。
それは、責任とも言えるかもしれない。
…責任か。
「うまく言葉にできませんが、僕は、帝国を止めるつもりで旅をしているんだと思います。あそこまで技術を進歩させたのは僕ですし、実は… 僕の母は皇帝と再従らしいんです。それに、皇族の血を引いて今生きているのはいるのは僕と皇帝のみ。でも皇帝は操り人形同然。だから、同じ皇族の血を引くものとして、皇帝を楽にしてあげたいんです。だって本当は皇帝は… もうこの世の者ではないんですから。」
「なんかいろいろありすぎて、頭パンクしそう… とりあえず、アンタも責任ってもの、感じてるんだな」
「レオン達が孤児となってしまう原因を作ったのは帝国ですし、もう僕以外の帝国府関係者はパナソのものとなってしまっていますから。あ、僕の後輩はまだ本当の事を知っていませんが。だから帝国を正しい道へと戻すことができるのは、本当のことを知っている僕しかいないかと思いまして」
リガンにシトリー… みんな同期で昔はワイワイやっていた。仲が本当に良かった。
時に皇帝… いや、パナソが残虐な進軍命令や任務を下すことがあった。いくらその命令が国のためとなろうと僕達は反論して中止するように求めた。いくら特殊部隊でも罪なき人々の命を奪うのは心が痛む。
でも、ジンが帝国を抜けたあたりからみんな人が変わったかのように任務を遂行するようになった。会話も減って合う機会も少なくなった。きっとこれにはパナソが関わっているのだろう。
もう、僕しか帝国を正しき道へ戻すことができないかもしれない。
だから、レオン達と共に帝国を止めるために旅をしているのだろう。
「重いもん背負ってんのは一緒なんだな」
「ですね」
「でもさ、こーいうのできんのあんまないよね。未来なんてどうなるかもわかんないし。ただ… 今を全力で楽しんで生きないと、さ」
未来の保証なんて誰にもできない。後のことなんてどうなるかわからない。
それだからこそやることややりたいこと全てやって全力で楽しんで生きる。
それがジュリィの思い。そして覚悟。
僕だって半端な覚悟や思いでここまでやってきたわけではない。
でも、全力でやるまでもしていなかった。
なぜなら、全力でやった結果が、今の帝国なのだから。
…僕は恐れていたのかもしれない。
未来が悪い方向に行ってしまうかもしれなくて、思いっきり全力でやることを。
…このままじゃいけない。
みんな、平和な未来を望んで、これ以上悲しむ者が出ないようにするためにここまでやっている。僕も平和な未来を望んでここまでやってきたんだ。
「決めました」
「…何を?」
「全力でやることをです」
「…ふ〜ん。深くは聞かないけど、固まっているんだな」
ジュリィは全てお見通しだったかのような態度だった。
これで僕の悩みは晴れた。すっきり前へ歩いていけそうだ。
…そうすれば、きっと…
「さて、戻りましょうか」
「戻ったらヴェルとか起きてそうだな」
気がつけばもう、朝日が昇る時間帯だった。
草原の輝きは失せていない。まるで、人々が抱く希望のように。
結局、眠れなかったけどいっか。
こうして全力でやっていくのは、あの頃のように楽しいから。
- Re: Change the world ( No.88 )
- 日時: 2018/04/23 21:22
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
43話 懐かしい音色
「ヴェルは迷わないし、1人でも大丈夫… 行くよ」
ヴェルに俺達はついて行く。
見た目は俺達よりもずっと子供に見えるが、豊富な知恵、常識などからずっと年上だと改めて感じる。
しかし、『1人でも大丈夫』という言葉から少しの寂しさも感じる。
その寂しさは、俺がここにいる誰よりも知っているものだろう。
「何かあったら僕達に言ってくださいね」
シドの言葉にヴェルはこちらに振り向く。
「ヴェルは本当に大丈夫なんだから! そんなこと言っていられるのも今のうちだからね」
「後ろ… 」
「え? うぎゃっ」
傾いている木の枝に前を向いたヴェルがおでこをぶつける。
…全然大丈夫じゃないだろう。
「うぅ… いてて…」
木の枝が太かったため、よほど痛かったのだろう。若干涙目になっている。
それに気づいたフレイヤはヴェルに近づきぶつけた所を撫でて
「痛いの痛いの飛んでけ〜」
と言いつつ傷薬を塗る。
少し赤みを持っていたおでこが元の色に戻り始めた。
「少しスースーする…」
「緑の国産なおし草の傷薬だよ〜 少しスースーするけど、それが消えたら痛いの消えるから」
「…ありがとう」
お礼を言うとすぐ前へ向き直り、進む。
ヴェルは痛みには弱いらしい。
少し歩くと、道と同じ石レンガで造られた小屋のようなものについた。
小屋は4方位が入り口となっており北側のずっと先には大きな神木があるのがわかる。また真ん中に祭壇のようなものがあって祭壇の天井だけ屋根がない。
お昼12時ごろになれば太陽が、夜0時ごろになればちょうど月の光が入る設計となっているのだろう。
「ここだよ、ちょっと待ってね」
ヴェルが背負っていたミニリュックから何かを取り出す。
その何かは3つに分かれた金の細長いもので、組み立てると
「フルート?」
木管楽器に分類されるが今は金属で作られている楽器… フルートだった。
「そうだよ。これでとある曲を吹くの」
「銀メッキじゃないのか?」
「フルートは銀以外に、銅、金、プラチナなどがあって素材が変わると音が変わるの。この里でずっと使われてきたのは金色なの」
そう言うとヴェルは「音出ししてくる」と言ってどこかへ行ってしまった。
「最近吹いてねぇな…」
フレイがボソッと言い放つ。
孤児院にいた頃、フレイはよく緑の国に住む人々の手伝いをしていた。
働き者な性格のせいかわからないが手伝いはすぐ終わってしまい、暇だと俺によく言ってきていた。
それを見た院長はフレイにある楽器を買って与え、教えていたのをよく覚えている。
時に変な音が聞こえて笑っていたら怒られたっけ。
「なんだっけ、お兄ちゃんが吹いてたの」
「サックス。まぁ、オレが吹いていたのはサックスの中で2番目に音が高いアルトサックスだけどな」
「よく変な音鳴ってたよな…」
「リードミスはしょうがねぇんだってば! 木管楽器なら誰でもなっちまうさ」
「フルートはなっていないっぽいけど…」
「あれはエアリード式つって、アイスの棒みたいなの使ってないからなんないんだ。使ってないぶん難しいらしいけどな…」
フルートの音色が聞こえなくなった。
「お待たせ。きっと大丈夫だから吹くね」
ヴェルは祭壇に立ち、北側を向き吹き始めた。
暗くも明るくもないなんだか懐かしく感じるメロディ。俺は… 聞いた事ある…?
なめらかでビブラートのかかったその音が里中に響く。ただ、フルートの音色だけが。
最後の1音の余韻が消えたと同時に、地下へと続く階段が音を立てて現れた。
「じゃあ、行こう」
ヴェルはフルートを片付け、再び俺達を案内してくれた。
- Re: Change the world ( No.89 )
- 日時: 2018/04/28 00:09
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
43.5話 生命の輝き
階段を下りると、1本道となっていた。
道の両端は水路となっており、壁にはハイランドにあった部屋のように松明が均等についている。
また、光の粒が空中を漂っている。何かに引き寄せられているみたいに。
「この光の粒の正体って…」
「人間や動物、モンスターが神のもとへ旅立つ時に現れる光だよ。ヴェルとかは『生命(いのち)の輝き』って呼んでる。理由はなんだっけ… 覚えてないや」
今回はちゃんと前を向いて話すヴェル。よっぽど痛かったのだろう。
生命の輝き… 俺達はこの旅でどれぐらい見てきたのだろう。見届けたのだろう。
見るたびに誰か、あるいは何かを失っていた。だからこの光を見ると、胸が苦しくなる。
生命のように輝かしい光の粒。それが理由のはず。
俺は、なんで知っているんだ?
「ついたよ、あの滝に他世界への鍵を入れて」
先ほどとは違い、人工物が1つもなさそうな場所に着いた。
天からは神木の根が垂れ下がって、浅い湖に少し先がついている。
どうやら湖は海からの水が流れ込んでいるらしく、奥は3メートルほどの滝となってそこから太陽の光が入り、湖が反射することでこの幻想的な空間を作られているらしい。
「服、濡れちゃうな」
「大丈夫だよ、おばさん。ここら辺の水はちょっと特殊な水だから。」
「…おばさんじゃないって言ってるだろ…」
湖に足を踏み入れる。
水に入ったという感覚はあるものの、濡れている感覚は全くない。
これはきっと水属性の幻獣の加護があるためだろう。
ということはここの近くの海にその加護をもたらす幻獣… ウェンディーネの魔石があることとなる。
気配がするという事が俺の中で根拠となっている。
さっきからちょっと俺、自分でいうのもアレだが何かおかしい。
ヴェルのような過去を知る者しか知らない事、幻獣の気配とかが歩き進むとどんどん正確にわかってくる。
生命の輝きが俺をそうしているのか? あるいは俺が思い出しているのか?
…ヴェルなら知っているかもしれない。
「ヴェル、ちょっといいか…」
フレイ達に素早く手順を教え、ヴェルがこちらに走ってきた。
「何?」
「実は、ここへ来てから知らないはずの事とか、幻獣の気配とかがわかるようになってきているんだ…
これっていったいなんなんだ?」
ヴェルは「まさか…」とつぶやく。
「お兄さん、もしかして幻獣界の民? それしか考えられない…」
「そう、らしい。詳しくはわからないが…」
「そうか、多分原因は生命の輝きを体内に取り込んじゃっているんだよ。意識ないみたいだけど」
「意識はしてない。なぜ…?」
「もしかしたらのもしかしたらなんだけど、確率はかなり低いと思うけど、幻獣の血が流れてたりするのかも。そのお兄さんの体に。幻獣って生命の輝きをもとにして作られた道具、じゃなくて生物なの。だから幻獣は生命の輝きを体内に取り込む事でいろいろな事を知れたり、体力の回復ができるの。でも、はっきりとした原因はわからないな… ここから出て休む?」
「いや、大丈夫だ。もうじき幻獣界へ行ける。そこで全てがはっきりするからな」
「うん、わかった。もうちょっと我慢してね」
幻獣界へ行けば、きっとわかる。俺のほとんどが。
そう思うと、『頑張ろう』とか、『やっとだ』いろんな気持ちが入り交ざった気持ちになってくる。
でも、一番は安心した気持ちだ。
なぜならヴェルから見て俺は、『お兄さん』だったから。
- Re: Change the world ( No.90 )
- 日時: 2018/04/28 19:52
- 名前: 新・ゆでたまご (ID: Gui0iSKB)
すごい・・・
この一言です。
僕は、こういうファンタジー系はまっっっったく書いたことがないので、すごいなぁと思います。
ファンタジーって、物語がごっちゃになる感じがして、とても難しいイメージです。
しかし、この小説はとても読みやすく、そしてわかりやすいです!
しかも、銅賞受賞したんですか!すごいですね!
僕も、ファンタジー系に挑戦してみようかな、と思えるきっかけになりました!
いや、書くぞ!ちょうど一つ物語終わったしw
完結まで読んで、感想を書きたいと思います!
これからもがんばってくださいね!
- Re: Change the world ( No.91 )
- 日時: 2018/04/29 16:58
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
コメントの返信です。
新・ゆでたまご さん
コメントありがとうございます!
こんなに褒めていただくなんて… 照れちゃいます
物語はごっちゃになっていませんが、作者のくせに登場人物がごっちゃになってます(笑)
見直ししておかなければ…(汗)
ファンタジー系をお書きになるんですね。あとで読みます!!
ここでポイントを。
ファンタジー系を書く時は、ある程度の設定、流れを決めておくといいですよ(書きやすく、わかりやすくもなるはず。話を膨らませる事もできます)
決めたらメモ。そうすればきっと私みたいにはならないはず…
お互いに頑張っていきましょうね!
(追記)
読みましたよ!(まだ物語始まってないのにねw だからここに書きます)
正確には読んだという事にまだなりませんが…
音楽系ですか。 楽しみです(私が吹奏楽部所属ですので)
音楽っていろいろ題材にしやすいですよね。記号や奏法… いっぱいあるので。
ただ、マニアックな話になってしまう事があるので気をつけてください。
(CTWの話の中にフルートが登場していましたよね? あれって私がフルートを吹いているのでついつい出してみました。ちょっとサックスを掛け持ちで吹いていた事があるので、違いをフレイに言わせてみました。そしたらエアリード式やらリードミスについてマニアックになってしまいましたので…)
音楽委員会ってものがあるんですか…
私の小学校にはなかったんですよね(途中で学校が閉校して統合したけどなかったですw)
いいな〜
- Re: Change the world ( No.92 )
- 日時: 2018/05/04 21:12
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
44話 幻獣界へ
「これで大丈夫。ほら」
他世界への鍵が輝き、宙に浮く。
そこから放たれた光が湖の真ん中で扉の形となっていく。
「そこを開けば幻獣界だよ。いってらっしゃい」
「うん、行ってきま〜す!」
光の扉に触れると、勝手に開いた。
俺達は迷わず足を踏み出す。
「よっと」
後ろの方で扉が閉まる音がした。
「ここが幻獣界…」
ひとの気配が全くないが、民家のような建物が今まで行った街と同じように並んでいる。
空には満月が浮かび、石造りの城があり、窓から明かりがもれている。
とても静かな場所だった。
「目指すは城ってことか」
「他には何もなさそうだしね」
街灯の明かりが道を照らしている。
その明かりを辿って道なりに歩くと、あっという間に城へついた。
扉の前に立つと、まるで俺達を歓迎するかのように重い音を立てて扉が開いた。
城の中は赤い絨毯が敷かれ、古い洋館のような雰囲気が漂っている。
ロビーと思わしき入ってすぐの場所には、途中で分かれている階段が奥にある。
「ワゥ」
「どーしたの、フー?」
フーがオリガの肩からジャンプして大理石の床に降りる。
こちら側を向いて尻をつけて座り、前脚で手招きをした。
『ついて来い』ということなのだろうか。
伝わったと思ったらしくフーは階段を登り、迷わず右側へ登って行った。
「ワゥ!」
「はいはい、早く来いってことでしょ」
「フぅ」
フーに案内され階段を上り右側へ行くと、細い廊下があった。
松明のように壁にかけられた蝋燭は灯る火は熱さを感じさせず時々揺れ、廊下や同じく壁にかけられている絵画を程よく照らす。
再び階段を上る。
上りきると、左側の道と合流できる場所に出た。
そこはシャンデリアが飾られ、今までの場所より少し豪華だった。
「きゅ〜」
そっちじゃなくてこっち。と言うかのようにフーが俺達が見ていた方向と逆の方向を指差す。
そこには、入り口と同じくらいの扉があった。
いかにも、この先玉座という雰囲気を出している。
「この先が… やっとだな」
「何が待っていても受け止めるしかない。そんな気がしてきたな」
この扉の向こうに、オーディンが待っている。
それぞれの思いを胸に、扉を開いた。
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今回は珍しく1000文字以下のお話とさせていただきました。
…来週、テストがあるんで(涙)
ということで連載遅れます。
- Re: Change the world ( No.93 )
- 日時: 2018/05/12 00:36
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
45話 覚悟と思い
扉の向こうに広がっていた場所は、前に夢のような感覚でオーディンと会った時と同じ光景だった。
長い白い布の敷かれたテーブルの左右にある椅子は誰もおらず、寂しい印象を受ける。
「よくぞ来てくれた、若者達よ」
奥に立っていたオーディンが言う。
オーディンのその一言により、重い空気が辺りを包み込む。
「まずはここに来てくれと頼んだ理由から話そうとしよう。気を楽にして良いぞ」
そういわれても、相手が幻獣王なのだから楽にはなれない。
緑国王とは違って。
「伝えたいことがあるのだ。いろいろとな。まず1つは、お主達のその戦いに最後まで協力するということ。…まぁ、もうしておるがな」
確かに、俺達の力となって共に戦ってくれている。
1つ目は特に重要にしなくて良さそうだ。
「2つ目は帝国を操りし者のことだ。彼奴の本当の目的は、世界と世界の間にある世界を繋ぐゲートと言われておる次元の狭間の中の『狭間の世界』から神のいる次元へ行くための扉を開くことだ」
パナソの目的。それは神のいる次元へ行くための扉を開くこと。
なぜそんなことをようとするのだろうか。
「なんでそのようなことを?」
「彼奴の名は、パナソ・ホウフハ・マニプュレートという。気づいただろうか?」
「ホウフハの名を持つ… そういうことか!」
どういうことだよ。ちゃんと言葉にしてくれよ…
「昔話にあっただろう? ホウフハの一族と。一族の目的は古くから1つ。『神から与えられた使命を果たす』という事。その使命こそが『世界へ試練を与え、神を超える者を作り、扉の向こうの神へあわせる』という事なのだ。今までしてきた帝国の行いを世界への試練と考えると、お主達は帝国の行い… つまり戦いで力も能力も、ましてや思いの強さも強くなったであろう。」
「という事は… オレ達が!?」
「そう。お主達が神を超える者に選ばれたのだ。だからお主達を帝国… いや、彼奴は孤児になるよう仕向けたのだ。」
「そうだとしたら、あたしはどうなるんだ? 帝国から酷い目にもあってないし、孤児にもなっていない」
「シドとジュリィ。お主達は寄り添う者として選ばれたのだろう。この4人の者との今までの関わりを思い出してみなさい。見守ったり、支えたりする事が多かっただろう」
「確かにそうですね…」
「彼奴は全てを見通していたのだ。使命を果たせずにいると25歳で亡くなってしまう呪いから一族を解放するために」
「初めから見通していた… としても、パナソは僕達と大体同い年。レオン達をこの運命にするために仕向けるためにはかなりの歳上でないといけないのでは? とっくに亡くなっていてもおかしくはないのではありませんか?」
「彼奴は、表に出ていないだけでお主達よりも倍以上歳上だ。しかし、呪いの影響はうけていない。それは、その見通し… 作戦が神に気に入られたからだ。だから神は彼奴に永遠の命を与えたのだ。作戦が成功すれば使命を果たせ、神自身の目的も達成できるのだから。」
パナソのしてきた事は、簡単に許せる者ばかりではない。
だが、オーディンの話を聞いてパナソは、一族を苦しめてきた呪いと使命から開放すべく自分を犠牲にしてでも解き放そうとしている事が分かった。
永遠の命。憧れる者もいるだろうが、死にたくても死ねず、逃げ出したくても逃げ出せず、周りの者を何度も失い続けながら生きていかないといけない物。考えれば考えるほど、パナソの悲しみが分かってくるような気がした。
皆それぞれに正義がある。その言葉の意味が理解できたようなきがする。
「でも、なぜ魔石を集めているの〜? 私たちに与えられてきた試練はほとんど魔石… 召喚獣をつかってなかったよ」
「それは扉を開くためだ。我々の魔石をすべて集め、そこにあるという型にはめれば扉が開くと我々は聞いておる。それと同時に、主からその扉は開いてはならぬとも聞いておる」
扉を開く事は全てを司る神の目的なのに、属性を司る神… 幻獣達の主はそれを許さないと言う。
神が許さないのだから、ちゃんとした理由があるのだろう。
「なぜだ?」
「今、世界は4つに分かれている事は知っておるな。その状態で扉を開くと世界のバランスが崩れてしまい、存在が消えてしまうというのだ」
「神とパナソは知っているの?」
「神は知っておる。しかしパナソは知らぬだろう…」
「さきほど『その状態で』と言いましたよね。ならば世界が元通り1つになったら、バランスなどはだいじょうぶなのですか?」
「そうだ。だが今のところ1つになる方法は見つかっておらぬ。」
「どうすれば…」
「現在、ホウフハの一族はパナソ以外いない。つまり、パナソで最後なのだ。だからパナソを…」
「そんな事できるかよ! 同情じゃねーけど、自分を犠牲にしてでも一族のためにやってるやつをやっちまうなんてよ」
「そういえば、言っておらぬかったな。」
「え?」
「バハムートから聞いたのだが、『どの道使命を果たせば、永遠の命はなくなって身は限界なのだから死んでしまう。例え果たさなかったらこの苦しみを永遠に背負うことになる。レオン達を選んだのは、そんな自分を開放してくれそうだからだ』とパナソは言っていたらしい」
「開放してやる… か」
なんだか複雑な気持ちだ。
パナソの思いを知ってしまったからなのだろうが、俺達に頼むなんて…
「やるしか、なさそうだな」
「うん… それが思い… 願いなら。私達に託しているのだから」
「決まったようだな。3つ目を言わせていただこう。パナソをどれかにしても我々は、この戦いを最後に消える事を選んだ」
「え…」
「もう、今の時代に我々は必要ない。仮にまた同じような事をするような奴が現れても、我々がいなければこのようにはならない。だから…」
「……」
いろいろな事がありすぎて、返す言葉が見つからない。
しかし、1度覚悟を決めた者を止めるわけにはいかない。なぜなら、たくさんの思いがあって覚悟を決めたのだから。その覚悟は本人以外には全てはわからない。だが、その覚悟を受け入れる事はできる。
だから…
「わかった、俺達が扉を開く事を防いでパナソの願いを叶えてやればいいんだな」
「話のわかるやつで助かる。そうだ」
「やってやるよ。それが俺達に託されたものなんだからな」
「ありがとな。では、健闘を祈る。」
「こちらこそ。ではまた」
皆が部屋から出て行く。
俺が出ようとした時、オーディンに声をかけられた。
- Re: Change the world ( No.94 )
- 日時: 2018/05/19 20:09
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
46話 運命に抗え
「話したい事があるとやらを言っておらぬかったか?」
「… 忘れていただけだ。」
おっと危ない。本当に忘れていた。
なぜなら、話された事が衝撃的だったから。
聞きたい事がたくさんある。
やはりここは1番知りたいことをストレートに聞くべきなのだろうか。
1番知りたいことーーー俺と幻獣との繋がり。
それがわかれば幻獣界の民とか、生命の輝きについての事をより深く聞けるはずだ。
しかし、オーディンも俺に『話したい事がある』と言っていた。
それと俺の知りたいことは関係あるのだろうか。
「ここに来るまでの間、俺のことを『幻獣界の民かもしれない』ってヴェルとかが言っていたんだ。俺には孤児院にいた頃よりも前の記憶はない。知っているはずの人はもういない。だから幻獣王のあんたなら… って思ってな。つまり、俺と幻獣の繋がりを知りたいんだ」
「ほう、そうか」
オーディンは辺りを見回し、誰もいないことを確認する。
それほど重要なことなのだろうか。
「『幻獣界の民かもしれない』と言ったな。確かにお主は幻獣界の民だ」
「じゃあなぜ新世界にいるんだ?」
自分が幻獣界の民だというのは、薄々そんな気がしていた。
だからこそ思いつく疑問を投げかける。
「幻獣界には人間が誰1人おらぬかっただろう」
この世界に来た時のことを思い出す。
人の気配がなく、民家が立ち並ぶ静寂に満ちた夜の世界ーーーそれが第一印象でもあり、事実だった。
「この世界に人がいないのは、我々が追い出したからだ」
「追い出した? なぜだ?」
「お主達に言った通り、我々は消えることを選んだからだ。この世界は幻獣がいる事で成り立っている。つまり我々、幻獣が消えるということはこの世界が消えるに等しいのだ」
「残された人々はどうなるんだ?」
「世界が消え、残された人々は狭間の世界へ行き着くがそこから出られなくなる。要するに、その残された人々のために追い出したのだ」
救われた、と言っても過言ではなかった。
もしかすれば、などとこの話を聞いたことで少ない希望を持てた。
残された人々が新世界にいる。ということは両親に会えるかもしれない。
普通に旅が終わっても暮らしていけるかもしれない。
「しかし… お主は消える可能性がある」
「……え?」
その希望は、すぐに壊れてしまった。
俺が幻獣が消えるのと同時に消える可能性がある……?
いや、『可能性がある』と言っているだけだ。
言動からすると、消えないという事もあるとも言っている。
ただ、言われたことについて受け入れられない。
「なんでだ?」
「それを話そうと思ってここへ呼んだのだ。すぐに信じてはくれなくてもよい。ただ、受け入れてほしい…」
すでに前に言われたことが受け入れられないのだが。
オーディンは一息吐くと意を決したように言う。
「お主は……我と血が繋がっておる」
『血が繋がっている』という事は俺の親族と言うことになる。
確かにすぐには信じられるようなことではなかった。幻獣と人、種族は違うのにそのような事はあり得るのだろうか。
いや、あり得る。竜人という人と竜の血を引く種族がその証拠だ。
「正確に言うと、お主は我の息子だ。そのためだろうが、お主の体には幻獣の血が濃く流れている」
血。話を聞いて思い出す。シドに初めてあった時のことを。
かなりの重傷を負ってジンにより、雪の国のシドの診療所とも言える小さな家に運ばれた。
意識が朦朧としていて詳しくは覚えていないが、出血が酷く輸血しないといけなかったらしい。
しかし、俺の血が珍しく2種類あり、片方の物しかなかったとのちに聞いた。
きっと片方の物は人間の血の事であり、なかった物が幻獣の血なのであろう。
そう考えるとオーディンの話したことに説得力がつく。まぁ、幻獣王なのだから真実なのであろう。
「他の幻獣の民は消えないのか?」
「幻獣の血を引いているのはお主のみ。幻獣の民とは新世界、古世界から迷いやってきた者でここに住むことを選んだ者のことを指す。全ての幻獣の民が幻獣の血をひいているわけではないのだ」
「つまり、俺が幻獣の血をひいているから消える可能性があるんだな」
オーディンは静かに頷く。
もし、俺が消えたらどうなるのだろうか。消えた時、感情や記憶も失ってしまうのだろうか。
ただ確実にわかるのは、オリガとの約束を守れないこと。
「約束……守れないな」
「そう決めるのはまだ早い。我は『可能性がある』と言ったのだ」
全てが決まったわけではない。なのになぜ諦めようとしていたのだろう。
そんな自分が悔しくて目線を伏せる。
「消える運命、かもしれぬ。だがその運命に抗おうとする力こそが人間の力であろう」
オーディンが俺を励まそうとしているのが伝わってくる。
『運命に抗う』、響きだけでなぜだかかっこいいと思ってしまう。まぁ、それは置いといて。
目線を戻し、俺の思いを伝えようと声を出そうとした途端、
「やる気になりおったな。運命とは抗えるもの。お主の力見させてもらうぞ」
目を見て伝わったのだろうか、小さく微笑み言った。
「最後の最後までちゃんと見てろよ、今まで見なかったぶんな」
「もちろんだ」
「じゃ、俺、行くから」
「行ってらっしゃい」
最後の言葉には何やら温もりを感じた。
ちゃんとゆっくり話せるのはこれが最後かもしれない。でも、思いを伝えることができた。そのことだけで満足だ。
後ろにある大きな扉を開く。その先には未来に無限の可能性があることを示すかのように明るく、眩しかった。
まるで勇気づけるかのように。
しかし『消える可能性がある』という事をみんなに言う勇気はない。特にオリガには言えない。
だってオリガの思いを聞いてしまったのだから。
複雑な気持ちを胸に、扉の奥へ踏み出した。
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誰もいなくなった部屋にただ1人佇むオーディン。
ここに残されているのは冷たい夜空と無機質な大理石。そして、息子ーーーレオンの思いという名の覚悟。
彼にあの事を言って良かったのだろうか。それは言ってしまった今でもよくわからない。
『真実は言ってしまった方がいい。人はそこから進もうとするから』
誰もいないはずなのに、愛する妻ーーーレオナの声が聞こえたような気がする。
いつもそうだ。困った時、つまづいた時に彼女の声が聞こえたような気になる。それはきっと胸に刻まれ、記憶に残っている言葉だからだろう。
彼女はオーディンにとって大切な人であり、支えてくれた人でもあった。
種族は違う。あの頃はそんな事どうでも良かった。
ただ、彼女のそばで……
そこで不意に思う。彼にもそのような人がいるのだろうか。
言動からするにいるのだろうと思える。それが仲間なのか、大切な人なのか……
気になるが彼も年相応の事をしているのだと思う。
「レオナ…… そちらへ行くのはもう少しだけあとになりそうだ。見ているかはわからないがそちらへ行く時は、とびっきりの土産を持って行こうと思う。それまで寂しい思いをさせるが、待っていてくれ」
オーディンは満月に向かって語りかけた。
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今回から『ー』(ダッシュって言うんだっけ…?)を使いたかったのですが、そのような形状の物がたくさんあってわからないためよく「ソーダ」などで使う『ー』を使う事にしました。
『ー』が三つ連続で使われている時は、本来ならダッシュを使っているところです。
もしキーボードのどこを押せばいいか知っている方いましたら、コメントお願いします。