ダーク・ファンタジー小説
- Re: Chage the world ( No.44 )
- 日時: 2017/12/18 21:04
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
24話 (1) 他の方法
待ち時間を有効に使い、ミント達とも合流した俺達。
あとは飛空艇に乗るだけだったのだが…
「えぇ!? 帝国行き定期便はただいま運行していないの!?」
「申し訳ございません。お客様の安全を第一にしておりますので…」
なんと、定期便は運行していなかった。
確かに今の帝国は危険がいっぱいだ。
たとえ俺たちが乗れたとしても、反乱軍という事がばれてしまったら他の客にも危害が加わってしまう。そのことも考えた最善の事なのだろう。
「他に方法はないのですか?」
「他、ですか…」
受付嬢が腕を組み考える。
「飛空艇の工場へ行ってみてはどうでしょうか。レンタルなども行っていますし…」
「ありがとな。あとはオレ達でがんばるよ」
「今回は申し訳ございませんでした。では、良い旅を」
飛空艇の発着場をあとにした。
工場は地下にあった。そのためか少しくらい。
山に埋め込んであり、シャッターを開ければいつでも出発できるようになっている。
「兄ちゃん達、お客さんか?」
下で作業中の誰かが問いかけてきた。
「飛空艇のレンタルをしに来たんです。空いてるのありませんか」
「ちっと待ってろ」
しばらくすると、大きなゴーグルを首にかけた男がハシゴを登ってやってきた。
「レンタルつったな。残念だが今はねぇんだ」
「全部なのか?」
「いいや、全部じゃねぇ。問題があるが一応使えるやつはいる。そーだ、こん中に飛空艇技師はいるか?」
「僕が飛空艇技師資格を持ってます」
「ならちょっとこっち来い」
シドとゴーグルの男が奥の収納庫へ行ってしまった。
「あの… よかったら… あちらで」
「ん? 待合室?」
「お茶とか… どうぞ…」
少し気弱そうな少女が待合室まで案内してくれた。
そこで俺達は待つことにした。
- Re: Chage the world ( No.45 )
- 日時: 2017/12/19 21:10
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
24話(2)
待合室には、中央に低いテーブルと黒いソファなどが置いてあった。
作業場よりは明るく、世界地図やモニターが壁にあり事務室のようだった。
「これ… どうぞ」
「ありがとう。君、ここで働いてるの?」
「手伝い… してるだけ。お兄ちゃんがここで… 働いてるの」
気弱い… というか人見知りの少女はお茶を置いていくとどこかへ行ってしまった。
「ん、このお茶おいし〜」
とくに何かをするわけでもなく、時間が過ぎていった。
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一方その頃。
シドはゴーグルの男と収納庫の奥へ歩いて行っていた。
「こいつが例のやつだ」
「HKT−64型、ですね」
「正確には HKT−64型 改 ユピテル号だ」
見た目は白い龍のようで鋭い。
後ろに尖っている翼の下にはエンジンがある。
外見だけでは異常はないようだった。
乗降口から中に入った。
通路も金属製でシステムが起動してないせいか暗い。
階段があり、登るとコックピットだった。
メーターや非常ボタン… たくさんある。
「それで、問題とは?」
「システムは起動すんだが操作不能なんだ。それにエンジンが起動しねぇ」
「いろいろ試してもいいですか?」
「かまわねぇよ ま、頼んだぞ」
考えられる原因は2個。
1つはプログラムミス。
データに一つでも間違いがあると正常に機能しない。
「起動するには… これかな」
目の前に薄緑色の透けるモニターとキーボードが浮かび上がった。
そのモニターをタッチすることで操作ができるらしい。
『地図表示』『運転』『データ入力』『設定』と、現れた。
ここまでは正常のようだった。
「『設定』っと」
秘密裏に教えてもらったパスワードをキーボードで打ち込む。
すると英語やら数字の文字式などが現れた。
これを1から確認していく。
「久しぶりだな〜 この作業。みんなげんきかな」
帝国に所属していた頃、プログラムやパーツの組み立てをして仲間と共に『便利さ』を求めて開発していたのを思い出す。
シルフ村と同じく、帝国も山にある。帝国領の町や村は帝都を除くと地上にあったため飛空艇が欠かせなかったのだ。
そのためにできていたのが『飛空艇部門』。
より安全で快適になるように技術を高め競っていた。
あの頃が一番自由で、一番楽しかった。
「異常なし。…となるとどこかの破損かな」
2つ目は、破損。
操作不能でエンジンが起動しないとなると、どこかの線が切れているなどの破損が考えられる。
1階へ戻り、通路の床にある扉を開いた。
床下は配線やモーターなどがある飛空艇の心臓ともいう場所だった。
明かりをつけ、すみずみまで見る。
「ここが原因かな」
配線が一部ショートして切れていた。
モーターが近いことから熱を持ってしまったのだろう。
「これでどうだろう」
おまけでオイルを注し、コックピットに戻った。
下にいるゴーグルの男に合図し、システムを起動しエンジンを起動させた。
「このユピテル号、水で動くんだ…」
ゴーグルの男が両手を使って丸っと合図した。
これできっと大丈夫だろう。
「おめぇすげぇな。こいつはおめぇにやる。そうすれば目的果たせんだろ?」
「いいんですか?」
「オレがやるって言ったんだ。大切に使ってやれよ。」
「ありがとうございます」
「こいつを動かしといてやるからおめぇは仲間んとこ行ってろ」
「はい!」
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「お待たせ」
「お、シド。あの飛空艇って…」
「貰ったんだ。さて出発するよ。みんな乗って」
シドが戻ってきたのと同時にシャッターが開いた。
ユピテル号はいったいどんな飛び方をするのだろう。
酔うことを覚悟して俺達はユピテル号へ乗った。
目指すは敵の本拠地。
どんな危険があるかはわからない。
それでも俺達は行く。