ダーク・ファンタジー小説

Re: Chage the world ( No.46 )
日時: 2017/12/25 10:36
名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)

25話 艇内にて

星空の綺麗なメンダ地方の夜。
艇内は薄暗く、静かだった。

ユピテル号にはたくさんの設備があった。
生活に必要なキッチンや5畳ほどの部屋が7つ。
洗面所やエンジンルーム… 困る事はないだろう。

その7つの部屋は、各自1つ使って自分の部屋にした。


コックピットへ行くとシドがいた。
操縦席に座って本を読んでいる。

「ん? どうした?」
「暇… なんだ」
「そろそろ着くけど、準備とかしたらどうだい? 備えあればなんちゃらって言うし」

なんちゃらが気になる。

「そうするか。着いたら言ってくれ」
「わかったよー」

月光が入り少し明るくなっている自分の部屋に戻った。
置いてあるのは備え付けのベッド、壁に寄り添うようにあるテーブルのみ。

剣を魔法で取り出す。
何もなかった目の前に出てきた剣を手で掴み、ベッドに座りながら手入れをする。

銀色に光り輝き、約75センチで市販で売っている物よりも大きい。しかも、俺の魔力の込め方で攻撃力が変わってくる。だから峰打ちなどが簡単にできる。

この剣のおかげでどれほど助けられたのだろう。
剣舞技もこの剣のおかげだ。なかったら生きていなかったかもしれない。

…と思いつつ剣を磨く。
刃毀れやサビは無い。しかし、大きな傷がかなり目立つ。
これは、あの時… 7年前の帝国に襲われた時についた傷だった。
この時、勝てなかったせいで傷がつき、重症を負って、みな別れてしまった。

だから、決めたんだ。
『何かを守れるような力』を手に入れて、強くなって、みんなと再会するって。

反乱軍に入って、そんな力を手に入れられたと思った。
でも、何も守れていない。
魔石や街、仲間さえも。

悔しかった。
俺は何も変われてない。
あの時から何も。

「……」

自然と視界が滲む。

『目標があるんでしょ? ならまだ頑張れる。仲間や、大切な人がいるならもっと頑張れる。人間ってのは、そんな生き物なんだから』

ふと思い出す。
院長に何回も言われた言葉。

気づけば横にフーがいた。

「ワゥー」

短い前足で俺を突いてくる。

俺には仲間がいる。
この旅を通して得た絆だってある。

『そろそろ着くよ〜』

アナウンスが流れた。

剣を魔法でしまう。

「さて、頑張るか。」

今度こそ守ってやる。
魔石も街も、仲間も約束も。