ダーク・ファンタジー小説
- Re: Chage the world キャラ投票をリク依頼で開催中 ( No.51 )
- 日時: 2018/02/16 09:00
- 名前: 和花。 (ID: qU5F42BG)
28話(2) 望まぬ出会い方
警報が鳴り続き兵士達が西入口へ走っていく中、俺は兵士達と反対の方向へ走っていた。スマホの画面に表示されている電子化された地図を見ながら。
「西入口はあっちだぞ」
前方から走ってきた兵士が話しかけてきた。
ここは、上手く誤魔化さなければ。
「先ほど西入口に行ったのですが、『先輩に東入口へ行き、挟み討ちしろ。まぁそんな事が起こりはしないがもしもの保険だ』と言われたのです。だから東入口へ向かっています」
「お前1人で大丈夫なのか?」
「はい。こう見えても剣術1級持ちですから」
「… 任せたぞ」
兵士は走って行った。
その後も何度も兵士とすれ違ったが、何も言われなかった。
右へ行ったり左へ行ったりと、兵士達は見た感じだと迷っているようだった。
そんな兵士達を潜り抜け、長い廊下の突き当たりに大きな部屋があるのが見えてきた。地図で確認すると、そこの部屋は『大ホール』らしい。
俺は、迷わず扉を開いた。
床に描かれた大きな魔法陣が紅く光っている。
その魔法陣の真ん中に人が立っている。
あの後ろ姿は… 間違いなく…
「オリガ… ?」
水色の髪に、白色のバンダナ。その特徴は間違いなくオリガだった。
しかし、呼びかけに反応がない。それに、雰囲気が全く違う。
大ホールの床がピキピキと音をたてながら凍り始めた。
この戦法はオリガの得意とするものだった。
「マジか…」
剣を取り出し構える。
その瞬間、氷塊が襲いかかってきた。
飛んできた氷塊を避け、壊しつつオリガに近づく。
オリガは槍を構えて魔法をずっと詠唱し続けている。
無限に氷塊は現れ、襲いかかってきていた。
アイツは、自分の意思でやっているのか?
「剣舞技、火炎!」
剣に魔力を込め、火を宿す。
そして、オリガの背後に一気に近づいて剣を振るった。
金属のぶつかる音が大ホールに響いた。
槍を使って弾かれてしまった。
オリガの瞳は紅くなっていた。
確認できた。
昔に一度だけ、アイツと戦った事があった。なぜだかわからないが、その時も同じように瞳の色が紅くなり襲ってきた。
あの時は院長が不在だったから、俺1人で戦った。どうすればいいかよくわからなかったので自分を守るためにアイツに剣を振るい、正気に戻らせると同時に一生残る傷をつけてしまったのだった。
剣と槍がぶつかる衝撃で、風が一瞬だけ起こる。
風でオリガの服が一瞬めくられお腹が見えた。
そこにあったのは俺のつけた傷と、魔法陣と同じく紅く光るまがまがしい刻印。
見つけた、という気の緩みが出てしまったせいか、弾き飛ばされてしまった。
壁に打ち付けられたがすぐに立ち上がり、さっきのように近づく。
今度こそ、傷付けずに助けてやる。
「魔封剣、峰打ち!」
オリガに剣から放たれた波動が当たる。
この合わせ技なら気を失ってしまうが、刻印は封じ込めるはず。
傷がつかないようにできただろうか。
そんな心配を胸にオリガの元へ走る。
倒れる寸前に間に合い、抱きしめ支える。
床に横にしてやり、回復薬を飲ませた。
腹の刻印は消えていなかった。
ただ、光は失っている。魔封剣の効果だろう。
心配なのは、峰打ちができたかということのみ。
「…あれ? ってレオン!?」
「あれ? ってなんだよ。」
オリガは正気を取り戻し、立ち上がった。
心配して損をした気分だ。
前よりも元気になっている。
「レオン、ありがと」
「……」
「もしかして、照れてる?」
「照れてない!ったく、大変だったんだからな」
オリガと会話したら、なんだか、心の中にあった霧が晴れたような気がした。
…きっと安心しているんだろう。
前は心配なんかしないで、『アイツなら大丈夫』と思えてた。だけど今回は『助けなきゃ』って自然に思えた。
相手が帝国だからか? 仲間だからか?
いや、もっと別の事のような気がする。
わかりそうでやっぱりわからない。
「素直になりなよ〜」
「照れてないからな。さてと、フレイ達と合流するぞ」
「みんなで来てくれたんだ」
「仲間だからな。あとで話、聞かせろよ」
「はーい」
遠くから重い音がするのに気付かないまま、俺とオリガは大ホールを後にした。