ダーク・ファンタジー小説
- Re: Chage the world ( No.66 )
- 日時: 2018/02/13 18:42
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
32話(1)生きた証
フレイヤと共に行動するのは何度目だろう?
孤児院の時も、この旅でもだいたい一緒にいる。まぁ、オリガもだけど。
ただ、フレイヤといる時だけは少し違う。
なんだか気持ちが緩んで、同い年だから言える話だってしちゃう。しかも共感できちゃう。
足りない部分も補えて、戦いでも楽しかったりする。
だから、今回も私はフレイヤを選んだんだろうなぁ。
「見えてる?」
「ん?」
「ぼーっとしてたからさ〜」
帝国兵を’’戦えない状態’’にし、いろんな所から音がする中休憩していた私達。
フレイヤは弾の補充、私は鞭の確認をしていた。
「’’戦えない状態’’にするのはもう慣れてきたな〜」
「人の命を奪わないのが反乱軍だからね」
人の命を奪わない… それが反乱軍の掟。
命を奪うということは、その者の’’生きた証’’を残さずこの世から消すということになる。
また、新たな憎しみや恨みを作ってしまうことに繋がる。
だから、前の反乱軍の長… 女王様がそのような掟を作ったのだろう。
「’’生きた証’’ね…」
「どーしたの?」
「私がもしこの世から消えてしまうってなった時、私の’’生きた証’’は残せるかな…って思ってさ」
「死亡フラグ? こんな時にそんなの考えるって」
「まさか〜 私はバリバリ元気だよ! ケガだってしてないし! ただ、帝国兵と戦ってて思っただけ。」
「なら良かった〜 私、そんな事になったら泣いちゃうもん」
ここが戦場だからこそ笑いあえるのだろう。
「さて、次行こうか」
「この兵士達、目が覚めたらキリがないんじゃない?」
「大丈夫。 目が覚めたら状態異常魔法のどれかがかかるようにしてあるから」
これでよしっと。
毒や呪い… いろんな状態異常魔法のどれがかかるか少し楽しみだ。
かかったらきっと一度は軍の拠点の救護室へ向かうだろう。
『用心深い兵以外は、状態異常を治す薬類を持たない』という事を事前にオリガに聞いておいて良かった。
念のために、薬類を持っていないか探して没収もしたので大丈夫だろう。
「次ってどこ行くの〜?」
「バハムートの所とか。まぁ、みんなと合流しながら行こっかな〜」
「バハムート!? 竜王様だし、幻獣でもトップクラスだし、暴走中なのに!?」
「大丈夫だよ、きっと。私達には仲間だって幻獣だっている。だから… ね?」
遠い昔、世界が1つだった頃に人間と幻獣が協力して、いろんなのに立ち向かったって話がいくつもある。
それで起こってしまった戦争で幻獣と人は別れてしまったけれど、再び協力できると私は信じてる。
それが召喚士や守り人、神の力を受け継ぐ人達… 様々な種族の人達が目指してる事なのだから。
そうだよね。お守りの中の人…
- Re: Chage the world ( No.67 )
- 日時: 2018/02/14 11:28
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
32話(2) 合流
「ん? 月のカード。幻想でも見てな」
向かった先にいたのは、ジュリィだった。
周りを囲んでいた兵士が次々と倒れていく。幻想に囚われたのだろう。
「ジュリィだ〜」
「お、フレイヤにミント。そっちは終わったのか?」
「うん。終わったよ」
バハムートや飛空挺がいる方を南とし、城の方を北とすると、私達がいるのは西側。
私とフレイヤは南西を、ジュリィは北西を担当し両方とも鎮圧したので西側の心配はもうない。
「気づいたんだけど、帝国兵達が援軍を呼ばない理由」
「なになに〜?」
「バハムートの時間稼ぎらしい。反乱軍の掟を利用したね。他にも…」
そこからジュリィはたくさんの事を話してくれた。
時間稼ぎ以外の理由。次にどこが狙われるか…
どれも全て、帝国兵が耳につけている通信機から入手したものらしい。
「つまり、次はレオンのいる北東に行けばいいってこと?」
「そうなる。さーて、行こうか」
城門前を通り、北東… 商店街の方へ行く。
私達のいた住宅街とは違い、メイン通りの幅は広く、直線に長い。無駄に周りを警戒しなくて済む。
「レオン、大丈夫か?」
「そっちこそな」
レオンは剣舞技の中で少し威力の強い、龍の名を冠する技で戦っていた。
まとまっている帝国兵に向けて、レオンの放った水龍が飛んでいく。
「思ったんだけどさ、その技って全部龍に任せてない?」
「攻撃するのは龍だが、操ったり生成したりするのは俺だ。大変なんだぞ」
「ふ〜ん、そうなんだ」
結局、自分は直接攻撃してないじゃない。
まぁ、それは置いといて。
「ここらへんは片付いた。そっちは大丈夫なんだよな」
「もちろんさ」
「じゃあ、次は南東…オリガの所だね」
「南東は飛空挺から降りてくる帝国兵が多い。オリガと同じく屋根で戦う事になるぞ」
あたりを見回す。屋根へ登れそうなのは… 花屋横にある宿屋の階段。
「あれしかなさそうだね」
「行こ〜」
オレンジ色の屋根へ登ると、国のほとんどが見えた。
そんなか、飛空挺から降りてくる帝国兵と戦っていたのはオリガとメイスを振り回す少年。
あの少年はきっと…
「赤髪にメイス… ノアかな!?」
何事にも積極的で明るく、いつもヘラヘラしていた赤髪の少年… ノア・マルティネス。
オリガと仲が良く、少しの間、孤児院で共に生活した仲間。
里親が見つかって別れて何年ぶりだろう。
「おぉ、レオンとか久しぶりだなぁ! こんな時に会えるだなんて、ついてないな」
「再会を喜んでる暇があったら、あの集団を止めたらどうだ?」
オリガとノアの目の前には、帝国兵の集団が迫ってきていた。
最後の時間稼ぎ… というよりは、こちらを潰そうとしているようだった。
「メンバーが増えたことだし、もうひと頑張り!」
オリガは槍を1回転して持ち直し、帝国兵の集団へ襲いかかった。
それに続くように私達も戦う。
フレイ達は今、何をしているだろうか。
「時間稼ぎをしろ」と言われてから何分経ったのだろう。
…また考え事をしてしまった。戦闘中に。
「これで… 最後ッ!」
息切れがする。私達は何十人の帝国兵と戦ったのだろう。
最後の1人を’’戦えない状態’’にした途端、今までの疲れが出てきた。
体への影響は疲れだけではなく、傷が痛み出すというものもあった。また服も汚れたり切れていたり、自分の武器も傷ついたり痛んだりしていた。
「疲れた〜」
「まだ、大物が、いるけどね…」
「いったん拠点へ戻ろう。疲れただろ?」
ノアの提案を受け入れることにした。
国から少し離れていた拠点は、反乱軍のアジト… 孤児院だった。
そこでは避難者、怪我人、反乱軍の者… いろんな人が協力し助け合っていた。
「なぁ、疑問に思ってたんだけどさ。なんで拠点を攻撃しちゃダメなんだ?」
ノアが聞いてくる。その様な事もわからずに戦っていたのか…
「世界が4つに別れた時、結ばれた協定があるでしょ」
「確か、’’4大陸協定’’だったよね?」
会話にオリガも入ってきた。
「アタリだよ、オリガ」
「世界のジョウシキってやつでしょ、わかんないだなんてねぇ」
ノアがボソッと「マジか…」と呟いたのは、確かに聞こえた。
さて、話を戻そう。
「その’’4大陸協定’’では、戦いの事についてもあるの。それで、『相手の拠点への攻撃及び侵入を禁ずる』というのがあるから… わかったよね?」
確認も含めてノアに言う。
しかし、ノアは壁に寄りかかって寝ていた。
「あはは、寝てるね」
「相変わらずみたいだね」
笑うしかない。
「ノアー! 仕事!」
「は、はい!?」
ジェシィに呼ばれると、ノアはビクッとして起き走って行った。
過去に何かあったのだろうか。こんなに年下に弱いノアは初めてだった。
向こうでは、ジェシィが何かを訴えている。ここでノアとはお別れだろう。
まるでノアと入れ替わるかの様にジュリィがやってきた。
「妹さんに合わなくていいの?」
「大丈夫さ。アイツは私がいなくとも」
そんな時、レオンとフレイヤもやってきた。
「どうした?」
「お兄ちゃん達の準備が終わったって。機械みたいな竜の石像まで来てだって」
「了解だよ」
何をする気だかはわからない。
でも、バハムートをどうにかできる様な気がした。
拠点を後にする。
目指すは、小さい頃よく遊んだ場所の1つ。中央広場へ。
- Re: Chage the world ( No.68 )
- 日時: 2018/02/15 12:17
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
32話(3)幻獣と共に
「総員撤退せよ!」
帝国軍がバハムートだけを置いて撤退していく。
日の昇る方がだんだんと明るくなっていく。
もう少しで夜が明ける。きっとこの戦いも終わるだろう。
「お〜い、早く来いよ〜」
道の先にある少し広い所… 中央広場でフレイとシドは待っていた。
2人の後ろにあるのは機械みたいな竜の石像。
何か、関係あるのだろうか。
「何をする気だ?」
「『この地に伝わりし秘宝』… 国宝を使って、幻獣アポロンを召喚する。たぶん、バハムートに対抗できる」
聞いたことの無い幻獣だった。
とりあえず、ここはフレイに任せてみよう。
「国宝っと。これをこう… なんだ!?」
真横にバハムートの衝撃波が降ってきた。
上空を飛びながら衝撃波を次々と放ってくる。石像を狙っているみたいだ。
「シド、防壁魔法を頼む。レオンとかはバハムートの狙いをこちらから離してくれ!」
「わかった」
シドが防壁魔法を詠唱したのを確認し、バハムートへの攻撃を開始した。
自分の武器や魔法で攻撃する。しかし、バハムートの見えないバリアによってダメージが与えられない。
他に方法が無いのか… そう思った時だった。
「我らを使うのだ…」
どこからか声が聞こえた。
「誰…?」
ポケットの中が光る。いや、ポケットの中に入っていたお守りの中の石が光る。
小さい頃、ひいおじいちゃんから貰ったお守り。『時が来れば、効果が現われる』と言われたようなきがする。
ポケットから取り出し、石に魔力を込める。まるで魔石を使う時のように。
「誰だかわからないけど、お願い!」
石を空へ投げる。目がやられるほどの輝きを一瞬放つと、無属性特有の薄い灰色に輝く魔石となった。
そして現れたのは…
「幻獣王… オーディン!?」
「使ってくれてありがとう。お主達と共に我らも戦おうではないか」
オーディンが言い放つと、皆の持っていた魔石が輝き、召喚獣として姿が現れる。
イフリートにフェニックス、コールドとフェンリル、バイウ・カハの三姉妹。
今、私達が仲間にしている幻獣がここに集った。
「王様!? まだ仲間にされてなかったんじゃないの!?」
「う〜ん… コールド、私じゃ答えられない」
「おう、久しぶりだな焼き鳥!」
「その呼び方やめてって言ったよね?」
「姉さん、フェンリルだよ!」
「グルぅぅぅ」
皆、再会を喜んでいる。何のために呼ばれたかを知らないで。
「大丈夫なんですか? 皆、こんな感じで」
「皆、共に揃い人間と戦うのが久しぶりなものでな… ちょっと待っておれ」
甲冑に包まれ、八本足の馬スレイプニルに乗った王は槍を掲げると
「皆の者、我が仲間バハムートを止めよ!」
と叫びバハムートへ攻撃し始めた。
戦い方は様々。だがそれぞれの思い、考え… は皆同じように感じた。
「万物を貫け、グングニル!」
オーディンの放った槍がバハムートのバリアを破壊する。
やっと、ダメージが与えられるようになったのだ。
「皆の者、今こそ攻めるのだ!」
自身の中で最大のパワーを使い、技を放つ。
バハムートには聞いているようだが、まだ倒れない。それに対して召喚獣達はパワーを使い果たし、魔石へと戻っていく。
最後に残ったのはオーディンだった。
「我が最後の力を使って、あの者を呼び出す手助けをしよう…」
手を石像へ向けるとオーディンは何かを放ち、魔石へ戻ってしまった。
だが、石像に変化が起きた。
他の幻獣と比べ物にならないくらいの大きな光る魔法陣が石像の上空にできる。
現れたのは…
- Re: Chage the world ( No.69 )
- 日時: 2018/02/15 23:02
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
32話、長いですね(自分で言うんかい)
書いてる途中にエラーが起きたり、重くなったり、時間がかかったり(32話(2)は1時間掛かってます)… などと様々な事が起きる可能性があるため、このように分割して連載させていただきます。
前置きが長くなってしまいましたね。それでは32話(4)どうぞ。
32話(4)死闘
「わたしを呼んだのはあなた達ですか?」
巨大な魔法陣から現れたのは、機械仕掛けの10メートルほどの竜…アポロン。
他の幻獣と雰囲気が全く違う。
「そうだぜ、アポロン。すべて見ていたんじゃないのか?」
女性のような優しい声でアポロンは続ける。
「主の持つわたしの魔石からその場の音、雰囲気は感じ取れていました。また、景色も僅かですが見えました。ですが、わたしが存在するのは多次元宇宙。王様に呼ばれるまでは意識を集中してこちらの世界を見ていなかったため、わからない事もあります」
「そ、そうか…」
フレイは頭の後ろをぽりぽりと書く。困っているようだ。
「貴様は機竜か… 何百年ぶりだ…」
「竜王バハムート…」
バハムートがアポロンに話しかける。帝国に操られているせいか、気が荒いように感じる。
「竜王… なぜあなたは’’扉’’を開けようとする者の側につき、この地を滅ぼそうとするのですか」
「貴様は忘れたのか。この地に住まう者はかつて世界が1つだった頃、我ら竜族を滅ぼそうとした事を」
「忘れてはいません。いや、忘れてはいけません。ですがそれは過去の話。囚われていては、前には進めません。」
「それだけか」
「否、他にもあります。わたしは昔、与えられた使命を果たそうとしているのです」
「ほう… そうか。ならば我も与えられた使命を果たそうではないかッ!」
バハムートがアポロンに襲いかかる。
「主、わたしはこの土地と生ある者達を守ります。ですが相手は竜王。わたしの援護をお願いできますか」
「了解だぜ! おっし、ひと暴れするぞ」
私達は再び屋根に上り攻撃し始める。
バハムートの攻撃対象がアポロンとなっているせいか、先程のように受けるダメージは少ない。
体の傷が痛むが、攻撃はやめない。だって、未来がかかっているのだから。
「消えろ」
アポロンが鋼鉄の爪をバハムートに振り下ろす。
「グハッ…」
バハムートにとって大きなダメージとなっただろう。
しかし、衝撃波、ブレスの威力が弱まることはなかった。
「ヤバい… 魔力もカラッポになってきた…」
「大丈夫? ミント。 コレ使って」
フレイヤから渡されたのは使って失われた魔力を回復する薬… 魔力回復薬だった。
この戦いで魔力がそこをつくたびに使っていたせいか、わたしの分はもう無くなっていた。
フレイヤのメインの攻撃は銃撃だが、時に魔弾と呼ばれる少し強い魔力を込めた攻撃もある。
仲間の中で唯一の遠距離攻撃ができ、動き回るバハムートに確実にダメージが与えられるのにいいのだろうか。
「いいの?」
「魔弾がもう無くなっちゃってさ〜 回復魔法ぐらいでしか魔力使わないし、ミントの方が魔力強いし… まぁ、私は通常弾、散弾、火炎弾とかいろいろあるから大丈夫。使って」
「ありがとう」
「えへへ、頑張ろうね」
フレイヤは銃のリロードを済ませると、すぐに私を離れた。
私は渡された魔力回復薬を使い、自分の傷を癒し再び鞭を振るった。
「まだ、負けるわけにはいかねぇ…」
「ジュリィ… 大丈夫かい…?」
「シド… あんたもな」
皆、体力・魔力・精神力が限界に達していた。
長きにわたる帝国軍との戦い。残るはバハムートだけだが、相手は竜王。だいぶ動きは鈍くなってきたが、まだ魔石には戻らない。
アポロンも鋼鉄の翼には傷が付いていた。胸のあたりにあるコアらしき者にもヒビが入り始めていた。
このままでは負けてしまう。何か方法は無いものか…
そんな中、幼い頃に聞いたおとぎ話を思い出した。
世界が1つだった頃に起きた’’終末戦争’’を終わらせた少女の話。
確か、その少女が使ったのは…
「アポロンよ、その程度の力では、我を倒すことはできん!」
アポロンの悲痛な叫びが響き渡る。コアが破壊されてしまったのだ。
「主… 申し訳ありません。わたしは… どうやらここまでのようです… この世界に、召喚していただいたのにも、かかわらず… 敵を… バハムートを、倒せなくて…」
「アポロン… ありがとな。あとは… オレ達にまか、せろ…」
「少し… 休ませて… いただきます」
アポロンは光となって消え、魔石に戻った。
やはり、あの禁術と呼ばれる魔法を使うしか無い。この戦い、未来、思い出のためにも。
命が消えても、体が滅びたっていい。それでも、みんなの中にある記憶には私は生き続けるから。
「ジュリィ… バハムートの動き、封じられる…?」
「今残ってる、魔力、全部使えばギリギリ、いけそうだ…」
「ありがと… お願いね… レオン、オリガ、ジュリィの魔法… 効果が出るまで、バハムートを、固定できる?」
「任せろ…」
「りょーかいだよ…」
「シド、フレイ、フレイヤは… 一瞬、でもいいから… バハムートの動きを、止められる…?」
「OKだよ…」
「任せろって…
「ミント… わかった…」
「みんな、ありがと… 動きを、止めて… 固定して、封じる。そしたら… 私が、デカイのやる、から」
皆、動くだけでも一苦労なのにありがとう。責任重大だな… 私。
頷いてくれたと同時に作戦が開始する。それに合わせて私も詠唱し始める。
おとぎ話では世界を滅ぼしたけれど、あれは唱えた少女の魔力が莫大な物だったから。今ここで私がやったら、この国ぐらいの範囲で滅びるまでには至らないだろう。
「神の見張る…試練与えし… この世界に… 刻は来たれり…」
その言葉にオリガが振り向く。
さすが重宝部員… いや、昔話好き。この魔法がどんなものか知っているのだろう。
いつものオリガだったらきっと私の事を止めるだろう。でも、今回は止めてくれない。
私の覚悟が伝わったのだろう。振り向いた時、涙目だったもの。
フレイヤの撃った弾のおかげで一瞬、バハムートの動きが止まった。
その瞬間を逃さず、オリガとレオンが自身の得意とする技でその場に固定する。
「多次元より… 飛来せし… 流星… 」
「ジュリィ、今だ!」
「わかってる」
ジュリィの魔法が効く。幻獣には効かないと言われていた拘束魔法が。
「今こそ… 降り注げ! 流星雨(メテオレイン)!」
上空に掲げていた手を勢いよくバハムートへ振り下ろす。
それに対応するかのように、空から隕石が雨のように降ってくる。
隕石が無差別にあたりを破壊する。
ごめん… フレイ。国の修復費、増やしちゃった…
でも、これで未来が助かるんだからいいでしょ?
1つ大きな隕石がバハムートに当たる。
魔法が解けた瞬間に隕石が当たったため、地面へと押しつぶされた。
アポロンと同じように光となって魔石に戻り、その場に落ちた。
「ミントーーーーッ!」
一番にそばにやってきたのはフレイヤだった。
その場にしゃがんでしまった私を、支えながら少し立たせてくれた。
あぁ、もう立つ力も残ってないんだ。
ゆっくりだけど、皆そばに来てくれた。
オリガは槍を支えに、シドは双剣を背当てにしてその場に居座る。
そんな時だった。私から出た光が空へ昇って行くのが見えたのは。
もう、時間も無いんだ… 最期くらい、わががま聞いてくれたっていいじゃない。
「ミント… お前…」
「レオン、気づいちゃった? 私、もう空に消えちゃうみたい。」
「嫌だよぉ… ミント…」
フレイヤの事を泣かせちゃった。相変わらず、泣き虫だね。
「みんな泣かないでよ… こっちまで… こっちまで悲しくなっちゃうじゃん」
フレイ、後ろ向きで立って泣いてるの隠してるんだろうけど、バレバレだよ。ほら、男でしょ?
「別れは新たな出会いの始まり… そう言ってくれたのは、ミントだったよね…」
オリガ、覚えててくれたんだ。ノアが孤児院を離れる時に言った言葉。これから言うことも、覚えててほしいな。
「そうだよ。出会いがある分、別れがあるのと一緒。別れがある分、出会いだってあるんだよ。その度に、出会った人との記憶ができる。私は記憶の中で生き続けるから、これは永遠の別れじゃない。その記憶こそが、
私の’’生きた証’’。」
女王様が残したように、私も’’生きた証’’が残せたよ。もう少しでそっちに行くね。
「ミント… 僕、医者なのに… 助けられなくてごめん…」
「いいの。これは私の選んだ事だから…ね。シドは何にも悪くない」
これは自分の選んだ事。そう言い聞かせて涙をこらえる。
実際、記憶の中で生き続けるって言ったけど、実際に見て、触れて、話して、感じられるのはコレが最期。
別れの時は笑顔の方がいい。ジン君、そう言ってくれたよね。
だから、言い聞かせてこらえるよ。
「まだ、勝負は終わってないからな…」
「ジュリィったら、もう。小さい頃の話でしょ。…私も言わせてもらうよ。まだ、負けてないから」
いつまで続けるのかな、この勝負。
諦めたら負けって勝負。結局、最期までわからなかったよ…
「今まで… ありがとな」
「…レオンっぽくない。いつものクールさはどこ行ったの? まぁ、いいや。言うなら、自分の気持ちに嘘はつかないでねって事かな」
手や足の感覚が消えてきた。それに、体も透けてきちゃった。
本当の、本当に終わりなんだ… ここ数年、楽しかったな…
もう、お別れしなきゃ。約束しなきゃ。
「…もう、お別れみたい。1つだけ約束。…またどこかで会おうよ。記憶じゃないどこかで。だから忘れないで。閉ざさないで。私と共に過ごした日々を。そして…」
『ありがとう。またね』