ダーク・ファンタジー小説
- Re: Chage the world ( No.71 )
- 日時: 2018/02/16 10:14
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
33話 勝利
目の前で、ミントは消えた。
バイウ・カハの死の予言は、今、戦いの終わりを告げると同時に的中した。
自分の気持ちに嘘はつくな… なんの事を言っていたんだ?
俺の胸には、仲間を失った事による喪失感と疑問が入り混じったような気持ちだけが残っていた。
この気持ち… 前にも感じた事がある。あぁ、あの時か。
「フレイヤ… もう泣かないの!」
「う… うん。 私、泣かない!」
切り替えは早いな。まぁ、それがいいところなのだが。
「さて、宣言しなきゃな」
フレイはポケットの中に入っていたスマホを取り出し通話状態にした。
相手は、拠点にいるジェシィ。
「もしもし、みんなそっちにいるか?」
「集めたほうがいい?」
「お願い。みんなが聞きたい事、話すからな」
スマホからガサゴソと音が聞こえる。
「集まったか? んじゃ、宣言するぜ」
フレイは周りを確認すると、深呼吸をして言った。
「帝国軍撤退及びバハムートの撃退に成功。よって、我が緑の国、反乱軍の勝利だッ!」
スマホから歓声が聞こえる。
あの帝国に勝ったのだ。7年前とは違う結末を迎えられたのだ。
「やべ、足攣った…」
「お兄ちゃんったら、かっこつけるから…」
「いったん、ユピテル号に戻ろう。そして拠点に戻ろう。話はそこから」
ジュリィはポケットからテレポ石を取り出す。
監獄からの脱出やその他諸々、この人は何個その石を持ち、使ったのだろうか。
「どこに飛ばされるかわかんないけど、戻るよ!」
見えてきた景色はユピテル号のコックピットだった。
「さて、飛ばすよ」
拠点の近くに飛空艇を着陸させる。
俺達を待っていたのは、ジェシィとヒメカだった。
「姉さん達、お帰り!」
「みなさん、お疲れ様です」
それから、今まであった事全てを話した。
ミントの事も、国の様子の事も。
「いろいろ… あったんだね」
「まぁな」
「とりあえず、どちらの国もいろんな意味での致命傷を負ったでしょ。だから、少し休んだら?」
「そう… だな。休ませてもらう」
「…でも、手伝いとかあるからね」
ジェシィの最後の言葉だけは聞かなかったふりをしよう。
皆それぞれ、自分の仕事を、手伝いをしていた。
フレイはレヴェリーへの報告書作り。シドとフレイヤは怪我人の治療。
ジュリィとオリガは修復作業の手伝いや、物資の確認。なぜその2人に任せたのだろうか…
フーは、避難してきた他のフーと戯れている。ん? あれは… フー吉!?
フー吉がいるという事は、リベロもいるという事か。
昼飯作りを手伝わせられそうな予感がする。
時計が昼になった事を伝える。
「レオン、いるなら手伝え」
「了解… だ」
予想どおりリベロに呼ばれた。今日の昼飯は… カレーか。
ご飯は炊けている。あとはルーだけという事か。
食材を切り刻み、焼き、煮る。久しぶりの作業だが、体は覚えていた。
ご飯にルーをかけ、カウンターに置く。そして、戻ってきた皿を洗う。
そんな事をして過ごし、あっという間に1週間が過ぎた。
1週間の内には、追悼式、復興作業などいろんな事があった。
他国の支援などもあり、国や周りの村や町ではだいたい住めるようになった。
だんだんと拠点に住む人は少なくなり、前と同じようになった。
「ふぅ、やっと完成した! ありがとな、ヒメカ」
「いえいえ。こういう文章は得意ですので」
フレイの報告書も完成したため、今日中にはレヴェリーへ旅立てそうだ。
「さて、レヴェリーへ行こうぜ!」
「ちょっと待って〜 オリガがまだ帰ってきてないよ」
小さい子達と遊ぶフレイヤが言った。
数十分前、オリガは森の中の昔よく遊んだ場所に作ったミントの墓標へ向かった。
だが、帰ってきていない。
あまり遠くなく、出てくるモンスターも攻撃しなければ襲ってこない。
なのになぜ帰ってきていないのだろうか…
もしかして、刻印の効果が出てきたのか…?
腹に刻まれたまがまがしい紅い刻印。魔封剣で封じ込めたが、消えてはいなかったはずだ。
その刻印を知っているのは俺だけ。確認するしかないな…
「俺が行ってくる。ちょっと用もあるからな」
「早めに帰ってこいよ〜」
拠点… アジトを後にする。
お願いだ。無事でいてくれ…