ダーク・ファンタジー小説

Re: Chage the world ( No.75 )
日時: 2018/03/06 21:33
名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)

34話 俺の思い

「オリガ!」

ミントの墓標がある崖に俺は来た。
そこにいたのは、木に寄りかかるように寝たオリガだった。

「何があったんだ…?」

近寄ってみる。
脈はあるが、反応がない。体も冷え切っている。ただ、生きているだけ。

… やはり、そうだったか。

少しだけ見える腹にある刻印が赤黒く気付かないほどにひかる。
原因は予想通りだった。

…あの時、刻印を完全に封じ込め消し去っていたら。
オリガはきっとこんな風に苦しまなかっただろう。
また、できなかった。

後悔しか胸には残っていなかった。
そんな時、足元を突く何かに気がつく。

「クゥ〜」
「フー…」
「ワゥ、ワン、ワン! ワゥ」

まだ、全てが終わったわけではない。
勝手に諦めていた俺に、鳴き声と動きでフーが伝えてくれているような気がする。
小動物に励まされるなんて、なんてダサいのだろう。こんなものだから、守りたいものも守れないのだろう。

「フー、ありがとな」
「ワゥ」

気が晴れないままオリガを背負い、アジトへと向かう。
背中から、かすかなあたたかみが伝わってくる。向かう途中に目を覚まして、ごめんとか言ってきそうだと考えさせられる。そしたら俺はどう言い返そう。なんでもいいか。
なんでもいい… そう思えるのも笑って包んでくれるオリガのおかげなのだろう。
だからもう一度話す事ができるなら、隠したりとか誤魔化したりとかしないで話そう。素直に話そう。たくさんあるんだ、伝えたい事。

フレイとかミントに俺は変わったとよく言われた意味が、よくわかったような気がする。
今まで他人の心配なんか、どうでも良いと思っていた。なぜなら大丈夫だと思え、信じられたから。でもそれは自分に言い聞かせていたものだった。一度考えると止まらなくなる… それが俺だから、自分の心、気持ちに嘘をついてそう考えていた。
だけど大切な人を失いかける事で気づけた。それだと失い続けるだけだって事を。

オリガを救いたい。たくさんの『ありがとう』を伝えたいから。あの笑顔を取り戻したいから。
俺にとって大切な人だから。

アジトが前方に見えてきた。飛空挺のエンジンが音を立て起動しているのがわかる。
世界の中心とも言われるレヴェリーに行けば、この刻印だってきっとどうにかなる。
わずかな望みをかけ、みんなの待つ飛空挺へ向かった。

Re: Chage the world ( No.76 )
日時: 2018/03/11 22:36
名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)

34.5話 焦らずに

「やっぱりそうだったんだね」

ユピテル号のコックピット。
操縦席に座りコーヒーを飲んでいるシドに、オリガの刻印について話していた。
シドはあの監獄から脱出した時には、刻印の存在には気づいていたらしい。
さすが医者。体調だけではなく変化にも気づけてしまうとは。

「あの刻印は、いくつかの他の種類の刻印が合わさってできてるっぽい。専門じゃないから対処法はわからないけど、どんな効果があるのかぐらいはわかったよ。」

シドはコーヒーの入っていたマグカップを横にある備え付けのミニテーブルに置くと、刻印について話してくれた。

「一つ目は能力向上。これは特に害はないから問題ないはず。二つ目は自我を封じ込める効果があるやつ。これのせいでオリガは眠ってしまっているんだと思う。三つ目は魔封剣のおかげで消えてきていたみたいだけど、回復し始めてる、刻印をつけた者… パナソに操つられる効果があるやつだね。前、監獄で戦ったって言ってたよね。その原因はきっとこれ。まぁ他にもあるみたいだけど、今一番効いているのは二つ目に言った自我を封じ込めるやつだか…」
「オリガを助けるには、俺はどうしたらいいんだ?」

ついつい話をそらしてしまった。
だがそれは、今一番俺が聞きたいことだった。
刻印の責任などは俺にある。その他にもいろいろある。
でも、今の自分の心にあるのはオリガを助けたいという気持ち。

シドはスマホを取り出すと、誰かの連絡先を探しているようだった。

「レヴェリーに刻印について詳しい知り合いがいたはずなんだ。その人ならきっと知ってるはず。だから、そんなに焦らなくても大丈夫」
「そ、そうか… すまなかった」

とりあえず待つ。レヴェリーに着くまで待つ。それが今の俺にできること。
何もできていないように感じてしまって、少し悔しいような気がする。
そんな思いをしていたのは、焦っていたからだろう。
少し落ち着こう。焦っていたら、気づけたはずのことにも気づけないのだから。