ダーク・ファンタジー小説

Re: Chage the world ( No.78 )
日時: 2018/03/18 02:37
名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)

36話 精神世界での救出

「わかったわ。じゃあ、これから言うことをよ〜く聞いてね」

そして言われたのは2つ。
1つ目は精神世界にいられる時間は限られていること。他者の精神世界に意識を飛ばすという事は、様々なリスクを負うということになる。またルミルの魔力を使うためでもある。ルミルによると、「魔力が無くなっちゃったらどうなるかわからない」という。強制的にこちらの世界へ戻るか、精神世界に閉じ込められるかのどちらかであるらしいが、もし閉じ込められた場合は、こちらの世界との繋がりが消えてしまうため一生戻れないらしい。
2つ目は、刻印に宿っている主を倒す事。これをしなければ助けても刻印が消えないため意味がないらしい。ある意味一番重要だ。

「…というところかしらね。私もあんまりやった事ないから必ず成功するとは言えないけれど、準備はいいかな?」
「とっくにできている。よろしく頼む」
「フレイとは違って頼もしいね。じゃあ、始めるわ」

「違ってってなんだよ…」と隣でフレイがつぶやく。ガンガン突っ走って行く、あまり考えないタイプなのだからそう言われてもしょうがないと思う。

さて、行くか。

目を開くと、先程の場所とは違う場所にいた。
あたりは真夜中の外のように暗く、見る限り何もない。
…ここがオリガの精神世界。
元からこのようなのか、刻印によってこうなってしまっているのかはわからない。
俺の精神世界もこのようなものなのだろうか。

「聞こえる?」
「聞こえてるぞ」

ルミルの声がどこからか聞こえた。

「よかった〜 そっちに声聞こえるみたいね。何かこっちから連絡があるときは、今みたいに話しかけるから驚かないでね」
「了解」

遠くの方で、何かの重い音が鳴ったのが聞こえた。
それが刻印に宿っている主なのだろう。とりあえず、音のなった方向へ行く事にした。

真っ暗な空間の向こうに、重い音の正体… 刻印に宿っている主らしきモンスターが見えてきた。
そのモンスターの全長が見えるあたりまで来た。距離は数十メートルあるだろう。
そこで俺は剣を構えさらに近寄る。

「テキヲカクニン… コレヨリ… セントウタイケイ二… プログラムヲヘンコウスル…」

赤く光る目に、赤黒い石レンガの体。額には『EMETH』という文字があるモンスター… ゴーレムが腕を振り下ろし襲ってきた。
振り下ろされた腕に潰されてしまったら終わりだろうと思いつつ剣から水龍をゴーレムに放つ。しかしゴーレムの動きは止まるどころか遅くもならず、威力を増すばかりだった。

ん…? あれは…

ゴーレムの大きな体の隙間から見える背後に大きな球体が浮いているのが見えた。大きな球体の周りを、時々囲むようにゴーレムの体と同じ色の稲妻発生しているのがわかる。その球体の中の中心に、仰向けになっている人影が見えた。

オリガ… なのか?

稲妻のせいではっきりとは見えない。だがここはオリガの精神世界。俺を除いてここに入れる人間はオリガしかいないはずだ。

「助けてやるからな、待ってろよ」

しかし、ゴーレムの体は石レンガ。オマケに何かの魔法もかかっているせいか、剣による物理攻撃は聞いていないようだった。

このままじゃ、刃がダメになってしまう…

ただでさえ傷を負っているこの剣。そこから刃が駄目になってしまっては使い物にならない。
何か、方法はないのか…
そうだ、外の世界の奴らに聞けば何か変わるだろう。

「ルミル、聞こえるか?」
「はい! なんでしょう?」
「主はゴーレムだ! 額には『EMETH』って光って書いてあって、赤黒い石レンガの体だから俺の剣が効かない。何か方法はないか?」
「ちょっと待ってくださいね」

ゴーレムの攻撃を避けつつルミルの返答を待つ。一瞬がいつもよりも長く感じる。

「額には『EMETH』って書いてあるって言いました?」
「言ったが、何か関係はあるのか?」
「どこかで聞いた事があるんです。ゴーレムの額の文字について。確か、『EMETH』は『真理』と言う意味なのですが、最初のEを無くすと『METH』となって、意味が『彼は死んだ』となるとゴーレムは泥に戻るという事だったはずです」
「わかった、試してみる」

振り下ろされた腕から肩の方へ登り、ジャンプして最初のEへ剣を振り下ろす。するとEの光が消え、『METH』となった。

「ジメツプログラム… キョウセイハツドウ… コレニヨリ… ゼン… キ… ノウヲ… テ… イシス…ル…」

ゴーレムは足の方から泥となっていき、全てが泥となるとその泥も消えた。
残るは球体のみ。球体は未だに稲妻を発生している。

球体を割るしかないな。

剣に魔力を込め、聖なる光を宿らせる技… 『剣舞技 聖臨』
そして、ジャンプし剣を球体に振り下ろす。球体は割れ、中にいた人影… オリガは目をつぶったまま仰向けでその場にゆっくりと落ちていく。そこへ俺は走っていき、オリガを受け止めた。

これって、お姫様抱っこ状態じゃないか…

フレイに見られていないのが幸いだ。しかし、外の世界からこちらを見ていたとすれば…
まぁ、ルミルの言動からすると、こちらの世界の様子は見えていないようだったが。

オリガをその場に寝かし、様子を見る。
このようにしたのは今回で2度目だ。
チラリと見える腹にはもう、刻印は無くなっていた。

急にあたりが光に包まれ、その眩しさに目を閉じた。