ダーク・ファンタジー小説
- Re: Change the world ( No.84 )
- 日時: 2018/04/07 01:21
- 名前: 和花。 ◆5RRtZawAKg (ID: qU5F42BG)
39話、実は3500字オーバーしています。重かったらすみません。
40話 オリガの思い
「お〜い」
声が聞こえる。俺を呼んでいる…?
夢だったりしないだろうか。
「お〜い、起きてよ」
この声はオリガなのか? そろそろエリア1へ行くのだろうか。
…でも、まだ寝ていたい。
「…起きないと、ふふっ」
まずい。現実だ。このままじゃ何をされるかわからない。
「…悪かったな」
目を覚ますと、目の前にオリガがいた。目が合うとオリガはニコッと笑い、横に座った。
目の前に見える景色は、石レンガの地面に柵。そして遠くに水平線に沈む太陽。
もうこんなに時間が経っていたのか。寝てる間に何も盗まれていないといいが…
誰もベンチから動き出さない。オリガは何が目的でここへ来たのだろうか。
「…何しにきたんだ?」
「休憩。いっぱい乗ったから疲れちゃってさ。あと、フレイにレオンの様子見てきてくれっていわれてさ〜 …まさかだけど、ずっと寝てた?」
「あたりだ。ここ、懐かしく感じるんだ… だから」
「なんとな〜く、わかるかも」
立ち上がり、柵の方へ向かう。柵に海を見ながら寄りかかる。
周りにはこの時間のせいか誰もいない。…つまり、2人っきりだ。
フレイ達も残ったアトラクションに乗っているらしく、当分来ないだろう。
今がチャンスかもしれない。
「なぁ」
「ん?」
「俺… 前に『いろいろ聞かせてくれ』って言ったよな」
「うん、私を助けてくれた時にね」
「今でも… いいか?」
「誰もいないから… いいよ」
落ち着け、俺。
何に緊張しているんだ。素直になるって決めただろう。
…きっと、これは緊張じゃない。きっと。
こんなふうに思っていること、バレないでくれ…
相手は現役諜報部員。声のトーンとかで分かってしまうかもしれない。
「ルミルから裏で聞いたんだ。『あの刻印は刻印を押される事を受け身が願ってくれないと、あんな風に押されたことにならない』って。…本当か?」
それは、皆に内緒でルミルから言われたこと。
ストレートに聞いてしまったがいいのだろうか。よく、『女の子の心は繊細だ』と言うが…
「……本当、だよ。私、願ったの。刻印は力がアップするって聞いたし、その他の事、全部聞いた。自分が自分じゃなくなるかもしれなかったけど、克服して利用しちゃえばいいやって思ったの。でも、あんな事になるなんてね… 私の考えが甘かったよね。 …本当にごめんなさい…」
「そんな謝るなよ。結果的に無事だったんだ。だから、な? でさ、なんで…」
「強くなりたかったの。みんなに追いつきたかったし、足手まといになりたくなかった。それに…」
オリガの目が潤い輝く。あ… 俺、言いすぎたみたいだ。と感じた。
オリガが泣くことなど、滅多に見たことがない。遠い昔に「涙は人の前で見せるものじゃないもん」と言っていた。もしかして、ずっと考えたり、悩んだりしていたのだろうか。1人で抱え込んでいたのだろうか。フレイがパーティーの時に言っていたかもしれない『オリガはよく1人で抱え込んでしまう』的なことを、今改めて思う。
「それに… 嫌だったから… 戦いとか終わったら、誰かが、いなくなるのが… 嫌だった、から…」
震える声で微かに言ったのが聞こえた。表情は下を向いていて髪に隠れているためわからない。
「嫌だ」などと素直に他人へ自分の気持ちが言えない、気持ちの晴れない今の社会。それがこんなにも重りになっていることがよく伝わる。
たとえ憎しみや恨みのある帝国相手でも、’’戦えない状態’’ つまり生きているが戦闘はできない状態にし、敵を死なさないように掟を守って戦っていた俺達反乱軍。でも、帝国… その他諸々の敵となった者… 立ち向かってくる者達はそのような掟などない。そのため、本気でかかってくるので身近かな人がいなくなってしまうということはたくさんあった。たとえ戦いが終わっても、いなくなってしまった人々は戻らない。共に過ごすことなどできない。それがオリガにとっては嫌だったらしい。
「つまり、自分がもっと強くなって誰もいなくならない結末にしたかったんだな」
オリガは静かに頷く。軍に入ってから… いやもしかしたら孤児院が襲われた時から考え、悩んでいたのだろう。ずっと、誰にも話さないで1人で抱え込んでいたのだろう。そして、1人で解決しようとしたのだろう。オリガの苦しみは俺達にはきっとわかりきれない。だがそれに気付き、手を差し伸べることができたと思う。だって俺達は信頼できる仲間… 切っても切れない絆で繋がっている仲間のはずだから。
「1人で抱え込むのやめろよ… 俺達… いや、言いにくかったら俺だけでいいから… 何かしら言ってくれよ。もう嫌なんだ… 何もできないで終わるのは…」
何もできないで終わる。守りたいものとか守れないで終わる、戦えたのに何もできず失って終わる。そういう事が俺の人生で悔いとして残っている。ジンとの最期とか、本当によくしてもらっていたのに俺は何もできなかった。それがただ悔しくてしょうがなかった。
せめて、大切な人だけは何もしないで終わりたくはない。こんなふうにオリガは言ってくれた。だから助け船を出して綺麗さっぱり、スッキリと解決したい。
「それに、力とかなんて関係ない。大切なのは… 思うことだ。」
かたい思いあえあれば、人は前へ進められる。いや、何かしらの思いがあれば行動できる。
守りたいとか、救いたいとか思っていれば自然と体が動く。きっとミントはそのような思いがあったからあのような結末を選んだのだろう。オリガだって、誰かがいなくなるのが嫌という思いでそのような行動をしたのだろう。だからこそ大切なのは、思うことなんだ。
今の俺がオリガにできること… それは…
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泣いちゃった。こんなふうに自分の気持ちを言うなんてこと、初めてだったから。
「涙は人の前で見せるものじゃない」それがモットーの私だったけど、今回ぐらいはいいや。
まさかレオンにこんなふうにしてもらうなんて思いもしなかった。
「俺を頼ってくれ」だなんてみたいな事自分から言い出したのもそうだけど、今みたいに優しく暖かく抱きしめてくれるなんて…いつもとの姿とのギャップがあってちょっと戸惑っちゃうなぁ。
でも今は、その暖かさを感じていたい。悩んでいる事とか全部包んでくれそうな暖かさをずっと…
永遠に片想いで終わっちゃうかと思ったけど、無事? 出会えたし両想いにもなれるなんて。
やっぱりレオンはかっこいいよ。その姿、思い、優しさは。
私もいつかなれるかな…? 自分に子供ができたときとかに。
この人に出会えて本当に良かった。運命って… 不思議なものだなぁ
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それは、オリガをいろんな意味で支えてあげること。
俺は、いつの間にかオリガの笑顔とかに惹かれ、好きになっていたのだろう。
最初にフレイに言われた時は完全に否定したが、今なら認めてやってもいい。
約束、まだ覚え… あ!
「なぁ…」
「何…?」
「約束の場所、こわれっちまったよな…?」
「うん。今、決めなおそう」
元通り、柵に寄りかかる。
なにか待ち合わせにいい場所あっただろうか。
俺の記憶を探る限りはない。
「なんかいい場所あったかな〜」
オリガが頭をぽりぽり書きながら呟く。
さっきまで潤っていた目も、今では元通りだ。
「似たようなところ思いついたの。」
少し間を空けて小さな声で呟く。
「城の玉座の後ろのテラス。ほら、私ら2人だけに女王さまが許可取ってくれたでしょ? 夜、星空の下で待てっるから」
「『待ってるから』? なぜ俺が遅れる前提なんだよ」
「いい間違えだよ! もう、そんなこと突っ込まなくていいの!でも、来なかったら私ずっと待ってるから。どこにも行かないから、安心してよ」
「フッ、どうせ途中で飯食べたりするのにどこか行くだろ?」
「笑わないで! 星空の下って聞こえなかった? 私が待つのは夜限定ですよ〜」
笑いがあふれる。こんなふうにいつまでも笑っていられたらどんなに人生楽しいだろう。
ん?
オリガのスマホの着信音がなる。
「はいはーい、ん? あ、了解」
「なんだって?」
「全部のスタンプ貰ったからエリア1の事務所へ来いだって」
「さて、行くか」
俺達は、歩き始めた。